小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第二十二話 敵だけど……


Side クロラージュ

たった今この旅館に仮契約の魔法陣が描かれたな。

予定通り、問題は……俺にも効果があるかだ。


「ってことで乗り込んだ」

「いきなり!」

「で、どうなんだカモ?」

「もちろん、効果はあるっす」

よし、これで一安心…

「あ、一応一十百さんにも効果があるようにしたっす」

ああ、一十百にもね……あれ?

いつの間に?

「オマエ何やってるんだ―――!!!」

「うえええ!! どうしたのクロムさん?」

「クロム酸? 薬品名か?」

「いやいや、あなたの事でしょ」

そうか朝倉は俺の事をクロムさんと呼ぶことにしたのか。

「で、一十百って誰?」

「エヴァの下僕で今留守番してるはずなんだが…」

「げ、下僕!! エヴァちゃん、何やってるんだか?」

「とにかく、俺は俺のやりたいようにやるとしよう」

一十百にも何かしら考えがあるんだろう。

俺はこの機会を逃すわけにはいかないからな。

待っていろー!!!



Side 一十百

エヴァさんが落ち込んじゃった。

持つ者に持たざる者の気持ちは分からない、かぁ……。

そうなのかな?

気が付くと旅館の外まで来ていました。

考え事をしながら歩くのって危ないなぁ〜。

あれ? 旅館の外に人が?

「どうしたんですか?」

「なっ、ウチの後ろを取るとはなかなかの使い手やね?」

あれ? クロラージュさんと同じこと言ってる?

「もしかして、クロラージュさんのお知り合いの方ですか?」

「!! 君、クロラージュはんの事知っとりますの?」

「は、はい。御用があるなら部屋に行かないと会ってくれませんよ?」

「なるほどな〜、虎穴に入らずんば虎児を得ずというわけか。よっしゃ、やったるで〜!!」

そういって、女の人は旅館の中に入って行っちゃいました。

「クロラージュさんに会えるといいですね」

僕が空を見上げると綺麗なお月様が出ていました。



Side クロラージュ

さてと、まずこの部屋。

我が妹エヴァがいる。

「こんばんは〜」

そこには布団にくるまって泣いているエヴァとそれを撫でている茶々丸と寝息を立てているさよがいた。

「ちょ、エヴァどうした?」

「今マスターは少し心が折れている状態です」

心が折れている?

何をやったんだ?

「エヴァ、俺はお前の兄だ。力になってやれるかもしれないぞ」

「いつから……兄に、ぐすっ」

あ〜ほんとに泣いてるし。

てか、これは悔し涙だな。

いったい何をやったんだか?

「エヴァ、このクロラージュお兄さんにいってみろ」

「ぐすっ、生麦なまごみぃえ生卵……ぐずっ」

「マスターは早口言葉が出来なくて…」


まて、笑うな俺。今笑ったら全てが台無しだ。

「よし、エヴァよく聞いてろ。こういうのは口の動かし方が重要なんだ。生麦生米にゃまたみゃご…」

「え!!」

がばっとエヴァが布団から出てきた。

なんだその嬉しそうな顔は?

「坊主が屏風にびょうずにぼうじゅの絵を描いた…」

「おいおい、いいか……、坊主がびょうじゅにじょうじゅに坊主の絵を描いた……あり?」

おい、失敗してる俺を見てなぜ顔を輝かせるんだ?

「赤巻紙青みゃき紙黄巻まき!」

「赤巻紙青巻まき黄みゃき紙!!」

「マ、マスターと同レベルですね……」

うがぁ……。

俺はこんなこともできないのか!

「クロラージュ!!」

「うわ!」

いきなりエヴァに抱きつかれた?

どうしたんだ?

「クロラージュ、今ここにお前がいることがどれだけうれしいか…」

よくわからないが……。

まあ、エヴァが泣き止んだからいいか。

そういえば…

「なあエヴァ、夕映と千雨がいないんだが?」

「ああ、なんだか枕をもって出て行ったぞ」

枕?

