小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第二十話 西の勢力と同じ境遇


Side 千雨

音羽の滝の酒のトラップとか、カエル落とし穴とか嫌がらせとしか思えないトラップが多かったが……。

今訪れてるトラップはそれとは一線を外してると思う。

「ほう、低級式神か。量に物言わせたといったところか」

「低級ですか……、どう見ても強そうな個体がいくつかいるようですけど」

そう、いつの間にか黒い魔物みたいのに囲まれていた。

鬼とかそういうのが多いけど、今までの日常では絶対に見ることがないようなのばかりだ。

「ハハハ、夢か?」

「千雨、現実逃避するのはこの状況を切り抜けてからにしろ」

「いや、私にどうしろと!」

横にいるエヴァンジェリンは本来かなり強いらしい……。

けれど、京都に来るためにその力を封印するしかなかった、らしい。

「これだけの数……私に退治できるですか?」

「少しばかり辛いだろうな。夕映、お前はどちらかというと一対一の方が実力が出せるタイプだ」

「なら、なぜここまで引き付けさせたです!」

「修学旅行を続けるためだ!!」


そう、バスに乗って移動してる時にいきなりエヴァンジェリンが降りると言い出したんだよな。

その後、あの子供先生と何か話していたようだけど……。

まさか、こんなことに巻き込まれるなんて考えてねーよ!!

「これでぼーやの乗ったバスは確実に旅館までつくだろう」

「じゃあ、私たちは!」

「ここの式神を倒したら合流だ。しかし……少し量が多いな、茶々丸もつれてくるべきだったな」

「私の魔法で少し数を減らすです!」

「待て夕映。私が何の策もなしにこんなことをすると思うか?」

そういって、大きめのキャリーバックをポンポンと叩いた。

どうやら、何かしらの策があるらしいな。

「私を降ろした理由は?」

「千雨、今お前のいる世界がどういうものか知るのにちょうどいいと思っただけだ」

「つまり、覚悟を決めろってことかよ……くそっ」

「まあ、そこにじっとしていればいい」



Side エヴァ

さて、本当なら夕映に式神をすべて倒させる予定だったが、数が数だ。

それに、旅館の料理も気になるしな。

「さて、式神ども。お前たちは召喚主の命令には逆らえないんだったな。ならば御託は並べなくていいな」

「おいおい、嬢ちゃんや、まさかたった一人で相手をするつもりなんか?」

「さすがにそれは無理っちゅーもんや」

「手荒なことはせーへんから、おとなしく…」

「私が一人で戦う? ククク、少しばかり違うな」

このキャリーバックには普通入らないものが入っている。

さて、お披露目と行こうか。

「エヴァさん……、そのバックについてる指輪って…」

「貴様ら、糸で操る人形を知っているか? その人形がこのバックの中に入ってるんだよ」

出番だ、操られ人形……一十百!!



Side 夕映

エヴァさんのキャリーバックが開いてそこから見慣れた人が飛び出してきたです!

「エヴァさん……方法とか使い方とか…間違ってる気がするんですけど…」

「一十、これこそがこのアーティファクトの使い方だ」

そう、いつもと違って黒いコートに身を包んだ十百さんがバックから出てきたです。

「ど、どうやって入っていたですか!」

「あ、夕映さん、おはようございます。実は今日の朝からここに入っているように言われてたんです。このアーティファクト発動中は自在間接ですから小さなバックの中にも入ってられるんですよ」

ということは、ずっとバックの中にしまわれていたということですね。

いくら自在間接とは言えども辛そうですね……。

「さて、一十。お前用の武器もしっかり用意してある」

そういってバックから出てきたのは…双振りの鎌でした。

ただ大きさが70cmくらいあって、細やかで禍々しい彩色がしてあったです。

「え、え……あの、エヴァさんその、僕の武器って…」

「これだ。安心しろ、この状態のお前なら使いこなせる」

「その……、すこし…」

そうですね、十百さんの武器にしては少しばかり禍々し…

「すこし、かっこよすぎませんか? もっと、簡単そうなものでよかったと思うんですけど?」

ズコ――――!

