小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第五十一話  姫君との決戦


Side クロラージュ

刹那とブルーの試合は白熱したものだった。

どっちも高速戦闘を得意としていたから、かなり派手なものになっていた。

結果は……刹那が勝った。

分身もろとも本体に思いっきり斬岩剣を叩き込んだのが勝利につながったな。

デッキブラシでも刹那が使うと本物レベルになるみたいだった。

ブルーのお見舞いに行ってあげたいんだけど、次の次だからな〜。

てか、小太郎君の試合ってとてつもなく早く終わるんじゃ……。


「あんまり時間が無かったな〜」

「何の話よ?」

ついでに今、俺は選手控え室にいる。

アスナがさっさと来なさいと言っていたので早々準備をしている。

「おい……その服装は、なんだ?」

「私だって知りたいわよ!」

朝倉が着るようにって持ってきた服装は、黒を主体としたドレスのようなもの。

今までみたドレスとはちょっと違った、いわゆるバトルドレスとでも言うものなんだろう。

そして、問題なのは……。

「その、な……。もう少し、ちゃんと着たほうがいいぞ。目のやり場に困る」

「////ちょ、ちょっと!! どこ見てるのよ!!!」

「だから、目のやり場に困るといっているだろうが!」

こういうのを着慣れてないのか、危なげな露出状態になりかけている。

人前に出るんだから、もう少しなぁ……。

はぁ、仕方ない…。

「おい、アスナ。後ろを向け…」

「何よ」

「少し手伝ってやる。少なくとも一人よりはいいだろ」

「なんでアンタなんかに……」

「はいはい。それは一人で着られるようになってから言ってくれ」

「……わかったわよ」

さてと、手伝うとは言ったものの……。

ドレスの着付けなんてやったことないからな、適当にやるしかないか。

「とにかく、胸当ての部分をしっかり押さえておいてくれ。後ろの紐で調節すれば動かないはずだからな」

そういって、背中の紐を均等に引く。

そこまでやって、俺は気が付いた。

アスナは……細い。

俺の思っていたよりも体のラインが細い。

そのためにドレスの紐で調節しても、どこかしらに余り布が出てしまう。

「おい……アスナ」

「体型のことは放っておいてよ!」

「いや、体のラインが細くてうまく着付けできないんだよ。もう少しくらい太っていてもいいだろうに」

「え? そ、そう?」

「自分の体型のこともわかってないのか? まあいいか、これでよしっ」

仕方が無いので、バトルドレスの帯紐を強く結んで何とか余り布を出さないようにした。

「どう? さっきよりはまともになった?」

「………」

「?? 何? まだ変?」

「あ、いや、まともだな。武器がハリセンじゃなければ」

「うっさい」

そう言って、アスナは鏡を見に行ってしまった。


正直って、驚いた。

確かアスナは…王家の血を継いでいるからお姫様なんだよな。

バトルドレスは仮にもドレスだから、結構似合っていた。

見とれてしまった…というのが正しいのか?

まあ、エヴァや夕映とかとは別方向の美少女だな。

ドレスとかそういう服を着ればかなり似合うだろうに……。

う〜ん……よし。

「なんか勝負が付いたみたいよ。小太郎君の勝ちだって」

「やっぱり小太郎君のほうか。さて、次は俺たちの番なんだが…」

「何よ?」

「アスナ、俺が勝ったら一十百の作ったドレスを着てもらうぞ」

「はい? なにそれ? 罰ゲームにしても……変というか。そもそも、十百君の作ったドレスなんてあるの?」

「多分無いけど……、後で頼んでみる。とにかく、負けたらそれを着てもらうぞ」

「何を考えてるのよ?」

「いや、あのな、正直言って、今着てるバトルドレスが似合ってるんだよ。だから本物のドレスを着たらかなりの美少女になるのでは?という俺の好奇心だ」

「に、似合ってる? あ、ありがと」

「だから覚悟しろ。手加減する気はないぞ。まあ、俺も負けるとエヴァの特訓が待ってるから負けられないんだよ」

「あっそう。まあ、手加減されるつもりは無いわよ」

さてと、選手入場か。


「さあ、まほら武道会も残すところ後一組となりました!」

朝倉、気合入ってるな〜。

「右手の夕焼け色の髪の男性! クロム・クロロ・クロラージュ選手! 炎を使い数々の強敵を倒してきた、まさに燃える男! 強い意志と、不屈の信念を掲げ、いままほら武道会に降り立ったー!!」

