小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――オスティアの西50km地点


 「くそ…魔法の矢の雨あられか…大丈夫か嬢ちゃん!?」

 「私は大丈夫ですけど……」

 のどかはトレジャーハンターの仲間と共に絶賛大ピンチである。
 物陰に隠れ、のどかの張る防御魔法で降り注ぐ『魔法の矢』を防いでいるが、防戦一方。


 相手は賞金稼ぎ集団『黒い猟犬(カニス・ニゲル)』。
 冷酷非情で有名な一団であり、其の実力も相当なもの。
 しかも強力な魔法を使うだけではなく、魔獣をも従えた一団だ。

 トレジャーハンターも言うなれば裏家業。
 一部では『遺跡を荒らす犯罪者』とも見られている。
 其れを狙っての賞金稼ぎ集団登場だろう。

 勿論のどかが倒せない相手ではない。
 それこそXXに変身すれば上級魔法1発で終わらせる事が出来る。

 では何故そうしないのか?

 「ちぃ…アイシャ…」

 「リンさん…」

 「人質とられてるってのは、流石にキツいね…」

 理由は簡単、中であるアイシャとリンが賞金稼ぎの人質になってしまったのだ。











 ネギま Story Of XX 73時間目
 『最強とは此れの事だ』











 人質となった2人の力が低いかと言われれば其れは否。
 アイシャとリンの実力は中の上クラスはある。

 要するに単純に相手の方が強かったのだ。
 距離を離して、賞金稼ぎ集団を観察していたところを魔獣に捕らわれた…そう言う事だ。

 「ノドカちゃんの魔法で何とかできないかな〜…前に遺跡で出た魔獣を退治したみたいな凄いので…」

 「ふえぇ、ダメです!アイシャさんとリンさんも巻き込んじゃいますよぉ!!」

 更に攻撃できない理由にのどかの魔法と技があった。
 のどかの最強攻撃である『宇宙魔法』は威力及び攻撃範囲共に撃強の最強魔法だ。
 だが、其の攻撃範囲の広さゆえにピンポイント攻撃できないという弱点がある。

 アーティファクトで覚えた攻撃でものどかが得意とするのは高威力広範囲の攻撃。
 一見チートとも思える力を持つのどかだが、攻撃に関しては狭い範囲をピンポイントで狙うのは苦手だった。

 一応ピンポイント攻撃ができないわけでも無いが、威力は著しく低いのだ。
 それこそ、この賞金稼ぎ集団を一撃では倒せ無いくらいに。

 故に仲間が人質状態では攻撃出来ないのだ。


 ――アイシャさん達は防御出来る状態じゃないから広域攻撃はダメ…どうしたら…


 状況を打開できるだけの力を持ちながらも、其れが出来ないのは何とも歯痒い。
 だが、それでも必死に頭を回転して状況打開を考える。



 そんなのどかの必死さが伝わったのだろうか?
 状況打開になるかも知れない一手を打ち出したのは、一行のリーダー格であるクレイグだった。

 「……嬢ちゃん、『魔法の矢』は使えるか?」

 「へ?使えますけど…」

 「最大で何本いける?」

 「え〜〜〜と…10001本です。」

 何故今『魔法の矢の展開数』を聞かれたのかは判らない。
 判らないが、聞かれた事を状況が状況なので簡潔に答える。

 だが、クレイグには其れで充分だった。

 「よし……其の限界数をあいつ等の頭上から撃ち込むんだ。」

 「えぇ!?」

 打ち出したのはトンでもない策で、のどかも当然驚く。
 『魔法の矢』そのものは攻撃魔法では極めて応用が利く代わりに基本威力が低い。
 だが、如何に威力が低いとは言え仲間が居るところに撃ち込むのは矢張り躊躇われる。

 「良いか嬢ちゃん、今俺達が防戦一方なのはアイシャとリンが人質にとられてるからで、あの2人が今の俺達の最大の弱点だ。
  あいつ等にとっての有利な盾、俺達にとっての弱点――其の双方からあの2人を引き剥がす!」

 「成程、考えたねクレイグ!」

 「でも…アイシャさん達は…」

 クリスものどかもクレイグの考えは理解した。
 それでものどかは、元来の優しさからアイシャとリンの事を心配してしまう…まぁ、この辺は仕方ないことだが。

 「俺達はトレジャーハンターだぜ?危険の1つや2つ慣れっこだし、そういう目に遭う覚悟だってしてる。
  安心しな、アイシャもリンも嬢ちゃんを責めたりしねぇさ――寧ろ、状況突破できたら褒めるくらいだ。」

