小説『魔法少女リリカルなのは〜心の剣と小さな奇跡〜』
作者:ディアズ・R()

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第十話・現実×特訓





「特訓して欲しいの!」
「一昨日きやがれ」
「……はい」

諦めんの早いわ。
不屈の心(レイジングハート)はどうした?
持ってるとか言ってたじゃん。
ちなみに、なのはは俺の部屋に乗り込んできている。
最近、プライバシーが無くなってきたな。

「フェイトにでも勝ちたいのか?」
「フェイトと聞いて!!」
「それ以上邪魔したら混沌(カオス)パンな」
「失礼しました!!」

リニスを追い払い、なのはに話を聞く。
俺のパンについては、触れてくれなかった。
ちょっと寂しい。
え〜なんでも、フェイトが強すぎて今のままじゃ御話しにならないから、少しでも強くなりたいらしい。
そして、物理的な御話しをしたいらしい。
勝って友達になるんだと。
バカだろ?
もう一回言うけど、バカだろ?
敵を倒して味方にするとか、何処の少年漫画だよ。
いや、なんか、ゲームであった気がする。
シャイニング・シリーズしか知らんから、なんとも言えないけど。

「まあ、頑張れ」
「うぅ〜夜空君は凄く強いの!気に食わないけど、あの二人は今の私より強いし、でも教わりたくないの……それに、少しでもフェイトちゃんと仲良くなる為には、勝つしかないの!」

流石は士郎さんの娘。
良い感じに戦闘志向だ。
きっと将来は、お話といって肉体言語で語りだすんだろ。

「じゃあ、家の売り子してけ。今日なら仲良くなれると思うから」
「ふぇ?」
「と言う訳で霞さん、頼んだ」
「任された!」
「ふぇぇぇぇぇ!?」

なのはが霞さんに連れ去られたので、着替えてパンを作りに行く。
偶にはリニスも手伝わせるか。


◇◇◇◇◇


連れ去られたなのは。
何故かゴスロリ衣装に着替えさせられ、売り子をすることに。

「うぅ……恥ずかしいの」
「こんにちは……あ」
「いらっしゃいませ……あ」

フェイトの入店。
今、パン屋にて二人はまた出会った。
これが、運命……

「……コッペパン、三つ貰えますか?」
「……はい、少々お持ちください」

唐突過ぎて、何を話せばいいか分からないなのは。
何故なのはがここにいるのか分からないが、とりあえず本来の目的を達成することにしたフェイト。

「えっと、一つ80円だから240円になります」
「じゃあ、500円で」
「500円お預かりしましたので、おつりが260円になります」
「はい」
「……」
「……」

お互い沈黙。
何か話そうと思うが、何を話せばいいのか分からない。
そこで救世主登場。

「何やってんだお前等?」
「いや〜働きたくない!!ニコ○コ動画が私を呼んでるの!!」

リニスを引き摺って来た夜空だった。
リニスは首根っこを掴まれるも、何とか戻ろうとしているのでフェイトを見ていない。

「リ、リニス……いえ、見間違いの筈。リニスはあんなんじゃなかった。違う。絶対に違う」
「……現実は、早めに受け入れた方が良いの」
「なのは……」

俯いてブツブツ言っているフェイトの肩になのはが手を置き、諭した。
フェイトが、現実を受け入れる決意をするのだった。

「えっと、リニ―――」
「右○の蝶を歌ってみたを投稿しないといけないの!!私の邪魔をしないで!!」
「知るか。休日ぐらい手伝え」
「私の歌を待ってくれている人がいるのよ!!この前だって、再生回数3万いったんだから!!皆が私を呼んでるの!!」
「少し黙れよ」

フェイトの言葉を遮り、未だに戻ろうとしているリニス。
夜空と言い争い?をしているから、入り込む余地は無い。

「……なのは。私、あのリニスを受け入れられる自信が無いよ」
「……フェイトちゃん。このハムサンド、おまけで付けとくの。今日は、帰って休んだ方が良いの。次会った時は、前より強くなっておくからね?」
「うん。ありがとう、なのは。私だって、簡単に負けないんだから」

なのはとフェイトの親密度が上がった。
リニスの尊敬度が下がった。
これも、運命……

「逃げられた……あぁ、フェイトか。そのハムサンド、リニスの朝食として作っておいたんだが……まあ、後でなんか作ればいいか。でも、何でコッペパンなんだ?」
「えっと、初めて夜空に会った時に食べた味が忘れられなくて……アルフも来る筈だったんだけど、ちょっと用事があって」
「そうか。初めて会った時って、無理矢理食わせてた気がするんだが」
「え?夜空君、そんな事したの?というか、どんなタイミングで?」
「苦しかったけど、ちょっと甘めで美味しかったよ?」

のんびりと会話を楽しんだ三人だった。
ちなみに、リニスの動画の再生数は5万を超えた。
徐々に歌姫として有名になってきたリニスであった。


◇◇◇◇◇


夜の公園で、なのはとユーノと共に特訓をすることになった。
ユーノが結界とやらを張ったので、ある程度のことなら何とかなるらしい。

「さて、俺に教えられるのは魔力の操作と運用効率の上昇ぐらいだ。魔法は使えないからな」
「え?そうなの?」
「補助系の魔法が使えるんじゃないのか?それに、彼等の自動発動型の防御魔法を破壊してたけど」
「彼等って、名前知らないのか?」
「……嫌われてるみたい」
「俺もだ」

