小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「おーし、坊主!先ずはお前の力を見せてもらうぜ?遠慮せずに俺の腹に打って来い!」

 「はい!」

 ネギがラカンに弟子入りした直後に、先ずはラカンがネギの力量を測るために、自身を的にしてネギの一撃を見る心算だ。


 ――小細工は通じない!なら…
 「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!」

 ネギも遠慮はしない。
 今の自分に出来る最強の一撃を放つべく、拳に乗せられるだけの『魔法の矢』を集約する。
 その数実に301本!

 連日のエヴァンジェリンとの修行で地力は相当に上がっているようだ。


 ――ほう…コイツは良い練りこみの矢だな。


 ラカンもその力量には驚き、心の中で賞賛する。


 「行きますよラカンさん!此れが今の僕の全力です!」

 言うが早いか、一足飛びでラカンに肉薄し…

 「雷華崩拳!!」

 必殺の一撃が炸裂した。











 ネギま Story Of XX 67時間目
 『裏技・バグ技・反則技』










 一切の加減なく放たれたネギの一撃。
 拳の威力のみならず、底から溢れ出した力がラカンを飲み込み、更に水面を引き裂き水柱を吹き上げ雨を降らせる。


 「ったく…大凡1人の人間から出る物理エネルギーとは思えねぇな…」

 「1発で岩をも砕く拳打300発分ともなれば当然だろうな。」

 「だよなぁ…つかあのおっさん大丈夫か!?ミンチになってんじゃねぇだろうな!?」

 余りの凄まじさに千雨も慌てる。
 稼津斗の的確な感想を聞いてはなおさらだ。

 だが…



 ――ドン…!



 水煙が落ち着いてくると、其処には微動だにしないラカンの姿が!


 「無傷!?す、凄いですラカンさん!」

 「……………」

 「…ラカンさん?」

 「うおぉぉぉ!めっちゃ痛ぇぇ!!やるじゃねぇか坊主!今のは可也効いたぜ!!」

 微動だにしなくともダメージはあったらしい。
 果たしてダメージを与えたネギが凄いのか、この一撃を喰らって微動だにしなかったラカンが凄かったのかは謎。
 だが、この一撃はラカンのお眼鏡にかなう一撃だったことは間違いさそうだ。








