小説『織斑一夏の無限の可能性』
作者:赤鬼()

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Episode27:欲望蠢く学年別トーナメント開催




【一夏side】


皆様、お久し振りでございます。

この作品の主人公、そう主人公である織斑一夏です。

約1ヶ月......そう、約1ヶ月間、俺の出番が無かったわけで......


............


.........


......


...


ど う い う こ と だ !!

さて、ここで皆様にも『主人公』という立場の定義を説明しておこうと思う。

そう、主人公とは、ストーリーの中心となり物語を牽引していく人物・キャラクター。 主人公の役割を演じる者は主役と呼ばれる。 (※某フリー百科事典参照)

そう、物語を牽引する重要な立場であるはずの主人公が、約1ヶ月間も放置!?

おかしいだろ? なぁ、おかしいだろォ?

何で、俺無しでおまけが2回もあんの!?

1回にしろよォォォーーー!

ただでさえ、残念とか言われてんだからさァァァーーー!!

そりゃ、ところどころでおっぱいスカウターとかさ、伝説のおっぱい戦士だ、とかぬかしちゃったけどさ、さすがに1ヶ月間も出番が無い主人公って、どうよ!?

別にセルの自爆に巻き込まれてもないし、某ハンター漫画みたいに作品自体が休載してるわけじゃないじゃないかァァっ!


「......か。 ......ちかっ! 一夏っ!」


ふと、自分を呼ぶ声に気付き、後ろを振り返ると、むすっと頬を膨らませたシャルロットがいた。


「もうっ! どうしたの、一夏。 さっきからぼーっとして?」


「あぁ、悪い。 ちょっと......自分の存在理由について、考え事をしてたんだ......」


「????」


俺の言った事がいまいち理解できなかったんだろう、目の前のシャルロットは首を傾けている。

しかし、何だ。

目の前のシャルロットが女の子と分かっているせいで、こういう何気ない仕草が女の子らしくて、たまにドキッとする。


「? どうしたの? 何か顔、赤いけど?」


「い、いや! な、何でもないっ!」


さて、今、俺とシャルロットはアリーナの更衣室でISスーツを着て待機している状態だ。

そう、今日から六月も最終週に入り、IS学園は月曜から三日間、学年別トーナメントが予定されている。今日がその初日なのである。

五月にあったクラス対抗戦も各国のお偉方が集まった大規模なイベントであったが、学年別トーナメントは全学年別で行われるため、クラス対抗戦が比較にならないくらいに慌ただしく、全生徒が雑務や会場の整理、来賓の誘導に駆り出されていた。

特に今年は新入生に専用機持ちが多い事もあって、各国の注目度が半端なく高いのだ。

ここ最近は山田先生はもちろんの事、千冬姉も準備に大忙しといった感じだった。

更衣室のモニターから観客席の様子を伺う事ができたので見てみたのだが、見渡す限り、人・人・人の群れである。

まるでワールドカップのような盛り上がりだ。

そして観客席に映る顔ぶれがまた凄かったりする。テレビでしか見た事のない海外の大統領に各国政府関係者、研究所員、企業エージェント、その他諸々の顔ぶれが一堂に会しているのだ。驚くなというのが無理な話だ。


「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね。 一年には今のところ関係ないみたいだけど、それでもトーナメント上位入賞者にはさっそくチェックが入ると思うよ」


ほぇー、本当凄いな。しかし、このトーナメントで俺は優勝しなければならない。

何故なら、俺の貞操が一大事だからだ!

大事なところだから、もう一度言おう......

俺の貞操が一大事なんだっ!

しかし、今回のトーナメントは強敵揃いである。 しかし、俺には心強いパートナーがいるっ!


