小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 稼津斗が賞金稼ぎ集団を鎧袖一触、完全撃滅し、のどかの仲間のトレジャーハンター一行も一緒にハルナの飛行艇に。
 見た目は巨大な金魚というみょうちくりん極まりない船だが、内部は快適そのもの。

 トイレにバス、シャワーが完備され、キッチンもバッチリ。
 ベッドが足りないが、其れを無視すれば『蒼き翼』の面子全員を収容できるだけの広さがある。

 「凄いねパル〜、こんな船買っちゃうなんて。」

 変態パイオ・ツゥに服を剥かれたのどかも、船内で新しい服に着替えている。

 「ふふふ、結構良いでしょ?殆ど手のついてない新古状態だからエンジンはバリバリ現役!
  序でに何処からか仕入れて装備された、対海賊用各種軍用兵装つきで中古価格15万ドラクマ!此れは安いっしょ!!」

 15万ドラクマは決して安い額ではないが、船一艘の値段としては価格破壊としか言いようが無い値段だ。
 其れを僅かな期間で手にしたハルナの努力と手腕は賞賛に値するだろう。


 「15万…って事は売って10万。亜子達の借金返済の足しになるかな〜〜?」

 「売るなよおい!私の血と汗の結晶を〜〜!!」

 尤も、和美にとっては其れも亜子達救出の糧の一端に出来るかどうかの方が重要だった。
 まぁ、本気ではないが即座に売値を考えてしまうあたり、生涯の友のことは大切なのだろう。(ハルナの突っ込みは当然だが。)


 「でだ、この店はジンとシェリーが美味い。こっちは最高級のラムとウォッカを取り揃えてあってつまみも美味い。」

 「迷うな。…少し値は張るがこっちの店にするか?」

 「だな、どうせなら最高の店で飲みたいからな。」

 で、稼津斗とクレイグが今夜の一杯の相談をしているのだった。
 取り合えず、現状は平和である。











 ネギま Story Of XX 74時間目
 『さぁ、祭の始まりだ!』











 稼津斗達がハルナの飛行艇で移動中、オスティアには別の船が入港しようとしていた。

 「おっと…見えたぜお嬢さんたち!あれがオスティアだ!!」

 「おぉ!マジで空に浮かんでる!!」

 「すご〜〜い、リアルラピュタだ!!」

 「話には聞いてましたが、実際に目にすると荘厳でおすなぁ…」

 『フライングマンタ』と呼ばれるタイプの飛行艇で入港したのは裕奈、まき絵、千草の3名。
 結局はあの街道から此処まで、ジョニーのお世話になったのだ。

 当初は場所だけ確認して、千草の式神使ってオスティア入りする予定だったのだが、『其れは目立ちすぎる』という事でジョニーの飛行艇で。
 飛行艇を使った分だけ数分の遅れは出たが、道中は大きな問題もなくオスティア到着。
 まぁ、野生の飛竜種が襲ってきたこともあったが、裕奈と千草の前では何も問題なかった。


 「祭の間は、俺も街に居るから何か困った事が有ったら声かけてくれや!」

 「ありがとジョニーさん♪」

 船を港に停泊させ、一行は此処でジョニーとは別れる。
 とは言っても、同じ街に居る故又会うこともあるだろう。


 「さて、着いたは良いけどドナイしましょか?この街に稼津斗はんや坊ちゃんが居る事は間違いないやろうけど…」

 「流石に広いよね〜〜。この中から稼津君達探すのは『九牛の一毛』ってやつ?」

 「来るだけ来て略ノープランだったね〜〜…」

 が、まき絵の言うように『取り合えず』オスティアには来たものの、稼津斗やネギ達が何処にいるかは一切不明!
 大会に参加している以上、闘技場に行けば会えるだろうがマダ拳闘大会は開催されていない。

