第１章『百代編・一子編』
サブエピソード８「ヨンパチの災難」
夕日が上る、ある放課後の日の事。
ヨンパチはカメラを持ち、プールサイドの隅で息を潜めていた。
目的は勿論、水泳部の女子生徒のスクール水着姿を盗撮する為である。
(うっひっひ……ああ、いい眺めだぜ)
準備体操をする水泳部の女子生徒達を堪能しながら、はあ、はあ、と息を荒げていた。
スクール水着からくっきりと見える、女子の身体のボディライン。特に胸の部分が強調されている所が嫌らしく、男の本能を刺激する。
ヨンパチは思った。これは良い極上のオカズになると。
(さすがにアイツも外までは監視できねぇだろ)
華が番長役になったおかげで、クラスの女子生徒達の盗撮が困難を極めていた。
だが、クラス以外なら監視の目は当然届かない。女性の美を追求するヨンパチに“諦め”という文字はなかった。
(よし………)
カメラを構え、盗撮のスタンバイをする。万が一の退路は確保済み。後はアングルを決めて激写をするだけだ。
「それにしても、でっかいおっぱいだよなぁ……ああ真剣(マジ)でしゃぶりつきてぇ」
ヨンパチは水着の女子生徒の一人を見て思わず感想を漏らす。
女子生徒は見事なまでに巨乳だった。水着がはち切れてしまいそうなくらいの大きな乳は、準備運動をする度に激しく揺れ動く。
(―――きたあああぁぁぁ！！)
ヨンパチの目が光る。今こそシャッターチャンスの時。ヨンパチはカメラの照準を合わせ、巨乳が揺れた瞬間を狙い撃つ―――。
「――――ちょっと聞きたいんだが」
シャッターを押す寸前で後ろから声をかけられ、思わずヨンパチはビクリと身体を震わせた。
盗撮がバレた……恐る恐る背後を振り向くヨンパチ。
「ひっ」
小さな悲鳴が上がる。ヨンパチの背後に覆い被さるようにして立っていたのは、黒の修道服に身を包んだ、シスターだった。
鍛え上げられた鋼の肉体。引き締まった服直筋。そして、ヨンパチの２倍以上はあろう背の高さ。どちらかと言えば、体格の良い巨漢と呼ぶ方が相応しいだろう。
その圧倒的なまでの存在感に、ヨンパチの腰が思わず退ける。
「え、あ……はい」
「この学園の職員室はどこにある？」
巨漢のシスターが尋ねる。どうやら学園を訪ねてきた客人らしい。
とりあえず、ヨンパチは職員室の場所を教えた。盗撮の事を気にしている様子はないが、一刻も早くここから立ち去らなければ、とヨンパチの勘がそう告げている。
「じゃ、じゃあ俺はこれで……」
役目を終えたヨンパチは、プールサイドから逃げるようにして立ち去ろうとする。が、
「まあ待ちな」
巨漢のシスターが背後からヨンパチの制服の襟を掴み、引き止める。
「お前、そんなに女性のおっぱいが吸いたいのかい？」
巨漢のシスターは、ヨンパチが喋っていた一部始終を聞いていた。ヨンパチは答える。
「そりゃあもう！揉みまくって、しゃぶりまくって、吸いまくってや――――あ」
またしても本音を漏らしてしまい、慌てて口を紡ぐヨンパチ。やはり、自分の性の本能には逆らえなかった。
すると、巨漢のシスターはヨンパチの襟から手を離し、解放する。
何やら不穏な空気が漂う……ヨンパチはそう感じた。
「そうか。そんなに吸いたいのなら、アタシが思う存分吸わせてやろうじゃないか」
そう言って、巨漢のシスターは胸を覆っていた服の部分を引き剥がし、
「さあ―――――お吸い！！！」
その筋肉質なボディを、ヨンパチの前で曝け出した。
「―――――――」
ヨンパチの目に映る、巨漢のシスターのむっちりとした、豊満な胸。まず巨乳であることには間違いないだろう。
しかも素肌から直に見る“それ”は、男にとって誰もが夢見る（ゲイなど一部を除き）究極の理想郷。それなのに、興奮や性欲よりも恐怖が真っ先に支配していた。
ある意味でヨンパチは、“それ”から目を逸らせずにいた。
まるで、蛇に睨まれた蛙のような感覚。恐怖で震え、固まったまま動けない。
巨漢のシスターは両手でヨンパチの頭をがっちりと掴み、自分の胸へと近づけていく。
「吸え！吸うんだよ――――――！」
「あ、あ……あ……」
恐怖で引きつったヨンパチの顔と胸が次第に距離を縮めていく。ヨンパチは抵抗できず、そしてついに―――――。
「――――――ンンア゛ア゛ァァァァイィィィィ！！！！！！！！！」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！」
夕日が上る放課後の川神学園に、ヨンパチの断末魔が茜空に響いた。