「シャルロット、絶対に優勝しような」


「もちろんだよっ! (一夏の初めては僕が頂くからね♪)」


シャルロットとも何度か模擬戦をした事があるが、本当に強いのだ。

シャルロットの得意技でもある高速切替(ラピッド・スイッチ)―――大容量拡張領域(バススロット)を使って、通常1〜2秒かかる量子構成をほとんど一瞬で、それも照準を合わせるのと同時に行う、この技に俺も苦戦した。

敵にすると厄介だが、味方にするとこれほど心強いパートナーはそうはいない。


「さて、そろそろ行くか」


「そうだね」


お互いにISスーツへの着替えは済んでいる。 俺はIS装着前の最終チェック、シャルロットは男装用スーツの確認をそれぞれ終えた。


「そろそろ対戦表が発表されてるから見に行こうよ」


「そうだな」


俺達は二人でトーナメントの対戦表が発表される待合室に向かうため、更衣室のドアを開けると、何故かそこには一人の女生徒がいた。

制服のリボンの色から二年という事が分かる。何故か片手に扇子を持って、やたら笑顔な美人さんがいた。

さらに俺のおっぱいスカウターが反応している......目の前にいる先輩のおっぱいが制服を着てても分かる位にその双丘は立派にその存在を主張している......。


ゴクッ......。


ただ、本能が告げているのだ。

今すぐにでもむしゃぶりつきたいおっぱいの持ち主が目の前にいるが、本能で目の前の先輩が危険である、と―――。


「あら? あらあら?」


口端をニヤリと吊り上げ、腕を組む、すると、どうだろう。唯でさえ、立派に自己の存在を主張していた双丘がさらに強調されているじゃありませんか!?

ヤバい。

目の前の人物に対して、危険だと本能が告げている。危険を回避するためにも直ぐにこの場から立ち去らないといけないのに、目の前のおっぱいから、目が......目が離せないのだっ!


「......一夏......」


ゾクゾクゾク。

俺の直ぐ後ろにいたシャルロットさんから絶対零度の視線を送られる。まさしくこの状況は、前門の虎、後門の狼といった感じではなかろうか?

いかん! おっぱいに見惚れてる場合じゃないぞ、織斑一夏っ!

ここは少しでもこの状況から脱しなければ!


「ねぇ、君が織斑一夏君でしょ?」


状況を脱するための策を思案していたら、目の前にいた先輩が俺に声をかけてきた。


「えぇ、そうですけど......。 先輩は?」


「私はこの学園の生徒会長、更識楯無。 よろしくね。 で、そっちの子がフランスの代表候補生で......”今は”シャルル・デュノアって名乗ってるんだっけ?」


”今は”―――!?


―――この先輩、シャルロットの正体に気付いてるっ!?

シャルロットも正体がバレていると思ったのか、顔面蒼白に肩を震わせている。

俺は直ぐにシャルロットを後ろに隠し、先輩と対峙する。


「先輩、何が目的だ?」


ありったけの敵意を視線に込め、目の前の先輩を睨みつける。シャルロットは俺が守る、と誓った。いくら目の前の先輩が美人だろうが、シャルロットに害が及ぶなら全力で排除する。


「大丈夫。 私はあなた達の敵じゃないし、後ろのシャルル君でいいのかな、今は。 正体をバラすつもりもないから安心して」


先輩はシャルルの正体に100%気付いている。 でも、何故バレたんだ? まだこの学園で知っているのは俺だけなはず。


「何で気付いたのか、気になる?」


首を縦に振り、疑問を肯定する。


「まぁ、裏工作を実行する暗部に対する対暗部用暗部、更識家の当主として、そして生徒会長として、学園に入る新入生のデータはチェックしているしね」


IS学園には毎年、全世界から生徒が集まる。

いくらIS学園があらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約があろうとも、入ってくる生徒の中にはよからぬ思惑を胸に秘めている者もいるのだろう事は予想できる。

だからこそ、この学園には先輩のような存在が必要になるのか?


「それじゃあ、先輩は何の用でここに?」


「それは織斑一夏君を一目見ておきたかったからだよ。 本当はもっと早くに会いに来たかったんだけど、つい最近まで忙しくてね〜」


「そうなんですか。 じゃあ、俺達はこれで」


シュタッ! と手を上げ、目の前の危険から退避すべく、撤退を開始する。

敵意がないのは分かったが、それでも直感で目の前の人物が危険だと感じるのだ。


「あらら、つれないわね〜」


後ろからそんな声が聞こえたが、俺はシャルロットの手をひいて、逃げたのであった。




【楯無side】


私から逃げるように去っていく織斑一夏とシャルロット・デュノアを眺めながら思う。 ―――織斑一夏、彼は間違いなく強者の部類だ。

彼はなかなかに見所がありそうだ。 弄ったら、どんな反応をしてくれるんだろう?

