小説『Short Stories』
作者:しゃる()

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【ファインダー越しの世界】

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カメラを買った。
友達はデジタルカメラの方がお金がかからないし、データの共有ができるからと言っていたけど、私はフィルムタイプのカメラを買った。

昔からそうなのだ。
人に進められたものは手にしたがらないし、少し変わったものがほしい。

フィルムタイプのカメラは扱いが難しく、現像するまで何がどう撮れているのかわからない。

そんな未知な所に引かれたのか、ディスプレイに置かれたカメラに一目惚れしたのか、気付くと私はカメラを買っていた。


確かに、友達の言う通りデータの共有はできないし、使いにくいし、現像するのも面倒だった。

でも、慣れてくると、現像するまでどんな写真が撮れているか楽しみだったし、少し変わった写真に友達も面白がってくれたし、何より、ファインダー越しにどんな写真になるか考えながらカメラを構えるのが楽しくなった。

ファインダー越しに世界を見ると、普段見ていたなんでもない風景も輝いて見えて、町を歩くだけで私を満足させてくれる。

カメラを持たなくなった今でも、私はファインダー越しに世界を見ている。

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