小説『魔法少女リリカルなのは〜心の剣と小さな奇跡〜』
作者:ディアズ・R()

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第八話・手合わせ×決意





「さぁ、何所からでもかかって来なさい」
「……だから剣使えないって」

何故か、士郎さんと手合わせすることになった。


〜遡る事数十分〜


土曜の朝。
あのフェレットを預けた場所が爆発したらしい。
そして、フェレットをなのはが引き取った。
と言う訳で、なのはの家にフェレットを見に行くことになった。
ちなみに俺だけ強制だ。
アリサとすずかも、無理して習い事の休みを取ったらしい。
そこまで、するなよ……

「ほれほれ、早く入らんかい」
「お前、後でハラパンな」
「アレだけは嫌や!!」
「どんなパンよ……」
「パンっていう選択肢しかない所は、夜空君らしいね」

五月蠅いぞお前等。
ちなみにハラパンとは、食べるとお腹が鳴って腹痛になり、動くことも出来なくなる。
耐性の付いたはやてでも、一時間はそのままだ。
何時食わせるか。
一回食べてから、ハラパンだけは物凄い警戒してるんだよな。
とりあえず、入るか。

「あら、いらっしゃい♪」
「いらっしゃいなの♪」
「金を出せ!!」
「そういうのいらんわ」
「止めなさい」
「ちょっと落ち着こうね」

ボケはさ、冷たく返されると、死んじゃうんだ。
トボトボ隅の席に移動して座る。

「メロンソーダを要求する!」
「立ち直り早!?私もメロンソーダお願いしますわ」
「頼んでるものが子供っぽいわ……子供か。レモンティーで」
「言動はともかく、雰囲気は大人っぽいもんね〜あ、私はアップルティーお願いします」
「すずかちゃん、その言い方は……私はオレンジジュースにしよ」

今日のこいつ等は俺に対して酷いな。
少しして、桃子さんがニコニコしながら飲み物を持ってきた。
その後ろには士郎さんがいた。

「はい、どうぞ♪」
「あざっす!」
「何を目指してるんや?」
「ラオウ」
「ラオウ!?」

俺の冗談に本気で返してくるのに、ボケには冷たいんだよな。
今度、笑いが止まらなくなるパンでも食わせてボケてみるか。
メロンソーダうめぇ。

「夜空君。少し用があるのだが、いいだろうか?」
「なんですか?」
「私と手合わせしてもらえないかい?」
「はい?」

コレを肯定と捉えた士郎さんに抱えられ、道場に連れて行かれた。


〜回想終了〜


そして、今に至る。
とりあえず、突っ込むか。
魔力で足を強化し、走って士郎さんに近づく。

「フッ!」(これは、予想以上か?)

木刀を横薙ぎに振ってきたので、床を蹴って天井に膝を付く様に止まり、落下する前に天井を蹴って勢いを付け、そのまま木刀を叩きつける。

「グッ!?」(重い!?剣の使い方は本人の言う通り素人だが、動きが早く力も強い……これは、御神流使った方がいいかもしれんな)

距離をとって、木刀を前に構える。
結構全力でやったんだけど……あんまり堪えてないな。
どうしたもんかな……アレをやってみるか。
木刀に魔力を籠める。
そのまま大上段の振り下ろし。
技名は無いので、適当に叫んどく!

「はぁぁぁ!!」

一瞬木刀が消えるほどの速度で木刀を振ったことにより、風の衝撃波が飛ぶ。

「これは!?神速!」
「え?消え―――」

消えたと思ったら、真横から危険な予感がしたのでしゃがむ。
風を切り裂く音が頭上で聞こえた。

「む……今のを避けるか」

いったん距離をとり考える。
何をしたんだ?
消えた様に感じたが、気配はあった。
こちらの知覚外?
思考を加速して動いた?
いや、それだけなら見える筈。
なら、歩き方か?
肉体に負担がかかるだろうが、自身の動きだけを加速させたか。
コレが一番近いのか?
対処方法は?
使われたら何も出来ないか?
思考を加速すれば、動きを見るぐらいは出来るのかな?
どうするか……情報が足りないな。
剣の技量はあっちが上。
反則くさい動きも出来る。
でも、体力と力は魔力を使ってる分俺が上。
どうするべきなんだ……