 其れを察してクレイグものどかの背を押す形で言葉をかける。
 『危険な目に遭う覚悟はしている、遠慮なくやれ』と…

 「判りました…この状況を切り抜けるために手加減無しの全力で行きます!」

 「いい返事だ。クリス、嬢ちゃんが撃ったら…」

 「みなまで言うなっての。着弾と同時に特攻、アイシャとリンを救出して離脱、あとはノドカちゃんの必殺魔法でジ・エンド!」

 正に阿吽の呼吸。
 細かく言わずともすべきことは判っている。

 ならば、突き通すまでだ。


 「「「………」」」

 物陰に隠れ機会を伺う。
 この魔法の矢の雨も無限ではない。
 必ず次弾発射の隙が来るはず……其処が狙い。



 そして…不意に魔法の矢が止んだ。
 時間にして僅かに数秒だが、此れが絶好の好機だ。

 「魔法の矢…氷結の10001矢!!」

 其れを逃さずにのどかが10000本の矢を賞金稼ぎ集団に発射!
 仮に迎撃の魔法の矢を相手が放っても、のどかが放った数は相手が使える魔法の矢の10倍!
 全部の迎撃は不可能だ。


 「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

 そして1発目が着弾すると同時に、クレイヴとクリスが魔法の矢をかいくぐる様に特攻。
 狙いはアイシャとリンを捕らえている魔獣のみ!
 例え倒せなくても2人を救出できればそれで良い。
 だから一目散に向かうが…

 「狙いは良いけど残念だったね…」

 「「!!」」

 山羊の骸骨のような姿の魔族が行く手をさえぎり、其の長大な腕で2人を掴み首を絞める。

 「「が…」」

 見事なまでの頚動脈〆に一撃で落ちた。
 魔族の強固な身体に物を言わせた特効阻止だ。


 更に…

 「こんなとこにも居やがったか…」

 「!!」

 のどかの前にもスキンヘッドの男が。
 恐らくはリーダー格だろう。

 「大人しくしろ…」

 「お断りです!!」

 捕らえようと伸びてきた男の腕を弾き、のどかは距離をとる。
 更にアーティファクトを起動し、敵の素性を暴いて行く。


 「む…この小娘…ふふ、ついているな。ゲートポート襲撃の映像に一瞬映っていたな…ならば賞金首の関係者か?」

 「…だったら如何だって言うんですか?『チコ☆タン』さん!」

 「ぶふっ!!貴様何故其の名を!!」

 暴いた名前は恥ずかしかった。
 其れよりも重要なのは、映像に映りこんでいた為にネギ達賞金首の関係者と思われたことだ。(実際関係者だが)
 そうなると、賞金稼ぎの彼等にとってはのどかはネギ達を誘き寄せる良い餌になる。






 普通ならば。

 「残念ですが…私はそう簡単にはやられません!!」


 ――シュン!…ゴスゥ!!


 「ぐぼぁ!?」

 のどかは普通ではないのだ。
 一瞬で懐に入り込み、魔力付与の掌打を叩き込む……XXに変身した状態で。
 幾ら格闘戦が不得手とは言え、50倍に強化された一撃は相当だろう。
 実際可也聞いている様子。

 魔法の矢の雨あられが止んだ今、近づいてきてくれたのは逆に好都合。
 相手の間合いに入れるのなら、各個撃破していくほうが早い。

 勿論相手も馬鹿ではない。
 すぐさま残りのメンバーがのどかを攻撃するが全てかわされる。

 読心術士であるのどかには全ての攻撃が何処から来るかわかるのだ。
 なので避ける事など造作も無い。

 無いのだが…


 ――ギュル…


 「!!これは…!」

 心を読めない魔獣はそうも行かない。
 地下に潜っていた魔獣の触手に捕らえられてしまった。
 勿論この程度は何とかできる…

 「この小娘…動かないほうが良いよ?動いたら仲間の命は無いね。」

 だが、魔獣使いの賞金稼ぎが、クレイグ、クリス、アイシャ、リンを別の魔獣の触手で拘束し、夫々に鋭く尖った魔獣の触手の先端を突きつけている。

 仲間の命が掛かってはのどかも抵抗は出来ない。
 歯噛みして悔しがるが、どうしようもないのだ。

 「この小娘が…何を持っているかわからん…調べろ!」

 「了解ね。」

 チコ☆タンの命を受けた魔獣使いがのどかに近づき……


 ――ビリィィィィィィ!!


 「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 思い切り其の服を破いた。


 最悪である。
 最愛の人にすら曝した事が無い裸体なのに、其れを曝されるとはトンでもない羞恥。
 更に、最悪なのはアーティファクトで読み取った思考が…


 ――むほ…むほほ…形良し、張り良し、素晴らしいおっぱいね♪


 完全に変態だった!!!
 と言うか、身体検査の名目でよからんことする気満々だ。

 「むほほほ、では調べさせて貰うね♪」

 変態の手がのどかに伸び、残った布部分を剥ぎとろうと、


 ――メキィィィィィ!!!