 ぶっちゃけ八方塞である。


 「まぁ、この街に皆が集まるんは略確実でっしゃろ?やったら下手にごちゃごちゃ動く事はあらへん。
  先ずは長旅ですっかりペコペコになったお腹を膨らませましょか?」

 「「さんせ〜〜い!!」」

 それも、年長者の千草が居れば何のその。
 『変に動く必要は無い』と言い、取り合えず食事の提案。

 『祭』と言う事で食べ物の屋台も色々出ている。
 食事には困らないだろう。

 「ほな、先ずは名物の『ナギまん』と『飛竜の串焼き』から行きますかえ?」

 「「異論な〜〜し!!」」

 まぁ、この一行も大丈夫だろう。








 ――――――








 オスティアの郊外の一画、街の喧騒から離れたこの場所からは眼下の雲海を眺める事ができる。
 広い野原が広がり、流れる済んだ空気が美味しい。

 そんな場所に、稼津斗とネギそしてラカンは居た。

 「多分お前さん達のことだ、このオスティアの歴史も大体分ってんだろ?」

 「…はい…」

 「此処は、元々は王都であったこと、そして20年前の大戦で王都は落ち、今のオスティアは新たに建設されたと言う事くらいはな…」

 堅い話ではないが、気軽な話でもない。
 雲海を眺めるラカンの目には、彼らしく無い過去の思いと言うか、そう言ったものへの感情が浮かんでいる。
 恐らくは久しぶりに此処に来て昔を思い出した……そんなところだろう。

 「まぁ、その通りだ……しかもそいつをやったのは、否『やらされた』のは黄昏の姫巫女…アノ姫子ちゃんだ。」

 「アスナ…」
 「アスナさんが…!」

 「俺達…つーかナギの馬鹿ヤローは、私欲の為に戦争おっぱじめやがった阿呆共を暴き出し
  世界を2つに分けて争ってた連中を纏め上げ、諸悪の根源ぶっ潰して世界の破滅を食い止めた…が――――
  1つの国と1人のか弱い女の子を護ってやる事は出来なかった……ったく『英雄』が聞いて呆れるぜ。」

 懺悔…と言う訳ではない。
 きっと只の独白、ずっと思っていたことなのだろう。

 だから稼津斗とネギも何も言わずに聞いている。

 「ったく、久々に会ってみりゃ、グッと良い女になってやがった……
  ……俺達がやるべき事は世界を救うなんて大層な事じゃなくて、国1つ、女の子1人護ってやる事だったんだろうな。
  だからよ……坊主、兄ちゃん今度はお前らが護ってやってくれねぇか――あの姫子ちゃんをよ…」

 「ジャック…」
 「ラカンさん…」

 「…あ〜…違ったな、姫子ちゃんだけじゃなくて、大事な『皆』をだったな…」

 振り向き、笑顔で言う。
 何時もの自信に満ちた『俺様』な笑いではない。
 心の底からの、一切の嫌味のない笑みだ。


 「言われるまでもないさジャック。護って見せる…絶対にな。」

 「勿論ですよ、ラカンさん!」

 稼津斗とネギも迷わず其れに応える。



 この間も仲間達は、行方不明者の捜索などを行っている。
 裕奈達以外の行方不明者だってオスティア入りしているかもしれない。

 止まってなどは居られないのが現実。
 此処に来るまでに出来る事はやった、後は進むのみなのだ。

 このオスティアで不明者全員と落ち合えればそれで良し。
 もし無理でも、大会で名を上げれば今以上に情報を掴むのが楽になるかもしれない。


 事が動くであろう大会は、ついに明日だ…








 ――――――








 ――翌日



 オスティアは街全体がお祭り騒ぎ!
 祭の最大の目玉である拳闘大会が本日より開催され、凄まじい熱気に満ちている。


 「アリアドネー戦乙女騎士団、捧げ刀!!」

 此れだけの賑わいともなると当然警備も本格化。
 夕映達が所属するアリアドネーの騎士団が其の代表格だろう。

 加えて空には帝国と、首都・メガロメセンブリアの艦隊旗艦が。
 更にメガロ側の船からは…


 ――ドゴォォン!!


 「鬼神兵!?」
 「デカ!!」

 巨大な鬼神兵が地上に降り立ち、帝国側の船には…

 『グルルルルル…』

 「ヴリクショ・ナーガシャ!!」
 「すっげーーー!!」

 帝国守護聖獣が一体『古龍ヴリクショ・ナーガシャ』の姿が!!


