小説『Short Stories』
作者:しゃる()

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【チョコレートの渡し方side-A】

――――――――――

本日、2月14日はバレンタインデー。となればやることはひとつ、この本命チョコを好きな人……つまりは結木くんに渡すのだ!
昨日はチョコ作りに夢中になりすぎて渡し方を考えてなかったけど、なんとかなるだろう。

「うん、なんとかなる!」

……割と大きな声でモノローグが口から出てしまったので、周りから注目を浴びてしまった。恥ずかしい。

まあ、そんなこんなで学校についた。
下駄箱――は、無いな。だって下駄箱って靴を入れる所だし、食べ物入ってたら嫌だよね。
というわけで、下駄箱はやめた。

教室に入ると、すでに義理チョコ渡しが始まっていた。我がクラスの女子は行動的らしい。義理チョコに混じってちゃっかり本命を渡してる子もいた。
――使える!が、私は義理チョコを作ってない!

それに結木くんはまだ来てないし……。
そんなことを言っていたらホームルームの鐘が鳴った。結木くんは遅刻らしい。珍しく。

結局、結木くんは一時間目には学校に来た。でも授業中には流石に渡せないし、短い休み時間に渡すと処理に困りそうな気がして渡せなかった。

お昼休み。この高校には一階に学生食堂があり、結木くんはいつもそこでお昼を食べている。なので、私は持参したお弁当を持って先回りした。この食堂は結構広いのでこっそりチョコを手渡すことは造作もないはず――が、今日に限って結木くんは食堂に来なかった。

そして気づくと、チョコを渡せず放課後になっていた。
結木くんはいつも友達の久住くんと一緒に帰るから放課後は避けたかったんだけど……。
仕方ないので、帰りのホームルームが終わったら渡そう。

そして、ホームルームが終わった。私は立ち上がって結木くんに声をかけ――

「和泉、ちょっといい?」

……あれ?かけられた。

「え、え?ちょっといいけど……なななな、なに?」

落ち着け私!
私が固まっていると、結木くんは私を引っ張って校舎裏に連行した。
――なにがどうなっているのだろう?

「和泉、これ……チョコレートなんだけど、貰ってくれるかな?」

と言って結木くんは私に四角い箱を突き出した。
逆チョコってやつですか!?
――とか考えてる場合じゃないし!

「あああ、ありがとう!」

私はチョコを受け取っておもいっきり抱きしめた。
嬉しくて涙が出てきた。

「なんで泣くの!?」

結木くんが慌てている。私は鞄にしまっていたチョコを取り出して、

「泣くほど嬉しかったんだよ?」

とびっきりの笑顔を作って結木くんに渡した。

チョコを貰えたのもすごく嬉しかったけど、チョコを貰って嬉しそうにしてくれたことのほうがもっと嬉しかった。

-7-
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