第1章『百代編・一子編』
プロローグ‐クェイサーside‐
アトス総本山本部。
天井から降り注ぐ、眩しく神々しい光が巨大な聖堂内を包んでいた。
聖堂の奥には大きな教壇。その教壇の前に立つ右目に眼帯を着けた男、ユーリ=野田がいる。
そしてユーリの前には銀髪の少年、致命者サーシャ。
隣にはサーシャのパートナー“剣の生神女(マリア)”織部まふゆ。
赤銅の人形遣い、エカテリーナ=クラエと、パートナー“雷の携香女(マグダラ)”桂木華。
彼らはこのアトスの総本部に招集をかけられていた。
「今日お集まり頂いた理由は他でもありません」
ユーリの声が聖堂内に響く。
「任務だな」
サーシャの問いに、ユーリはええと頷いた。
「川神市に詳細不明の元素回路が流出し、被害が出ているとの情報が入りました」
元素回路(エレメンタル・サーキット)。
元素番号0の「賢者の石」を使って編み出され、身に着ければ様々な力を得ることができる代物である。
その元素回路が川神市内で流出し、所有した人間が悪事に利用して暴行や窃盗が頻繁に行われているという。
「調査の結果、元素回路の流出先が川神学園周辺にある可能性が極めて高いと判断しました」
川神学園。川神市内を代表する大規模な学校で、特徴的な行事・授業が行われている有名校である。
アトスの調査部隊の報告によると、元素回路の流出が学園周辺に集中していることが判明したが、出所は一切不明。
川神院の人間や学園関係者にも協力を依頼しているが、危険な代物であるため、知っている人間は一部のみ。調査は難航していた。
「あなた方は川神学園に生徒として潜入し、元素回路の調査に当たってもらいます」
なるべく大事にならないよう速やかに処理をする、それがアトスの決定だった。
「致命者サーシャ、織部まふゆ。エカテリーナ=クラエ、桂木華。川神学園に潜入し、元素回路の流出先を捜索、及び破壊するのです」
サーシャ達の、新たな任務が始まる。