小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 稼津斗達が拳闘士として鮮烈なデビューを飾った1週間後。

 「はいよ〜!タマ、ストップストップ!ただいま〜!買い出し行って来たよゆーな!」

 「お疲れまき絵〜〜!運ぶの手伝うよ!」

 グラニコスから遠く離れた、此処『テンペテルラ』に裕奈とまき絵は居た。
 ゲートポートでの一件で散り散りにはなったが、偶然にもこの2人は同じ場所に飛ばされていたのだ。


 「お、帰って来ましたな?昼時やから入っておくれやす。看板娘が居なくちゃ店の売り上げに差し支えますえ?」

 更には千草も一緒の様だ。
 この3人、迷いに迷った挙句にこの街に流れ着き、レストランのスタッフとして働いているようだ。

 千草は裏方の調理で、裕奈とまき絵はウェイトレスとしてだ。

 「お〜!今日も元気だなマキエちゃん!けどおっぱい相変わらずちいせぇな!ちゃんと毎日揉んでっか?」

 「やだも〜トラゴローさんたら♪」


 ――ドガス!


 「ユーナちゃんは相変わらずでけーな!!」

 「この世界に『セクハラ』って言葉は存在しない訳!?」

 セクハラ発言だろうと、まき絵の強烈過ぎる突っ込みも既にお約束になりつつある。
 尤も、これ以上のセクハラ発言が続いた場合には千草から世にも恐ろしいお仕置きが待っているのだが…

 何れにせよこの3人は魔法世界でそれなりに巧くやっているようだ。











 ネギま Story Of XX 64時間目
 『一石三鳥計画也!』










 「しっかし、すっかり看板娘だなあの2人。」

 「ね♪隣の街道の客まで噂聞いてくるもんだから、もう大繁盛だよ。」

 で、ウェイトレスの2人はすっかり店の看板娘として有名人状態。
 売り上げに確り貢献しているらしい。

 「千草だって美人なのに『店に出るのは若い子の方が良い』って自分は裏方に回っちまうんだから勿体無いよ。
  しかも、ユーナと千草は腕の立つ魔法使いってんだから驚きだよ。おっと千草はオンミョウジだったかい?」

 「どっちでも同じおすな、この世界では。」

 更に3人のうち2人が腕の立つ魔法使い(千草は陰陽師だが)と言うのも大きい。
 この3人が所謂『旧世界』出身者なのは知れているが、その世界の者が2人も高位魔法使いと言うのは驚きの種だろう。

 「しかも驚いた事にね…ユーナの彼氏さんは更に強いんだとさ。ユーナが言うにはあのサウザントマスターを上回るって話さ。」

 「なんだって!?マジならそりゃスゲェな…」

 更なる驚き情報。
 あくまで裕奈が言ったに過ぎないが、稼津斗のメータ振り切れた強さも既に知れ渡っているようだ。
 尤も此方は『裕奈の贔屓』が入ってると取られて、眉唾な話とされているようだが…


 「おう、ユーナちゃん!」

 「なんですかジョニーさん?」

 今までカウンターで話していた男性の名は『ジョニー』。
 何を隠そう、この世界に飛ばされて彷徨っていた3人をこの街まで連れてきてくれた恩人だ。

 「街まで連れて来てくれたからって胸触らせたりはしませんよ?つーか稼津君以外に身体捧げる予定無いから。」

 「彼氏持ちにそんな恩は着せねーよ。でだ、その彼氏ってのはそんなに強いのかい?」

 純粋なジョニーの疑問。
 この街につくまでの間に、野生の龍種なんかに襲われた際、裕奈がいとも簡単に其れを撃退したのはこの目で見ている。
 故にその彼氏ともなれば掃討に腕が立つのだろうと思っての問いだ。