 ――――――








 「なにぃ!『アノ』エヴァンジェリンが師匠だとぉ!?」

 試験の一発が終わり、ネギは自分の師の事を話した。
 ラカンも意外なまでの師に驚きは隠せないらしい。

 だが、同時に何かに納得しとても楽しそうだ。


 「成程アイツがなぁ……道理で強い訳だぜ。おし、問題なく合格だ!」

 「は、ハイ!」

 その納得のせいかどうかは分らないが、ネギは『合格』。
 ラカンから戦い方を教わる事はできるようだ。

 「でだ…なんで強くなりたいんだ坊主?誰か倒したい奴でも居るのか?」

 「え?…!!!」

 そこでラカンからの問い。
 ソレは的確にネギの『強くなりたい理由』を言い当てていた。



 ――…タダの脳筋かと思ったら、洞察力と直感力も凄いな…武道家としては一流の本物か。



 此れには稼津斗も感心。
 如何に勘が鋭くとも、相手の目的・目標――其処にたるまでの理由までをも推測するのは難しいのだ。


 「何だ図星か?」

 「えと…」

 「なに、悪い事じゃねぇ。寧ろ目標はそう言う明確な方が良いってモンだ――誰だ、そいつはよ?」

 言い当てられてしまっては誤魔化す事はできない。
 本よりネギとて誤魔化す気は無い。

 「フェイト・アーウェルンクスと言う謎の少年です…ゲートポートを襲った…」

 「!?」

 その名を聞いた瞬間、ラカンの表情が変わった。
 なにやらその名に驚いているようだ。

 「アーウェルンクス…又随分と懐かしい名前だなそりゃ…」

 「…知り合いか?」

 「まぁ…大戦期にちとな。尤も俺の知ってる奴のガキの可能性のが高いが…」

 口調からして、大戦期に戦ったとかその辺だろう。
 尤もラカンと関係があった直接の本人では無いとは思われるが…

 「思い過ごしと偶然なら良いんだが、もしソイツが俺の知ってる奴の関係だとすると…ちと厄介だな。
  よし、取り敢えずの基準として表にしてやろう。」

 「表?」
 「なんの〜?」

 「平たく言や『強さ表』ってとこだ。数値化した方が色々分りやすいだろ?」

 で、何処から取り出したのか黒板を縦置きにしてなにやら書き込み始める。

 「気も魔力も使えないサクラコ嬢ちゃんを基準値の『1』とするとだ…
  旧世界の現用兵器がコンくらいだから、坊主は大体この辺、カゲタロウはこんなもんか?
  タカミチは此れくらいだろうけどあの野郎中々本気ださねぁからなぁ……
  序でにその兄ちゃんは本気は未知数だとしても、闘技場で見た限り最低コンくらいはアンだろ。」

 次々と黒板に色々書き込んで行く。
 一般人から魔法関係者、軍用兵器などなど……例えは兎も角書き込まれてる数字の基準は謎だが…

 「まぁ、こんなもんか?」

 出来上がった表によると…



 ・桜子:1
 ・一般魔法世界人:2
 ・旧世界人:3〜50
 ・魔法学校卒業生:100
 ・戦車:200
 ・高位魔法使い:300
 ・龍種:650
 ・ネギ:700
 ・カゲタロウ:950
 ・イージス艦:1500
 ・タカミチ:2000(本気か怪しい)
 ・リョウメンスクナ:8000
 ・稼津斗:10000(本気は未知数)



 との事。

 「頭悪そうな表だなオイ…」

 「だが、数値化すると分り易いのは分り易いな。」

 当然の如く突っ込む千雨だが、稼津斗の言うように数値化というのは以外に分り易い部分があるのは事実。
 数値の基準が謎であっても、目に見て分かると言うのは目標やら何やらを設定する際にはありがたいのだ。

 「ま、あくまで目安だ。大体の物理的力量差と思え。
  ソレにだ、勝負ってのは相性やその他の条件で色々変わるからこんな表にあんまし意味はねーんだがな。
  坊主だってやりようによってはイージス艦くらい沈められんだろ?」

 「無理だと思います―――」

 「いや、アレ魔法障壁無いから行けるって。」

 確かに今のネギなら魔法障壁がない現用兵器なら破壊できるかもしれない。
 …末恐ろしい10歳だ。

 「まぁ、相性その他が関係するとは言え力量差が大きくなれば勝ち目が薄くなるは道理。
  俺の主観と予想が多分に入るが、坊主の相手の少年は――大体この辺だな。」

 説明をしながらラカンが書き記したフェイトの実力――
 それはオーバー3000。
 印をつけた場所から大体3200と言うところだろう。

 「イージス艦2隻分!?つーか3200ってブルーアイズ以上かよ!!」

 「けどカヅッチは更にその3倍なんだよねぇ〜♪」

 「いや、稼津斗先生の本気は更に0が3つは付くぞ!?」

 衝撃の力である。
 尤も、反則チートの稼津斗のせいで霞むのだが……

 「4倍以上…これじゃあ修行しても…!」

 「まぁ、マトモにやってたんじゃ無理だ――が、マトモじゃない道、裏技・反則技なら方法は幾らでもある。」

 「ホントですか!」

 その力量差に唖然とするネギに、マトモじゃない道の可能性を言う。
 当然ソレには喰い付く。

 ラカンも喰らいついてきた事に満足そうだ。

 「以外だな坊主、お前は裏技・反則技は嫌いだと思ったんだがな?」

 「正攻法で駄目なら外法・邪法も又ありです。
  エヴァンジェリンさんとの修行でソレを嫌というほど思い知りましたから。」

 「ハッハッハ!そうだったな!お前さんの師匠はアイツだったな!!
  うむ…見たとこ相当アイツに苛められたな?此れなら行けるかも知れねぇな。」

 ニヤリと笑い、ネギを見やる。
 ラカンは脳筋でも人を見る目は有る。
 自らが体験したネギの一撃と、エヴァンジェリンによる鍛えられ方――それらを見て何かを確信したらしい。

