小説『Short Stories』
作者:しゃる()

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【恋愛理想論】

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「思うんだけどさ、好きな人と付き合いたい人と結婚したい人の理想像って全部ばらばらだよね?」

「いきなり何?」

「つまり、好きなタイプの異性が、付き合いたい人の条件と結婚したい人の条件の両方を満たすことってあまりないんじゃないかってことだよ」

「言ってることあんまり変わってないよね……?」

「例えば、好きなタイプが無邪気でかわいい女の子だとしても、付き合うことを考えると、かわいさより話しやすさとか趣味が合うとか一緒にいて楽しいからとか色々と重点が変わってくるわけで」

「憧れの異性と実際付き合う異性が違うってのはよくあるけど……そういうこと?」

「そうそう、付き合うという前提条件があると人によっては好きな異性と付き合いたい異性に凄い差ができると思うわけ。例えば、鑑賞物としてイケメンが好きな女の子だって、実際付き合ってる相手は何も顔がいいからってわけじゃないしね」

「確かに、イケメンではないね。で、ようは結婚のほうも前提として考えると重点が変わるってわけ?」

「そう、しかも結婚には『結婚を前提にお付き合い下さい』なんて言葉もある。これは普通の付き合うより重い意味になるしお互い相手を見る重点も変わってくる」

「確かに結婚前提だと、育児とか長年一緒にいて大丈夫かとか生活面でのことに重点が置かれそうだね……そんなこと考えたことないけど」

「つまり、相手がいくらかわいくて息が合っても、ずっと一緒にいられるかとか生活面での問題があったら結婚までは行かないと思う」

「でも、それでも結婚する人っていっぱいいるよね?その理屈通りだと独身多そうだけど?」

「ああ、それはつまり、恋は盲目ってやつだと思う。」

「好きすぎて周りが見えないってアレ?」

「うん、アレ。実際、愛があればなんとかなると思うし……本当に好きな相手には理屈じゃないとも思う」

「でも、その言い方だと理屈で考えて結婚まで行った人は好きじゃないってことにならない?」

「そうとも言い切れないよ?一時的な盲目で結婚してから冷めるタイプとかもあるし、結婚に対して慎重なのは悪くないと思う。それ程相手のことを考えてるとも取れるしね」

「ふーん、なんにしても難しいね」

「好きな異性も付き合いたい異性も結婚したい異性も人によって条件が変わるしね」

「それぞれのハードルの高さも人によって違うわけだし」

「まあ、そういう色々があるから恋ばなとか恋愛小説とかが流行るんだろうね」


「……で、私達なんでこんな話してたんだっけ?」

「なんでだっけ……あ、ケーキ食べに行く?駅前の限定モンブラン今日までだよ」

「行くけど……なんで付き合ってる相手にいきなりそんな話切り出したのよ?」

「いや、毎週ケーキをおごる僕にとって、君は財布を空にする悪魔に過ぎないのに、付き合ってるのは盲目だからなのかなって思ってね」

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