小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第十九話 修学旅行のために


Side クロラージュ

エヴァの機嫌が悪い。

俺が何かをしたわけじゃないから……。

たぶんあれだ、修学旅行だ。

何とかして修学旅行に行かせてあげたいんだが…

「何をぶつぶつ言っているんだ」

「いや、可愛い妹を修学旅行に行かせてあげたくてね」

「……私の事なら気にするな。毎年こうなっている」

ぐっ……。

なんて哀愁のこもった目つきをするんだ。

こうなったら…

「エヴァ!!」

「!! いきなりなんだ」

「何とかしてやる、修学旅行の準備をしておけ!!」

「な、何を言ってるんだ。この呪いは…」

ぽふっ、なでなで。

「////わかった。期待させてもらうぞ」

「任せろ!!」

そういって、俺はエヴァハウスを飛び出したんだ。



Side エヴァ

期待してしまった。

かつて闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)と呼ばれた私が、ここまで人を信じられるとは……。

私自身にもわからなかったな。

「だが、無理なことはわかっている。この呪いはナギでなくては解けないのだ」

けれど、なぜか……いい気分だ。

「こんにちは〜」

一十か。

「あれ? エヴァさん、何かいいことあったんですか?」

「な、何もないぞ?」

「とてもうれしそうな表情でしたから。クロラージュさんと関係が?」

いつからそんなに鋭くなったんだ、一十。

「気にするな。ほんの少し幸せをもらったにすぎん」

「幸せ? あ、そうでした!」

一十が鞄の中をあさり始めたな。

「これです!」

一十が一冊の本を取り出したようだ。

タイトルは……“精霊との契約”

「これがどうしたというのだ?」

「ほぇ、そのですね、エヴァさんの呪いは学園の精霊さんたちが管理しているんですよね?」

「確かにそうだな」

「この本通りに進めば、交渉できるかもしれませんよ?」

「……気持ちはありがたいが、どうやって精霊と話すんだ?」

「………?」

「…話せるのか?」

「やったことがないですけど、ポチとは話せますからもしかすると…」


私の周りで、何かが変わろうとしているのか?

それなら…私もその波に乗れるのではないのか?

期待できる、この二人なら!

「一十! 学園長のとこに行くぞ! この学園の精霊についてしっかり聞き出してやろう!」

「は、はい!」


私もただ黙って待っているのは性に合わんからな!!



Side クロラージュ

「おい妖怪。エヴァの呪いをどうにかしろ!」

「いきなりじゃのう…」

この妖怪爺なら何とかできると思うんだが…

「もうすぐ修学旅行だろ。何とかしてエヴァを行かせてやりたいんだよ!」

「とはいってものぅ…。あの呪いはナギにしか解けぬし…」

「こうなったら、学園精霊を壊滅させて契約を無効にしてやる!!」

「できぬと思うが、やらんでくれよ」

くそっ……。

やはりこの呪いを解くにはサウザンド・マスタークラスの実力がなくてはだめなのか。

エヴァのために、何とかしてやりたいんだが……。

その時、バタンと後ろのドアが開けられエヴァと一十百が立っていた。

「あれ? クロラージュさんも学園長に御用だったんですか?」

「考えることは同じのようだな。おい爺、この学園の精霊について詳しく教えてもらおうか!」

「エヴァ、どうしてここに?」

「一十なら精霊と交渉できるかもしれないからな。それに、貴様が頑張っているのに私だけ家でのんびりしてるわけにもいかないだろう?」

なるほどな、エヴァも修学旅行に行きたいんだよな。

ん? ……ちょっと待てよ。

精霊との交渉?

「一十百、交渉できるのか? というか、話せるのか?」

「やってみないと分かりませんけど、できるんじゃないんでしょうか?」

「普通はできんのぅ」

だよな。

珍しくこの妖怪と意見があったな。

まあ、話せないんだろうな……。

「それで、どこに行けばいいんですか?」

「学園を囲う六ヶ所に精霊がいるらしいのじゃが……。よくわからないんじゃよ」

「う〜ん、どうしましょうか?」

六ヶ所ね〜。

あれ、たしか学園祭の時、超が鬼神みたいのを進行させる予定のポイントも六ヶ所だったような……。

「おい、一十百。超なら知ってるんじゃないのか?」

「超さんが、ですか? 頭がいいからもしかすると…」

「ほう、あの超なら何かしら知ってそうだな。よし、行くぞ一十!」

「は〜い!」

なんかすごいスピードで走って行ったな。

俺も追いかけますか!



