【印鑑と僕】
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「僕は日本印鑑連盟に異議を唱える!だっておかしいじゃないか!僕の名字はいつもオーダーメードだ!」
僕は声高々に叫んだ。
「日本印鑑連盟ってなんだよ」
横から佐藤さんの鋭いツッコミが入った。
いいよな、佐藤さんはどこでも印鑑売ってて。
「大体、印鑑売ってないのはあれでしょ?需要がないんだよ〜。得に君の名字は私も見たことないしね」
がくっ。やはり佐藤さんでも見たことないのか。じゃあどうすればいいんだ、僕は一生百均でシャチハタを買えないと言うのか……。
「そうだね〜」
佐藤さんが頷く。いや僕何も言ってないけど、エスパーですか?
とか考えてたらいい手を思い付いた。
「例えば、佐藤さんと結婚して僕が名字を佐藤に変えればいいんじゃないかな?」
何かおかしい気がするけど可能なはずだ。
「わかってないな君は!佐藤という名字の面倒臭さを!」
佐藤さんに怒られた。どういうことだろう?
「佐藤みたいな同じ名字が沢山いるやつだと、名字で呼ばれた時に自分が呼ばれているのかわからない時があるわけよ。確かに印鑑はどこでも売っているけどね〜。あ、あと同じ名字の友達ができるとなんて呼べばいいのかわからなくなるとかもあるし……」
ああ、そういえば佐藤さんは『佐藤』にも『砂糖』にも『加藤』にも反応してるな。うちの教室には『佐藤』三人いるし…
「だから私としては珍しい名字が羨ましいのよ。印鑑売ってないのは面倒そうだけどね」
「なるほどな〜。確かに大変そうだね。僕は今三人の佐藤さんと会話してるけど、文章にしたら見分けつかないしね」
そんなわけで、僕は印鑑が売ってないことより三人もいる佐藤さんをどうにかするべきだと思った。