 どちらも滅多にお目にかかれるものではない。
 それだけこの祭が盛大かつ、政治的にも大きな意味合いを持っているのだろう。


 其の盛大さの中、街の中心の神殿というか城の様な広場ではお偉いさんが祭を祝しての握手を交わしている。


 『20年の平和を祝して、両国の代表が固い握手を交わします。
  ヘラス王国の皇族がオスティア祭を訪れるのは実に10年ぶりであり…』

 マスコミも中々盛大に報道をしているようだ。

 「うひゃぁ〜〜何か凄いね〜〜!!」

 「だね。つーかアレって魔帆良祭に出てきた兵鬼じゃね?」

 「まぁ、同系統の兵鬼おすな。」

 裕奈、まき絵、千草の3人もこのセレモニーを高台から眺めていた。

 「まぁ、凄いけど偉い人の事は良く分らないよね〜〜。」

 「え〜とね、あの右のヒゲダンディがメガロメセンブリアの元老院議員で首席外交官。
  左の色黒美女がヘラス帝国の第三皇女で、このお祭の特別親善大使なんだって。」

 「「!!?」」

 ふとした裕奈の一言に、実にすらすらとまき絵が答える。
 此れには裕奈と千草も驚きだ。

 「因みにメガロメセンブリアは北側の盟主ね。
  で、北側は所謂普通の人っぽいのが多くて、南側は悪魔っ子とか獣耳とかの亜人が多いんだって。
  これは、南側の人達が元もとのこの世界の人達で、北側が私達と同じ世界から移住してきた人たちだからなんだって。
  で、北と南は仲悪かったんだけど、20年前の戦争の時にネギ君のお父さんが仲直りさせちゃったんだって♪」

 そんな2人を尻目に、仕事中の客の雑談から得た知識を見事に披露。
 完璧に覚えていたらしい。

 「巫女さん…」

 「体温は平常どすなぁ…」

 で、裕奈と千草に額を触れられるのはお約束。
 麻帆良での筋金入りの御馬鹿っぷりを知るものなら誰でもそうするだろう。

 「失礼だな〜2人とも!馬鹿で悪かったね!!」

 自覚はあったらしい。

 「そんな事より拳闘大会!」

 「そうだった!試合始まっちゃう!!」

 尤も、そんな事より優先すべきは拳闘大会!
 予約チケットを送ってもらったとは言え、出来るだけ早く会場入りするにこしたことはない。

 行列の脇を抜け、予約客専用のゲートに。
 これならば、大丈夫だろう。








 ――――――








 其の拳闘大会にて…


 ――ドゴシャァァァァ!!!


 話題沸騰の新人コンビ、ナギ&コジローペアは至極楽勝で初戦突破。


 『話題のナギ・コジローコンビ優勝候補の一角に圧勝ーーー!!!
  実力を疑問視する批評家の意見を跳ね返したカタチだ、此れは本物かーーーー!?』


 相手は優勝候補だったらしいが、今のネギと小太郎の敵ではない。
 全く危な気なく完全勝利だ。



 更に、

 「裂!!」
 「覇ぁぁ!!」

 同様に話題のルーキーコンビのダブルエックス&ルインペアもナギコジコンビの秒殺を上回る瞬殺で初戦突破。
 まぁ、この2人を止められる相手など先ず居ないだろう。


 『なんと言う強さ!!前回チャンピオンがまさかの初戦敗退!しかも瞬殺!!
  ダブルエックスとルイン、この2人は本当にルーキーか〜!何故これ程の達人が今まで出てこなかったのか〜〜!!』


 因みに倒したのは前回大会の優勝者であったから完成と驚きも凄い。
 ダブルエックス・ルイン組と、ナギ・コジロー組が今大会のダークホースとして注目を浴びるのは間違いないだろう。





 「いやはや、しかし相変わらずの馬鹿強さどすなぁ稼津斗…もといダブルエックスはんは。」

 「ナギ君も凄く強くなってたしね〜〜。」

 「皆凄いね〜〜♪」

 其の会場の食堂にて裕奈達は食事中。
 話題は当然試合の事、危なげなく勝った事には安心で、その強さには改めて納得と驚きだ。
 なお、名前はちゃんと偽名の方で呼んでいる。