「誰だそれ?」

「アンタでしょ?」

「対するオレンジ色の……おおっと!!」

会場から歓声が沸く。

まあ、なぜかはわかるんだけどね〜。

「バトルドレスに身を包んだオレンジ色の髪の少女、神楽坂明日菜選手! バカレッドという不名誉な称号が付いているが、驚きました!! 服装が違えばどこぞのお姫様のようだ!! 燃える男にどこまで太刀打ち出来るのか、皆さん応援よろしく!!」

おおぉ―――!!!と会場が沸きあがる。

「え、なに? 何? 私、何か変?」

「だから……似合ってるんだって。一応、それもドレスだろ? 似合うやつが着ると、魅力はかなり増すもんだ」

「へ、へぇ〜……。本当に似合ってたんだ…」

「おい! 俺のセンスが悪いといいたいのか?」

「そういうわけじゃなくて、お世辞か何かだと思ってたのよ」

「俺は基本的に本心しか言わないけどな」

「それもそれで、どうかと思うわ」

そう言って、アスナがハリセンを構える。

俺は構えるものが無いから、あくまでも自然体のままだな。

「それでは、第八回戦目、始めっ!!」

始めの合図の直後にアスナが踏み込んできた。

てか、はやい!!

一十百とか、ブルーとかが目立ってて忘れがちだけど、アスナって意外と速い!

