小説『魔法少女リリカルなのは〜心の剣と小さな奇跡〜』
作者:ディアズ・R()

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第七話・契約×始まり





倒れていた女性を助けてから、三日経った。
女性の名前は、リニスと言うそうだ。
契約とか言うのをさせられた。
内容は、リニスが元の家族と暮らせるまで。
あと、行く所が無いらしいので霞さんが家に居れば良いと言った。
と言う訳で、家族が増えました。
うちの家族、受け入れが早くて助かる。

「凄い適当に紹介された気がしますが、今はそんな事どうでもいいですね」

現在、俺に聞きたいことがあるらしいので、俺の部屋で向かい合っている。
そして、何故か正座させられた。

「アナタは、魔法使いですね?」
「いや、違うけど」
「なら、管理きょ……え?今なんて言いましたか?」
「違うって言った」
「……で、でも、魔力を」
「魔力の操作は出来るけど、魔法なんて使えない」
「デバイスは!?」
「なんだそれ?」

そう言えば、フレイヤがなんか言ってたっけ?
何に使うんだ?
それがあると、魔法が使えるのか?

「そんな……私を完全に維持できる魔力を持ってるのに、デバイスが無い?じゃあ、管理局のことも……」
「まあ、闇(あん)パンでも食え」
「ん、ありがとうございます」

リニス渡したパン、自信作なんだ。
ちょっと幻覚を見るという副作用があるけど。
一口食べて、リニスが停止する。
目の前で手を振ってみるが、反応が無い。
刺激が強すぎたようだ。
やはり、はやてじゃなきゃダメかな?
とりあえず、放置して外に行くことにした。
久遠にでも会いに行こう。

リニスが復活したのは、三時間後だった。


◇◇◇◇◇


リニスを拾ってから、数週間。
今日はクリスマスだ。
てかさ、クリスマスに御祝いって可笑しくない?
キリスト云々だろ?
やめてくれよな。
今日、なのは達はパーティーでもするだろうし、家に引きこもり確定だろ。
寒いし、めんどいし、眠いし。

「それを本人達のいる前で言える夜空、パナイわ〜」
「私の家でパーティーするから来て欲しいの!」
「ていうか来なさい」
「皆夜空君が来るの楽しみにしてるよ♪」

とりあえず、一つ言いたい。

「何故俺の部屋にいる?」
『霞さんに入れてもらった』

霞!!
てか、クリスマスに男の部屋に来るとか。

「彼氏無し共が」
「うるさいわ彼女無し」
「わ、私は好きな人いるの……」
「欲しくなったら実力で手に入れてみせるわ」
「あはは♪」

さっきから気になってるんだが、すずか壊れてないか?
何かあったのか?
いや、いつもあんなんだったかな?

「パン食ったんや」
「なんだ、つまりいつも通りか」

全員でニコニコしているすずかを眺めていたら、俺の部屋に海璃と海斗が突入してくる。
上着を着ているが、外にでも行くのか?

「おにぃちゃ!ぱーちーいくぉ!」
「にぃちゃ!いこいこ!」
「貴様等!?子供を誘導するとは卑怯な!!」
「フッ、直接言っても聞く耳もたなそうやったからな……搦め手を使わせてもろたわ!」
「子供はケーキが好きなの♪」
「アンタは子供に弱そうだしね」
「あは♪速く準備してね♪」

こいつ等、メンドクセェ。
まあ、霞さんと朧さんは店にいないといけないし、海璃と海斗の二人だけを行かせる訳にはいかないから、着替えないとな。
ズボンはこのままでいいから、上だけ着替えるか。
上半身裸になったら、四人娘が顔を赤くしてチラチラ見ていた。
訂正、すずか以外が。

「マセガキ」
「うるさいの!」「うるさい!」「うるさいわ!」
「良い身体してるねぇ〜♪」
「おい、誰かこいつ摘み出せ」

さっさと着替えて、適当な手荷物を持つ。
プレゼント的なの用意した方がいいかな?
パン持ってけば良いか。
ついでに、リニスも連れて行くか。


◇◇◇◇◇


と言う訳で来ました、喫茶店翠屋。
リニスは寝てたので、布団の簀巻きにして担いでいる。
ここに着くまで、凄い見られた。
通報されていない事を祈る。

「警察、来ないよね?ね?」
「……ダメじゃないかしら?」
「はれ?夜空君が何でここにいるの?たしか、夜空君を連れて来ようって話しになって……」
「そこからなんか……」
「けーきぃ!」
「けーく!」
「Zzz」

とりあえず入ろうか。
入った瞬間、恭也さんにリニスを投げつけてみた。

「え?ぐふぉ!?」
「むぎゅ!?きゅ〜」
「えっと、誰?」
「リニスだ。少し前に拾った。桃子さん、シフォンケーキプリーズ……御隣は彼氏ですかな?」
「旦那よ♪」

旦那、だと!?
なのはのお姉さんだよな?
確か、恭也さんよりも年下だった筈。
んん?待て待て、二人とも若いけど早くね?