「来ないなら、こちらから行くぞ!!御神流・貫!」

士郎さんが、かなりの速度で突きを放ってくる。
直感から、この攻撃は受けてはいけないと理解できた。
バックステップで一気に道場の壁まで後退し、その壁を走る。

「やはり避けるか、ならば!御神流・虎切!」

士郎さんが、抜刀の構えを取り遠間からの一撃を放ってくる。
壁を蹴って、その一撃をギリギリで避けて士郎さんに近づく。

「これで終わりだ!神速!」

士郎さんが消える前に、自身の脳を魔力で補強してフル稼働する。
その瞬間、士郎さんの動きが見えた。
こちらはほとんど動けないのに対して、士郎さんはゆっくりとだが近づいてくる。
あの歩き方が超速度の秘密か?
いや、それだけなら今すぐにでも真似出来ると思う。
どうする?
このままだと負ける。
男の子としては、何もしないで負けるなんて絶対に嫌だ。
となれば、脳を補強していた魔力の操作を弄り、リミッターを外す。
それと同時に、肉体の補強も行う。
士郎さんより遅いが、動くことが出来た。
士郎さんは、俺が動いたことに驚いたが、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべる。
戦闘狂だったのか。
木刀がぶつかり合った瞬間、俺の持っていた木刀が内側から壊れる様に吹き飛んだ。
そして、元の状態に戻る。

「御神流・徹」
「参りました」

木刀を突きつけられ、両手を挙げて降参する。
勝敗が決まったら、士郎さんが座り込む。
俺も脳と身体が悲鳴を上げそうなので、座る。

「ふぅ〜神速を二回も使うとは予想外だよ。奥義はほとんど使ってないと言っても、ここまで出来るとはね。将来が楽しみだ」
「はぁ〜御神流でしたか?反則すぎると思うのですが。神速とか特に。あと、最後のなんですか?」
「ははは、よく言われるよ。最後のは、衝撃を表面ではなく裏側に通す撃ち方で、威力を徹す打撃方だよ。でも、最後よく動けたね?神速を使っているわけでもないのに……御神流覚える気はないかな?剣の使い方を知らない素人でも、アレだけ出来るならすぐに私を超えそうだ」
「強さは求めてないんで、遠慮します。それに、人間辞めるつもりはない」
「御神流は人間の限界を出すだけで、人間止めてるわけじゃないよ?」

知るか。
今日って、何しに来たんだっけ?

「夜空君って、父さん?二人とも何してるんだ?」
「手合わせをしてもらってたんだ。恭也……夜空君は強いぞ」
「一緒に戦った事あるから強いのは知ってるけど……まあ、今度は俺とも手合わせして欲しいかな」

この家ヤベェ。
今度から来ない様にしよ。

「今日はもう疲れただろ?なのは達が呼んでいたから、行くと良いよ」
「りょうか〜い」

そう言えば、フェレット見に来たんだっけ?
久遠の方が可愛いと思うんだけどなぁ〜
動くのが、めんどくさい。


◇◇◇◇◇


なのは達の所に戻ると、美由希さんが追加されていた。
その中心には、あのフェレットがいた。

「あ、夜空君!この子の名前ユーノ君って言うんだよ!」

近づいて、フェレットの尻尾を掴み逆さまに持ち上げる。

「キュ!?」
「夜空君!?」

なのは達が何か言っているが、今は無視する。
フェレットの口に、無理矢理クッキーを突っ込んでみた。

「グキュ!?」

なんだろう、この違和感。
士郎さんと戦ったからなのか妙に神経が研ぎ澄まされていて、このフェレットから変な感じがする。
まるで、人間の様な感じだ。

「何か気になることがあるみたいだけど、先に下ろしたら?」
「あ、忘れてた」

目を回しているフェレットを机に置き、近くのイスに座る。
まあ、関わるとめんどくさそうだから、放置しとくか。
なんか食べよ。
この日から、フェレットのユーノに怖がられる様になった。


◇◇◇◇◇


ある日の学校での出来事。

「なのは!少し話がある!」
「……そう」
「あの事についてだ」
「……ふぅ。ちょっと行ってくるの」

そう言って、なのはは二年以上一緒のクラスなのに未だに名前を聞いていない男子二人と教室を出て行く。
物凄くめんどくさそうだったな。

「あの二人に弱みでも握られたのかしら?」
「それは……否定できないね」
「あのアホ共ならやりかねんわ」
「まあ、犯罪でさえなければどうでもいいかな」
「「「薄情者」」」
「お前等だって助けてないだろ」

行けって事か?
そういう事なのか?
何で俺なんだよ。
お前等が行けよ。

「畜生」

断りきれない自分が憎い。
とりあえず、ホタルと姫あたりにでも聞いてみるか。

「知らないか?」
「説明も無しにそう聞かれても、答え様無くないかしら?」
「も、もう少し詳しく。生意気言ってすいません!」

姫の頭を撫でながら、なのはがあの男子二人との事で何をしているのか聞いてみた。

「ふ〜ん。じゃあ、始まったって事ね。まあ、アンタならその内巻き込まれるんじゃない?」
「よ、夜空さんなら大丈夫です!根拠無くてすいません……」
「そっか、助かったよ」

