小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ネギとカゲタロウの戦闘を止めた稼津斗と謎の大男。
 ネギの拳を掴んでいる稼津斗は兎も角として、カゲタロウの本気の一撃を止めているこの男も相当な手練だろう。

 「カヅ…エックス?」

 「春が連絡をくれた。中々良い戦いだったが、少しばかり無茶が過ぎたな……だが、その成果は有ったか?」

 其れにネギは頷く。
 腕の痛みも腹の痛みも戦闘中は吹き飛んでいたが、其れが止められた事で一気に来たのだろう、顔に余裕が無い。


 「な!?貴様はまさか『紅き翼』の!」

 「あん?あんだそりゃ…知らねえなぁ?」

 「ほざくな!貴様は間違いなく『紅き翼』の『ジャック・ラカン』であろうが!」


 そして謎の大男のことをカゲタロウは知っているらしい。
 どうにもこの男――ジャック・ラカンは有名人のようだ。

 「だったら如何すんだ、あぁん?」

 「知れたこと!あの大戦での恨み、今此処で――」

 「其処までだ。」

 今度はラカンに向かって攻撃しようとするカゲタロウを稼津斗が止める。

 「貴様…!」

 「其処までだと言った。…悪いがコイツが気を失ったんでな…もう良いだろ?」

 「「え?」」

 見れば稼津斗の足元で…ネギが完全KO状態に成っていた。











 ネギま Story Of XX 66時間目
 『その男脳筋に付き…』










 「なんだ、腕が半分切れたくれぇで情けねぇ。」

 「…いや、腹の傷の方だと思うぞ?」

 そのネギを見ながらラカンとカゲタロウは何故か気絶理由を分析中。
 今から戦おうとしていた者の姿とは到底思えない。

 「あぁ、俺だ…あぁ。…良いから早く救護隊寄越せ。一番人気の拳闘士が長期欠場など洒落にならないだろう。
  あぁ……其れはナギ次第じゃないのか?……頼むぞ…じゃあな。」

 稼津斗は稼津斗で闘技場の方に連絡を入れて救護班を要請している――口調からして相手はトサカだろう。
 致命傷の傷ではないが手当てが早いに越した事はない。






 程なく救護班が到着し、ネギは闘技場の治療室へと即搬送。
 簡単な止血だけはしておいたので大事には至らないだろう。

 「…さて……ふぅ…この阿呆共!」


 ――スパーン!


 気でハリセンを作り、ラカンとカゲタロウの頭を一閃!
 ハリセン特有の小気味の良い乾いた音が響き渡る。

 「「へぶし!?」」

 「マッタク…もう少し穏便に事を進められないのか?」

 溜息と共に、少々『呆れ』を含んだ表情で2人を見やる。
 ラカンもカゲタロウも、行き成りハリセン喰らわされて『?』と言った状況だ。

 「…お前達『共犯(グル)』だろ?」

 「何を馬鹿な!私とk「いや〜っはっは!流石にばれちまったか!!」…オイ!!」

 突っ込みいれるとラカンはあっさり認めてしまった。
 カゲタロウはまさか認めると思わなかったのか少々焦り気味。(仮面のせいで分らないが。)

 「坊主はもういねーんだ。大体この兄ちゃんにゃばれて当然だろうよ……何時から気付いてた?」

 「アイツの傷を見た時にだ。
  腕の方はあわや切断と言うところだったが、切り口の骨、神経、筋肉その他組織がマッタク潰れていなかった。
  アレなら、切られた部分は完治すれば寧ろ今よりも組織の結合が強くなるくらいだ。
  腹の方も、貫通こそしていたが1分ほど意識を保っていたと言う事は、致命傷になる内臓へのダメージを避けたと言う事。
  もしも本当に殺すつもりで掛かってきたなら、此れはあまりにも甘すぎるしお前の介入のタイミングも良すぎる。
  全部を『偶然』で片付けるには余りにも出来すぎているだろう……違うか?」

 「ほう…」
 ――こりゃぁ予想以上だな…闘技場で本気出してないのは分ってたが…坊主以上の掘り出しモンか?


