小説『魔法少女リリカルなのは〜心の剣と小さな奇跡〜』
作者:ディアズ・R()

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第十七話 合唱×決闘前





久遠と絆を深めた次の日。
暇になった。

「リニス〜暇〜何か暇潰し無い?」
「それなら一緒に歌いますか?千○桜と心に届く歌ですけど」

心に届く歌って、シャイニング・ハーツの……なんであるんだ?
こっちにもゲームがあるのかな?
リニスに探しといてもらうか。
でも、もう一つはなんだ?

「歌詞は?」
「えっと、これですね。十分ぐらいしたら撮りますので、覚えてください」

リニスがパソコンをササッと動かし、曲の歌詞を出す。
将来が心配になる手際の良さだ。
歌詞を一度流し読みし、もう一度ゆっくり見る。
歌詞を覚え終わったら十分経ったのか、リニスが録音機を準備する。

「さぁ、時間はありません!一回で成功させますよ!」
「え?」
「え?じゃありません!!失敗したら霞さんに裏メニュー禁止にしてもらいます!」
「なん、だと!?」

貴様は鬼か!?
アレを楽しみにしてる人が何人いると……最近はリニスの写真集も売れてきているというのに!
寝顔とか寝起きとかを集めた写真集だけど、たった10ページしかないのに5万で売れるんだぞ!!
……………それはどうでもいいか。
歌詞は覚えた。
だけど、どんなテンポなんだ?
ぶっつけ本番で、失敗しないのか?
まあ、リニスに合わせればいいか。



〜歌ってみた〜



「流石は夜空、見事な歌声です。声優になれそうですね」
「……二曲じゃないのか?」
「え?そんなこと言いましたっけ?」
「まあ、いいけどさ」

と言う訳で三曲目を歌うことになった。
暇だけど、意外と疲れる。
次の曲は、ポーカーフェ○スらしい。
サビにアドリブを入れるそうだ。
フリーダムとか言うのらしい。
もうなんでもいいわ。

「題名付けておきませんとね。ん〜【飼い主と一緒に歌ってみた】で良いですかね。さ!次の行きますよ!」
「うぇ〜い」

何故だろう、ネット上で俺が鬼畜扱いを受けそうな気がする。
ネットやんないからどうでもいいか。
はてさて、やりますか。



〜もっと歌ってみた〜



「……疲れたんだけど」
「次踊ってみません!?」
「断る」
「そうですか……」

シュンとしているリニス。
耳と尻尾が力無く垂れる。
……これを、断るのか?

「分かった。今日はリニスに付き合うよ」
「ホントですか!」

物凄く嬉しそうに耳と尻尾を立たせるリニス。
分かりやすいな。
折角だし、久遠と那美さんも巻き込むか。
そう言えばはやて、久遠とか平気なのか。
よし、強制だな。

「ちょっと待っとけ。仲間を増やす」
「え?」

はやて、久遠、那美さんを呼んだ。
今度はこの五人で歌おうと思う。

「歌うんか?ふっふっふ、私に任せとき!」
「くぅ〜歌詞わかんない」
「えっと、歌うの?ホントに?」

はやてはやる気満々、久遠は歌えなさそう、那美さんは恥ずかしがってる。
何だこの統一感の無さ。
だがそこが良い!



〜合唱してみた〜



歌レベルが上がったな。
……そういえば、歌魔法(フォースソング)なるものがあったな。
ちょうど良い特訓になったとでも思うか。

「コレの題は……【飼い主・愛人・奴隷・ペット×2で合唱してみた】ですね」
「奴隷って私の事ですか?私の事なんですね?そうなんですね?」
「な、那美さん?落ち着いてぇな。というか、それやと私は愛人なんか?」
「久遠の飼い主は、夜空と那美だよ?」

実にカオスだ。
とりあえず、パンでも食っとけ。
ドス黒いオーラを纏ったパンを差し出す。
全員が俺から、もといパンから距離を取る。

「……食わないの?」
『え、遠慮します』

しょうがないので、自分で食べる。
少し苦いな。
そんな俺に驚愕の視線を向ける四人。

「な、何で、食えるんや?そうか!きっと見た目が悪いだけで、美味しいんやな!」
「はぁ?味見ぐらいするんだから、コレぐらい食えなくてどうするんだよ。一応人数分あるけど、食う?」