ああ、朝倉のイベントか。

「というか、なんでいまさらになって?」

「何をやってるんだ?」

「う〜ん、ネギ君と仮契約が出来るようなそんなイベントだな」

「さっきの魔法は仮契約の魔法陣か…」

「そんなとこだ……と言うよりも、俺の仮契約者メンバーがネギ君に取られてしまう!!」

急いで追いかけないと!!

「それじゃな、エヴァもしっかり寝るんだぞ」

「そんなことを心配されるほど幼くないわ!!」

ははは、たしかに。

さて、二人はどこに行ったんだ?



Side 夕映

今日、ノドカが勇気を出してネギ先生に告白したというのに、まったく…

「おいおい、顔が怖いぞ…」

「千雨さん、巻きこんでしまったのはあやまるです」

「え〜、なんだ、あれだろ? 親友のためだろ」

「そうです」

なんとかノドカの班を…いえノドカを勝たせてあげたいです。

「一応だけどよ、魔法使うなよ……?」

「状況にもよるです」

「いや使っちゃダメだろ、どういう状況でも!!」

仕方ないですね。この枕に魔力を込めて一撃で…

「今やろうとしてることやるなよ?」

「やはり、ダメでしょうか」

「ダメだろ」


…どうやら、向こうから人が来るようです。

「千雨さん、向こうから誰か来るです」

「え、先生だったら厄介だな。隠れるか」

「そうしておくです」

柱の陰に隠れていると……。

ノドカとまき絵さんでした。


「ま、まきちゃん……その」

「この道は安全っと、何?」

「ね、ネギ先生のことだけど…」

「大丈夫、大丈夫。ちゃんと本屋ちゃんに勝たせてあげるから」

「え……。あ、ありがとう」

「この佐々木まき絵にど〜んと、任せなさい!」


どうやら、まき絵さんも協力してくれるようです。

ノドカ、いい友達をもったですね。

「さて、私たちはこっちの道から行くです」

「宮崎の班が、他の班とぶつからないように誘導するわけだな」

「そんなとこです、では行くですよ」



Side クロラージュ

くそ、なんで会えないんだ?

「あれ? オレンジのお兄さん?」

「その声はバカピンク、通称佐々木まき絵!!」

「が〜ん、普通逆だよね」

まき絵は……本屋ちゃんと移動ですか。

今回の本命だな。

「なあなあ、夕映とかと会ったか?」

「え!! ゆえも出てるんですか?」

「ああ、まあな。だけど、少なくともネギ君目的ではないな」

「?? 他に何か目的があるの?」

「たとえばな、大切な親友の一世一代の勇気をもった行動を無駄にしないため助太刀とか、な」

「…ゆえ……私、がんばるよ」

よし、その意気なら大丈夫か。

さてと、このやる気が続いてるうちに俺は退散しますか。

本当なら、ここで佐々木まき絵と仮契約しておきたかったんだが、状態が状態だからな。

「それじゃ、がんばれよ」


ちくせう、結局誰にも会えないじゃんか。

夕映も千雨もどこ行ったんだよ〜。

ふらりと俺の部屋に…もとい教員の部屋に戻ろうとした曲がり角で…

ゴン!

よろけた拍子に二人の唇が重なる……。

その一瞬で俺は飛び起きた!

「今!!」

ぶつかった相手を見てみると…

「て、転回巡!!!」

「いたた〜、なんでいきなり飛び出すんや! って、ターゲット?」

俺はなぜこんなことになったのかさっぱりわからず立ち尽くした。



Side 一十百

こまったなぁ。

このお姉さん、クロラージュさんの知り合いだと思ったんですけど、

違ったんでしょうか?