そうですか、十百さんはアレをかっこいいと思うのですね。

「なあ綾瀬、私のセンスが悪いのかもしれないから聞いていいか?」

「構わないです」

「あれ、かっこいいか? どちらかというと不気味とか禍々しいとかダークサイドとか…」

「大丈夫です。十百さんの美的センスがちょっとずれているだけだと思うです」

それにそのコート、一般的に厨二と呼ばれそうなものに…

「悪の魔道士の従者の従者だぞ、このくらいあって当然だ」

エヴァさん…、それはどうかと…

「な、なるほど…。では、ありがたく使わせてもらいます」

十百さんも…。

クロロさんがなんだか普通に見えてきたです。


「あの〜、エヴァさん……鎌が武器ってことは相当相手に近づかないと攻撃できないんですけど…」

「安心しろ。力は封印されているが、ドールマスターとしての指捌きは健在だ」

次の瞬間、目の前の黒い式神がバラバラになっていたです。

「エヴァさん! いきなりはびっくりします、せめて一声かけてください」

「準備運動だ。さて、本番行くぞ一十!」

「はい!」


その時私が見たのは、何十本もの黒い線と、バラバラになって消えていく式神だけだったです。


「どうだ、なかなかの動きだっただろう?」

「その、まったく見えなかったです」

「私もだ」

「エヴァさんが速く動かしすぎるから…」

「一十の身体能力がなければここまでは動かせんぞ。チャチャゼロではここまでできなかった」


「さてと、思わぬ時間を食ってしまったな。旅館に向かうぞ!」

「そうですね」

「また襲われないよな……」

「え〜と僕はどうしてればいいんでしょうか?」

「またこの中に入っていろ」

「ふぇぇ…」

お疲れ様です、十百さん。



Side クロラージュ

ここがネギ君たちの泊まる旅館か〜。

なかなか綺麗な所じゃないか。

「なぜここに貴様がいる?」

「ほう、さすが我が妹…」

「それはもういいです」

うがぁ、俺のセリフが……まあいいか。

「まあ、いろいろあってな。ちょっとばかり逃げてきたところだ!」

「いや、逃げてきたって自信満々に言うなよ」

「ちうちうよ、逃げも兵法の一手という言葉を知らないのか?」

「しらね〜よ……。てか、ちうちう言うな!!」

「いったい誰から逃げてきたんだ? 一応貴様も多少なりと戦えるだろう?」

「まあ、勝てない相手だった、といっておく」

「勝てない相手ですか? 勝てそうにないではなくて」

鋭いな、さすが夕映。撫でておくか。

「少し先のことが分かる……か?」

「そんなとこだな。とにかく、勝てないから逃げてきた」

「まあ、逃げ切れたのだから問題はないか」

あはは、どう考えても逃がしてもらっただけどね。

「なるべく大事にはしたくないんだけどな〜」

「無理ですね」

やっぱり。

「しかたないよな〜。せめて一十百がいればもうちょっと安全なんだけどな」

「え……と、クロロさんは知らないのですか?」

「へ? なにを?」

「夕映、別にいいではないか。ククク……」

なんだか、エヴァが笑ってるけど…

「一十百が来ているのか?」

「そんなことはないだろう、留守番してるはずだ」

だよな〜。

一十百がエヴァの命令を聞かないなんてことないだろうし…

「それでだ、貴様はどこに泊まるつもりだ?」

「ああ、ここ」

「……貸切ではなかったか?」

「先生の部屋なら大丈夫だろ。ほら、学園長に頼まれたとかいえば」

「おいおい、随分と適当だな。本当に大丈夫か?」


「というわけだ。悪いなネギ君」

「いえいえ、今日も色々あったので助かります!」

「ははは、まあ大船に乗った気でいたまえ」

「ほんとに泊まる気ですね」

「まあ、ヤツがいれば多少の戦力にはなるだろう」

「というよりエヴァンジェリン……、十百を出してやったらどうだ?」

「何のこと知らないな〜」

「マスター、鬼畜です」


さてと、寝床の確保も出来たし少し確認でもしておくか。

確かだが、一日目の夜のイベントは……サルとの追いかけっこ、だったはずだよな。

う〜ん、ネギ君とアスナと刹那の三人でどうにかなるとは思うんだけど……。

俺がいるんだよな、この世界。

まさか、フェイトが助太刀に来るとは思えないけど…

「打てる手は打つんだったな」

しかたないな、まず刹那と合流して作戦を練るか。

そんなことを考えながら、ふと窓の外を見ると……

「いま木乃香がサルに抱かれて飛んで行かなかったか?」

……あ!

これは、まずい!

とにかく刹那を探さないと!!


いた、何をのんびりしてるんだか…。

「やっと見つけた!桜咲刹那、お前の大切なお嬢様がサルにさらわれた」

「…何のことですか? 貴方はたしか…」

「だー! 西からの妨害だ! さっさと追いかけるぞ!」

「なっ! わかりました!!」

ということで走って外に行くと……どっちだ?

「くっ、見失った…」

いや、まだだ。

そろそろだな…。

「あ! 刹那さんと……なんでアンタが?」

「アスナ! よし、ナイスタイミング! どっちだ?」

「え? そうだったわ! ネギが…」

そう、これこそあのイベントだな!


ということで、ネギ君と合流。

「クロラジュさんも来てくれたんですか?」

「もちろんだ! それに、なんか嫌な予感がしたからな」

「なに不吉なこと言ってんのよ!」

「いや、本来なら三人でいいはずなんだけど……、なんとなくついて行かなくちゃいけない気がしてな」

「三人でいいはずというのは、相手の実力はそれほど高くないということでしょうか?」

「まあ、そんなとこだ」

本来ならだがな……。

まあいいか。

どうせこの先の駅で追いつけるはず。



Side ?

ほんとにここに来るのかな?