 する前にぶっ飛んだ。

 「!?」

 何事か?……答えは簡単だった。

 「あ…」

 のどかの目の前の人物。
 全身を黒で固めた出で立ち。
 其の背に施された真紅の『武』一文字。
 煌く銀髪に、其の身に纏った蒼い稲妻。


 「か、稼津斗さん!!」

 「悪い、少し遅れた。」

 稼津斗到着だ。
 到着するや否や、のどかに不埒を働こうとした変態をぶっ飛ばしたのだ。

 「つーことでのどかを放しな!」

 「此方の御仁達も放して貰うでござるよ。」

 「大人しく住処に返れ、魔獣達よ…」

 更に和美がのどかを、楓とリインフォースがトレジャーハンター4人を解放する。


 「な…貴様等何者だ!!」

 「名乗る義理など無い……それ以前に俺ののどかに手を出してあまつさえ不埒を働こうとしたんだ…覚悟できてるよな?」


 ――轟!!


 更なる気が稼津斗から溢れ出し、稲妻が銀色を帯び、銀髪が逆立つ。
 XX2ndに変身したのだ。

 「和美、楓、リインフォースはのどかの仲間を護ってくれ。」

 「あいよ!」
 「了解だ。」
 「あいあい、御意に!」

 「のどかは彼等の回復…出来るな?」

 「はい!」

 「良い返事だ…と、此れを着ておけ。女の子がそんな格好してちゃいけない。」

 服を破かれたのどかに、自分の上着を脱いで渡す。
 見事な気遣いである。

 「あ、ありがとうございます///」

 其れを受け取ったのどかの顔は紅い。
 大好きな人の温もりが残る服を纏えば当然だろう。


 其れは兎も角、稼津斗の登場で状況が一変した。
 賞金稼ぎ連中は人質を失い、其れを盾に戦うことが出来ない。
 反対にのどかは世界最強の援軍を得ての形勢逆転。

 更に自分の大切なパートナーに手を出された稼津斗は相当に怒っている。
 先の指示も『俺1人でやる』の意思表示だ。


 「さて…お祈りは済んだか?…消えろ!!」

 「「「「!!?」」」」


 消えた。
 そう思っただろう。
 だが其れも一瞬の事で、次の瞬間には賞金稼ぎ集団全員がブッ飛ばされていた。

 目にも映らない超高速攻撃。
 此れに対処できるのはXX状態のリインフォースくらいのものだろう。

 「…折角だから実戦で使ってみるか…」

 言うが早いか、トカゲ人間のような亜人に肉薄し、人差し指で側頭部を一閃。
 一見すると何をしたのか全くわからない。

 「が!?…な、何だ此れは立ってられねぇ…!」

 喰らった側はその場で膝から崩れ落ちる。

 「ピンポイントでお前の頭に気を叩き込み平衡感覚を司る三半規管を直に攻撃した。
  威力を抑えたから死にはしないが、最低でも10分はまともに動けない筈だ……沈め!」

 其の相手を容赦なく踏み抜き意識を刈り取り先ずは1人目。

 更に踏み抜いたと同時に高速移動で今度はチコ☆タンに接近。
 虚を疲れて動けない相手に対して今度は連続の貫手攻撃!

 「ごがっ!!」

 「人体正中線に気を叩き込んだ……お前も終わりだ。」

 鳩尾に掌打を叩き込んでKO。
 此れで2人目。


 ――な、なんなんだあの人!?僕達が各個撃破されるなんて…!


 魔族の青年は大慌て。
 有利に事を進めていたはずなのに、たった1人が戦闘介入した事で状況が変わってしまった。
 おまけに、今まで人質にしていた者は、其の男の仲間が助け出し手出しをさせまいと護っている。
 完全に形勢逆転状態。

 今度は自分達の方が不利かもしれないのだ。


 「戦闘中に考え事とは随分余裕だな?」

 「!!」

 思考の海に浸っていた彼を呼び戻したのも稼津斗の声。
 気がつけば間合いに入り込まれていた。

 「く…!!」

 「無駄だ。」

 慌てて6本の腕で襲い掛かるが通じはしない。
 簡単にかわされ、逆に逆立ち状態からの蹴りを見舞われる。

 しかも其の一発のみならず連続で。
 更に止めに両足を首にかけそのまま投げて地面に叩きつける……此れで3人。


 そして残る1人は一番許しがたい変態。

 「むぉぉぉ邪魔してからにぃ…あの至高のおっぱいは私のものね!!」

 相変わらずの変態思考をぶちまけながら魔獣をけしかける。
 今までとは違う更に強力な魔獣。


 「小賢しい…覇王…翔哮拳!!」

 勿論そんなものは稼津斗の前では塵芥同然。
 極大気功波で一・撃・粉!砕!!

