小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第五十二話  決戦、機械仕掛けと白翼の騎士


Sideクロラージュ

「アスナ……、そこまで気にするなって」

「気にするわよ…」

どうやら俺の手を切ってしまったのをかなり気にしているようだ。

手のほうは木乃香に治してもらったから問題ない。

「ほら、無事に治ってるから」

「治ればいいってわけじゃないわよ…」

あ〜、これは深刻だな……。

こういう時は、しっかりと話を聞いてやるのが年上のお兄さんとしての役目だよな。

「あの時、なんで意識がなかったのか、ちょっと話してくれないか? もしかしたら、何か相談に乗ってやれるかもしれないぞ?」

「……あの時、なにか思い出しちゃいけないことを思い出しちゃった気がした」

「思い出しちゃいけないこと? 今は覚えてないのか?」

「うん。それがなんだったのかも覚えてない…」

まさか教えるわけにもいかないよなぁ……。

どうしたものか…。

「アスナ、そういうのは思い出さないほうがいい。思い出しちゃいけないってわかってるなら、なおさらだ」

「………」

「ほら、そんな深刻そうな表情をしなさんな。そのうち思い出すって」

「思い出したとき、またこういう事が起こる……のかな?」

「……起こらないな。絶対に」

「どうしてそう言い切れるのよ!」

「簡単だ。アスナ、お前さんにはこういう時、助けてくれる友達がいるだろ? こういうのは一人で抱え込まなきゃ大丈夫だ」

アスナの表情が少し安心したものになる。

よし、これなら大丈夫だな。

本格的に落ち込まれなくてよかった。

「……そうよね。大丈夫よね」

「まあ、もともとバカレッドなんだから、そこまで深刻にな…」

スパーン!(ハリセンヒット音)

「何がバカレッドよ!!」

「おうう、何故だかわからんが……、こっちのほうが痛かったな」


アスナはネギの事を見に行くと言って選手救護室に向かったようだ。

俺は次の試合が気になるから、いったん会場のほうに向かった。

「あっ、クロラージュさん。手、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ」

会場席には一十百、エヴァ、チャチャゼロが座っていた。

あれ?

次の試合って……。

「なあ、次って一十百とタカミチじゃなかったか?」

「えと、タカミチさんは次の試合出れなくなっちゃったんです」

出れなくなった?

えっと、原作だと……、あっ!

そうか、超に捕まったんだったな。

一十百はそのことを知っているのか?

まあ知らなくっても……言わないほうがいいよな。

「次は私の試合だったんだが、相打ちだったそうだからな。おかげで二試合ぶん飛ばされることになった」

「あらら……」

という事は……次の試合は、刹那とタナカイか?

剣士対剣士(?)になるのか。

それはそれで見ごたえがありそうだな。

「あうぅ……」

「どうした一十百?」

「僕の次の相手って……」

「私だか?」

「緊張してきました…」

まあ一試合目は催眠術にかかった状態で戦ったようなものだからな〜。

ある意味、これが初の試合という事になるんだよな。

「安心しろ、一十。全力でかかってくるがいい」

「ほぇぇ……」

「私に片膝くらいつかせてみろ」

「……頑張ってみます!」

エヴァと一十百の試合が楽しみだ。

次の試合が始まるまでもうすぐ……。

「オイ、十百。最終調整ヲシテモライニキタゾ」

「あっ、タナカイさん!」

カシャンと金属製の音が聞こえたと思ったら、タナカイが真横までやってきていた。

間近で見ると田中さんとはちょっと違うのがわかる。

がっしりとした体格じゃなくて、どっちかというと細身な感じだ。

チャチャゼロの話だと一十百の速度にギリギリ追いつけるらしいんだけど……、本当か?

