小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第二十三話 仮契約の重さ?


Side クロラージュ

…どうしたものか。

事故とはいえ、仮契約してしまったらしい。

あの後すぐにカモの所へ行ったら、しっかり仮契約カードが出ていた。

一応、俺の方が主らしいけど…

「誰っすか、この転回巡って?」

「うぁ〜、なぜこうなったぁ〜?」

「クラスの人じゃないね。クロムさんもすみに置けませんね〜」

朝倉〜、なにをそんなににやにやしてるんだ〜!

「まあ、おれっちは誰と契約してくれても儲かるんで」

まったくこのオコジョは〜!!

とにかく落ち着くか、素数を数えるんだ。

「2・3・5・7・9・11…」

「クロラージュの兄さんが素数を数え始めたっす!!!」

「落ち着いて! というより9は素数じゃないから」

ぐはっ…。

朝倉に指摘された。もうだめだ…

「いま、とてつもなく私をバカにしなかった?」

「放っておいてくれ、ルーデンスの絵を見に行かないと…」

「あああ、完全にクロラージュの兄さんが壊れたっす!!」



しかし、狙った相手以外と仮契約をするのがこれほど精神負担になってしまうとは。

俺もガラスマインドだったのか…?

「あ、クロロさん…? 何があったです?」

ああ、夕映か?

本来なら、仮契約しようと思ってた相手だったのにな…。

「おいおい、なんかすごい落ち込みようだな…」

ちうちう……か。

「何があったです? 一応、その弟子として相談に乗るです」

…いい弟子だ。つくづくそう思わされる。

「実はな……〈かくかくしかじかタイム〉…というわけだ」

「…理解しそこねたですけど、大体分かったです」

「今のでわかるのかよ?」

ちうちうにはまだわからなかったか。

「簡単に言うと、事故で西側の人と仮契約をしてしまった、ということですね」

「そんなとこだ」

「…仮ですから、あまり深く考えなくてもいいのでは?」

「……そうか!!」

確かにそうだ!!

なにをこんなに悩んでいたんだか!

そうだ、これはただの仮契約じゃないか。

はっはっは――――!!

「さすが、我が弟子!! そうだ、ただの仮契約じゃないか!!」

撫でてやる!うりうり〜。

「////ちょ、やめるです〜」

「ただの、って……一応仮にもキスをしてるんだろ? 謝ったらどうだ、その相手に?」

うげぅ、確かに……。

まあ、事情を話せば何とかなる……か?

話してくるしかないな。

「よし、じゃ話してきますか!」

さて、転回巡は部屋に置いてきたから、いるだろ。



Side 千雨

「おい、綾瀬? いいのか?」

「なにがです?」

「クロージュ、仮契約したけど…」

「? 別にかまわないですよ」

そうなのか。

てっきり、私の師に手を出すなです!!とかいって雷を落とすかと思ったけど……。

以外に寛大な精神なんだな。

「逆に千雨さん、これを機に仮契約をしてみてはどうです?」

「!! な、なんでそうなる!」

「クロロさんはいまなら事故で錯乱しているようでしたので、すんなりOKされると思うです」

「この事故に乗じて…かよ。ずいぶんと…」

「もしかすると、千雨さんはこういう仮契約のようなイベントが苦手なのでは、と思ったですから」

確かにな…。

というより、改めて考えてみるとキスだぞ!

肉体的なダメージはなくとも精神面でのダメージが…

「綾瀬は大丈夫なのか? 仮契約」

「私はどちらかというと仮契約する側ですから…」

あ、こいつ知らないのか?

「あのな、エヴァンジェリンが言ってたんだが、クロージュは綾瀬とも仮契約するつもりらしいぞ」

「な!! なんで、そそうなるんですか!!」

あ〜、やっぱ慌てるわな。

「魔法使いの道は辛いらしいからな。それに、クロージュの性格を考えれば仮契約しない訳がないと思うんだが」

「あ、あああ、いいいえ、大丈夫ですです。形式的な契やや約方法ですから」

大丈夫じゃないだろ、今の状態から考えて。

「まあ、お互い頑張るか」

「……はいです」



Side クロラージュ

「って、事なんだが…」

「なるほど。さっきの感触はそれだったんだ」

意外と落ち着いた話し合いが出来ているんだが……。

もっとこう、騒がれると思ってた。

「で、仮契約カードは!」

なんで?