 的確な稼津斗の指摘にラカンも舌を巻く。
 此処まで状況を見ているとは、流石に驚きだろう。

 「ハッハッハ、見事だぜ!まさか坊主の傷の状態から察しちまうとはな。」

 「恐るべき観察眼よ…その若さで末恐ろしい。」

 誤魔化すのは無理と判断したのか、カゲタロウも今度は稼津斗の観察眼を賞賛する。
 矢張りこの襲撃は、ラカンとカゲタロウで仕組んだものだったようだ。

 「まぁ、アイツが何かを掴んだようだから良しとしておくさ……で、何を伝えれば良い?」

 「何処まで勘が鋭いんだテメェは?
  ったく…そうだな『目が覚めて傷が治ったら俺のところに来い。望むものが手に入るかもしれない』とだけ伝えてくれや。」

 「私からは『オスティアの大会で待っている』と…」

 「…分った。伝えておく。」

 必要な事を取り敢えずは全部聞いたのか、気を使い稼津斗は浮かび上がる。
 そのまま飛んで闘技場に戻る心算なのだろう。

 「それと、少なくとも街の被害はお前達の襲撃計画が原因だ。弁償代は自腹を切れよ?……じゃあまたな。」

 如何にストリートファイトと言えど、街の店や何やらを壊せば当然弁償する事になる。
 ネギが運び込まれた以上、これらの弁済は襲撃者であるカゲタロウが成さねければならない。

 其れを言った稼津斗の姿は既に無い。
 今頃は闘技場の治療室だろう。

 「…さぁ〜てと俺は帰るかな…」
 
 「待て…!お前の計画ゆえだ、弁済料の半分は払ってもらうぞ!」

 「あぁ?だ〜れがそんなことするか!大体テメェなら弁済額くらい速攻で貸せげんだろ?」

 「其れとこれとは話が別だ!」

 で、稼津斗が去った後では、トンでもない戦闘が行われていたらしかった。








 ――――――








 「…?」

 目を覚ましたネギの視界に飛び込んできたのは白い天井。
 見慣れあい景色に、此処が魔法世界なのだと認識する。

 治療の際の麻酔がまだ効いているのか少々頭が覚醒しきっていないらしい。

 「あ、ネギ君。」

 「目が覚めたか?」

 「亜子さん…カヅト…」

 その部屋の傍らにいたのは亜子と稼津斗。
 丁度、亜子が包帯を換えていた真っ最中だったようだ。

 「…あの2人からの伝言だ。
  カゲタロウは『オスティアの大会で待つ』、もう1人…ジャックの方は『傷が治ったら俺のところに来い、望むものが手に入るかもしれない』だそうだ。」

 目が覚めたネギに簡潔に其れだけを伝える。

 「…うん、分った。あの大きな人はやっぱり…」

 「あぁ、お前の親父さんのお仲間だろうな。京都の長殿の所で見た写真に写ってた。」

 ネギもラカンの事は大体分っていたようだ。
 まぁ、だからと言って即動けるかと言う事とは又別なのだが…


 「強くなるのもえぇけど、あんまし無茶はアカンよネギ君?ネギ君に何か有ったらエヴァちゃんが悲しむで?」

 「亜子さん…そう、ですね。」

 亜子の指摘に苦笑いを浮かべ、半分起こしかけた身体を大人しくベッドに。
 治療が上手く言ったとは言え、無理は禁物――今は休んでいた方が良い。

 「で、如何するんだネギ?ジャックの申し出は?」

 「…一度行って見ようかと思う――きっと行くことが無駄にはならないと思うから。」

 「ふ、お前ならそう言うと思った。…一応俺も付いて行く。その間の代理拳闘士は和美と超が勤めてくれるさ。」

 ネギならば行くと言うだろうと思い、既にその間のことも抜かりなし。
 和美と超が代理拳闘士としてリインフォースと小太郎と組んでくれることになっているようだ。(拳闘士試験は楽勝で合格だった。)