そんなことを考えている間に一十百は手早くタナカイの調整を終わらせたらしい。

「ドウダ?」

「そうですね、限界突破モードは使えて一分くらいです。それ以上は出力が持ちませんよ」

「アノダメ博士トダメチャイナガ、モット十百ニ機材ヲ渡シテオケバ我輩ノ性能ハモット高カッタ」

「まあ、田中さんが量産するために仕方がなかったんですよ」

「我輩ノ性能ガ田中サン何人分ニ匹敵スルカ……。ソノ程度ノコトモワカラナカッタノカ、ダメチャイナメ」

随分と自信過剰なことで……。

まあ、本当に実力はあるみたいだからな。

まさか、刹那が負けるとは思えないが……、一応聞いてみるか。

「なあ一十百。次、刹那対タナカイなんだが……、どのくらいいけるんだ?」

「そうですね……。基本性能では刹那さんのほうが強いと思います。だから勝負は限界突破モードの一分間です」

「一分で刹那が負けるのか?」

「それまでにどれだけタナカイさんが頑張れるかが勝負ですね」

「ナルホド、実力ガソレホド高イノカ。コレデるっくすガばっちりナラ嫁候補ダナ」

おいおい……。

「オイ、タナカイ。全力デ挑マナイト、勝テネエヨ。ソレクライ強イゼ」

「ホウ。ゼロノ姉ガソウ言ウナラ、本気デ挑ムトシヨウ」

カシャンとタナカイは選手控室のほうに向かっていった。

チャチャゼロの事はちゃんと姉として見ているんだな。

意外だ…。

「ソウイエバ、超ノトコハ大丈夫ナノカ?」

「ふえっ! あ、忘れてました!」

そう言って、一十百はポンと手を打つ。

「心配なので行ってきます!」

「私との試合を忘れるなよ」

「はいっ!」

タンと一十百は地面をけると一瞬でいなくなっていた。

しゅ、瞬動術……、じゃないんだよな〜。

「さてと…」

エヴァも立ち上がった。

「どうした、エヴァ? 試合までまだあるだろう?」

「一十の相手をするからな。少し、準備運動をしておかないとな。別荘に行ってくる」

「そ、そこまで本気になる必要あるか?」

「仮にも赤い翼の一員を倒している。この時点で、本気になるには十分なはずだが?」

「まあ、そうなんだけどな…」

エヴァの周りから強い闘気のようなものが立ち上っている気がする。

これは……、かなり本気だな。

「一十に負けるつもりはない。だが、気を抜けば負けるだろう。全力は出せずとも、本気で挑んでやるとするか」

そう言ってエヴァはログハウスに向かっていった。

「御主人、楽シソウダッタナ。コレハ、面白ソウダナ」

「……一十百が心配なんだが」



Side一十百

「超さん、大丈夫ですか?」

そう言って僕は扉を開ける。

すると……。

「ちょうどいいところだったね」

「あっ、竜宮さん。どうですか?」

「超がダウンしたよ」

「ふぇぇぇ! ど、どうしてですか?」

「説明書が難しすぎたらしい」

せ、説明書……、もっと簡単にしておけばよかったなぁ。

「それで、超さんは?」

「あのゆっくりとかいう生物を枕に眠っているよ」

ふえぇ、とにかく超さんの分まで頑張らないと。

まず、田中さんたちの行動プログラムと世界樹の発光をリンクさせて……

「……すごいな」

「ふぇ?」

「いや、あの超でさえ手も足も出なかったのに、それを易々と」

「超さんは魔法関係の事はそれほど詳しくなかったので……。科学的な部分はたぶん超さんのほうが速いですよ」

「そういうものなのか……」

「はいっ!」

あっ、そういえば……。

「竜宮さん、渡したいものがあります」

「私にかい?」

「はいっ。例の銃弾を使う用のライフルを作ったので、それを渡しておきます」

「……銃まで作れるのかい?」

「見よう見まねで作ったのでちょっと心配なんですけど…」

そう言って金庫の中から一丁の銃を取り出します。

「はいっ」

「……これは」

竜宮さんが構えたり、銃弾を込めたりしています。

「まるで、手の延長線のような、そんな感じにしっくりくる」

「よかった〜。使いやすそうでよかったです」

これでまた一歩、超さんの計画が上手くいきそうです。


あとは……。

「カシオペア四号機の調整をしないと!」

「四号機? アレは三号機までしかないんじゃ…」

あっ、超さんに言うのを忘れてました。

ポケットからカシオペアを取り出します。

「これがカシオペア四号機です!」

「まさかとは思うけど……自作かい?」

「はいっ!」

「………」

なぜか目をそらされてしまいました。

な、なんででしょうか?

「それは……君が使うようなのかい?」

「いえいえ、僕は魔法が使えませんから……」

「超のための物かい?」

「それもそうなんですけど……、もしものためのものです。たぶん一回使ったら壊れちゃうと思います」

「もしも?」

「なんだか……クロラージュさんたち、超さんたちのどちらも望まないことが起こりそうで…」

「……君が計画を支えていても、起こりそうなのかい?」

「僕は神様でも魔法使いでもなく、ただの一般人ですからできることには限りがあります。だから、念のためです」

きっとこの計画は成功させます!

超さんとも、エヴァさんとも約束しましたから!