「いや、そのだな。ふつう怒らないか? こういう状況って…」

「怒る? ああ、別にいいよ。キスの一回や二回くらい」

いいのか? というか桁違いに寛大な精神だな。

まあ、本人が言うんだからいいのか。

「とにかく、これが…」

見せようとした途端、恐ろしい勢いでひったくられた。

いや、取らないし。それはお前のだからね?

「これがウチ…ううん、私の仮契約カード…」

「それ、そんなにほしかったのか?」

「当たり前だよ! 私、何の力も持ってなかったんだよ!」

ああ、そっか。

俺には魔法があったからな。

「え〜と…、ラテン語わかる?」

「読めないんだな? 俺も多分読めないが、大体わかるだろ」

そう言うとカードを見せてくれた。


名前表記:TENNCAI MEGURU
称号:Larga pietas per incarnationem (寛大で不憫な転生者)
色調:Luteum(オレンジ)
徳性:audacia (勇気)
方位:septentrio (北)
星辰性:Mars (火星)
ローマ数字:CCXXXIII (233)


よく覚えてないが…

「色はオレンジ、徳性は…勇気だったはず。方位が北で星辰性はマーズ…だから火星か? 数字は233だな」

「よく読めるね〜。転生の付属効果?」

「いや、たしかアスナが似たようなのだった。だからなんとなく…」

「へ〜、とにかく…来たれ(アデアット)!」

そういってアーティファクトを出していた。

お〜い、いいのか東側の中でそんなの使って?

「これ、何?」

出てきたのは四つのリング…。

また輪っかかよ、なんだ今度のは?

「これ腕輪? でも二つが少し大きいし…」

確かに少し細めなのが二つ……腕輪だろうな。

もう二つはそれよりも大きめにできていた。

「首…は一つだし、耳には大きいし…胸なわけないし……」

「足か? 太もものあたりに入れるんじゃないのか?」

「あ、な〜るほど」

そういって躊躇なく四つのリングをつけてしまった。

すると腕輪の宝石…っぽい石の中にIと表示された。

「I アイ? 1かな?」

アーティファクトって使い方が分からないんだよな。

一十百のときはエヴァが使い方を見つけてたけど…

「何かするとIがIIになるのかな?」

そういって、転回巡は跳ねたり正拳を繰り出したりうが〜とか叫んだりしていた。

まあ、Iから変わってないんだけどね…

「ちょっと、クロ! 一応私の主人になったんだから考えてよね」

「クロって俺!? 何か犬みたいじゃないか? まあいいけど…」

面倒な従者を持ってしまったな。

まあ、性格は寛大で天然で…まあいいか。

ルックスは……問題ないな、下手するとネギ君のクラスでも上位に入るほどのスリーサイズのバランス!

あれ? 意外といいキャラじゃね? 俺と同じ転生者だけど。

「こうやって…っとと、きゃあぁ〜」

なんか変なポーズをしてバランスを崩したらしい。

一回転して大の字になってる…あれ?

「転回? 腕輪の数字がIIになってるぞ」

「あれ、なんで? 転がったから?」

そういって前転を二回転ほどすると確かにIIからIVになっていった。

……転回よ、スカートで前転はよくない。

いいかげんに気付いてくれ。

「どうしたん? あ、はは〜、スカートでの前転は目の保養だなと思ってたのかな?」

「いや、そうじゃないだろ。てか、分かってたらやるなよ…」

「だから、別に減るもんじゃないでしょうが!」

減らなきゃいいのか? 良くないだろ…。

「で、この数は何か効果があるのかな?」

「回転数が記載されてるだけなわけないだろ。適当に殴ってみたら?」

そういってスチール缶を渡してあげた。

「よ〜し、吹き飛べー!!」

天井に軽く投げられたスチール缶、それを空中で打ち込む転回の拳。

スチール缶にその拳が当たった瞬間に……。

バキョ……という鈍い音。

壁まで吹き飛んだスチール缶は……まるで車に撥ねられたようになっていた。

「……え゛」

「す、ごいアーティファクトだね…アハハ」

なんだよ、このアーティファクトは!!!