俺の差し出した、明らかに色が真っ青のパンやピンクだったりするパンを無言で手に取る四人。
何でこんなにビビってるんだ?
黒いオーラパンを食べ終え、食事風景を眺める。
全員が一斉にパンを食べる。

『……』

どうやら、刺激が強すぎたみたいだ。
アレぐらいなら耐えられると思ったんだが……
というか、自分で食べられないものを俺が出すと思われていたことが、ショックだ。
まあ、俺が食えるから他の奴が食えるとは限らないんだけどな。
さて、こいつらの再起動は数時間後だろうから、外行くか。
最近、何処にいるのか分からない玄さんを頭に乗せて出かける。
隣の奥さんがお茶に誘ってくれたが、遠慮しておいた。
というか、子供を見る眼じゃないのが気になった。
あれは、そう、獲物を狙う……気にしたら負けか?
そんな事を考えながら公園に向かって歩いていると、恭也さんと忍さんがデートしていた。
そして、その後ろをストーキングする美由希もといみっきーも確認。
ミッ○ーではない、みっきーだ。
ここ重要ね。
そんな誰に言っているのかもわからないことを考えながら、デートの邪魔をしないように気配を消して電柱の上を移動する。

「ん?今、なにか……」
「どうしたの?」
「ん〜いや、なんでもない。気のせいみたいだ」
「ふ〜ん。所でさ、美由希ちゃんは何時まで着いて来るのかな?」
「……さぁ?」

みっきー哀れ。
気付かれてるのに無視されてるよ。
折角なので、みっきーの上から胡椒をふりかける。
風がちょうど無かったので、みっきーに直撃。

「ふぁ、ふぁ、ふぁくしょん!!ハッ!しまった!」

変なくしゃみだな。
それとも、アレが普通なのか?
そのまま三人を観察する。

「美由希……隠れるなら隠れるで、もうちょっとな」
「恭ちゃん!?ち、違うの!偶々!偶々見かけたから隠れてただけで!」
「だったら、クシャミはマイナスかな〜唯でさえ気配隠せ切れてなかったし」
「う、嘘!?ちゃんと隠せてた筈なのに!あ、いや、本気で隠れようと思っただけで、ストーキングとかして無かったよ?ホントだからね!?」

見苦しいな。
音も無くみっきーの背後に降りる。
恭也さんと忍さんは一瞬驚いたが、俺が何をしようとしているのか分かったらしく、恭也さんは呆れ顔で忍さんは苦笑した。

「?二人ともどうしたの?」
「美由希……強く、生きろ……」
「美由希ちゃん……自分を見失わないでね……」
「え?え?何?なんなの!?」

アタフタし始めたみっきーの肩を叩く。
それに反応して後ろを振り向いたみっきーの口に、アンリミテット・カオス・エクリシス略してUKE(48は付かない)を突っ込む。

「説明しましょう!!UKEとは地球上にあるありとあらゆる香辛料を無理矢理混ぜた怪しい粉をパンの生地に練り込んだ物なのですがその見た目は黒く所々ピンクや赤などの粒々が伺えて外はサクサク中はモッチリ更に一時間毎に味が変わるという不思議仕様にも拘らず今回はいろいろな意味で一番まずいタイミングで食べさせるという暴挙です!!説明も終わりましたので、これにて失礼」

何故かリニスがホワイトボードを持って、今回のパンの説明をしに来た。
何がしたいんだろうか?
ちなみに、みっきーはすでに死んでいる。

「いや、気絶してるだけだから」
「兄がいる前でその冗談はちょっと……」
「忍さん、ここにとある場所のフリーパスチケットがあるのですけど……デートにどうです?」
「さぁ、行くわよ恭也!!」
「え!?ちょっとま―――」

その後姿、まさしく疾風。
忍さんが俺の取り出したチケットを一瞬で奪い取り、明らかに人間の限界超えちゃった速度で走り去っていった。
みっきーを見下ろし、なのはに電話する。
電話はみっきーのだ。

『何かようなの、お姉ちゃん?』
「お前の姉は預かった。還して欲しくば、人気のケーキを公園まで持って来い。一分経つ毎に、姉の顔に消えない痕を残すことになるぞ」
『ふぇ?』