来るらしいけど……。

あ〜、考えるのってたいへんだよ。

とにかく、ウチは頼まれたことだけをやり遂げればええ……。

ネギ、アスナ、セツナ……。

悪く思わんといてね!


「千草はん、おそい! ……ずぶぬれですな」

「色々あったんや! 来おったで!」


あ、ほんま……いやいや、本当だ。

ネギとアスナとセツナと…

「あれ? お兄さん誰?」

「ん? あれ? 月詠じゃないよな……誰だ?」

あ、まさか……

「お兄さん、神って知ってるん?」

「嫌なことを思い出すから放っておいてくれ…」

「チート?」

「ケチだから無理」

「…転生」

「そうだ、まさか君もか!」

まさかウチと同じ境遇のヒトがいるなんて……。

ちょっと嬉しいような…

「だが、君はそっち側なんだよな」

「こっち側やね……」

「「戦うしかない!」」

お兄さんのことは忘れんから!



Side クロラージュ

まさか俺以外に転生者がいるなんて……!

「そうか、こんなことがあるんだな」

「クロラージュさん、知り合いの方ですか?」

「いや、初対面だ。初対面だが…知り合いに近い」

「なによそれ?」

「とにかく、アスナと刹那で木乃香を奪還するんだ。ネギ君が後ろからサポートのオーソドックスでいけるはずだ」

「貴方はどうするんですか?」

「一番やばそうな可能性があるのに挑む」

「彼女ですか?」

「ああ」

そういってる間に大文字焼きが目の前に!!

「うぁつ!」

吹け(フレット) 一陣の風(ウネ・ウェンテ) 風花(フランス) 風塵乱舞(サルタティオ・ブルウェレア)!!」

おお、あの炎を一瞬で消すか!

さすが、ネギ君だ。

うらやましいいいいいいい!!!

「どうしました?」

「いや、ちょっと嫉妬の念に駆られた」

「え?」

「とにかくチャンス!!」

アスナと刹那が前鬼と後鬼、じゃなかった猿鬼と熊鬼と戦ってる間に俺は…

「行くぞ! 瞬動術!!」

一瞬であの転生者に近づく!!

あ、ブレーキってかけられないんだった!

ゴン!!

「いってー!!」

「いたた…。いきなり突っ込んでくるなんて……」

さてと、一気に距離が縮まったな。

「覚悟はいいか?」

「魔法使えるんやね…、ええなぁ」

ん?なんでそんなに羨ましそうな顔をするんだ?

「魔法使えないのか? 西側だから」

「そういうわけじゃないと思うんやけど…」

「気も使えないと…」

「うん……」

「神がケチだったんだな」

「そう、やね…」

やば、俺より不憫な転生者か?

まてまて、何かしらの能力があるはずだ……。

「何かしらの能力をもらったのか?」

「…原作知識」

「ああ、他は?」

「……ぐすっ」

うぁあ、何!

何もないの!!

「まった、あるだろなにか?」

「ないんよ。それに…」

「それに?」

「ウチもと標準語なんよ。普通に話してええか?」

「…ああ」

のびーっとしてから、ふぅと一息ついて…

「さてと、だからその、かなり手加減してほしいんだけど……いい?」

「何もできないのかよ」

「…できないこともないけど」

おお、何かあるのか?

ケチ神なら俺もわかるから……。

なにをもらった?

気は使えない、剣術か?

神鳴流か、気未使用の…

「それじゃ、いくよ!」

「来るのか!!」

あの構えは……ボクシング?

「…ボクシングか?」

「唯一もらった能力はパンチ力アップだったから…」

「て、ことは我流?」

「うん」

「俺、一応魔法使いだから、距離とっていい?」

「手が届かない位置からの攻撃! ひどい…」

いや、ひどいって……しょうがないじゃん。

とはいえ、不憫な転生者だし、どうしようか。

よし!

「わかった、一発だけ先に打たせようじゃないか!」

「……いいの?」

「いや、いくらなんでも可哀そうすぎるから」

「わかった、そのありがとう」

戦う前にお礼を言われた。

一発とはいえガードしないとやばいよな。

もしかすると恐ろしい威力かもしれない。

ラカンクラスとかだったらヤヴァイ!

「じゃ、いくよ!私のベストショット!!」

唸りを上げる拳……。

くそっ、こうなったら左手を犠牲にして防ぐしかない!

「うおぉぉぉ!!」

バシッ!!

簡単に左手で止められました。

確かにこの体格からすると鋭い一撃だけど…。

単純にネギ君の魔力のせパンチより威力が低いって…

「……え〜と」

「私の全力が、左手一本で…」

「え〜と、その、なんだ……うん、いい一撃だったな?」

「疑問形!! ひどい、これだからチート転生者は……ぐすっ」

いや、俺チートじゃないし。

どっちかっていうと、残念な方だし。

どうしろと?

「あ〜、向こうが終わるまで観戦してますか?」

「そうする……」


「お互い大変だな」

「魔法が使えるだけ楽じゃないですか……」

スマナイ……。

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