とにかく…

「しまっとけ、ソレ」

「あ〜、そうだね 去れ(アベアット)!」

転回のアーティファクトは自分の体を縦回転させるごとに威力が上がる腕足輪らしい。

一回転でどれくらい上がるかはわからんが……四回転で車……って。

いや、軽トラぐらいか?

とにかく、人の出せる威力じゃなかった。

あぶねぇ…。

「そろそろ、帰ったらどうだ?」

「あ、そうだった。月読さんに帰ってくるように言われてたんだった!」

そういって転回巡は足早に旅館を去って行った。

ついでに帰るときに…

「一応ご主人だからさ…その、この一件が終わったら会いに行っていいかな?」

と言われてしまった。

ああ、正直に言おう。可愛かったさ!!!

何が悪いいいいい!!!

はっ、錯乱してる場合じゃないな。

これで、この夜のイベントはおしまいかな。

まあ、仮契約はできたし、いろいろ面白かったからいいか。

そういえばネギ君は誰と仮契約できたのだろうか。

気になる。願わくば本屋ちゃんであってほしい所だな。

あの頑張りを見てるし。


「どこに行ってたです!」

帰ってきたら、というか旅館入口から戻ってきたらいきなり夕映に怒られた。

なんで?

「まあ…仮契約しちゃった人の見送り、だな」

「そ、そうだったですか」

「そうだ! 誰がネギ君と仮契約できた?」

「はい? 何ですかそれは?」

あ…そっか、このイベントの本当の目的を夕映は知らなかったんだな。

「え〜とだな…〈かくしかタイム〉…てことだ」

「分からなかったですけど、ノドカが裏の世界に足を踏み込んでしまうピンチであることは分かったです!」

「まあ、確かにそうだが…。それを阻止すると、今回の勝利者は少なくとも本屋ちゃんじゃなくなるぞ」

「はっ!! こ、これでは八方ふさがりです…」

「まあ、ここはまず本屋ちゃんを勝たせて、その後裏の事を秘密にしておけばいい。ほら仮契約カードって、アーティファクトさえ出さなきゃ魔法って感じはしないだろ?」

「な、なるほどです。賢いですね…」

いやいや、絶対に夕映のほうが賢いから。

あれ?

「なあちう…千雨は?」

「千雨さんは、不覚にも…」

「ああ、正座か……可愛そうに」

「千雨さんの犠牲を無駄にはできないです! ここは何が何でもノドカに勝ってもらうですよ!」

よし、さすが夕映だ。

「俺も協力するか。で、あとどれくらい…あ」

「どうしたです?」

「ブルーとイエローのグループがあるだろ、あれヤバいから」

「…やはり、一番の強敵ですか」

気が付いてたのか。まあ…

「俺に任せとけ…ニヤリ」


「こっちアルよ!」

「むむ、何かこっちにくるでござる」

「お、いたいた。ブルーにイエロー」

「あ、バカオレンジでござる」

おい、忍者…。

まあいいか。

「ネギ君を探してるんじゃないのか? こっちだぞ」

「おお、ナイスアルよ。オレンジ!」

「まあついてきてくれ」

というわけで……

「すみません、この子たちが抜け出してたので…」

「なに! お前たち正座だ―――!!!」

「は、謀られたでござる!!!」

「ひどいアルー!!」

悪いな。まあ諦めてくれ。HAHAHA!


「どうだ夕映、手際がいいだろ?」

「すごい手際の良さですね。けれど、やるせないです」

「今は人としての感情よりも親友の勝利を狙うんだ!」

「そう、ですね。ノドカのため同じバカレンジャーの二人、犠牲になってもらうです」

ま、これで確実に本屋ちゃんが勝つだろ。

委員長とかいた気がするけど…勝てるわけないな。

さてと…

「夕映、正座させられる前に部屋に戻っておけよ」

「そうですね、ノドカもこれならやれるですね」

あ〜つかれた、それじゃ…

「あ、待つです。その…」

「なんだ夕映?」

「仮契約の事ですけど…」

「ん?どうした、仮契約の事ならエヴァに聞いた方が良いと思うが…」

少なくとも俺より詳しそうだし。

「そうではないです! その、クロロさんは私が仮契約したいと言ったらどうするです?」

「正直、相手にもよるな。ネギ君じゃないのは分かるから…」

「…私は数に入ってないですね。何でもないです」

「?そうか、とにかくおやすみ」

なんだかとぼとぼという擬音が似合いそうな感じになってるな。

どうしたんだか?