「若いのに家庭持ちだったんですか?なのはのお姉さんで、恭也さんの妹ですよね?」
「あら♪嬉しい間違いね♪残念だけど母よ♪」
「君が水無月夜空君か。私がなのは達の父親の高町士郎だ」
「……………若!?」

親だったのかよ!!
兄妹にしか見えないわ!!
じゃあ、なにか!?桃子さんは三児の母!?
落ち着け俺。
クールになるんだ。

「あ、皆帰ってきたんだ」
「アッチが夜空君の言ってる私の娘よ♪」

店の奥から来たのは、メガネをかけた女性。
俺の視線に気付いたのか、近づいてくる。

「もしかして、君が夜空君?私高町美由希。よろしくね♪」
「……」
「?」
「……フッ」
「!?」

士郎さんって、なのはと初めて会った時に言ってた人だよね。
あと、桃子さん美人過ぎだろ。

「この子私のこと鼻で笑った!!しかも無視してくる!!」
「それが夜空君だから」
「あ、那美さん。来てたんですか」
「うん。久遠も一緒だよ?」
「……」

元気無いな久遠。
知らない人がいっぱいいるからか?
抱っこしてやろう。

「……くぅ〜」
「私より、懐いてるね……ふぅ」
「な〜み〜」
「はいはい。あっちで紅茶でも飲もうね」

美由希を連れて、隅の席に行く那美さん。
美由希が、姉か……ふぅ。

「うまみがねぇ」
「クゥ?」
「何気に酷いこと言ってないあの子!?」
「それが夜空君だから」

さて、ケーキでも食うか。


◇◇◇◇◇


その後の翠屋。

「なのは!!クリスマスパーティーするなら誘ってくれよ!!」
「幼馴染として、こういう事には誘って欲しいものだな」
「何で私まで……ここに来ると、体重が……」
「お、御邪魔しましゅ!」

なんだかんだで、よく一緒にいるのを見かける四人組みの来店。

「……二人は呼んでないの」
「んぁ?おぉ〜ホタルと姫さんか〜さっき厨房借りて作ったカロリー抑え目甘さマシマシのアップルパイと俺が持ってきた甘いのにカロリーゼロのダブルベリーチョコワッフル食べるか?」
『是非!!』

店内の女性全員(ただし桃子さんと海璃とリニスを除く)が、一斉に声を上げた。

「……なんでお前らまで答えてんの?あと、両方五個しかないぞ?」

理解不能な争いが始まった。

「テメェ!何でここにいんだよ!!」
「誘われたからだ」
「どうせなのは達をストーキングでもしてて、偶然居合わせただけだろ」
「むしろ俺の家に乗り込んできやがったな。家から出る気無かったし」

名も知らぬ少年二人は、こちらの言葉に一切耳を傾けない。
言いたい事だけ言って、なのは達の方に向かっていった。
なんなんだ?

「あれが、若さね」
「頑張りなさい、夜空」

桃子さん、リニス、見てたなら助けなさい。

「おにぃちゃ!あのけーきぃほしいぉ!」
「にぃちゃ、ねむい……」
「桃子さん、お願いします。海斗、リニスの所で寝てきなさい」

二人を桃子さんとリニスに任せて、士郎さんの方へ向かうことにした。

「おや、君も避難を?」
「まあ、そんな所ですね」
「君は、随分と成熟しているようだね?それに、動き方が常人のそれではない……何者かな?」
「しいて言うなら心剣士ですかね」
「む、それは知らないな。剣士なら、今度手合わせでもどうだい?」
「剣使ったこと無いです」
「剣士なのに!?」

