小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――8月12日・成田空港


 イギリスに出発する本日、この場には3−Aの略全員が集まっていた。
 結局、ネギの帰郷には略全員が参加する事になった。

 麻帆良に残るのはエヴァと五月、葉加瀬にザジ位のものだ。
 その居残り組の中でエヴァは見送りに来ていた。

 「本当に行かないんですかエヴァンジェリンさん?」

 「本音を言うならお前の故郷とやらには行ってみたいが、向こうは日本以上に『闇の福音』へのアレルギーは強かろう。
  私が行く事で無用な騒ぎが起こるのは面倒極まりないのでな…まぁ、精々土産話を楽しみにしているさ。」

 残る者は残る者で事情が有るらしい。
 まぁ、エヴァの言う事はネギも理解しているので其れは仕方ない。

 「で、お前は何故に居るんだ天ヶ崎?」

 「刹那に誘われましてなぁ…海外旅行も1度くらいはえぇかな〜と。」

 「成程な。」

 残るものも居れば、生徒でなくともついてくる者も居るようだ。
 まぁ、千草が来ると言うのは頼もしい限りではある。

 ともあれこの大人数、あやかが飛行機1台チャーターしたのはある意味正しい判断であっただろう。
 程なくフライト時間となり、エヴァに見送られながら一行は一路イギリスへと飛び立っていった。











 ネギま Story Of XX 57時間目
 『イギリスに降り立て!』










 さて、飛行機内部だが完全貸切とあって当然ながら他に客は居ない。
 なので普通のフライトとは違い結構自由に色々できる。
 ゲームをしたり音楽聞いたり、普段と変わらぬボリュームで話したって無問題だ。

 「そう言えば、俺飛行機乗るの初めてだな…」

 「は、そうなのか?」
 「意外だ…」

 割と賑やかな機内での適当な雑談の中、稼津斗の意外な発言に反応したのは千雨とアキラ。
 いや、稼津斗の近くのシートに座っていた者は全員同じような反応をしている。

 まぁ、当然だ。
 魔法バラシの際に、稼津斗が武者修行で世界中を旅してたのは皆が知っている。
 にも拘らず『飛行機が初めて』と言うのは解せないだろう。

 「飛行機を使わないとなると如何様にして外国に行っていたでござるか?」

 「自分の力で。」

 「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」

 何かトンでもないモノが聞こえた。
 自分の力でとは一体…

 「俺が居た世界のことは話しただろう?あの世界ではな、パスポートさえきちんと持っていればどんな方法でも出入国が出来たんだ。
  飛行機でも船でも…それこそ魔法や気を使って飛んでいっても、海上を走っていってもな。」

 「ホンマに?」
 「幾らなんでも凄すぎるだろう…」

 本当にトンでもない事だった。
 まぁ、それだけ魔法や気が一般的だったということだろう。

 「基本的に陸続きの場所は歩いて、大陸離れてる場合は空飛んで移動してたな。」

 「マジかよ…」

 空飛んだ云々は別にしても、陸続きの場所を徒歩のみでと言うのも驚愕に値する事だ。
 尤も、其れがまた『アノ』非常識な強さの基盤になっていると考えると妙に納得するものがあるのだが…

 「いっそ、俺が飛行機ロープで引っ張って飛んでいくか?多分そっちの方が早く着くぞ?」

 「頼むからちっとは普通に行こうぜ!?」

 「冗談だ。」

 「アンタが言うと冗談に聞こえねぇんだよ!!」

 マッタクだ。
 機内の全員がそう思った事だろう。
 空の旅は平和そのものだ。








 ――――――








 稼津斗達が海の上を飛んでいる頃、エヴァはチャチャゼロを伴って図書館島の地下――アルのもとを訪れていた。
 特に用事があったわけではない、単純な暇つぶしだ。

 「今頃は海の上か…」

 「そうでしょうね。本当に行かなくて良かったのですか?」

 「フン、態々『ナマハゲ』扱いされにイギリスまで行く事も無かろうよ。」

 例によって簡素ではあるがお茶会が開かれているのはお約束。
 なんだかんだ言いつつもエヴァもアルが持っているお茶『だけ』は気に入っているらしい。

 「しかし、今更ですが凄いですねぇ彼――稼津斗君は。私自身『最強の個人』と言うのはナギだろうと思ってたのですが…
  彼はその更に上…彼が本気を出したらナギですら恐らく瞬殺されるのではないですかね?」

 「ふん、当然だ。稼津斗は努力で才能を凌駕するタイプだ。生まれ持っての素質に胡坐掻いていたナギでは敵わんさ。
  己の凡才を埋めるために尋常ではない努力をし、今尚鍛錬を怠らない…私も認める真の最強だよ、アイツはな。」

 稼津斗が話題に上がるが、エヴァもアルもその強さには脱帽状態らしい。
 特にアルは、エヴァが認めるほどと言う事には驚いたようだ。

 「貴女が認めるとは…成程、彼は相当ですね。だからこそ安心してネギ君をイギリスに送り出せたと言う訳ですか?」

 「半分正解で半分ハズレだ。確かに稼津斗が居れば大概の事は如何にかなろう。
  だが、世の中は得てして『予想外』の事態が起こるものだ、其れこそ稼津斗でも完全対処が出来ん位の事がな。
  その予想外の事態に遭遇し、飲み込まれ、乗り越えてこそ人は成長する。
  何もないに越したことはないが、ハプニングが有ったら有ったでネギはまた成長する。
  何れにせよイギリスから戻ってきた時にはネギはもう一皮剥けている筈だ……男としてもな。」