 「坊主、お前はエヴァのお眼鏡に適ってるらしいぜ?既に器が出来上がってる。」

 「器…ですか?」

 「おうよ――恐らくは遠からず教える心算だったんだろうな。
  アイツ……エヴァンジェリン自身が編み出した禁呪――お前になら使いこなす事ができるはずだ…」

 如何やらトンでも無い裏技が有るようだ…








 ――――――








 場所は変わってグラニコスから遠く離れた『魔法学術都市・アリアドネー』


 此処に『蒼き翼』のメンバーの1人が滞在していた。
 そのメンバーとは…

 「あ、ユエー!」

 「あ…どうもですコレット。」

 ゆえ吉こと綾瀬夕映である。


 フェイト達の無差別転送を喰らった彼女はこの場に放り出され、今は此処で生活しているのだ。

 いるのだが、問題が…


 「何か思い出した?」

 「いえ…何も…」

 蒼い翼のバッジを見つめながら答える。


 そう、夕映は記憶喪失なのだ。


 何故か?
 此れは不幸なバットタイミングの連鎖としか言いようが無い。



 あの日、強制転送だれた夕映はこの場所に現れた。
 それだけならば良かったが、この日の夕映の運勢は最悪だったのか其処に1人の魔法学校生が箒で突っ込んできたのだ。

 その生徒こそ、今夕映と話している褐色肌の亜人少女――コレット・ファランドール。
 課題に夢中だった彼女は、突如目の前に現れた夕映を避ける事ができず激突!
 更に課題である『初期忘却呪文』が暴発し夕映を直撃!

 結果夕映は自分の名前と魔法関係者であったという事以外の全ての記憶が銀河の彼方にぶっ飛んでしまったのだ。


 で、自身の責任もあってコレットは夕映の面倒を見る事を買って出たのだ。
 まぁ、その時は魔法の暴発がばれるとヤバイとの事もあったのだが…


 だが時は不思議なもので、約3週間も経つと自然と友情が芽生えていた。
 夕映は記憶を取り戻そうと必死であり、また真剣に魔法学術を学んでいる。

 コレットも夕映のひたむきさに感動し、夕映の魔法訓練に協力している。
 実に皮肉なことだが、記憶をなくしたことで夕映は魔法世界で新たな絆を構築していたのだ。


 「でも本当に熱心だよねユエは…私も見習わなくちゃ。」

 「はぁ…どうにも私はそれほど優秀ではなかったようなので人並み以上に努力をしなくては…
  それに、コレットが目指す魔法騎士団に入るならば此れくらいの努力は苦にならないです。
  一杯修行して、出来うるならば『あの人』の様な立派な魔法使いになるですよ。」

 「…あの人?」

 「?…はて、ソレは誰でしたでしょうか?」

 どうやら消えずに中途半端に残っている記憶もあるようだ。
 そして夕映の言う『その人』が、今巷で話題の拳闘士だとはまだ知る良しも無い――








 ――――――








 「マクダウェルが編み出した禁呪か……なんとも凄そうだな?」

 「おうとも…闇の魔法(マギア・エレベア)ってやつだ。」

 場所は再びラカンの居城(仮)
 ラカンの言う『裏技・反則技』はエヴァンジェリンの編み出した『禁呪』と来た。
 稼津斗もそれには興味をそそられる。

 『アノ』エヴァンジェリンが編み出した技法ともくればトンでもないものであるのは想像に難くない。

 「コイツはな、アイツが必死こいてた時代に10年の歳月をかけて編み出した技法でな、その潜在力は咸卦法に匹敵する。
  が、闇の眷属の莫大な魔力を前提としている為に並の人間には扱えない――故に知る者も少ないって訳だ。」

 「なんか凄そうですね…」

 「興味でてきたか?お前なら扱えるぜ多分。」

 エヴァンジェリンの編み出した技法とくればネギは当然興味を引かれる。
 だが、その顔には何か迷いが見て取れる。


 「…リスクが気になるか?」

 「カヅト?」

 ソレに逸早く気付いた稼津斗は問う。
 この辺の洞察力は真凄い物があるだろう。

 「『アノ』マクダウェルをして『禁呪』と言わしめる技法――何らかのリスクは有ると見るが道理だろ?」

 「だな。大抵『闇の力』ってのは使用者にもリスクがあるからな。使うたびにHPが減るとか自分もダメージ受けるとかな。」

 同時に千雨もソレに同意する。
 ネットアイドル兼ネットゲーマーな千雨にとって闇属性のリスクもゲーム的に分っているのだ。

 「お?其処に気付くか――兄ちゃんは兎も角、チサメ嬢ちゃんも中々だな?――確かにコイツにはリスクがある。
  適性の無い人間が使えば命に関わる場合も有るからな…故に『禁呪』ってわけだ。」