「よそ見したら、あきまへんよ〜」

「うぁっと」

いま、ピンチです。

二刀流の可愛い服を着た剣士さんに戦いを挑まれてます。

えっと、月詠さん?とかいう人で、しんめ〜流という剣技を使ってくる同い年くらいのお姉さんです。

「避けてばっかではつまらんえ〜、もっと斬りおうてくれないと」

「僕は剣とか使えませんって……おととっと」

月詠さんの剣は、え〜と速いんですけど……。

ゼロさんに比べると人間味があると言うかなんというか……。

とにかく、避けられるくらいなんです。

「ざ〜んが〜んけ〜ん!」

「よよっと」

でも、当たったら致命傷ですよ〜。

「あぶないですよ〜。僕は気とか魔力とかそう言うのがないんですから〜」

「それにしては上手く避けますなぁ〜」

かれこれ20分は避け続けてますけど……。

さすがに相手の体力が続かなくなってきたみたいです。

「その、そろそろ休憩しませんか?」

「体力が続かなくなったようやなぁ〜」

なんでそんな風ににんまり笑うんでしょうか?

僕のことじゃなくて、月詠さんの体力の心配を…

「ざ〜んく〜せ〜ん!」

「よやっと」

剣から衝撃波が飛んできました。

びっくり!

「月詠さん…でしたっけ? 僕の体力のことじゃなくて、月詠さんの体力が…」

「相手の心配ができる程余裕があるんやね〜」

うう、黒い微笑みが……。

エヴァさんとゼロさんを足して二で割ったら月詠さんみたいになるのかな?

と、とにかく、今は逃げないと。

「にとうれんせ〜ん!」

「ほよっと」

だんだん攻撃に含まれる殺気が多くなってるような……。

斬り合いたいのに避けてるからかな〜…?

僕は刀をもってないし、持ってても僕は使えないし…。

困ったな〜。

「ら〜いめ〜いけ〜ん」

「ほよっと」

「ああん、避けんといて〜な」

「痛そうじゃすまないので無理っぽいです……。ごめんなさい」

あやまっちゃった。

とにかく刀みたいなのを手に入れれば斬り合えるのかな?

避けるときに軽く刀をふれさせる…みたいなので大丈夫かな?


あ、ちょうどいいとこに鉄パイプが!

「よし、これで…」

「やっと斬り合ってくれるんやね〜」

う……。

黒〜い微笑みじゃなければいい笑顔なんですけど……。

えと、剣の心得とか僕にはないので、避けるときに当てるくらいで…

「ざ〜ん…」

「ここで!」

軽く踏み込んで、お腹のあたりにあてる。

「たぁ」

「くぁっ…」

あれ? 結構痛そう…。

そんなに強く当てちゃったかな?

「なかなか速いんやね……。これは、本気でいかんとマズそうやなぁ」

速い? のかな?

そういえば、剣技の途中で当てちゃってるから……。

その剣技より速いという認識になっちゃうのかな?

むむむ、斬られたくないし、痛くさせたくないし、怒らせたくないし……どうしよ〜。

困ったなぁ。

「よそみは…」

あれ? いつの間にか目の前に!!

「いけませんなぁ!」

「ひょぁっと」

か、間一髪だった〜。

今頭の上を刀が通り過ぎたような…

「今のでも、よけられるん?」

「ぎりぎりでした…」

「ずいぶん余裕なぎりぎりやね」

「え?」

いまのって、余裕なのかな?

う〜ん、剣士さんは僕の周りにいないから……、ゼロさんは剣士さんとは違うし……。

剣士さんのぎりぎりはもっと危ないのかも!

刀握りたくないなぁ。

「ざ〜ん…」

そうだ、ここであの刀に鉄パイプを当てればいいんだ。

「が〜ん…」

慎重に、慎重に…

「け〜ん!」

「ここだ!」

タイミングばっちり!

刀はきっと弾かれて……あれ?