「と、いうことらしいぞ」

「…なぜアナタが解説してるネ?」

「一十百はそういうの苦手そうだからな」

というよりも一十百は葉加瀬の手伝いをしちゃってるからな。

何やってるんだかさっぱりわからん。

「で、どうだ?」

「まあ、心当たりが…」

「あるんだな! よし話せ!」

「強引ネ……。これだからイレギュラーは…」

「イレギュラー?」

「いや、こっちの話ヨ」

「どうせ俺や一十百とかのことだろ。まあそのことは後回しだ。とにかく修学旅行に我が妹エヴァンジェリンを行かせてあげたいんだよ!」

「エヴァンジェリンはアナタの妹では無いハズネ…」

「はっはっは、所詮はただの火星人か。そんなことでは一十百すら測ることはできないぞ!」

「……こっちのことは全て筒抜けというコトカ?」

「まあ邪魔する気は……。あ〜、とにかくどこに精霊がいるんだ?」

「完全に邪魔する気じゃないカ! まあ、イイヨ、それはそれで対策を立てておくネ」

そういって、大画面に六つのポイントを映し出してくれた。

「この六ヶ所がそうなのか?」

「知ってたのではないノカ?」

「細かいポイントまではわからなかったんだよ」

さてと、これで…

「あれ、エヴァと一十百はどこ行った?」

「もう先に行ってしまったヨ」

なに〜!!

「こ、これが火星人であるお前の力なのか!!」

「自分のせいじゃ無いカ〜!!」



Side エヴァ

「何と言っているんだ?」

「エヴァさんが可哀そうだ、可哀そうすぎる、だそうです」

確かに一十は精霊と話せるようだった。

そして、確かに交渉もできた……。

結果は、意外なものだったというしかないな。

精霊たちは予定よりも長く呪いにかけられていた私を気遣ってくれていたそうだ。

意外とやさしい奴だったようだ。

「それで、登校地獄は解けそうか?」

「え〜とですね、解くことはできないそうですけど、週に一日くらいは外出許可が出せるそうです」

「週に一日、か。十分すぎるが…」

修学旅行はいけないのか…。

まあ、これだけでも大きな収穫…

「そういえば……!」

また一十が交渉し始めたようだな。

今度は何を…

「えと、○×※‐◆×○●□▽○\^▽^/▲◎?」

「何語だ、それは?」

「ふぇ? ああ、えとですね修学旅行中は外出許可が出してくれるようです」

「そ、それは本当か!」

「はい! あ、でも、エヴァさんの力は外ではほとんど使えないそうですけど」

「そんなことか、別にかまわん!」

まさかこんな事でこの呪いから解放されるとは!

私の力か、魔法のことだろうがそれなら放っておくとしよう。


「一十、ありがとう…」

「ふぇ? いえいえ、お礼ならクロラージュさんに言ってあげてください!」

「な、なぜ奴に言わなくてはいけないんだ?」

「どうしてもエヴァさんを修学旅行に行かせたいんだ! と言っていたので僕もお手伝いしたくなったのです」

「そう、だったのか」

クロラージュにも、後で礼を言っておくか。

さてと…

「これから、修学旅行に必要なものを仕入れるとするか!」

「は〜い!」


そして修学旅行当日……。



Side クロラージュ

「おい、なぜキサマがいる?」

今は新幹線の中、京都行だ。

そっとついてきたんだが、ばれてしまったようだ。

「まあ、観光だ。観光」

「おいおい、まさかクロージュまで来てるとはな…」

「仕方ないです。何となくこうなると思っていたです」

「ということは、留守番は十百さんがやってるんですね」

そうなんだよな〜。

誰かしら留守番することになると思ってたんだが、一番行動力のある一十百が留守番だったんだよな〜。

これから起こる厄介ごとに一十百のスピードが必要不可欠だったんだが……。

しかたないか。

ああそういえば本来ならないはずの六班が今のメンツだ。

ええと、エヴァ、夕映、ちうちう、さよと茶々丸か。

「なんでこのチームにこんなに揃えたんだ?」

「何となくだな」

何となくですか。


さてと、そろそろカエル事件が起きるころだな。

「エヴァ、ちょっといいか?」

「なんだ?」

「そろそろ西からの妨害工作が行われるはずだ。簡単なやつだが」

「内容を知っているようだな」

「まあな。そのな、カエ…」

とその時、前の方の車両から黄色い悲鳴が聞こえてきた。

「なんです?」

「西からの妨害工作だそうだ」

「なにが行われてるんだ?」

ほう、ちうちうが興味津々だな。

「簡単に言うと、カエルパーティだな」

「なんだそれ?」

「ほら前の車両を見てくれ」


「いや〜、水筒からカエルが〜!」


「あれか?」

「そうだ」

「妨害っていうより、嫌がらせじゃないのか?」

確かに、そうだな。

「まあ、これはとある作戦への囮だからな」

「囮? 本当の目的はなんです?」

「ネギ君が持ってる親書だよ」

「ほう、なるほどな。それでぼーやが親書をとられるようなら少しばかり心配だな。まあ私とあれだけやりあえたんだ、そう簡単に…」


「まってくださ〜い!! それは大切な〜」


「……今のネギ先生でしたね」

「エヴァ、そう簡単にの後は?」

「あのぼーやめ!」

まあ、あの先には刹那がいるから親書は無事なんだがな。

「まあ、なんとかなるからのんびり修学旅行を楽しむといい」

「このさき何が起こるんだ?」

エヴァ、そんなに怖い顔するなよ。

「まあ、観光の時に邪魔するようならエヴァの力で何とかすればいいさ」

「あ〜、そのことなんだがな、今の私は他の学生と変わらないようだ」

へ?