 「強いですよ?そっすね…大体飛龍種1万匹くらい?ガチで本気出したら魔法世界の全生物集めても敵わないかも。」

 「…ワリィがユーナちゃんの彼氏さんは何モンだ?」

 「天下無敵の最強戦士ですよ?」

 当然の突っ込みだが、裕奈の答えも当然だった。

 「ん?あ、ナイスタイミング!今戦ってるのがそうですよ。」

 タイミングが良いのか、店のモニターにはグラニコスでの拳闘大会の様子が映し出されている。
 其処に映っているのは、今正に戦闘の真っ最中の稼津斗とリインフォース。

 アナウンサーが言うには、デビューから秒殺・瞬殺続けての無敵の12連勝中との事。
 その戦績に店の客とまき絵は驚いているようだが、裕奈と千草にしてみれば当然の事だった。

 「この黒髪に山吹色の服の奴がそうかい?…た、確かにすげぇな…」

 画面の向こうでの一方的な戦いにジョニーも驚く。
 完全に余裕綽々、其れで居ながらまるで隙が無いのだ戦ってる2人は。


 『此れで…』
 『終わりだ…!』


 そして、決着!
 稼津斗の正拳突きと、リインフォースの掌打が炸裂し試合終了。
 全く危なげ無く、此れで目出度く13連勝だ。


 『お見事です!先程13連勝を遂げたナギ&コジローペアに続いてのデビューから13連勝の快挙。
  しかも、全試合1分以内の秒殺・瞬殺での13連勝の大記録を打ち立てたダブルエックスさんにインタビューです。』


 「全試合1分以内て、相変わらずの非常識な強さおすなぁ…」

 「まぁ、ぶっちゃけ稼津君とリインなら当然だと思うよ?つかその名前で良いのか稼津君や…」


 『どうもダブルエックスさん、今日の放送は全国生中継ですよ〜。』

 『全国中継?…悪いがマイク貸してくれるか?』

 全国中継と聞いて何かを思いついたのか、稼津斗はインタビュアーからマイクを借り受ける。


 『あ〜〜…裕奈、楓、真名、のどか、クスハ見てるか?ご覧の通り、俺は無事だ。『担任』も一緒に居る。』

 そして始めたのは、己がパートナー達に向けたメッセージ。
 ネギ組を入れてないのは、賞金首の事を考えてだろう。

 『此処は交通の便やら何やらが色々とアレだから…そうだな、1ヵ月後オスティアで開かれる大会で会おう。
  運動部の2人も一緒だし、他にも何人か一緒だ。学園への帰り道も何とかなる…大会で会うのを楽しみにしてるぞ。』

 『何ですかー今のは?彼女へのメッセージ?』

 『…さて、如何かな?』

 『おぉ?意味深ですねーー?』


 インタビューは其処で途切れたが、まき絵は唖然としている。

 「ねぇ、ゆーな…」

 「ま、稼津君が言うなら間違いねーでしょ?」

 「じゃあ…亜子もアキラもネギ君も無事なんだ!」

 途端に笑顔だ。
 行き成りこの世界に放り出され、無事が確認出来たのは一緒に居る2人だけと言うのは矢張り不安だったのだろう。

 其れが一気に親友2人は無事でネギも居る。
 更には数人が無事と知れば安堵するのも当然と言える。

 「他の皆も無事なのかな?」

 「まぁ、少なくとも『蒼き翼』の面々は大丈夫だって!兎に角旅費稼がなきゃ!ガンガン働くっすよ〜〜!!」

 他に飛ばされたメンバーの事は気になる。
 だが、此れで当面の行動指針は決まった。

 全ては1ヵ月後のオスティアが目的だ。
 そうとなれば其処への旅費を稼ぐのみ!!