戻ってアリサ達に報告。

「その内分かる」
「そんなのわかってるわよ……キレていいかしら?」
「落ち着いてアリサちゃん」
「直接本人に聞いた方がええんかなぁ〜」

まあ、困ったらあっちから何か言ってくんだろ。
放置でいいよ放置で。
戻ってきたなのはと、今週の休日について話あった。
最初は暗い雰囲気のなのはだったが、次第に元に戻った。
こいつ、昔言った事忘れてんだろうな。
しっかりと身体に教え込まないとダメなタイプだな。
俺のパンの出番だな。
何時になるか分からんが。

そんな、ある日の出来事だった。


◇◇◇◇◇


今日は、夜に久遠と遊んでいた。
そしたら、この前見つけた石と同じ石が落ちていた。
そして、久遠が石に触った時、凄いことになった。

「久遠、お前……人間だったのか!?」

狐だった久遠が、着物を着た美人になった。
しかも、バチバチなってる。
展開についていけません。
久遠の周りでバチバチしていた雷が、俺に向かってくる。
何かの力なのか分からないが、雷故にかなり速い。
魔力で全身を強化し、同時に魔力を放出して雷を防御する。

バチンッ!!

防ぐことは出来たが、吹き飛ばされて久遠から離れてしまう。
離れた状態で久遠を見ると、久遠の背中に黒い靄が取り付いていて、その靄の中心付近にあの石が浮いていた。
情報も何もないから、どうしたらいいのか分からないな。
那美さん!カモン!!

「久遠!?それに夜空君も!?何があったの!」

ホントに来たな。
遊んでいたら石があって、それに久遠が触れたらああなったことを簡潔に告げる。

「そんな……最近は、安定してたのに……夜空君は、逃げて」
「断る」
「なるべく急……え?」
「久遠は、大切な友人だ。このままになんか出来る訳無いだろ?」
「で、でも、今の久遠は!」
「関係無い……俺は、久遠を見捨てない」

情報が無いとか、どうすべきとか、そんなのどうだっていいんだ。
ただ、久遠を助けるだけだ!!
魔力で身体を士郎さんとの戦いの時の様に強化する。
世界がスローで動く中、ゆっくりと久遠に近づく。
雷が今の状態でも近づいてくる。
全てをギリギリ避けながら、あと少しで手が届くと思ったら、足元から雷が昇って来た。
その雷を食らった瞬間、元の状態に戻される。

「ガァッ!?」

バチッ。

すぐ目の前で、雷が集まってゆく。

「『よ、ぞら……にげ、て……あ、あぁぁあぁ、アァァァアアアァァァァ!!』」
「夜空君!!避けて!!」

涙を流す久遠が頭に響く叫び声をあげて、特大の雷が俺に直撃した。
意識を失う前に見たのは、俺の方へ走って来ようとする那美さんの姿だった。


◇◇◇◇◇


気付いたら、いつぞやの不思議空間にいた。
そして、目の前にはフレイヤ。

「つまり、俺は死んだのか?」
「いえ、仮死状態なのです。私もちょっと予想外なのです」

そうなのか。
あぁ〜完全に油断したわ。
足元は無いだろ。

「夜空さんは、なんで能力を使わないですか?那美という人間の心を使えば、何とかなったかもしれないのです」
「あ〜俺は、他人の心を使ってまで戦いたくない」
「何でその力にしたですか……相手が、心を使われることを望んでもですか?」
「そう、だな。俺には、人の心は使えない。怖いんだろうな、心を見るのが……臆病なのかもな」
「でも、夜空さんは、私の心を救ってくれたのです」
「……それでも、人の心は使わないで自力でどうにかするさ」

フレイヤの頭をポンポン撫でる。
フレイヤは何も言わずに、俺を見る。

「……分かったのです。それと、心を剣にする力が私のミスで、心を武器にする力になっているのです。今なら本来の力に戻せるですが、どうしますか?」

心を剣ではなく、武器にする力か……まあ、剣を使えない俺からしたら、ちょうどいいかな?
……いや、使う気が無いのに、何で残す必要がある?
今、消してもらえばいいんじゃないのか?
なんで、そのままにしてるんだ?