電話を切って、みっきーを担ぎながら公園に向かう。
一分経ったので、額に肉と書く。
何性か、聞くなよ?
二分経ったので、猫髭。
三分経ったので、口髭。
四分経ったので、眉毛を濃くする。
五分経ったので、瞼に目を書く。
ここでなのはが到着。

「はひ、はひ……ふへぇ〜あ、夜空くんなの!ってお姉ちゃん!?」
「遅かったな……でも、もう手遅れなんだよ……」
「そ、そんな……そのペン、まさか!?」
「俺は悪くない。悪いのはこいつなんだよ……へ、へへ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「二人で、何してるの?」

なのはと小芝居をしていたら、フェイトが来た。
なのはも、フェイトに言われて自分がノリノリで何をしていたのか思い出したらしく、地面に手を付いて落ち込んでいる。
ところで……お前等、和解してたっけ?

「……そうなの。フェイトちゃん。明日、全部のジュエルシードを賭けて勝負しようなの」

え?今言うこと?
落ち込みながら決闘挑むとか、アホか。
そして、久しぶりだな語尾。
最近使ってなかった気がする。

「えっと……うん、わかった。そう言えば、アルフ知らない?」
「アルフなら、なのはの家でケーキ食って幸せそうに寝てた気がするぞ」
「……」
「……それは、言わない約束なの」

フェイトが、物凄い無表情だ。
まあ、そんなモンだよな。
家族の様に育っていたペットが、友人に餌付けされたぐらいで自分と同じぐらい懐いた時のような感じか。

「なのは……手加減、しないからね?」

無表情で、なのはに宣言するフェイト。
なのは、おびえてるんですが。
お前が望んだことだろ?
何でこっちを見るんだよ。
その縋る様な視線を止めろ。

「はぁ、フェイト。どこかに向かってる途中じゃないのか?」
「あ!そうだった!なのは、夜空、また明日!!」
「またなの!」
「あぁ」

フェイトは、確か住んでいるマンションの方へ走っていく。
なのはは、妙に元気になっている。
俺の足元で、みっきーが寝ている。
とりあえず、みっきーをなのはに任せて帰ることに。
みっきーの顔が酷いことになってるのに気付くのは、家に帰ってからのなのはだったりする。



◇◇◇◇◇



「「あ」」
「ん?」

帰宅途中、でかい家がある所を歩いていたら、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
振り向くと、アリサとすずかがメイド二人を引き連れて、でかい家に入るところだった。

「……じゃ」
「まあ待ちなさい」
「折角だからお話でもしようよ」
「……まじか」

と言う訳で、拉致された。
アリサがメイド二人に目配せをすると、メイド二人が俺を挟むように持ち上げて、でかい家の中に連れて行った。
コレは、立派な犯罪だ。

「ん〜このレモンティー美味いな」
「でしょ?」
「ふふ♪」

何故か庭でお茶会をしている。
メイド二人は、何故か会話に入ってこない。
ちなみに、すずかの家らしい。
猫が俺の上に乗りたがるんだが。
てか、猫が多いんだが。

「皆が初めての人に自分から近づくなんて、珍しいな〜」
「そうよね〜」

微笑ましいものを見る眼の二人を無視しつつ、猫達を撫でてやる。
一匹撫でると二匹近寄ってくる。
二匹膝に乗せると三匹擦り寄ってくる。
三匹のお腹を撫でると四匹が……
無限ループか!?

「やばい、動けないんだが」
「ちょうどいいわ」
「そうだね〜」
「……頑張ってください」
「く、暗くなったら何とかします」

はいそうですか。
もういいですよ。
ミルクパンをどこからか取り出して、猫達に与える。
美味しそうに食べるのを見ると、自然と笑顔になれる。

「……むぅ」
「ふわ〜」

メイド二人は何も言わないが、四人共通で顔が赤い。
何を見てるんだろうか?
そんなこんなで、お茶会終了。
帰宅すると、四人がお腹を壊して寝込んでるようだ。
……簡単な催眠術を使い、今日食べたパンの記憶を消させてもらった。
俺は、悪くないはず。



と言う訳で、なのはとフェイトの決闘が、始まるようだ。
邪魔が来ない様には、しておこうと思う。

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