鉄パイプが軽くなったような……。

……切れちゃった。

「神鳴流は鉄も切り裂きますえ〜」

「そ、そういうのは、先に行ってほしいな〜」

もうこの鉄パイプ使えないよ〜。


あれ?

今の一撃で、月詠さんの後ろの石垣が……。

あれって、崩れるよね。

あの高さだと、月詠さんは埋まって戦闘不能になるんだけど…

「覚悟はええですか〜?」

うう、気づいてないし。

どうしよう、助ければ僕が危ないし、助けなければ罪悪感が……。

うぇ〜ん、どっちとっても僕にいいことない。

!! なら、人助けした方がいいじゃん!

でももう、言ってる余裕は……ない!

「避けられるはず! たぶん…」

「特攻ですか? あまり関心せ〜へんなぁ」

月詠さんの剣撃をかわして、月詠さんを抱えて右か左に跳ぶ。

考えると簡単なんだけど…。


まず、この剣撃を躱す、かわす……って真正面からじゃちょっと無理っぽいけど。

「もらいましたえ!」

たぶん、この速さなら頬をかすめる程度ですむ、と思うんだけど。

かするくらいならいっか、ちょっと痛いけど…

「…っつ」

かすったけど、大丈夫だった〜 いぇい。

じゃなくて、このまま月詠さんを抱えて、右に跳ぶ!

そうそう、ここまで結構話してるけど実際は1秒くらいだよ。

あれ? 大事な時に電波っぽいのが、まいっか。

「ちょ なにを?」

「間に合え〜!!」

ゴゴゴガガガ……

間に合いましたV。

足が速いのって便利だよね〜、人助けしやすいし。

「なんで、助けたん?」

「え……助けちゃダメでしたっけ?」

「普通なら斬られてまうえ」

「う〜ん、助けられれば助けるじゃダメなのかな?」

「甘いんやなぁ」

甘いらしい。

実戦での斬り合いとか今日が初めてだったし。

「とにかく、ケガはないみたいでよかった〜」


「一旦引きますわ、これ以上斬り合っても何も感じへんしな」

う、それって斬り合う価値もないって言われた気がする。

なんか、悔しさよりも悲しさの方が……。

まあ、二人ともケガがなくてよかった〜。

「いたっ……あ、さっきかすったんだった」

「正面からウチの剣技をうけてそれだけ?」

「? うん、でもギリギリだよ」

「はぁ〜、まあええよ。ちょっとは楽しめたし」

そういうと月詠さんは僕の頬をペロっとなめ……?

「ひぁああ! なんですか?」

「この血の味で今夜はひきあげます〜」

だからって人の頬を舐めないで〜。

「さっきはあんなに近づけんかったのに、今は簡単に近づけるんやな」

「たぶん殺気とかです、僕は何となくでよけてるんで」

「次はきっと追いつきますえ。そうそう巡はんに会うたら帰ってくるように伝えてな〜」

巡さん?

さっきの人かな。

「あ、えと、本当は最初に言うべきだったんですけど、僕は一十百といいます。もしかすると、また会えるかもしれないんで…」

「十百はんね、覚えておきますわ〜」

そういって月詠さんは跳んでいっちゃいました。


帰らないと。

いろいろあったし、巡さんって人に帰るように伝えないと。

……月詠さんか〜。

ゼロさんと仲良くなれそうだから、エヴァさんに頼んで一度エヴァさんのおうちにご招待したいな〜。



ということで旅館に戻ってくると、なんだかよくわからない状況になっていました。

その、ネギ君が増えてる……。

なんで?

考えないことにしよう。


あ、さっきのお姉さんだ!

「巡さんですよね? 月詠さんからの伝言です、帰ってくるようにだそうです」

「? そうなの、ちょっといろいろあったから、伝言通りに動けないの」

あれ? 標準語?

まあ、いっか。


僕も疲れたしね〜ちゃお。

おやすみ〜。

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