他の学生と変わらないって、なんで?

「学園精霊との交渉で外に出るときはただの学生程度の能力しかだせないのだ」

あらら、それはまずいのでは?

「じゃ、じゃあここで何とかできる強さを持つのは俺と夕映だけ?」

「この班での移動では私だけということになるですね…」

な、これだとかなりやばそうだな。

「夕映、いざとなったらネギ君に頼れ」

「今のを見て頼るのが少し不安です」

まあ、確かに……。

「いざとなったら、俺も助けに行くからそこは安心しておけ!」

「///そうですか。少し安心できそうです」

おやおや、どうやら緊張はとけたみたいだな。


さてと、京都のメンツか……。

こうりゃくぼんの確認をしておくか。

ええと、小太郎君だろ、月詠だろ、あと強敵フェイトだよな。

あれ?

あと一人……あ、そうそう札使いの人がいたな。

怖いのはフェイトと月詠か。

どうしたものかな……。


「もうすぐ京都につくようですね」

「それじゃ、俺はやることがあるから。旅行楽しめよ」

さてと、打てる手は打っておくか……。



Side 夕映

エヴァさんの魔法は封印されている。

クロロさんも今はいない。

いざという時は私が頑張らないと…

「そう緊張するな、ヤツも言っていたが修学旅行を楽しもうではないか」

「ずいぶん余裕ですね」

「まあ、魔力や吸血鬼の力はなくともそう簡単には負けないからな」

「秘策、でもあるのでしょうか?」

「まあそんなとこだ」

さすがですね。

折角ですから私も楽しむとするです。


ここが清水寺ですね。

飛び降りる人はいないようですね。

このクラスだと飛び降りる人がいそうで怖いですね。

「ここが、有名な清水の舞台か!」

エヴァさんが目をキラキラ輝かせているですね。

クロロさん曰く“エヴァはこ〜ゆ〜古いお寺とか好きらしい”でしたけど、

どうやら本当の様ですね。

「おい、夕映。あの岩まで目をつぶって歩けると恋が成就されるらしいぞ」

「な、なぜそれを私に言うです?」

「フフ、自分の胸にでも聞いてみるといい」

た、試すだけならやってみるです。

では……ん?

どうやら、落とし穴が仕掛けられていたようですね。

落とし穴の中にはまたカエルですか……。

「つ、ついた〜」

ノドカは落とし穴を避けて無事着いたようですね。

これでネギ先生との距離が縮まるとよいのですが……。


ここが音羽の滝ですね。

さっきのことがあるですから、静観させていただくです。

それにしても、先ほどから不思議な香りが…

「おい夕映、この水……酒だ」

先に飲んでいたエヴァさんがそう言ったです。

少しするとほとんどのメンツが酔いつぶれてしまったようでした。

これはこれでまずいのでは……?

「あ〜!!みなさん、どうしたんですか!!」

ネギ先生ですね。

クロロさんが頼れと言っていたですから、こういう時に頼らせていただくです。

「滝の水がお酒になっていたようで、酔いつぶれてしまったようです」

「えー!! 無事な皆さんは…」

どうやら、私の班はみんな無事の様でした。

「と、とにかくバスまで運びます!」

しかたないです。

手伝うとしますか。

「私も手伝わなくてはいけないのだろうか?」

「マスターもここで修学旅行を終了させたくないのなら手伝うべきだと思います」

「なに!! ぼーや、私も手伝おう!! さっさとバスまで運ぶぞ!!」

どうやらエヴァさんは確実に修学旅行をやり遂げたいようですね。

私も手伝うとしましょう。



Side クロラージュ

「さてと、ちょうどよかったよ」

「ん? ちょ、ちょっと待った」

今目の前にいるのは、京都編最大の強敵フェイト……。

お団子を食べてたらいつの間にか目の前に……。

どうしよう?

「君が何をするかは知らないけど、僕たちの邪魔をしなければ…」

「断る」

「即答かい?」

「いや、そこじゃない。お前とは戦いたくない」

「…一応理由を聞かせてもらおうかな」

「だって、絶対勝てないし」

「初めの断るは?」

「いや〜、消えてもらうとか言いそうだったから、つい」

「そうか…」

「ついでにな、逃げていい?」

「そこまではっきり言われると、調子が狂うよ」

どうだ、この完全敗北宣言は!

ここで倒れるわけにはいかないから、あえて完全敗北をえらぶ。

「それじゃあな、フェイト・アー…」

「………」

「アー……アー…」

「発声練習かい?」

「そんなところだ。じゃ!」


思い出せなかった!

勝てない悔しさよりも、もっとずっと悔しい!!

フェイト、もう一度会ったとき覚えているがいい!

しっかりと思い出して正式名称で呼んでやる!!


「って、正式名称ってフェイトじゃないしな HAHAHA」


「彼は何がしたかったんだ?」

「フェイトはん、何か?」

「いや、なんでもないよ」

-20-
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