 「よぉ〜〜っし頑張るよ、まき絵、巫女さん!」

 「お〜〜〜!!」

 「せやけどオスティアってのは何処やろうか…?」

 「おし、俺が教えてやるよ。地図持ってきな!」

 取り敢えず、裕奈達にはメッセージが届いた。
 少なくとも何処かの街に居るメンバーも此れを見ていることだろう。

 事の次第が分るのは1ヵ月後のオスティアだ。








 ――――――








 ――同刻:自由都市グラニコス


 『以上、注目のルーキーの1人、勝者ダブルエックスでした〜〜!!』

 「エックスく〜〜ん!」
 「いいぞ〜!!」
 「次も勝てよ〜〜!!」

 インタビューが終わり、闘技場から姿を消しても歓声は続く。
 ネギ&コタローコンビもだが、稼津斗&リインフォースコンビも俄ファンが出来上がっているのだ。


 「ケッ…今日も勝ちやがったか。」

 引き上げてきた稼津斗に毒づくはトサカ。
 どうにも自分を打っ飛ばした相手が勝ち続けると言うのが面白くないらしい。

 「なんだ…相手側に賭けてたのか?」

 尤も稼津斗は涼しい顔。
 寧ろ軽く皮肉を返すくらいの余裕ぶりだ。

 「テメェに賭けたよ。気に入らねぇが、テメェの強さは重々承知してんだ!この身をもってな!!」

 「そうかい。」

 実を言うと、このトサカ先程ネギの試合の後も殆ど同じ事をネギに対して言っていた。
 その時のネギの反応も大体今の稼津斗と似たようなものだったが…

 「だが、覚えとけ!最強クラスの奴はこんなモンじゃねぇぞ!!」

 これも先刻ネギに言ったセリフ。
 だが…

 「お前こそ忘れてるんじゃないだろうな?俺もルインもマダマダ本気の『ほ』の字も出しては居ないという事を。
  変身とまでは行かなくても、せめてこの姿での本気が出せる位の相手を連れて来い…地方じゃ無理な話だろうがな。」

 アッサリと切り返す。
 稼津斗もリインフォースもデビューからの13戦を1度として本気で戦っては居ない。

 出したとて1割程度のものだ。
 ハッキリ言うと、現時点では稼津斗&リインフォース組がトップでその次がネギ&小太郎組なのだ。

 ネギと小太郎はマダマダ3割も出せば余裕で対処できるレベル。
 其れよりも下ともなれば、最大1割程度で充分だったのだ。

 尤もお陰で『如何に力を抑えつつ派手に魅せるか』は巧くなったのだが…

 「それと…分ってるだろうが、今度亜子達に手を出したら、その時は躊躇無く滅するからな?」

 「ち…わーったよ!俺だって命は惜しいからな!」

 言うだけ言ってトサカはその場を後にする。
 トサカはトサカで賭けには参加しながらも、闘技場スタッフとしてやることもあるのだ。


 「お疲れ稼津兄♪」

 「和美…いや、お前の方こそ1週間お疲れ様だ。」

 引き上げてくれば和美の姿。
 労いの言葉は当然だが、この1週間、実は試合よりもその後の話し合いの方が本命だった。

 現状の問題点、仲間の捜し方、亜子達の救出方法等だ。

 「今出てったら兄ちゃんの俄ファンやら取材の連中に囲まれてまう。こっちで話そや?同じ理由でネギも居る。」

 小太郎の案に頷き、盗聴防止の術を施した小規模結界を張った階段の踊り場で会議開始だ。

 
 「一応此れで作戦の第2段階は終了というところか?」

 「僕やカヅトのメッセージは皆さんに届いたでしょうか?」

 如何やら仲間へのメッセージ発信をしていたのはカヅトだけではなかった様だ。
 ネギもまた、同様の事をやっていたらしい。

 尤もネギの場合は『賞金首』になって居ない自分のパートナーをメインにしていたため裕奈達が働いていた店では話題にはならなかったのだろう。
 序でに言うと、ネギ&小太郎の試合が放送されていた時は丁度まき絵は買出しで裕奈と千草も仕事をしていて放送を見ていなかった。


 其れは良いとして、

 「ネギ君のお父さんの知名度のお陰でメディアへの露出は高いはず。
  しかも、そのナギコジコンビの師匠格がエックス・ルインコンビってんだから注目度も有ると思う。
  あとは…皆を信じて幸運を祈るしかないね。」