 「でもさ、問題はどうやってコンタクトとるかだよ?エックス君達大人気だから近づくのも難しいし、控え室に押しかけるのもアレだしね?
  私はエックス君やルインとは念話で何とかなるけど、あんまし其れ使うのも如何かと思うしね〜〜。」

 「ウチの式神はもっと問題おすしな。」

 で、問題はどうやって連絡とるか。
 あの大人気では早々近づく事もできないだろう。

 頭付き合わせてもいい案は出そうに無い。

 「失礼します、水のお代わりは…?」

 「え?」

 そんな中で、水のお代わりを持ってきたウェイトレス。
 其の声に反応して振り返った裕奈が見たのは…

 「あ…」

 「「亜子!!」」
 「あらまぁ…」

 亜子だった。
 全くの偶然だが、再会できたのだ。

 「裕奈…まき絵…!」

 其の再会に感極まったのだろう、亜子はポロポロ泣き出してしまう。
 だが、其れも仕方ない事だ。
 ずっと心配していた親友と再会できたのだから。


 「裕奈とまき絵が!?千草さんも一緒に!?」

 「あぁ、間違い無さそうだよ?」

 その事はクマ奴隷長からアキラの耳にも入る。


 すぐさまフロアに向かうと、

 「ホンマ…ホンマに無事でよかった!!心配して…たんやで!!まき絵、裕奈〜〜!!」

 亜子が2人に抱きついて泣いている。
 でも其れは嬉し涙だ。
 千草も『良かった』という笑顔で其れを見守っている。

 「あ…」

 「アキラ!!」

 そして、裕奈がアキラにも気付く。
 運動部4人組、此れにて再会だ。

 「…良かった、また会えて…」

 アキラが3人をそっと包み込み、裕奈はそれに『ニッ』と笑い、亜子は再び涙を瞳に溜め、まき絵も涙を浮かべて笑顔。

 「ふぇぇ…ご、ゴメン、何かウチだけ涙点止まらなく…」

 「いいよ、いいよ!泣きな、泣きな、そんで笑え!」

 フロアはしばし、この感動の再会劇で持ちきりであった。








 ――――――








 「先ずは初戦突破だな。」

 「うん、取り敢えずね。」

 会場から離れた広場では、稼津斗とネギが試合後の小休止。
 アレだけの鮮烈な試合をした2人には当然俄ファンやら取材陣やらが殺到したが、何とか撒いて此処に来たのだ。

 コンディションは上々。
 稼津斗は龍直伝の暗殺術が、ネギは闇の魔法が夫々精度を増している。

 この分ならどちらかが優勝賞金を手にする事は間違いないだろう。


 「マダ始まったばかりだが滑り出しは順調だ。だが――」

 「うん、油断しないで。『勝って兜の緒を締めよ』だね。」

 「分ってるなら良し。」

 順調であっても油断はしない。
 順調な時こそ気を引き締めて事に当たるべしの鉄則を、稼津斗は勿論ネギも確り理解しているようだ。

 「其れに、この祭が無事に終わるとは如何にも思えないんでな…」

 「奇遇だね、其れは僕も思って…」



 ――ザワ…



 「「!!!!」」

 祭が何事も無く終わるとは思えないと言った矢先に嫌な気配がした。


 「カヅト…!」

 「あぁ、この気配は間違いない。」

 其れはとても良く知る気配。


 いや、知っているレベルではない。
 忘れ様の無い独特の気配――人でありながら人ではない気配。

 「…2人、だな。」

 「うん…」

 其の気配の先を睨み付けると……居た。

 向こうも気付いているのか、其れとも見つけて態々気配を叩きつけてきたのか、こちらを見ている。


 詰襟のような服を着た白髪の少年と少女の2人組。
 稼津斗達がこんな状況に陥った根本原因。








 フェイト・アーウェルンクスとセクスドゥム・アーウェルンクス。







 目下最大の障害が、祭の喧騒の中に佇んでいた…
















  To Be Continued… 


 

-74-
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