「あ、そうそう…」

「なんです……?」

「俺はいつでもいいぞ、夕映との仮契約。てか望むところだ!!キリッ」

「なななな、なにがキリッですか! もう、寝るです!」

なんか、思いっきり枕を投げられた。

なんで? まあいいか。



Side 夕映

しまったです…。

いまのは、誘いに乗っておくべきだったですね。

ノドカにはあれだけ言っておいて、自分の事となるとどうも……。

勇気がないのでしょうか?

「夕映か? どうした?」

部屋に戻るとエヴァさんの機嫌が治ってたです。

「いえ、私には少し勇気というものが足りないと自覚してしまったです」

「何についての勇気かは分からないが…」

そういってエヴァさんが私の顔を覗き込んできたです。

「なるほど…。クロラージュの事だな」

「な…なんでそうなるです?」

「夕映よ、顔に出ているぞククク…」

「…その、エヴァさん。少し相談してもいいですか? 年上の女性として聞きたいことがあるです」

「ん、どうしたかしこまって?」

「その、異性を好きになったときはどうすればいいですか?」

「プッ、なぜ私に聞く?」

「ネギ先生のお父さんのことが好きで追っていたとクロロさんから聞いたですから」

「ぐっ…、まあそのことは忘れてくれ。好意を持つ異性か…」

「エヴァさんは、どうしたですか?」

「追っていた、だけだったな。そう考えてみると私も変わらないのかもしれないな」

そうですか。

これほど度胸のあるエヴァさんでさえ追う事しかできなくなってしまうのですね。

「ありがとうです、私も少し大胆に動かないといけないですね」

「それでだ夕映。いったい何をするつもりだったんだ?」

「その…仮契約を…」

「なに! まさか、クロラージュと仮契約を結ぶつもりか!!」

いきなりエヴァさんが跳ね起きたです。

「そのつもりですけど……エヴァさん?」

「な、なんでもないぞ」

エヴァさんもまさか…

「二股はよくないです。あきらめるですよ」

「ええい、夕映! お前に言われることではないわ!!」

開き直ったです。

まったく、この吸血鬼さんは…

「エヴァさんは妹なんですから、クロロさんに仮契約を申し込むのはどうかと思うです」

「いつ私が仮契約の話をした〜!! というよりも、妹ではない!!」

「マスター、夕映さん。静かに」

茶々丸さんに怒られてしまったです。

「夕映、私は寝るが…」

すっ と息を吸い込んだ気がするです。

「貴様にヤツはやらん」

結局ライバルが一人増えてしまったです。

「エヴァさんも素直じゃないです」


「エヴァさんただいまです」

おや、十百さんが帰ってきたようですね。

「ん……誰と戦ってきた?」

「ふぇ…その、しんめ〜流の月読さんって人と…ちょっと」

「ほう、チャチャゼロなしで勝ったか…」

「え…と、戦っても何も感じないって言われちゃって…」

「あきれて帰られたと言うわけか…」

「そうです……」

まあ、無事に帰ってこれたのだからよかったと思うです。

「それと、その月読さんって人、ゼロさんと趣味が合いそうでした!」

「…よく無事だったですね」

「まったくだ」



「月読さん、どうしたんだい?」

「なかなか斬りがいのある相手がおりましてなぁ」

「…そうかい。転回さんは……いつの間に仮契約をしてきたんだい?」

「フェイトさん! これでウチ戦力入りできそうです!」

「………」

「あ〜、新入り。あんさんに期待させてもらいます。他二人よりずっと信頼できそうや」

「彼女たち、戦力としては悪くないんだけどね」

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