小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 結果だけで言うならば、稼津斗、リインフォース、ネギ、小太郎の4人は何の問題も無く入団出来た。

 当然だ。
 如何に強かろうとも、訓練士程度ではこの4人の足元にも及ばない。

 稼津斗、ネギ、小太郎の3人が一撃で1人ずつ沈めたのと同時に、残りはリインフォースが空間攻撃で滅殺!

 だ〜〜れも文句の付けようがない『完全勝利』でめでたく入団。


 「契約した以上は死んでも恨みっこなし!それが俺達拳闘士の掟だ!分ったか新人共!!」

 「へっ、上等!!」

 で、本日はそのデビュー戦。
 先ずはネギと小太郎コンビのデビュー戦からだ。

 「だが、古代のローマと違って腕一本程度なら治る!遠慮せずに行って来いや!!」

 「はい!!」

 ネギも小太郎も気合は充分。

 「テメー等は前座だ!せいぜい観客盛り上げてデビュー戦飾って来い!!つーかコテンパンに伸されちまえ!!」

 新人に対するはっぱなのか何なのか…
 何れにせよ、既に会場は超満員。
 久々の『新人デビュー』と言う事で、人が集まっているようだ。











 ネギま Story Of XX 63時間目
 『いざ拳闘士デビュー!』










 「お、出てきたな。」

 此方は客席。
 出番はまだの稼津斗とリインフォースは、和美や超達と一緒に観戦中。

 現在奴隷の身である3人も多分見ているだろう。


 「けど凄い人だね〜〜♪超満員?」

 「この辺では一番の娯楽らしーからな。当然じゃねーか?」

 人の多さは千雨の言う事で正解だろう。
 何時の世も『格闘』と言うのは、結局一番の娯楽になりえるのだ。

 「ネギと小太郎の実力に不安は無いが……うん、相手も中々の手練だな。」

 「あぁ、少なくとも訓練士よりは数倍強いだろう。」

 雑談はさておき、ネギと小太郎の相手は稼津斗とリインフォースが見ても生半可な実力者ではないようだ。
 確かにアナウンスでは『ベテラン』との事なので、場数は相当踏んでいるだろう。

 その顔からも自信の程がうかがえる。


 「つーかよ、虎の獣人と妖精のコンビとか、マジで何でもありだな…」

 「其れこそ今更だヨ長谷川さん。」

 「だよな。」

 「…始まったか。」

 またまた雑談はよそに試合開始。


 先手を取ったのは獣人と妖精の妖精のコンビ――ラオとランだ。
 ラオが一瞬で小太郎に接近しての一撃。

 紙一重でかわす小太郎だが、其処に植物の種が…

 「萌え出若芽よ、縛鎖となりて敵を捕らえよ!」

 ランの呪文でそれが蔦となって小太郎に絡みつきその動きを封じる。
 そしてその隙を逃さずにラオのボディブローが炸裂!

 其処を狙いすましたようにネギの魔法が炸裂!
 だが、ラオは其れを身軽に避け…

 「虎咆!」

 口から発した魔法的な一撃で其れを相殺。

 「え!?」

 驚くネギに更なる追撃。

 「……蒼天の下駆け抜けよ一陣の嵐!春の嵐!!」

 ランの巨大な魔法が炸裂し、ネギと小太郎を飲み込む。
 凄まじい一撃と称して良いだろう。

 普通に考えれば試合終了となる一撃。
 アナウンスもそう言っている。


 「確かに凄い威力だし、見た目も派手だが…」

 「あの2人相手では効果は無いな。」

 が、稼津斗とリインフォースの見立ては全く逆。
 ネギと小太郎が此れでやられるとは微塵も思っていないようだ。




 勿論其れは正しい。
 2人の考えを肯定するかのように、ネギと小太郎は何時の間にかラオのそばに。
 全く無傷だ。

 「!!!」

 突然の無傷出現に驚くラオだが遅い。
 再度攻撃するよりも、遥かに2人は速かった。


 「雷華崩拳!!」

 「狗音爆砕拳!!」

 最も得意とする必殺の拳打が炸裂!
 修行を積んで更に破壊力が増大したこの一撃を、しかも2つ同時に放たれては堪らない。

 「ぬぐ…おぉぉぉぉ…!!」

 何とか防壁張ってガードするが其れは殆ど無駄。
 この2人の同時攻撃を防壁1枚で防ぐなど、大砲の弾をダンボールで防ぐようなものだ。

 結果、先程のランの魔法にも劣らないほどの衝撃波が発生し、そのままラオはダウン!
 更に次なる標的と、ランの方を睨む小太郎だが…


 ――パタパタ


 白旗振って降参の意。
 まぁ、前衛のラオが倒されたこの状況で、極大魔法の行使は不可能。
 幾ら距離を開けても、詠唱が完了する前に鎮められるのは目に見えている。
 この判断は当然だろう。