 其れを聞いたネギは一瞬驚くも、逆に安心した顔になる。
 和美も超も実力は超一流クラスだ。

 超は自分と同等クラス、和美は自分よりも上――ならば少なくともこのグラニコスの拳闘大会での敵は無いだろう。

 「うん、分った…」

 ただ一言、其れだけを言ったのを見ると信頼はしているのだろう。


 「はい、此れでお仕舞い。」

 「まだ麻酔が抜けきっていないだろう?…ゆっくり休んでいろ。」

 「うん…」

 包帯の交換が終わり、ネギは再び目を閉じ眠る。
 この分なら、2日もあれば傷も塞がり体力も回復するだろう。








 ――――――








 ――2日後


 ネギの傷は一応塞がり、動くには一切問題なし。
 この2日の間に千雨にはこってりとお説教を喰らったがそれはまぁ仕方ないだろう。


 勿論ネギが療養していた2日間にも、稼津斗&リインフォース組は連勝記録を伸ばしている。
 小太郎の方も、代理パートナーの超とのタッグでこれまた連勝記録が上昇中。
 この分なら1ヵ月後の大会参加権利の獲得は略確実だろう。



 更にこれは嬉しい誤算だが、あの生放送から4日でもう連絡が付いた仲間が居るのだ。
 あくまで此方への一方的な『電報』で返信の術はないが、無事は確認できたのは僥倖。

 しかもその相手は文末のイニシャルからアスナと刹那。
 この2人が一緒ならば、先ず危険な目に遭っても大事には至らないだろう。


 そして此れを機に、稼津斗達の計画もドンドン加速して行く。


 「おし、アーティファクトのリンクは問題ねー。」

 「うんうん、感度良好♪画像も鮮明だね〜。」

 その一環が、千雨と和美のアーティファクト連動による広域探索。
 この2人のアーティファクト連動は今までも可能だったが、生放送を見た仲間から何らかの連絡があるまでは使用していなかったのだ。

 だが、その連絡が有った。
 と言う事は少なくとも放送の効果は0ではない…それが発動に至ったのだ。

 更に千雨のアーティファクトと連動しておいた場合、一時的に和美のアーティファクトは千雨の制御下に入る。
 此れならば代理拳闘士として闘技場に出てもなんら問題なく広域探索が出来るのだ。


 其れともう一つ。
 本日からネギがラカンの元に向かう。
 付き添いには稼津斗と……何故か桜子。
 まぁ、桜子の場合は計画その他には一切無力なので付いてきたとて毒にも害にも成りはしないのだが…

 +もう1人、お目付け役として千雨が同行することになっている。
 此れは稼津斗が『居た方が良い様な気がするから』との事で、千雨も断る理由も無いので承諾。
 アーティファクトの広域探索は移動しながらでもできるので問題なしだ。


 「俺は実戦の方がレベルアップ早いねん。モタモタ修行してたら置き去りにするからな?
  せやけど、やる以上はとことんやって来いや。どうせやったら兄ちゃん以上の最強無敵の力でも手に入れたれや!」

 「カヅト以上…勿論目指すは其処だよ。…そっちは任せるよ!」

 「おう、行ってこいや!」

 親友兼ライバルからのエールを受けてラカンの元へ。
 街をある程度離れたら、其処からは稼津斗の瞬間移動でラカンの元に向かう算段になっている。
 此れならばあっという間に辿り着くことだろう。











 で、街を出ること数十分。
 大分距離が離れた事もあり、ネギは変身魔法を解除し久々にもとの10歳の姿に戻る。

 「やっぱりネギ君はこっちの方がシックリ来るね〜〜。大人バージョンはアレで格好いいけど♪」

 「僕もこっちの方がなんかしっくり来ますね。」

 矢張り長いこと大人の姿と言うのも中々に疲れるようだ。


 さて、その傍らでは稼津斗がラカンの『気』を探っている。
 場所が分らなくとも『気』を捕らえればその場に移動が出来るのだ。

 「……見つけた。意外に近いな…さて、準備は良いか?」

 「うん!大丈夫だよ。」

 「まぁ、私等が準備することは特にねーからな。」

 「そいじゃ宜しく〜〜♪」

 全員が稼津斗に触れ準備完了。

 「行くぞ。無影・月詠!」


 ――シュン!