 稼津斗と千雨が睨んだとおりリスクはあった。
 しかもソレは下手したら命に関わる――安い代償ではない。

 「…実演してみるか?」

 「「「「は?」」」」

 しかしながらラカンはとんでもない事を言ってくれた。
 実演するとはどういうことなのか…

 「リスクを言わねぇのはフェアじゃねからな…適性の無い人間が使うとどれくらいのダメージ受けるか見せてやろう!」

 「それってラカンさんが危ないんじゃないですか!?」

 「俺だから大丈夫じゃね?大体見てみない事には選びようも無いだろうしな。」

 どうにも『リスク』を実演するらしい。
 相当に自信が無ければできない芸当だ。


 「よく見とけ坊主――これがアイツの編み出した禁呪の力だ!」

 気を操り、ラカンは水面に立つ。
 ある程度進むと静かに構え、水面も静まり返る。

 だが、その静寂とは反対に、力がラカンに満ちる。


 「ピラ・クテ・ビグナル!」

 初心者用の始動キーを唱え、一気に魔力が高まる。

 「来たれ深遠の闇(アギナーテベヴェラ・アビュシイ)、燃え盛る大剣(エンシス・インケンデンス)!闇と影と憎悪と破壊(エト・インケンディウム・カリギニウ・ウンブラェ)、復讐の大焔(イニミーキティアエ・アエデーストルクティオーニス・ウルティーヌス)!
  我を焼け、彼を焼け(インケンダント・エト・メー・エト・エウム)、そはただ焼き尽くす者(シント・ソールム・インケンデンテース)――奈落の業火(インケンディウムゲヘナエ)!!」

 凄まじいまでの魔力がラカンの周りに逆巻く。
 此れが放たれたら相当な威力だろう。

 「術式固定(スタグネット)!」

 だが、ソレを放たず1つの強靭な魔力球となす。
 更に…

 「掌握(コンプレクシオー)!!」

 ソレを握りつぶす様にその身に取り込む。
 予想外の展開にネギも驚きだ。

 「此れは…」

 「あぁ、大会でお前が見せた『アレ』と同じだ……尤も出力は段違いだが。」

 何故ならばソレは麻帆良武道会で自分が浸かったものと同じ原理だったから。

 ソレは兎も角として、魔法を取り込んだら感からは凄まじいまでの力が発せられている。
 元々相当に強いラカンの力が倍増している様は正に圧巻だ。

 圧巻だが…

 「ぐ…流石にキツイな…まぁ俺は元々強いからこんな事する必要はねーんだが…」

 矢張りきつかったらしい。
 ラカンをしてキツイとはきっと相当なのだろう。

 「い、良いか?此れはこの技の一端に過ぎん…此れの本質は…ぐ…!」

 説明するも溢れ出した力がスパークし、誰の目にも危険域にしか思えない。

 「ぐ…イカン…如何に俺様でも無茶だった見たいだぜ…流石はエヴァの闇魔法…こいつは失敗だった…
  た…た………たわらば!!!!!」


 ――ドッパァァン!!


 どこぞの世紀末救世主な漫画の雑魚キャラの断末魔の如き叫びと共にラカン爆発!


 「ラカンさーーーん!?」

 「…成程、此れくらいの反射ダメージがあると…」

 「いや、アンタ冷静だなオイ…」

 「凄いね〜〜♪」


 驚くネギ、冷静な稼津斗、ソレに突っ込む千雨、能天気な桜子。
 反応は夫々だ。


 「うぅん…」


 ――ぷか〜〜〜…


 当のラカンはKO状態で水面に。


 「此れが本物の馬鹿か…もう突っ込み切れねぇ…」

 「だが、リスクについては良く分ったな。」


 エヴァンジェリンの編み出した禁術――闇の魔法。
 少なくとも適性の無い人間が使うとどうなるかだけは一同よ〜〜〜〜く理解できたようであった。















  To Be Continued… 


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