 「こ、此れはーー!番狂わせ、大番狂わせ!!」


 アナウンスもこの結果は意外だったのだろう。
 尤も…

 「いや、順当でしょうに?」

 「ネギ君もコタ君も凄いね〜〜♪」

 「御2人とも師が師ですから…」

 「つーかあいつ等まだ10歳なんだよな?」

 「末恐ろしいネ♪」

 この面子には至極当然の結果だったわけだが。

 さて、勝ったと成れば勝利者インタビューとなる。
 これまた、ファンタジックなインタビュアーが2人に。

 「ランキングでも常に上位に位置するラオ・ランコンビに快勝しての見事なデビュー戦!おめでとデス!新人さん、お名前は?」

 「コジローや。オオガミ・コジロー、覚えといてや!」

 先ずは小太郎が事前に考えておいた偽名を名乗る。
 お尋ね者の名を出すわけにはいかないのでこの偽名だ。

 「オオガミ・コジロー…良い名前デス!では赤毛のそちら方のお名前は?」

 次は当然ネギ。

 「………」

 だが答えない。
 何かを考えているようにも見えるが…?

 「何しとんねん、さっさと名乗れや相棒?」

 小太郎が催促するも矢張り答えない。

 「あの――お名前は…」

 「…失礼します。」

 更に聞いてくるインタビュアーのマイクを取り、ネギは会場全体を見回す。

 「僕の名前は――ナギ・スプリングフィールドです。」

 そして特大の爆弾投下!
 よもや魔法世界での絶対的英雄である己が父の名を偽名に使うとは予想外。

 だが、それ以上に会場が騒然と成るも当然だろう。
 伝説的英雄と同名の新人拳闘士が現れたのだから。


 「く…成程、考えたなネギ。」

 だが、稼津斗は観客席で笑いをかみ殺していた。
 矢張りと言うか何と言うかネギの思惑を看破したのだろう。

 「先生?」

 「いや、失礼。トンでも発言とも思うだろうが、成程此れは悪くない一手だ。」

 「どう言う事〜〜?」

 「ナギの名は良くも悪くもこの世界では有名だ。
  其れと同名の新人拳闘士が鮮烈なるデビューを飾った…此れは魔法世界中を駆け巡ってもおかしくないスクープネタだ。
  さて、そのニュースが魔法世界中に知れ渡ったとなったらどうなる?」

 この問いに、桜子以外の全員が即座にその答えに辿り着く。

 「少なくとも私等の居場所は、行方が分らない連中に知らせる事ができる?」

 「正解だ。
  此方からの連絡は取れなくとも、少なくともメディアを通じて行方知れずの面子に対して情報発信は出来る。
  其れを見越しての偽名だ…尤も親父さんの名のせいで被害被った事への多少の意趣返しもあるだろうがな。」

 又しても笑いをかみ殺す。
 最近のネギを知る『蒼き翼』の面々はそれには一切突っ込みを入れることが出来なかった。

 まぁ、多分その線で間違いないから問題は無いだろう。








 ――――――








 試合は進み、次は稼津斗、リインフォース組のデビュー戦。
 新人二組が同じ日にデビューするなど早々無いのか会場は大いに盛り上がっている。

 デビュー戦が日に2試合と言うのもあるだろうが、それ以上に盛り上がってるのは稼津斗とリンフォースの容姿だ。
 さっきのネギと小太郎の大人モードも、ベクトルの違う美形コンビとして女性人気が急騰していた。

 が、ネギと小太郎は内面が子供である為に大人の姿でも子供っぽさがどこかに残る。
 其れが無いのだ稼津斗とリンフォースは。

 完全に成人した美形の男女タッグ。
 此れが又、盛り上がりに一役買っていたのだ。

 「盛り上がるのはかまわねーが、よりにもよってあの服かよ…」

 「学園祭のときの『ヒーローユニット』だったかナ?」


 しかし、其れとは別に突っ込みの入った2人の服。
 そう、超の言うように『学園祭のヒーローユニット』の時の衣装なのだ。

 稼津斗は世界一有名な山吹色の胴衣で、リインフォースはダークブルーのレザースーツ。
 敢えて言うなら『孫○空』と『E-HERO マリシャス・エッジ』だ。
 其れが物凄く似合っているのだが…