 ニヤリと笑うエヴァにアルも冷や汗が。
 普段ならばからかう所だが其れもできない。

 「いやはや…此れは参りましたねぇ。将来は英雄の息子と稀代の大悪党の最強コンビ結成ですか…
  なんとも、世間が聞いたら一様に目玉飛び出すような事ですね…まぁ、良いと思いますよ私は?」

 「フン…まぁ何にせよ、今回のイギリス行きは何があろうとマイナスにはならんさ。」

 紅茶を一口。

 「ただ、本音を言うなら何もなく無事に帰ってきて欲しいとは思うがな…」

 その呟きはアルにすら聞こえる事はなかった…








 ――――――








 さて、稼津斗達は長いフライトを終えやっとイギリスの地に降り立っていた。
 尤も首都のロンドンに到着しただけで、ネギの故郷であるウェールズまでは今度は電車の旅が待っているのだが。

 「しかし、今更だがこんな大人数で行って大丈夫なのか?」

 本当に今更だが、この人数は確かに多い。
 30人超と言う人数では移動手段その他色々問題が出てきそうだが…


 「大丈夫よ問題ないわ。メルディナ魔法学園の校長の許可も得ているしね。」

 其れを破るような一言。
 声の方に振り返ると1人のブロンド美女が。

 「あーーー!あんたは!!」

 「マクギネスさん。」

 そう、何時ぞや裕奈が自分の父親の再婚相手と勘違いした女性――ドネット・マクギネスが居た。
 状況を見るに、彼女が此方でのガイド役なのだろう。

 「あら、ユーナも一緒?ふふ、いえ当然の事ね。こちら側なら来て然る状況ですものね。」

 「いや、私も吃驚!ドネットさんが居るとは思わなかったよ?」

 思わぬ再会に裕奈も吃驚。
 ネギはネギで裕奈とドネットが既に顔見知りだった事に驚いているが。

 「ガイド役ですもの。…さ、ネギ君の故郷――ウェールズへは電車で。」

 それでも大人の余裕か、笑みを浮かべドネットは一行を引率。
 其れに従いロンドンの駅へ。


 其処からウェールズ行きの電車に乗り、揺られる事数十分。




 「お〜〜〜〜〜!」
 「此処がネギ君の故郷〜〜!!」

 辿り着いたウェールズ。
 先程のロンドンのような都会ではないが、自然が多く吹き抜ける風が心地よい。

 「良い場所だな。可也濃いマナが大気に有りながら、でも気はこれ以上無いくらいに澄んでいる。
  しかもこれは人の手で創ったものじゃなく自然が作り上げた環境……良い故郷だなネギ。」

 「ありがと。」

 稼津斗からの故郷への賛辞はありがたくとっておくネギ。
 自分の故郷が褒めらるのは悪い気分ではない。


 「ネギ〜〜〜!」

 その澄んだ空気の中でも通るネギを呼ぶ声。

 「ネギーーーー!」

 こちらに向かって走ってくる1人の女性。
 長い金髪に黒を基調としたワンピースタイプの服。(一見すると修道服のようなデザインだが…)
 アスナとあやかを足して2で割ったらきっとこの女性のようになるのだろう。

 「お姉ちゃん!」

 どうやらこの女性、ネギの姉――ネカネ・スプリングフィールドその人らしい。
 ネカネは勿論、ネギも約半年ぶりとなる姉との再会に顔が輝いている。

 「ネギ!」

 そのネカネはネギに近づくなりその身を抱きしめる。
 本気で嬉しいのだろう、抱きついたらそのまま今度はネギに振り回されている。


 …普通は逆だろうが。


 「ネギのお姉さんか。まぁ久しぶりの再会だろうから…あれもありか?」

 「…ど、如何なんでしょうか?」

 稼津斗ものどかも分らないらしい。


 「と、そうだお姉ちゃん、この人が手紙で言ったカヅトだよ。」

 「そう、この人が…はじめまして、ネカネ・スプリングフィールドです。」

 で、何時の間にやら紹介されている。
 ネギとしては自分の友人は矢張り紹介したかったのだろう。

 「ご丁寧にどうも。氷薙稼津斗…ネギの同僚で仲間だ。お会いできて光栄だ。」

 「其れは此方もです。ネギが何時もお世話になっているそうで…」

 「年下の面倒を見るのも年長者の務めだからな。」

 あっという間に馴染んでいる。
 稼津斗の人柄か、それともネカネの何処か天然入っている性格かは不明だが。

 「ついでに、此処に居るのがネギが受け持つクラスの面子の略全員だ。」

 「アラアラ…こんなに…」

 「あはは、これでもクラスの人は4人だけ欠けてるんだよ?」

 再会はネカネにとっても驚く事が多いようだ。
 手紙で知っていたとは言え、実際見ると30人オーバーと言うのは矢張り凄い。
 此れだけの人数を稼津斗のサポートが有るとは言え受け持つネギにも驚いて居るだろうが。

 ともあれこの地に降り立った全員がネギの関係者。
 そうなればネカネがやる事は唯一つだ。


 「皆さん、何時もネギがお世話になっています…ようこそ、ウェールズへ。」

 同時に誂えたような風が通り抜け小高い丘の草花を揺らし、心地よい余韻が残る。


 ネギの故郷であるウェールズ。
 今回の訪英の真の目的のスタート地点。

 3−Aの略全員が降り立ったこの地。
 素晴らしい環境のこの場所に全員が感激しているようだ。


 だが…



 ――成程、確かに良い場所だが……この胸騒ぎは一体なんだ?何か良くないことが起こるような…思い過ごしであって欲しいが…



 只1人、稼津斗だけが言いようの無い『嫌な予感』を感じていた事は誰も知らない…










  To Be Continued… 


 

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