既に最初のやり取りで彼女の尻に敷かれてるような気もしたけど......。

シャルロット・デュノアの誰も知らないはずの事情を仄めかしてみたら、彼は彼女を守るように敵意を剥き出しにしてきた。

多くの女生徒が、そして各国の代表候補生が彼を慕っている、と報告を受けている。 まだ軽く話した段階でしかないが、スケベである事は間違いない―――私の胸を凝視していたし。

でも、それでも尚、芯が通っているというか、彼女を守るという意思が私にも伝わってきたし、彼女からすれば、あれ程頼もしい存在もいない。

だからこそ、彼が慕われる理由は分かる気がする。


「織斑一夏......か」


もしかしたら、彼なら、”あの子”の心の闇も取り払ってくれるかもしれない。 

ドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒを変えてしまった彼ならば―――。

そして彼ならば、この私をも超える存在になるかもしれない―――そう期待してしまう。

IS学園の生徒会長は最強でなければならない。 その称号に負けないように、私は最強であり続けた。

更識家の当主として―――

IS学園の生徒会長として―――

学園唯一のロシア代表として―――

私は寄せられる期待に応え続けた。

普段の私を知る者は飄々としてとらえどころのない人物として私を見る。

誰も本当の私を知らない。

私だって、まだ年相応の少女でいたい、たまには誰かに甘えてみたい、と思う事がある。 でも、それは許されない。 本音を漏らしてしまえば、敵対する者に付け入る隙を与えてしまう。 だから、私は常に気を張り続ける。 いつもの態度はそれを周囲に悟らせないため。

そんな毎日だったある日、世界を騒然させたあのニュース―――世界の常識を変えてしまったIS、これまでは女性しか扱えなかったものを、一人の男の子が動かしたというのだ。

私は直ぐに彼を調査した。

彼は、あの世界最強であるブリュンヒルデの称号を持つ織斑千冬の弟ではあったが、それ以外に特筆すべきものは見当たらなかった。

この世界の常識で、女性は早くからISに触れるが、男性はISに触れる事すらない。

それは織斑一夏も例外ではない。

彼もあのニュースになった日までISに触れた事が無かったその他大勢の男性と変わらなかったはずだ。

なのに、彼はIS学園に入学してから、先ずイギリス代表候補生であるセシリア・オルコットを負かし、クラス対抗戦では中国代表候補生の凰鈴音を圧倒し、乱入してきた敵をも退けてしまった。

先月もドイツ代表候補生であるラウラ・ボーデヴィッヒの暴走の鎮圧に一役買っている。

これだけで彼が異常だという事が分かる。

IS学園に入学するまで、ISに触れた事もなかった初心者が各国の代表候補生といい勝負をするどころか負かしてしまう。

ブリュンヒルデの称号を持つ織斑千冬の弟といっても、IS初心者が、エリートとも言える国の代表候補生と勝負して勝ってしまうなど、有り得ない事なのだ。

しかも彼は既に単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)までをも発動させたばかりか、”進化”させた。

発動すら滅多にない事なのに、”進化”させるなんて聞いた事もない。

あの織斑千冬でさえ、単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)を進化させる、なんて非常識極まりない事はしていない。

ISには謎が多く、全容は明らかにされていない。 特に心臓部であるコアの情報は自己進化の設定以外は一切開示されておらず、完全なブラックボックスとなっているのだ。

ISを開発した篠ノ之束博士は言っていた。 ―――ISは進化する―――だからといって誰でも出来る事ではないし、ましてや単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)までをも進化させるなんて聞いた事もなかった。

これまでの常識を覆してしまった存在である織斑一夏。 だからこそ、彼に対する私の興味は尽きない。 


「織斑一夏......ね。 彼なら私を―――」


そんな期待を胸に私は彼が走り去っていった方角を見つめていた―――。





*◇*◇*◇*◇*◇*◇*




【一夏side】


「ねぇ、一夏? さっき、あの人の胸ばっかり見てたでしょ?」


「な、な、な、何を言ってるんだ! そ、そ、そんなわけないだろ」


「そうだもんね、一夏は。大きい胸の女性がいたら、直ぐに見惚れちゃうもんね」


対戦表が発表される待合室に向かう道中、隣のシャルロットはジト目という視線を俺に向けながらも、さっきの事で俺を責めてくる。

ただ、俺は確かに無類のおっぱい好きだが、大きいおっぱいじゃなく小さいおっぱいも愛せる伝説のおっぱい戦士だ。 そこは否定させてもらうっ!


