小説『織斑一夏の無限の可能性』
作者:赤鬼()

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Episode26.5:学年別トーナメントに向けて―おまけ―




*◇*◇*◇*◇*◇*◇*


―――話は遡る事、ラウラと鈴のキス騒動後となる。

鈴は浮かれていた。想い人である一夏とキスをしたのだ。まぁ、一夏にとってはセカンドキスだというのが癪であったが、鈴にとってはファーストキスである。

一生の思い出となるファーストキス、それを中学時代からずっと想いを寄せていた一夏としたのだ。浮かれないわけがない。

しかも未だに鈴の舌は一夏の唇を堪能した感触が残っている。


(あたしの舌と一夏の舌が絡み合って、お互いの唇を貪るように舐め回すいわゆるハードなキス......気持ちよかったなぁ......)


いつも放課後は一夏との特訓に付き合っていた鈴だが、学年別トーナメントまではペアを決めた者同士の特訓を優先しようという事で個別に行っていた。


「ふんふんふーん♪」


鼻歌交じりにアリーナから自室を目指す鈴。いつもなら長く感じる距離も今日に限っては全く気にならない。途中、何度か学園の生徒とすれ違い、妙に浮かれている鈴を訝しげな視線で見つめてくるが、鈴は全く気にならなかった。

一夏を狙う恋敵(ライバル)は多い。その中で鈴は先日の一件で他の恋敵に差を付ける事に成功した。これ程、喜ばしい事はない。

ただ、まだ油断が出来ない事も鈴は理解している。

今月末に開催される学年別トーナメントの優勝者には一夏との初夜が贈呈されるのだ。

鈴は自分の処女は一夏に捧げると中学時代から心に決めていたりもする。だからこそ負けられない。


(優勝するには強いパートナーが必要よね? 他の専用機持ちで可能性があるのはセシリアだけど......さすがに一歩リードした私とは組もうとしないはず......それなら専用機持ちじゃなくても実力の高いパートナーが必要不可欠ね......)


鈴はもちろん、学年別トーナメントに参加するつもりなのだが、未だにパートナーが決まっていなかった。

ただ、優勝を狙う以上は強いパートナーが必要となる。

現時点でパートナーが決まっていない実力者は専用機持ちではセシリア、専用機持ち以外では箒、そしてルームメイトのティナ・ハミルトンがいる。

ただ、鈴にとってセシリアに箒は一夏を狙う恋敵である。

その二人を出し抜き、キスまでした鈴と組もうとしない事は容易に想像できたりする。

彼女達も一夏を本気で想うが故に、自分が一番でいたいという願望が強い。

だから、この二人は自然にパートナー候補から外す。

残るはルームメイトのティナ・ハミルトンだが、彼女は専用機こそ持っていないが、実力は高い。しかもティナ・ハミルトンは一夏に対して、世界で一人だけの男性IS操縦者としての興味は持っているが、一人の男性として好意を持っているわけではない。

つまり、ティナ・ハミルトンは鈴にとっても都合がいいパートナー候補だったりするわけである。


(よしっ! ティナを誘おう)


そして自室の前に戻った鈴は勢いよくドアをバンッ! と開け放ち、部屋の中にいるであろうティナに帰宅の挨拶をする。


「たっだいまぁ!」


突然の大声に吃驚するのは当然だろう。

ベッドの上で寝転がっていたルームメイトは鈴の元気が有り余った大声に目を丸くしていた。

手に持っているのは薄い漫画本。

ページ数は普通の単行本よりも全然少ないのだが、値段はジャ○プコミックスよりも高い。―――そう日本の文化とも言える、所謂、同人誌というものであり、ティナが手にしていたのは悪魔が執事をしている漫画をもとにしたBL本である。

そう、ティナ・ハミルトンは日本に来て早々に腐女子化したのだ。

初めて触れるアニメや漫画といった二次元文化に心奪われ、色んなグッズを買い漁っていたりもする。


「また、あんたはそんな漫画ばっかり読んで〜」


「いいでしょ、別に。好きなものは好きなんだから」


鈴から見てもティナ・ハミルトンは美人だ。口惜しい事に胸も大きいし、その上、腰もくびれている。いわゆる出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでる、ナイスプロポーションの持ち主だ。