「もらったぁ!!」

思いっきりハリセンを振られる。

こんなもの当たったところで、どうということは……。

バゴスッ……。

「ぐばぁぁ……」

「おおっと、プリンセスアスナの一撃がきまったぁ!!」

「ちょっと! プリンセスアスナって何!!」

やべっ……かなりの痛手だ。

ハリセンとは思えない一撃だった。

「くぅ、かなり痛かった。手加減する気はないみたいだな」

「当たり前でしょ? というよりも、直撃したと思ったんだけど…」

「直撃したぞ。俺の能力がなければやばかった…」

「能力? そんなのあったの?」

「教えてやろうか? 俺の能力は、美女・美少女・美幼女に倒されることはない程度の能力だ!」

「……聞いた私がバカだった」

額に手をやり、アスナがため息をついた。

さてと、どうしたものか……。

アスナ相手に魔法は通じないんだよな……たぶん。

まあ、試してみるか。

「焔の4矢」

無詠唱で放たれる炎の矢。

結構速いからアスナに当たると思うんだけど……。

「このっ!」

アスナがハリセンを振るうと炎の矢が弾けて消えてしまった。

やっぱり、魔法はダメか…。

そうなると、打撃のみでアスナを倒すことになるのか…。

結構厳しいな。

まあ、やってみるか。

「いくぞっ!」

足に魔力をため、一気に蹴りだす。

そして一瞬でアスナの目の前まで行く。

いつもなら当身になるんだけど、今回はうまく止まれた。

「えっ!!」

「遅い!」

軽く握った拳打をアスナめがけて放つ。

「かはっ…」

「あれ? 結構…手加減したよな…」

ぐらりとアスナが倒れた。

そ、そんなに強く打ったつもりは無いんだけどな……。

「ここで、燃える男の容赦の無い一撃だ―――!! これは辛いか? 明日菜選手立てるか?」

「この程度、どうってこと無いわよ!」

ゆっくりとアスナが立ち上がった。

かなり効いたのか、打ち込まれた部分を押さえながら立っている。

「…本当に手加減してこないなんてね。アンタの事だから、始めはかなり手加減してくると思ったんだけど…」

「かなり、手加減したぞ。多分、三割…くらいだったと思う」

「うそ……。それで、今の威力…」

「やっぱり、結構痛かったんだな。もう少し、手加減するか?」

「うっさい!!」

ダンと石畳を蹴ってアスナが踏み込んでくる。

速いことには速いんだが、攻撃が単調で避けやすいというか…

「もらったっ!!」

「あまいっ!!」

振り下ろされたハリセンを左手で弾く。

最初の一撃で大体の威力がわかったから、左手で十分だ。

予想通りハリセンは左手で弾くことができた。

あとは……

「ここだっ!」

軽く手を前に突き出す。

ねらい違わず、俺の拳打はアスナの腹部に命中した。

「うぐっ…」

カクンとアスナが膝をついた。

「明日菜選手の攻撃に対し、見事なカウンターだ!! この実力の差は埋まらないのか!!!」

いや、俺はそこまで強くないから。

アスナがまだ咸卦法を使ってないから勝ててるんだけどな。

「うっ…、やるわね」

「攻撃が単調だからな。カウンターを合わせやすいんだよ」

「簡単に勝てると思ってたんだけど…、厳しいわね」

まあ一応、実戦経験の差があるからな。

主にエヴァの特訓で…。


「さて、どうする? まだやるか?」

「当たり前でしょ!」

そろそろクウネルがアスナに咸卦法のやり方を伝授すると思うんだけど…。

まだか?

「なあ、アスナ。頭の中に誰かの声が聞こえてきたりしないか?」

「何言ってるのよ…。別にそんな声、聞こえてこないわ」

うん?

なぜだ?

……もしかして、一十百が粉々にクウネルの分身を砕いたからか?

これは…困ったな。

………仕方ない。

「アスナ、左手に魔力、右手に気を作って合わせてみろ」

「意味わからないわよ! まず、魔力とか気って私にあるの?」

「ほら、そのハリセンから魔力で、気は何とか頑張って作ればいい。多分、タカミチほどじゃないけど、それなりのが出来るはずだ」

「適当ね…、というかなんでそんなこと教えてくれるのよ?」

「このまま一方的にやられるのって、嫌じゃないか? 確かに勝ちたいが、俺だって少しは苦戦したい」

「…また、アンタの言うロマンってやつ?」

「まあ、そんなとこだ」

やれやれって感じで肩を落とされた。

「まあ、負けっぱなしは正直言って嫌だからやってみるわよ! ええと、左手に魔力、右手に気…」

アスナが右手と左手を見ながら集中している。

すると、確かに魔力と気が両手に集められている。

「それをあわせると、上手くいくはずだ」

「こう? うわわっ!」

ボンという衝撃のあと、アスナの周りから淡い光があふれ出した。

おお! 出来るじゃないか!

「何だ、ずいぶんと簡単じゃない」

「それは……、多分才能だと思うぞ。それでどうだ?」

「体が軽くなった気がする。これなら…」

キッ、とアスナがこっちを睨み付けた。

そして…

「もらったぁ!!」

ほぼ一瞬で間合いをつめられた。

速い!

今までとは比べ物にならない速さだ。

それに今、振り払われてるハリセンの威力も桁違いになっているだろう。

こうなったら、両腕で防ぐしかない!

「よし! 我流・十字防御(クロスガード)!!」

単純に腕を十字に交差させて防御するだけなんだけど、技名があったほうがなんとなく耐えられる気がする。

そうだ、所詮はハリセン。

簡単に防御できる…

バシュン!!

「ぶべらっ!!」

…と、思っていた時代が俺にもあったよ。

ガードした腕もろとも吹き飛ばされた。

今までの一撃とは本当に桁違いだ……。

これは、マズイ。

「明日菜選手の一撃が決まった―――!! クロラージュ選手のガードもろとも吹き飛ばす一撃、これは強力だ!!」

「ちょ、アスナ。手加減、手加減頼む!」

「断るわ! やぁぁぁ!!」

ダンと石畳を強く蹴り、アスナが高く飛び上がった。

そしてそのまま、ハリセンを振り下ろす。

あれに当たったら…マズイ!