「そんな事はないぞ! 小さいおっぱいでも俺は愛せるっ! 巨乳しか愛さないなんて、そんな二流がやる事、俺がするわけないだろ」


「はぁ〜......」


俺の言葉にシャルロットは大きな溜息を吐く。 俺、何かおかしな事言った?


「......なんで、こういう時は堂々とスケベな発言するくせに、何でいざとなったら逃げちゃうんだろ? 一夏のいくじなし......」


何かシャルロットがさらにジト目でブツブツ文句を言ってるようだ。 あまりに小さい声なので聞き取れなかったが......。

そんなやり取りを繰り返してたら、待合室に到着した。

中には既に出場する女生徒で溢れ返っているような状況だった。

見渡す限り、女・女・女......。

何も知らない男が今の俺を見たら、一夏もげろとか言われるかもしれないが、女性しかいない環境というのは本当に大変なのである。

同性がいないから、気の休まる暇もないし。 まさに針の筵とはこの事だ。


「見て見て。 織斑君とデュノア君よ」


「え!? どこどこ?」


「きゃー、IS学園で男×男のカップリングが見れるなんてぇ〜」


「織斑君はかっこいいし、デュノア君はかわいいしね♪」


ふむ。 後半、不遜な言葉が聞こえてきたが、敢えて気にしないでおこう。 気にしたら負けだと思うんだ。

後、一応言っておくが、俺は女にしか興味がない。


「一夏にデュノア、遅かったな」


「箒か。 もう対戦表は発表されたのか?」


先に来ていた箒にセシリアのペアが俺達を見付け、声を掛けてきた。 どうやら、既に対戦表が発表されているみたいだ。


「箒とセシリアはどこのブロックなんだ?」


「わたくし達はCブロック三組目になりますわ」


今回の学年別トーナメントは全学年全てが参加する。よって、第一アリーナを三年が。 第二アリーナを二年が。 第三アリーナを一年が使用する事になっており、一年の部だけで総勢三十二組が出場する事になっている。 そして、八組ずつブロック分けをし、トーナメントが行われる。

これだけの参加数なので当然、長丁場で行われる予定であり、月曜日がA・Bブロックの一回戦を一日かけて行い、火曜日にC・Dブロックの一回戦を行う。ちなみに一回戦の対戦時間制限は三十分となっている。

水曜日にA・Bブロックの二回戦、木曜日にC・Dブロックの二回戦、対戦時間制限は一時間で行われる。

金曜日に各ブロックの三回戦、こちらも対戦時間制限は一時間で行われる。

そして最終日の土曜日の午前にA・Bブロックの勝者との対戦、C・Dブロックの勝者との対戦、対戦時間制限は一時間で行われ、午後に決勝戦、時間無制限で行われる。


「すると箒達は試合は明日からになるのか」


「そうだな、一夏達はどこのブロックになったんだ?」


「えっと......」


トーナメント表を映しているモニターに視線を向け、自分達の名前を探す。


「一夏、あったよ。 僕達、Aブロックの四組目みたい。 最初の対戦相手は......谷本さんと夜竹さんみたいだね」


谷本癒子と夜竹さゆか、この二人はのほほんさんと常に一緒にいる同じクラスメイトだ。 何回か一緒に学食でご飯も食べた事はあるし、そこそこ仲がいいクラスメイトだ。

谷本さんは髪を二つに結んでる、結構明るい子で親しみやすい印象を持てる女の子だ。

対して夜竹さんは黒髪を腰の辺りまで伸ばしていて、たまに自分で料理を作って弁当を用意したりしている家庭的な子だ。 前に一口食べさせてもらった事もあるが、目の前にいるセシリアの壊滅的な料理とは月とすっぽんくらい差があったりする。