クールなナイスガイの仮面を剥がしてやったぜ。
本性を引き出すこの瞬間こそ、生きていると実感でき―――

「おにぃちゃ!これおいしいぉ!」

後一文字ぐらい我慢できんのかこの妹様は。
可愛いから許すが。

「それはよかったな。ちゃんとお礼しておいで」
「ふぁい!」

頭を撫でてやり、桃子さんの方に行くのを見送る。

「さて、士郎さん」
「なんだい、夜空君」
「このグダグダになってしまったクリスマスパーティー、どう収めます?」
「……さぁ?」

男が二名、パイルドライバーを喰らった状態。
俺の作った味だけケーキ争奪戦に勝利したのは、はやて、アリサ、すずか、ホタル、那美さんの五人の様だ。
ちなみに、アップルパイと見せかけいろいろ真っ赤な香辛料達でそれらしく見せている一つをはやてが引き当てたようだ。
絶叫の後、血の様なモノ(とにかく赤いもの)を吐いて倒れた。
それを見た他四名が、自身の一口食べたアップルパイを見て安堵していた。
負けた奴らは、はやての介抱をし始める。
しょうがないじゃない、良い感じの香辛料があったんだもの。
最近、このパターン多くなってる気がする。
恭也さんもこちらに来た。

「あの子大丈夫か?」
「軟な鍛え方はしてません」
「どんな鍛え方なのかは、聞かないでおくよ」
「随分と楽しそうだね?」
「なんだかんだで、あいつ等といるの楽しいですから……」

男三人隅の席でのんびりと過ごした。
はやては三十分後に起きた。
三時間はかかると思ったが、なかなか耐性が付いて来た様だ。
辛いの以外も出すか。


◇◇◇◇◇


あのクリスマスパーティーから数ヶ月。
つまり、三年生になりました。

「まだお前らと一緒か……飽きたな」
「うぉい!ケンカ売っとるやろ?そうなんやろ!?」
「ちょっと落ち着こうよ、はやてちゃん」
「そんな安い挑発には乗らないわ」
「これからもよろしくね♪」
「俺のなのは達に気安く話しかけんな!」
「モブキャラは失せろ」
「あんた等も飽きないわね」
「よ、よろしく、です……はぅ」

個性的だな。
とまあそう思っていたのが、数週間前。
今は四人娘と帰宅中。

【僕の声が、聞こえていますか?】

そんな声が聞こえた。

【誰か、助けてください……】

幻聴か?
そう考えていたら、なのはがいきなり走り出した。
アリサ、すずか、はやてがなのはを追いかける。
俺も行こうとしたら、何かを蹴った。
綺麗な碧眼の瞳を思わせる色と形状をした石だ。
二つあったので拾っておく。
海璃と海斗にでもあげるか?
いや、何か嫌な感じがするから神棚行きだな。
だって触った時、魔力っぽいものが俺の魔力に寄生的なことをしようとしたんだもの。
まあ、逆に魔力を操作して大人しくさせたけど。
とりあえず、ポケットに入れてなのは達の方へ走る。
途中、黒いモヤモヤがいた。
生き物に見えなかったが、無視した。
なのは達に追いついたので、声をかける。

「何があったイタチ!?」
「フェレットよ!喋るか驚くかはっきりしなさいよ!」
「ど、どうしよ!?怪我してるの!!」
「お、落ち着きぃ!!こういう時は救急車や!!」
「はやてちゃんも落ち着こう!まずは人工呼吸だよ!!」

アリサ以外テンパッてるな。
すずかは、最近壊れ気味だからいいか。

「診療所連れてけばよくね?」
「「「それだ!!」」」

走り出す三人。
残された俺とアリサ。

「あの頃のすずかは、いずこに……」

項垂れるアリサの肩をポンポンと軽く叩いて、一言。

「お前も何時か、ああなるんだよ」
「……行くわよ」

行った診療所で、フェレットを預かってもらった。
なのはが凄い心配そうだったが、あのフェレットからは人の気配がする。
あまり関わらない方が良いと思うんだがな。
これ、パン屋の勘。


◇◇◇◇◇


フェレットを助けたその日の夜に散歩する。
リニスと出会った場所に、金髪幼女が倒れていた。
とりあえず、リニスと同じ様にコッペパンを食わせてみた。

「むぐぅ!?もぐもぐ……」

食べるの遅いな。
木の棒で突っつきながら眺めていたら、オレンジ色の犬が来た。

「額に石が付いてる犬なんて始めてみたかも。パン食うか?」
「……わ、わん」

なんだ、凄い違和感を感じるんだが。
まるで犬じゃないみたいな。

「この金髪の服が匂いを嗅ぐだけで咽返るほどの辛さを誇る俺特製の激辛ソース漬けにされたいか?三日はそのままだぞ」
「アンタ外道かい!?」
「……最近の犬は、喋るのか」
「あ……わ、わふ〜」