撤退(えすけーぷ)!」

俺は右側に大きく跳ぶ。

直撃を避ければどうということは…

「遅いわよ!!」

「ぐべらっ…」

振り下ろした直後に振り払われた。

おかげで思いっきりわき腹に直撃した。

ゴロゴロと石畳の上を転がる感覚が伝わってくる。

これは、本気で勝てないかもしれない…。

「どう? …あれ?」

「うん?」

何とか俺が起き上がると、アスナから淡い光が消えていた。

「あれ? 何で消えちゃったの?」

「ガス欠…ってわけじゃなさそうだな。 まあ、もう一回やれば元に戻るだろ」

「左手に…」

あ、言わなきゃよかった…。

気が付いたときにはもう遅く、アスナからまた淡い光があふれ出していた。

「マジか…うん?」

なんだかアスナの様子が変だな。

どこか、遠くを見ているような瞳をしている。

それに、周りの光が大きく揺らめいてるような……。

!! そういえば、原作だとアスナが昔のことを思い出して……。

俺がそのことに気が付いたとき、アスナからは今までとは比べ物にならないほどの光があふれ出ていた。

ハリセンも、ハマノツルギの状態になってる。

…逃げるか?

「いや、そういうわけにもいかないだろうな」

仕方ない、とめるか!

多分強いショックでも与えれば正気に戻るだろう。

よし、まず足に魔力を溜めて…

「当身瞬動!」

一気にアスナとの間合いをつめる。

そして、思いっきり…

「………」

ブン!

「おうわっ!!」

拳打を打ち込もうとした瞬間、そこにハマノツルギが振り下ろされた。

一歩間違っていたら、腕を叩ききられてたな。

危なかったな…。

しかし、今ので一撃与えられないとなると……。

「仕方ない! 多少のダメージは覚悟するか!」

出来る限りの魔力を右手に込める。

まあ、アスナに対してだと余り効果はないけど、ないよりはましだ。

そして、もう一度、拳打を叩き込む。

「………」

それに合わせるように思いっきり、ハマノツルギがなぎ払われる。

そう、これをねらってたんだ!

「はぁぁぁあ!!!」

なぎ払われたハマノツルギの刀身を魔力の込められた右手で掴み止める。

完全に止めることは出来ないが、押さえ込むことは出来た。

あとは……

「起きろ、バカレッド!!」

アスナの頭に左手で拳骨を落とすだけだ。

ゴン☆

「いたっ!! あれ……私…さっきまで」

「やっと正気に戻ったか。まったく、手間をかけさせるなよ」

「正気って……、あっ…アンタ…手……」

「手?」

右手を見てみると、かなり深く切ってしまったようで真っ赤に染まってしまっている。

魔力の壁もアスナの前では役に立たなかったようだな。

直に刀身を素手で止めた状態になってしまったみたいだ。

「それ…、私が…やったの?」

「まあ、そうだけど……。意識なかっただろ?」

「…うん」

「それなら、仕方がないな。事故だと思ってあきらめるか」

「でもっ!!」

「あ〜、はいはい。言いたいことは選手控え室で言ってくれ。一応、反則負けだからな」

「反則って…」

「ほら、刃物は使用禁止だから、反則だ」

「そんなことよりも!!」

「別にそれほど……いや、普通に痛いな。てか、朝倉〜、さっさと反則負けの宣言をしてくれ」

「あ、コホン。神楽坂明日菜選手、刃物携帯および使用により反則負けです。よって、勝者はクロラージュ選手です!」

歓声が沸く。

まあ、かなりの痛手を負ったが、勝てた。

アスナも正気に戻ったし、良かったんじゃないのかな?

さて、次の試合までに右手を完治させないとな……。

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