「どうかされましたか? 一夏様」


「イエ、ナンデモゴザイマセン」


セシリアはきょとんとしているが、セシリアが作る手料理を思い出すと背筋に冷や汗を掻いてしまう。 いつまでたっても消えないあの思い出の味―――あれは俺にとってトラウマになった。


「一夏、おはよう」


「一夏君、おはよー」


声を掛けられたので後ろを振り向くと、ラウラに清香さんがいた。


「おー、おはよ。 もう対戦表は確認したのか?」


「あぁ、私達はDブロック二組目になる。 だから一夏と当たるためには決勝戦になるな」


「あら、もう勝った気でいるのかしら?」


ラウラの発言に反応したのはCブロックのセシリアだ。 この二組は順当に勝ち上がって行けば、土曜日に行われる四回戦で当たる事になるからだ。 決勝戦で俺達と当たるにはこの四回戦で勝たなければならない。


「ふむ。 前回は後れを取ったが今度はそうはいかん。私と清香でお前達に勝ってみせる」


「今度もわたくしが勝ちますわ。 箒さんと一緒に」


この二人、前回の決闘でお互いを認め合っているが、お互いに負けず嫌いな気がある。 お互いのペア同士、視線を絡ませ合い火花を飛ばし合ってる。

さて、他の気になるペアはどこにいるのかな?

トーナメント表を映すモニターに視線を向けると、のほほんさんと四組の代表候補生がBブロック四組目だった。

後、気になるペアと言ったら、鈴のところかな。


「一夏、おはよー。 あたし達も一夏と同じAブロックになったからよろしくね」


「鈴、おはよ。 そっか、鈴もAブロックか」


「えぇ、あたし達はAブロックの七組目。 順当にお互い勝ち上がって行けば、金曜日の三回戦目で当たる事になるわね」


「そっか、負けないからな(俺の貞操を守る為にも!)」


「あたしこそ負けないわよ(一夏の初めてはあたしのもの!)」


「一夏のペアは僕だからね。 負けないよ(キスまで先に奪われたんだから、一夏の貞操は僕が絶対にもらうっ!)」


ふふふ、と笑顔で、三人が三人、火花を散らす。

ん? 三人?


「あれ? 鈴のペアの子はどこにいるんだ?」


「え? さっきまで一緒にいたんだけど?」


鈴のパートナーは確か、同じルームメイトのティナ・ハミルトンさんだっけ? その子が見当たらない。

鈴もキョロキョロと視線を彷徨わせ、自分のパートナーを探している。


「あーーー、見付けたっ!」と鈴がある一角を指さしたので視線を向けると、壁にもたれかかりながら薄い本をめくる金髪碧眼のナイスバディーな少女がいた。


ん? 薄い本? 本の表紙がチラッと見えたので見てると、二次元な美少年が二人、裸で抱き締めあっている表紙が視界に映る。

所謂、同人誌というやつか。

しかもBL......。

で、俺達の前に鈴に首根っこを掴まれ、ずるずる引き摺られてくるティナ・ハミルトンさん。 何か色んな意味で残念だ......。


「はじめまして。ティナ・ハミルトンです」


「はじめまして。俺は織斑一夏です。で、この子は俺のパートナーの―――」


「シャルル・デュノアです。はじめまして」


軽い自己紹介を済ませる。

目の前にいる少女、ティナ・ハミルトンは長い金髪を腰まで伸ばしており、さらに出るところは出てるのに腰のくびれが半端ない。 容姿も可愛いというよりも大人びた綺麗さを感じる。

外見だけ見れば、完璧超人だ。

しかもISスーツだからおっぱいの主張が半端ない......箒以上か......。

確か前に鈴に聞いた時、ルームメイトはアメリカ人といっていたが......えぇーい、アメリカ人の女性は化け物かっ!

くっ! 直視できない! なんなんだ、この外見だけ完璧超人は!

手に持つのが、二次元な美少年が二人、裸で抱き締めあっている表紙の同人誌というのが本当に本当に残念極まりないが!


「「......一夏?」」


シャルロットと鈴の俺を見る目がかなり冷たい気がする。


「ははは、何でもない、何でもないから」


取り合えず、対戦表は確認したし、トーナメントに集中しないと!

俺の貞操が奪われかねないからな。

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