 メッセージが届いたかを確認する術は無い。
 故に此れは『見ていてくれた』事を祈るしかないのだ。

 「まぁ、確かの此ればかりはな…」

 「ではここらでおさらい…と言うか現状確認だ。和美。」

 「OK。」

 リインフォースに言われ現状確認。
 何しろこの1週間で和美と茶々丸と超で集めた情報たるやとても3人で集めたとは思えないほどなのだ。

 「やっぱあの事件で魔法世界11箇所のゲートは全て破壊され、現実世界との橋は全て閉ざされた…復旧には2〜3年はかかる。」

 矢張り状況は芳しくない。
 だが、打開策もあったのだ。

 「最悪の状況ってやつだが…」

 「うん。廃都オスティア――二十数年前に戦争が起こるまでは風光明媚な古都だったけど、今は殆ど廃墟で観光の地になってる。
  その無人の街に今は使われていない『ゲート』がある。
  此処は奴等――フェイト一味には襲われていないし、『ゲート』も休止してるだけで生きている。」

 そう、此れが情報収集の最大の成果だ。
 休止しているだけで破壊されていないゲートが有る……此れは大きい。

 更に幸運なのはそのゲートの有る街だ。
 1ヵ月後にはそのオスティアで拳闘大会の全国決勝が行われるのだ。

 「で、そのオスティアで行われる拳闘大会の優勝賞金が100万ドラクマ!
  オマケに荒っぽい大会だから、お尋ね者が落ち合うにももってこいって訳さ!」

 「つまり――…
  1、借金返済
  2、皆と合流
  3、お家に帰る、この3点がこの大会で全部解決出来ちゃうかも…って事ですね―――♪」

 さよが話をまとめ、要点整理終了。
 大会の開催場所は兎も角、其処のゲート情報は流石としか言いようが無いだろう。

 「全部解決か…巧く行き過ぎている気もするが…」

 「気にすんなやリイン!今までやられっぱなしやったけど、こっちに風向いてきたやん♪」

 確かに事が巧く進みすぎている感は有る。
 だが、現状は此れが最大の好機であるのも事実だ――止まることはできない。


 「ま、その為には稼津兄とイクサ、ネギ君とコタ君がオスティア大会への参加資格を得なきゃなんないんだけど…自信は?」

 そしてその為には大会への参加資格は必須。
 すこし意地悪な笑みを浮かべて聞く和美だが――そんなものは愚問だろう。

 寧ろ答えなど分りきっている。
 此れは確認――気合の入れ直しのようなものだ。

 「俺達に其れを聞くか?」

 「大丈夫ですよ。其れにこんなところでやられてたら話になりません。」

 「任せとき!あと10勝もすれば参加資格は充分や!」

 「其れに、新人同士と言う事で、この闘技場で私達がネギ達と当たる事は無い――2チームとも参加資格は得られるさ。」

 なので当然答えは『Yes』だ。
 このメンバーが地方健闘大会で土を付けられる事など先ず無いだろう。

 「私等も動くぞ?」

 「ダナ。バッジの反応は追えるし、待つだけじゃなくて出来る事は有るヨ。」

 改めて意思統一。
 目指すは1ヵ月後のオスティア只1つだ。

 「それでは…1ヵ月後のオスティア目指して…『蒼き翼』ファイ!」

 「「「「「「「「オォ!!」」」」」」」」

 ネギの号令で響く、団結の声。
 事は順調に流れるだろう。












 だが、この時其れとは別にネギには懸念もあった。
 ゲート襲撃の真犯人――フェイト・アーウェルンクス。

 様様な情報を得た中での懸念…残されたゲートを放っておくだろうかと言う疑問だ。

 何れ又まみえる事になると本能的に察しているのだ。


 稼津斗ならば、例え又会って戦闘になっても勝つだろう。
 其れは心配していない。


 最大の懸念――其れは『今の自分では勝てない』と言う事。

 ゲートポートは稼津斗と小太郎が一緒だったから何とかなった。

 或いは小太郎とタッグでの2vs1ならば勝てるかもしれない。
 では自分1人では?……答えは否だ。

 強くなったとは言え矢張り差が有るのを痛感している。


 その事がネギの精神に重く圧し掛かっていた。















  To Be Continued… 


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