「お、王よ!!!!!!いけませぬ、部屋へお戻りください!」
ウルフィアスが慌てた様子で王に迫る。
そりゃそうだろう、今まさに殺されようとしている人が何の変わりようもなく隣で本を読んでいるのだから。
王はするりとウルフィアスを避け、本をパタンと閉じてこちらに振り返る。
「そんなに気にする事じゃないと言ったんだ、私、いや僕はね」
「なんですって?」
なにやら意味深な事を言う国王。
持ったぶらないで全部言って欲しい。
俺の問いに王様は答えず、無機質な瞳をこちらに向けるだけである。
この目、俺は苦手であるのだ。
「国王ッ!何度も言わせないで下さい!お部屋へお戻りください!」
ウルフィアスが叫ぶように頼む、というか命令する。
だがそんな言葉を無視してどこかへ歩いていく国王、そしてそれを追うウルフィアス。
一体何がしたいんだろうあの不思議ちゃん属性の国王は。
残された俺とSKAGの隊長ブッチャーはお互いに顔を見合わせ肩をすくめる。
「まぁあの王が何も考えていないとも思えん、居間の所は大丈夫だろう」
「そういやあの人は大戦の英雄だってクリームヒルデに聞いたが……」
俺の質問にブッチャーは得意げに答える。
「そりゃあ凄かったぜ、何せ自分から敵陣に潜入して破壊工作やら情報収集しちまうんだからな。SKAGも一時期は王の統制下だったんだ、ウルフィアスの旦那は黙って無かったけどな」
すげぇ、ハリウッドの大統領並にすげぇ。
ブッチャーは更に続ける。
「あんたになら話しても大丈夫だと思うが……これは機密事項なんだが、大戦の時、王はSKAGだけじゃなく変な部隊に入っていたらしい」
「変な部隊?」
あぁ、とブッチャーは頷く。
「なんでも少数精鋭でな、隊長は小さい銀髪の女の子で、あんたと同じような銃を使っていたらしい」
一瞬、心臓が大きく鼓動した。
銀髪の少女に鉄砲……いや、考え過ぎだろう。
「……それで?」
「あぁ、俺は一瞬しか見た事無いんだがな、その子は天使の遣いで、相当な強者だったらしい……その部隊には伝説の暗殺者やら2キロ先から魔法みたいに謎の力で殺す奴もいたんだとか」
へぇ、っと俺は感心したように頷く。
……あの子じゃないはずだ、絶対。
「あぁ、すまないけど、俺はもう行くわ。ちょっとクリームに呼ばれてるんだ」
適当な理由を付け、最近やたらなれなれしいブッチャーの元から去る。
……ミカに尋ねよう。