小説『Short Stories』
作者:しゃる()

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【チョコレートの渡し方side-B】

――――――――――

バレンタインデー。女の子が男の子にチョコを渡す日だ。でも、男が女にチョコを渡してはいけないということはない。逆チョコって言葉もあるし。

そんなわけで僕は昨日、親友の久住とその彼女、柏木の協力の下、チョコを作っていた。
――というか、久住に相談したら柏木がノリノリで乗っかってきただけだけど。
柏木曰く、「チョコ貰って喜ばない子いないよ。和泉ちゃんなら尚更」だそうで。
僕のチョコ作りの教師を買って出たのである。もちろん久住は見てるだけだったけど。


そして本日2月14日、僕はチョコ作りに難航して学校に遅刻してしまった。いや正確には包装用紙でラッピングするのに手間取ったわけだが……
朝からクラスは義理チョコ祭だったようだ。甘い匂いが室内に広がっている。


さて、僕のチョコはどうやって渡すか――

昼休み、僕は普段一階の学生食堂を利用している。しかし今日は弁当を持参してきた。和泉はいつも教室でお昼を過ごしているからだ。

――が、教室を見渡すと和泉の姿はなかった。今日に限って。


結局放課後になってしまった。
もうこうなったら当たって砕けろだ。
ホームルームが終わった瞬間、僕は和泉に声をかけた。

「和泉、ちょっといい?」

和泉は数秒間フリーズした後、

「え、え?ちょっといいけど……なななな、なに?」

恐ろしいほどあたふたしだした。驚きすぎだ。

頭より先に体が動いていた。気がつくと僕は和泉を引っ張って校舎裏に移動していた。少し強引だったかもしれない。

「和泉、これ……チョコレートなんだけど、貰ってくれるかな?」

僕は和泉に四角い箱を突き出した。勢いに任せて。

「あああ、ありがとう!」

和泉は受け取ったチョコをおもいっきり抱きしめた。
ああ、頑張ったラッピングが……
とか考えてたら和泉が泣いていた。

「なんで泣くの!?」

まさか泣かれるとは思わなかった――というかなんで泣いてるのかわからない……
和泉は鞄から何かを取り出して、

「泣くほど嬉しかったんだよ?」

と言って僕にチョコを渡した。

渡すことで頭がいっぱいで、貰えるなんて考えていなかった。

和泉から貰ったチョコレートは、とても甘かった。

-8-
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