 全員の姿が掻き消える。
 そして一瞬の後に、



 ――ヒュン!



 全く別の場所に出現。
 到着したのは遺跡のような場所。

 水と緑が豊富にあるこの場所は一種のオアシスといって良いだろう。


 その一画、浜辺の様になっている場所にお目当ての人物――ジャック・ラカンがいた。

 修行だろうか?
 上着を脱ぎ、静かに佇んでいる。

 その迫力はなかなかのものだ。


 「覇王!」

 其れが突然妙なポーズ!

 「炎熱…」

 更に流れるような動きでまるで演武のようだ。

 「轟竜!咆哮!」

 気合入りまくりの動きでポーズをとって行く。

 「爆裂閃光魔神斬空羅漢拳!!」


 ――ドッパァァン!!


 突き出した拳からの拳圧で波飛沫が立ち、天然シャワーが降り注ぐ。
 確かに可也の実力であるのは間違い無さそうだ。

 が!

 「ちぃぃ!技名が長すぎる!!此れじゃあとても俺様印の必殺技は名乗れねぇ!!
  大体ただの右ストレートってのも味気ねぇ!もっとなんかアンだろ目からビームとか全身から何か出るとか!!」

 行き成り悩み始めた。
 しかも言ってる内容が果て無く下らない。

 「全身から…?それだよ!!」

 しかも何か思いついたらしい。

 「いくぜぇぇ…エターナル!!」

 又しても妙なポーズをとり。

 「ネギフィーバー!!」


 全身から何か出た。
 その何かがはるか遠くの岩山にぶつかり…


 ――ドガァァン!!


 爆発!そして山は6割が消え去った――完全に自然破壊だ。


 「…アイツ人間だよな?」

 「見た目にはそうにしか見えんが…違うかもしれないな。全身から出すか普通…光線を?」

 しかしながら此れが逆にラカンの実力を表した結果となった。
 方法は兎も角、岩山1つ吹き飛ばすなど並ではない。


 「ラカンさん!」

 「おう来たか坊主!はっはっは正体はマジでガキだな!と、この前の兄ちゃんも一緒か、こりゃあ良い!」

 声をかければラカンは上機嫌。
 新たな技ができた事に満足なのだろう。

 「丁度良いところに来た!たった今お前様の必殺技が完成したところだぜ!」

 「いえ、その技はちょっと…て言うかラカンさんにしか出来ないですよ其れ…
  って、其れよりも!あの、僕に稽古をつけて下さい!時間は無いんですが強くなりたいんです!!」

 さっきの謎技を進めてくるラカンに一応の断りをいれ本題を切り出す。
 ラカンも本来の目的はそっちなので直ぐに真面目な顔になる。


 「ふむ…良い目だな。努力をおしまねぇ良い目だが…俺の修行はちときついぜ?」

 「構いません!どんな修行にも耐えて見せます!と言うか耐えられます!!」

 自分の修行はきついと言うも、ネギに迷いは無い。
 まぁ、エヴァンジェリンの元で地獄の特訓を続けてきたネギなら大抵の所業など苦にならないだろう。

 「ハッハッハ!素直だなオイ、アイツとは正反対か?タカミチの言ったとおりだぜ。
  おし、早速始めんぞ!先ずは2週間であの影使いに勝てるようにしてやる!」

 「あの、其れも良いんですがもっと強くなる事は…」

 「なにぃ?随分欲張ったな?わっはっは、いーぜいーぜ坊主!気に入った!男はそうじゃないとな!!」

 そのネギの姿勢に、ラカンはすっかりネギを気に入ったようだ。
 快く稽古をつけてくるれる事になった。


 「…大丈夫かあれ?」

 「大丈夫だろう?少なくとも実力は…マクダウェルクラスはあるだろうからな。マイナスにはならないさ。」

 「ネギ君パワーアップ計画発動〜〜。」

 千雨はラカンの少々悪そうな脳味噌に不安があるようだが、稼津斗に言わせれば『大丈夫』らしい。



 さて、この修行でネギは如何程のパワーアップが出来るのか……其れはまだ分らない事だ。















  To Be Continued… 


 

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