ユーノと仲良くなれた気がした。
まあ、人の姿じゃないけど。

「まあ、とりあえず魔力で身体強化してみろ」
「どうやるの?」
「さて、帰るか」
「待ってぇぇぇ!!」

帰ろうとする俺に縋り付くなのはを引き剥がし、何が出来るのかを聞いてみた。

「レイジングハートのサポートがあれば、魔力弾、拘束魔法、防御魔法、砲撃魔法が使えるの」
「なるほど。つまり、なのは単体は役立たず、と言う事か」
「……はい」
「とりあえず、魔力を動かせないと何も教えられないから、俺が手本を見せる。よく見てろ」
「わかったの!」

なのはの前に立ち、魔力を体内で増幅させる。
ユーノは、レイジングハートと一緒に傍観している。

「夜空、厳しいね」
【Yes】

何か言っていたが、今はなのはの事だ。
魔力が限界まで溜まったら、一気に開放する。
膨大な魔力が、強風を巻き起こす。

「にゃぁぁぁぁぁ!!!」
「す、凄い!なのは以上の魔力だ!でも、止めて欲しい!」

なのはとユーノが、飛ばされない様に木にしがみ付いている。
しかも、ユーノは吹き飛ばされる一歩手前。
ここで止めると、魔力を放出しただけになるから、さっさとやってしまおうと思う。
右腕を掲げ、放出していた魔力を集める。
強風が収まるまで集める。

「お、収まったの……ふぇ?」
「これが、限界まで魔力で強化した状態だ」

俺の右腕が、白と黒の魔力で覆われる様に強化されている。
コレで殴れば、多分ダイヤも砕ける。
あくまで多分。
強化を止めて、魔力を霧散させる。

「よし。大体分かったか?強化とは言わない、魔力の放出ぐらいは出来る様になれ」
「わ、わかったの!むむむ」
「……」

頑張っているのは分かる。
だが、出来なさそうだ。

「頑張れなのは!」
【master……】

結論。
魔力の放出は出来たが、強化は出来なかった。
放出も一気に開放してしまうから、魔力がすぐに尽きる。
俺の魔力を与えて、数回挑戦させたが変化無し。
要特訓が必要な様だ。
とりあえず、体力が無いので毎朝ランニングをさせる事にした。
俺の日課よりは簡単だから、多分大丈夫だろ。
と言う訳で、今回の特訓を終わる。


◇◇◇◇◇


何故か温泉に行く事になった。
メンバーは、高町家、アリサ、すずか、忍さん、はやて、ホタル、姫、二人、水無月家だ。
リニスは、やることがあるらしい。
合唱するとか何とか言っていた。
なので、留守番だ。

ここに来るまで、いろいろあった。
俺の部屋に突撃してきた乙女達が、俺のかばんに適当に荷物を入れて、持って行った。
はやてが下着の棚を開け様としたのは、流石に阻止しておいた。
そのまま恭也さんに担ぎ上げられ、連行。
謎の行動で呆然としていたら、温泉宿に到着。
とりあえず厨房を借りて、辛さを追求した赤パンをなのは、アリサ、すずか、はやての口に捻じ込んでおいた。
四名の死体を作るも、冷静になれた。
そして、温泉に入ることになった。

「夜空、覗くでないで」
「……フ」
「鼻で笑われた!?」
「おい、こいつ温泉に投げ込め」
「ゑ?あ、あの〜足、動かへんのやで?投げ込まれたら、溺れてまうんやが」
「はやて。諦めなさい」
「人間、諦めが肝心なの」
「溺れてもすぐ助けるから!」
「勝手にやってれば。先入るから」
「え、えっと、し、失礼します!」
「味方がいない!?」
「安心しろ!俺が助けてやるぜ!」
「もしもの時は、すぐに駆けつけてやるよ」
「いらんわ」
「堂々と覗く宣言してるわね」
「最低なの」
「あの二人も投げ飛ばす?」
「入りたいなら入れよ。小学生はセーフの筈だぞ?まあ、俺は男風呂だがな。行くぞユーノ」
「キュ!」

騒がしい連中は放置して、ユーノを伴い温泉に浸かる。
この温泉に入った瞬間の感じ、堪らんな。

(夜空、助かったよ。あのままだったら、女子風呂に入れられる所だったよ)

頭に直接響く声がする。
念話と言うやつかな?
どう返せばいいのか分からないので、頭を撫でて誤魔化した。
のんびりしていたら、恭也さんが近づいて来た。
士郎さんと朧さんは、何か話している。
海斗は、泳いで遊んでいる。
二人は、壁にへばり付いている。
何してんだ?

「夜空君。少しいいかな?」
「えぇ、なんですか?忍さんとの惚気話は結構ですよ?」
「いや、そんなつもりはないんだが。最近、なのはが夜に出かけたり、朝にランニングをするようになったんだが、何か知らないかと思ってね」

魔法少女になって特訓中です。
そう言ったら、どんな反応するのかな?
言わないけど。

「夜空〜石鹸あらへんか〜」
「石鹸っぽい物ならあるぞ。ほれ」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!なんじゃこりゃ!?」
「石鹸っぽい物だ」
「石鹸ぽいって、これパンやないか!?」
「あ、すまん。パンの様な石鹸っぽい物だった」
「ならいいんや」
『いいの!?……まあ、いいか』

何時か、俺のパンについて話し合わなくてはいけない様だ。
恭也さんと他愛ない話をして、風呂を出た。
携帯で合唱、歌ってみたと検索してみた。
……何も見なかった事にした。
この時、この温泉宿で起こる出来事を、俺は知らなかった
正直、どうでも良かった。
と言う訳で、ストレッチを始めた。

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