 「まぁ、格好は兎も角として、あの2人が負けることは先ずねーだろ?」

 「だね。稼津兄とイクサに勝つには……うん、其れ無理♪」

 「…『朝倉』繋がりですか?」

 謎である。
 だが、確かにオリハルコンを持った者達のトップ2である稼津斗とリインフォースが負ける事などは先ず考えられないのは本音。

 ネギコタコンビの時同様、相手は高ランカーの様だが、多分相手にすらならない筈だ。


 さて、この拳闘大会では所謂『賭博』的な事も行われている。
 先のネギと小太郎の試合も然りだが、当然この試合でも賭けは公然と…

 現状では矢張り高ランカーコンビの方が優勢。
 鮮烈なデビュー戦の事もあり、稼津斗・リインフォース組に賭ける者がいない訳でもないが矢張り少ない。


 「…まぁ、中々の手練かな?」

 「少なくとも弱くは無いさ。…私達の敵ではないがな。」

 それでもこの2人は余裕そのもの。
 まぁ、当然だろう。


 「開始!!」


 そして試合開始。
 其れと同時に…


 ――シュン!


 「「!?」」

 稼津斗とリインフォースの姿が掻き消えた。
 相手は訳も分らず2人を捜す。

 だが、其れは良策とは言い難い。
 『捜す』事で、無防備な姿をさらしたのだから。

 「何処を見ている?」

 「私達は此処だぞ?」

 「「!!!」」

 完全な背後から参上。
 瞬間移動を使っての背後奪取――殆ど反則の粋だろう。

 「波導掌!」

 「シュヴァルツェヴィルクング!」

 打ち上げ式の掌打と拳打が炸裂!
 その威力で相手は中空に飛ばされる。

 そして此れは絶好の好機!

 「行くぞリインフォース!」

 「あぁ、此れで決める。」

 其れを追うように2人も飛び上がる。
 そして、稼津斗はパイルドラバーの様に捕らえ、リインフォースはブレーンバスターの形で更に両足をホールドする。



 「って!オイオイオイ、マジか!?」

 「いやはや、まさかこれやるとは思わなかったよ?」



 客席の千雨と和美は其れが何なのか察した様子。


 その考えは間違いではない。

 「「此れで決まりだ!」」

 相手をガッチリ捕まえた2人はそのまま超速で急降下!

 その落下の中で、リインフォースは稼津斗に『肩車』する形に。


 そして…


 「「マッスル・ドッキング!!」」


 史上最強、天下無敵、古今無双の合体技炸裂!!
 喰らった方は言うまでも無い。

 態々カウンと取るまでも無く完全KOだ。


 「さ、流石は老師とリインフォースさん…まさか此れを実演するとはネ…」

 「もう突っ込まねぇ…あぁ、あいつ等は何でもありだろうよ!!」

 試合結果は予想通り。
 されど決まり手は予想外。


 其れは兎も角、勝利者インタビューは当然ある。

 デビュー戦勝利を称えた後は、お決まりの名前聞き。

 「新人さん、お名前は?」

 「ルイン・エグザミアだ。宜しくな。」

 矢張り偽名。
 手配を受けてはいないが、実名曝すよりも此方の方が良いのだろう。

 「ルインさんデスね?では、黒髪の貴方の名前は?」

 今度は稼津斗。
 だが、ネギの時のように考えはしない。

 「……ダブルエックスだ。」

 己の変身形態素そのまま偽名に。
 ある意味ではストレートな偽名だ。

 「他に何か有りますか?」

 更に聞かれる。
 名を名乗った以上はそれ以外にする事はぶっちゃけあまり無い。

 「そうだな…なら一つだけ。腕に覚えのある奴は遠慮せずに掛かって来い。それだけだ。」

 「出来れば今度はもう少し骨のある相手を望むがな。」

 あくまでクールに。
 完全勝利を収めた稼津斗とリインフォースはそれだけ言って闘技場を後に。



 「うおぉぉぉ!!さっきのナギと言い、今のと言い意気の良い新人だぜ!!」

 「こりゃ賭けも盛り上がるよ!!」


 2人が去っても海上は大盛り上がりが終わらない。
 同じ日に意気の良い、それも相当な実力を持った新人のデビューともなれば当然の事。


 この新人の鮮烈なるデビューは遅かれ早かれ魔法世界に知れ渡るだろう。
 そうなれば、連絡のつかない面々にも自分達の事を伝える事が出来る。

 更に勝ち続ければファイトマネーも上がるし、相手が強ければその分腕も上がる。


 どうやら拳闘大会を利用した作戦は取り敢えずの成功と見て良いだろう。



 尚、この時トサカが裏で物凄く『面白くない顔』をしていたことを追記しておこう。















  To Be Continued… 


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