「……答え、か」
「夜空さんは、心に触れなきゃダメなのです。大丈夫です。夜空さんなら、戦う為でなく、救う為に使えるのです。私のことを、救った様に……」
「ふぅ、女神様に言われたら、やるしかないな。んじゃ、行って来るよフレイヤ」
「いってらっしゃいなのです」

俺の視界を、光が埋める。
救う為に、心に触れる決意をした。
俺はもう、迷わない。


◇◇◇◇◇


目が覚めると、俺を何かの力で治療している那美さんと、久遠と戦っている知らない女性がいた。
あと、何故かリニスも。

「夜空!?良かった……あまり無茶をしないでください!」
「うぇ、ひっく、よがっだよ〜」

リニスは、泣きそうになりながらも俺を叱る。
リニスのそういう所、嫌いじゃないな。
那美さんは、泣きながら俺の胸に顔を押し付ける。
こういう姿は初めて見るから、心を開いてくれた様で少し嬉しい。
身体が少し重いが、動かせないほどじゃない。
ゆっくりと身体を起こし、立ち上がる。

「ッ!?まだ動かないでください!先ほどまで右足と両腕が炭化していたんですよ!!」
「まだ完全に治せてないからダメ!!」
「でも、待ってたら、久遠が救えない。でしょ?」
「それは……でも、薫ちゃんが、あそこで戦ってる人がどうにかしてくれるから!!」
「あれじゃ、久遠は救えない。それに、あの石が原因だと思ったけど、近くまで行った時に分かったよ。あれは、元々久遠の中にあったものだ。なら、久遠の心を救わないと、ダメなんだ」
「それは、アナタでないとダメなのですか?」
「あぁ、俺がやらなきゃダメだ」

俺がそう言うと、リニスは諦めた様にため息をつき、俺を見る。

「なら、ミスは許しません。一回だけのチャンスです」
「リニスさん!?」
「那美さん。夜空に頼るしか、夜空に頼ることが、一番可能性が高いんです。それに、協力した方が安心できますから。ほっとくと、一人で突っ込みそうですしね?」
「……わかり、ました。でも、さっきみたいな無茶は、絶対しないで」
「了解。それで、二人に頼みたいことがあるんだけど」
「なんですか?」
「何?」

俺は二人に近づき、胸元に手を翳す。

「二人の心、貸して貰うよ」

二人の心を、取り出した。

「なっ!?これ、は……ふぁ!?」
「な、なに!?あ、あぁ!?」

リニスから灰色の杖、那美さんから琥珀色の錫杖が出てきた。
取り出す際、二人が妙な声を出したが、今は久遠だ。
まったく使っていなかった力だが、ぶっつけ本番でやるしかない。
両手にある杖と錫杖を構え、魔力で足を強化して一気に駆ける。

「なんだ!?」
「どいてもらう!」

杖を使い、魔力球をぶつけて女性を吹き飛ばす。
魔力球をそのまま増やし、久遠の周りに叩き落す。

ドドドドドォンッ!!

土煙でこちらの姿を隠す。
久遠の姿は雷で良く見える。
久遠の真上に跳び、久遠の後ろに憑いている黒い靄に叩き付ける様に錫杖を振る。
その際、石を真上に飛ばして掴む。
石がどんなものにせよ、危険な物の様だからだ。
黒い靄が久遠から離れ、浮かび上がる。
久遠は気を失ったのか崩れ落ちる。
ギリギリ支えられたが、正直身長差が激しくて抱えづらい。
杖を黒い靄に向け、錫杖をその間に挟む様に地面に突き刺す。

「拘束」

黒い靄の上下左右に複雑な魔方陣が現れ、動けなくする。
久遠に向き直る。

「くぅ……よぞ、ら?」
「あぁ……平気か?」
「クオン……まだ大丈夫」
「そうか……なら、お前の心、借りるぞ?」
「うん。夜空になら、いいよ」

久遠の胸元に手を当て、小麦色の鞘に入った刀を取り出す。
久遠を座らせ、居合いの構えを取る。

「一撃で……決める!!」

残りの魔力を全て足に集中し、解き放つ。
一瞬で靄の前に行き、一閃。
自身の知覚すら超えた神速の一閃が、黒い靄を切り裂く。
斬った時に僅かに触れた黒い靄から、怨念が流れ込んできた。
悲しみ、憎しみ、怒りなどの負の感情だ。
だけど、負の感情には慣れてる。
だから、地面に突き刺していた錫杖を持って、残りの靄に近づく。

「もう、休め」

錫杖を一度鳴らし、全ての靄が消えた。
そして、その日の出来事は終わった。
とまあ、シリアスには締められず。

「アレは何ですか!?レアスキルなんて持ってたんですか!?」
「どういうこと!?私の身体から出たよね!?」
「君は何者だ?さっきは痛かったぞ」
「くぅ、もう眠い」

とりあえず、全員の口に睡眠薬入りの一口チョコを入れておいた。
何故持っていたかは、秘密の方向で。
全員を黙らせたので、那美さんと久遠と謎の女性は神社の方に放置し、リニスを持って帰宅。
明日、行った方がいいよね?
説明面倒だな〜

-9-
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