Sideクロラージュ

タナカイと刹那の試合が始まった。

結局、エヴァも一十百も戻ってこなかった。

「やっぱり、刹那のほうが少し強いな」

「マア、十百モソウ言ッテタカラナ」

タナカイの剣技が下手だとか、タナカイが遅いとかではなく……。

単純に刹那が強い。

ブルーの時にもそう思ったんだが、同じ剣士同士だとはっきりとわかる。

「機械仕掛けながら、かなりの実力者です。驚きました」

「マサカ、嫁候補ガココマデ強イトハ思ッテナカッタ……」

「だから、嫁候補ってなんですか!!!」

何やら話しながら戦っているんだが……。

まあいいか。

このままいけば刹那が勝つな。

「マダ十百ガ言ッテタノヲ使ッテネエナ」

「あの、限界突破モード?とか言うやつか?」

「アア。ソロソロ使ウンジャネエカ?」

そう言ってチャチャゼロが指をさす。

指差した先を見てみると、タナカイが剣を振り上げていた。

「コウナッタラ……、ゲンカイヲコエルシカナイナ!」

「はい?」

タナカイから青く強い光が満ち溢れる。

「ゲンカイヲコエル!!」

剣を構えたタナカイが一足で刹那との間合いを詰めた。

速い!

今までとは比べ物にならないほどだ。

「くっ…」

刹那がその速度に反応してデッキブラシで切り返す。

しかし……、その速度をはるかにタナカイは凌駕していた。

「ダメー!!」

地面すれすれから切り上げるように剣を振り上げる。

刹那の切り返しよりも速かったため、その一撃を直接たたきこまれてしまう。

「かはっ…」

刹那の体が軽く宙に浮く。

ダンと石畳を蹴り、タナカイが浮き上がった刹那を追いかける。

そして、いくつもの剣技を空中で叩き込んだ。

「コレデ終ワリダ―――!!」

思いっきり剣が振り下ろされる。

その一撃をかわすことができずに、刹那は地面にたたきつけられた。

「なっ……、強すぎないか?」

「仮ニモ十百ノ完成作品ダカラナ。半端ナモノジャネエヨ」

「それにしたって、刹那が手も足も出せないなんて」

「ダカラコソ一分シカ持タナインダヨ」

一分って……結構長いと思う。

まさか…、刹那が負けるのか?

「……うっ」

デッキブラシを支えに刹那が何とか立ち上がった。

見るからに、消耗している。

「ホウ、人ニシテハヤルデハナイカ。ダガ、スデニ勝負ハツイタ!」

「…私は、ここで負けるわけには、いきません!!」

長いデッキブラシを腰のあたりに持ってくる。

あれは……居合か?

神鳴流にあったっけ?

「コノ状態ノ我輩ヲ止メラレルトオモウナ!」

タナカイが刹那から少し離れた位置を円を描くように走り始めた。

速すぎて残像のようなものが残ってる!

「全方位カラノ一撃ダ。モラッタ!」

一斉にタナカイが刹那に切りかかった。

「神鳴流奥義! 百烈桜花斬!!」

刹那のデッキブラシが抜き放たれ、円状になったタナカイを同時にすべて吹き飛ばした。

お、恐るべし……。

単なる速さだけなら、今の状態のタナカイのほうが速かっただろうに……。

間合いに入った敵を切る速度のみがそれをはるかに上回ったのか。

「バ、バカナ……。コレガ、嫁候補ノチカラ…カ」

ガシュンと音を立ててタナカイが崩れ落ちた。

「す、すさまじい一撃です! もう、速すぎて何だかわかりませんが、とにかくカウントを取ります!!」

刹那は落ち着いたようにデッキブラシを持ち直した。

「……10!! タナカイ選手、10カウントです!! このため、勝者は桜咲刹那選手です!!」

会場が大歓声に包まれた。

さてと、次は俺か……。


俺が選手控室に行くと、既に小太郎君が準備をしていた。

「おっ、小太郎君。早いな」

「まあ、相手が相手やからな…」

「うん? 俺ってそこまで強いか? 自分じゃわからないんだが…」

「クロラージュの兄ちゃんは強いと思ってるで。ネギといい勝負、くらいか?」

それは褒められてるんだよな。

ネギ君はエヴァの一撃で倒されちゃったけど……。

「小太郎君が相手ならかなり本気で戦えそうだからな。手加減はしないぞ」

「俺かて、手加減はせーへん! 覚悟するんやな!!」

小太郎君から強い気のオーラのようなものが立ち上ってる。

うむむ、結構強そうだな。

勝てるんだろうか?

まあ、せっかくだから、勝ちたいんだが……。

「おっ、そろそろ入場みたいやな」

「そうか。じゃ、お互い頑張りますか!」

そう言って俺は右手を差し出した。

小太郎君も迷わず右手を差し出し、がっしりと握手をした。

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