きっと知られたくないことなのだろう。
俺の予想だと、何処かの施設で様々な実験を繰り返して作られた生体兵器。
金髪少女と出会い殺戮以外の道を踏み出す為に施設を出たが金髪少女の力が尽き途方にくれていたと見る。
もう少しで金髪少女がコッペパンを食べ終わりそうな時に、もう一個コッペパンを突っ込む。

「もがぁ!?もごもご……」

やっぱ遅い。
まだ犬に話がある。

「今まで、(生体兵器として)大変だったんだな」
「……(フェイトのことを)わかって、くれるのかい?」
「あぁ、完全には理解できないけど、(君の事は)想像出来るよ。(数々の実験)辛かったんだろ?」
「そっか……アンタ、良い奴だね」
「そうでもないさ。俺は夜空。水無月夜空だ。君は?」
「アタシはアルフ。そっちでモグモグしてんのは、アタシの主のフェイト・テスタロッサ」
「ちなみに、そんな簡単に教えていいのか?」
「……悪人じゃなさそうだし、ほら、こっちの住人はよく言うだろ?人を呪わば穴二つ」
「うん、まったく意味が分からんな。せめて類は友を呼ぶだろ。誰だ日本語教えたの」

テスタロッサが食べ終わる前に、三個目を突っ込む。

「んむぅ!?あむあむ……」
「前に一人拾ったが、お前等も拾ってやろうか?」
「拾ったんだね。どんなマヌケなんだい?まあいいや。一応帰る家があるから遠慮するよ」

アルフがマヌケと言った瞬間、自宅の方から物凄い怒気を感じた。
今は何も感じないけど、なんだったんだ?

「じゃあ、俺はそろそろ帰るわ。また会えるといいな」
「そうだね。気を付けて帰るんだよ!」
「うぇっぷ。ま、またね……」

アルフ見てたら、オレンジ味のパンが作りたくなってきた。
明日作ろ。


◇◇◇◇◇


フェイトとアルフの会話。

「も、もう、お腹一杯だよ……うぇ」
「そうは言っても、ゼリー食品しか食べなかった自分が悪いんだろ?夜空に会えてラッキーだったと思わなきゃ」
「被害にあってないから、そんな事が言えるんだよ……アルフ、背中に何かあるよ?」
「ん?ホントだ。この臭い……パンだね。何種類かあるみたいだよ?美味しいのかね?」
「食べるの大変だったけど、美味しかったよ」
「とりあえず、今日はもう帰ろうかね」
「そうだね」

何故夜空がそんなにパンを持っていたのか、何所に持っていたのかには、気付かなかった。
そんな夜の出来事。


◇◇◇◇◇


ファイトと夜空が出会っている時のリニス。
ちょうどアルフがマヌケ発言をした時。

「誰ですか、私をマヌケ扱いしたのは!!……気のせいですか?むぅ、確かに感じたんですけど……夜空に何かあったか聞かないとですね」

夜空帰宅。
それとなく、夜空に何かあったか聞く。

「おかえりなさい。今日はちょっと遅かったですけど、どうかしたんですか?」
「ん〜テスタロッサが行き倒れてた。そんで、飼い犬のアルフと喋って仲良くなった。そんなもんかな」
「へ〜よかったで……それは、金髪の少女と額に石が付いたオレンジの犬ですか?」
「おぉ〜ピッタリだ。エスパーにでも目覚めたか?」
「と言う事は、始まってしまったのですね……夜空!アナタにデバイスを作ってあげますから、私のお願いを―――」
「断る!!」
「なんで!?」
「俺、機械弱いんだ」
「そんな理由で断られたんですか!?」

夜空は少し考え、告げる。

「デバイスが何か知らないけど、どうしてもと言うなら……俺の作った『何故か冷めない灼熱のホットドック!!』を三つ、三分以内だ」
「……無理です」
「諦めんなよ」
「だって、だってあれ可笑しいじゃないですか!?物理法則無視してますよ!?氷水に入れたのに氷が全部解けたんですよ!?」
「おま!?味が落ちるだろ!!何してんだ!!」
「そこ!?」
「食べ物を粗末にする奴は、粛清だ!!」
「えぇい!私の話を聞けぇ!!」

乱闘が始まろうとしたその時。

「叫んでるけど、何かあったの?」
「「なんでもありません!!」」
「あんまり夜更かししちゃダメよ?」
「「わかりました!!」」
「……今日は、もう寝るか」
「……そうですね」

と言う訳で寝た。
なのはが魔法少女になっているとも知らずに。

「そう言えば、拾った石を神棚に置かないと」

この石がある事件の原因になっている事も、俺はまだ知らなかった。

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