しかも金髪碧眼で可愛いというよりも美人といった印象を受ける彼女なのだが、いかんせん趣味が腐っているので、現実の男に興味を持つ事もない。

勿体ない......とも思える人物なのだが、二次元にしか萌えないからこそ今回は都合が良かったりもする。


「ねぇ、ティナ。今月末の学年別トーナメントのパートナー、まだ決めてなかったでしょ?」


「まだ決めてないわね」


「よかったら、あたしと組んでほしいの! お願い!」


パンッ! と手を合わせ、ティナにお願いする鈴。


「そうね〜、どうしようかしら? もともと自由参加だし、めんどくさいかなぁって思ってたんだよね」


そう、ティナ・ハミルトンはめんどくさがりでもある。だから、今回の学年別トーナメントは不参加でもいいか、と考えていた。


「優勝できたら......ティナの好きな同人グッズ5個買ってあげる!」


ピクッ。鈴の言葉にティナは少しだけ反応する。

その反応を鈴は見逃さなかった。


「それなら6個でどうだ!」


ピクピク。ティナは迷っていた。トーナメント参加はめんどくさいが、同人関係のアイテムがただで手に入るのはティナにとってもメリットがある。


「10個......これは譲れないわ」


「〜〜〜! まぁ、いいわ......10個で手を打ちましょう」


「OK。契約成立ね」


お互いに握手を交わす鈴とティナ。

鈴は一夏との初体験のために、ティナは目当ての同人関係のアイテム収集のために、今この時、二人の利害が一致し、タッグを組む事になったのである。




【ティナside】


ふふふ、ただで同人グッズが手に入るなんて......嬉しい誤算だわ。

学年別トーナメントに出場するのはめんどくさいけど、まぁ同人グッズゲットのためにも頑張りますか。


「そういえば、学年別トーナメントに参加する人って、どれくらいいるの? 一組の専用機持ちの人達は皆、参加するのかしら?」


一応、ライバルになりそうな人がどれくらいいるかはチェックしておかないとね。優勝しなきゃ目当ての同人グッズが手に入らないしね。


「そうね、一組の専用機持ちは皆、参加するはずよ」


「四組の専用機持ちは?」


「え? 四組にも専用機持ちっていたの?!」


あ、あんたねぇ〜。仮にも代表候補生のくせに他の専用機持ちの情報が少ないって、どういう事よ......。呆れて溜息しか出ないわ。


「まぁ、大丈夫よ。あたし、そんな簡単に負けるつもりもないし」


鈴は自信満々のようだ。確かに鈴の実力は同年代においては専用機もあるという事を差し引いても高かったりする。


「取り合えず、これからトーナメントまでは放課後は毎日、特訓だからね」


「えー、めんどくさい......。でも、まぁ、優勝のためにも仕方ないかぁ〜......」


優勝しなければ、同人グッズが手に入らない。だから何が何でも勝ちに行く。

考えられる限り、要注意人物なのが、織斑一夏。

彼は、あの世界屈指の実力を持つ伝説的IS操縦者『ブリュンヒルデ』織斑千冬の弟であり、世界唯一の男性IS適合者だ。

IS学園で初めてISに触れたにも関わらず、一組のクラス代表決定戦で入学試験の座学主席で、実技試験では教官を倒して合格したイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットを下し、クラス対抗戦では目の前にいる中国代表候補生の鈴と互角以上の勝負をしていた。未確認ISの乱入さえなければ、勝っていたのは織斑一夏の方かもしれないと思えるくらいに強かった。

さらには前に一組と合同で行われたIS実習では元日本代表候補生である山田先生と互角に渡り合っている。

間違いなく彼は強い。だからIS操縦者として興味はある。

まぁ、見た目も整ってるし、かなりの女子が熱を上げているが、正直、私は三次元には興味がないから男として見ているわけではないけど。

セ○スチャンみたいな感じだったら、コロッといっちゃうかもしれないけどねー。

他にも一組にはフランス代表候補生のシャルル・デュノアやドイツ代表候補生のラウラ・ボーデヴィッヒとタレント揃いでもある。

苦戦は必至だ。

でも、私には負けられない戦いがある。

ふふふ、絶対に優勝してみせるわ。そして夏の新作を大量にゲットしてみせるっ!

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