 「なんと!?」

 「この変態が…消えろ!!」

 次いで、超高速で稼津斗が変態の脇をすり抜ける。
 そして…


 ――ガガガガガガガガ!!!


 「むほぉぉぉ!?」

 凄まじい打撃音と共に変態殲滅。

 「龍流暗殺拳奥義『瞬滅殺』…貴様程度には勿体無い技だが、ありがたく喰らっておけ。」

 精神世界で身につけた奥義が炸裂。
 此れで4人全員を無力化――この間僅かに1分半、見事である。
 更には気功波以外は全て龍より受け継いだ暗殺拳。
 確りと自分のものにしているようだ。


 「いや、ハハハ強いねお兄さん…」

 そんな中で話しかけてきたのは魔族の青年。
 どうやら意識はまだ持って居たようだ。

 「タフだな…流石は魔族といったところか?」

 「あはは、まぁね。とは言っても暫く動けそうには無いけどね。全く君1人に此処までとはね…負けだよ、完敗だ。」

 で、呆気なく敗北を受け入れた。
 賞金稼ぎとは言え、命あってのこと。
 勝つ見込みが無い場合には、撤退することも大事なのだ。

 「一応手加減はしたから30分もあれば目を覚ますが…治療するか?」

 「いや、其処までしてもらう義理は無いよ。君の怒りからして僕達が生きてるほうが奇跡だと思うからねぇ…」

 「…無用な殺しはしたくないだけだ…俺はのどかを助けられればそれで良い。」

 「成程…いや、勝てないわけだね僕達じゃ。」

 魔族の青年は完全に『負けた』と感じていた。









 其の一方でのどかはと言うと…

 「あいつが嬢ちゃんの騎士様かい?」

 「すっごいイケメンね。そうかーあれがノドカの…」

 目を覚ましたクレイグ達に少々弄られていた。
 尤も、だからと言って慌てるのどかではないが。

 「はい、世界最強で最高の人です♪」

 眩い笑顔で言い切る。
 此れを見たら何も言えないだろう。

 「参ったねこりゃ……と、アンタ等にも礼を言っておくぜ、マジ助かった。それにしてもあの兄ちゃん異常に強いな…」

 「正直敵じゃなくて良かったよ。」

 で、話題は稼津斗に。
 自分達が手も足も出なかった相手を2分と経たずに全滅させたとなれば気になるも道理だろう。

 「まぁ稼津兄は…「おぉ〜〜い!のどか無事〜〜!!?」…は?」

 和美が答えようとした矢先に別の声。
 しかも其の声は見知った者の声だ。

 「ハルナ!!」

 「やっほ〜〜!オスティア着いてネギ君たちに合流したんだけどさ、のどかがピンチだって言うじゃん?
  マイシップで助けに来たんだけど、若しかして稼津斗先生が終わらせちった?」

 其の正体はハルナ。
 みょうちくりんな飛行艇での御登場!
 しかも其のデッキには古菲、そしてネギとアスナ達の姿も。

 ハルナはハルナで、親友の窮地を聞いて駆けつけたのだ。
 何だかんだで彼女も友情には厚い。




 ともあれ、偶然にものどかの窮地が仲間を終結させる結果となったらしい。


 「賑やかになってきたな…」

 「稼津斗さん…」

 稼津斗もこちらに戻り、仲間と合流。

 「彼方達がのどかを此処まで連れてきてくれたのか?…礼を言う。」

 「いや、礼を言うのは俺らの方だ。助かったぜ兄ちゃん。クレイグ・コールドウィルだ、宜しくな。」

 「氷薙稼津斗……ダブルエックスって名で拳闘士をやっている。宜しくな。」

 そして、トレジャーハンターのメンバーとも挨拶を交わす。
 どうやら稼津斗とクレイグは気が合いそうだ。

 「仲間の窮地に駆けつけるは当然だろう?……時にクレイグ、お前酒は好きか?」

 「勿論好きだが、其れがどうかしたか?」

 「オスティアに良い店があるんだが、今夜如何だ?知り合った記念と言う事で…」

 「良いね、その提案可決だ。」

 本当に気が合いそうだ。







 因みに…


 「うぅ…おっぱいが、至高のおっぱいが…無念…」ガクリ

 「しつこいねぇ君も…諦めなよパイオ・ツゥ…」

 変態は名前も中々に最悪であった。
















  To Be Continued… 


-73-
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