小説『Realheart+Reader』
作者:藍堂イト()

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プロローグ+少年のきっかけ



俺は小学三年生まではごくごく普通な生活をして、人並みに男女無差別に会話を交わしたり、時には女子に対

して「かわいいな」というものすごくフレッシュな感情を抱いたり、大好きなホビー(おもちゃ)で友達と白

熱した戦い繰り広げたりと……


そんなこんなで、本当に一般的な小学生として生きてきていた。俺はある暑い夏のある日のことだった。

俺らのクラスは体育の授業で『水泳』をやることになった。俺はもちろんのこと、俺のクラスのクラスメイト

はみんなこの水泳がたまらなく楽しみだった。


そして水泳前の憎たらしい国語の授業の終わりを告げる、まるで美しい天使の奏でる慈しみの心に満ちたハー

プの音色のようなチャイムが鳴り響いた。


俺らはそれと同時に机の横のフックに立てかけておいた水泳かばんを手に取り、それはもう運動会でも出ない

ような猛ダッシュで教室を飛び出し、一目散に教室のある校舎の逆にあるプールに急いで向かった。


その途中、曲がり角にいた柔道クラブの六年生に気づかずダッシュでぶつかり、ぶん殴られて大泣きする奴も

いれば、急いでいてつぶし履きにしたくつで全力疾走したために、案の定くつは脱げて思いっきり顔からズベ

ッっと転び、これまた大泣きして保健室に路線変更する奴もいたらしい。(そいつはその日の水泳の授業は見

学に終わってしまったらしい)


そして俺は「先に水着に着替えておく」という今考えてみたら別に特にすごいことでもないことをして、ほか

のクラスメイトより一歩も二歩もを先を越して誰もいないプールサイドに一番乗りに到着した。


一切翳れのない澄んだ空色の水。特有の消毒のにおい。アメンボの下にある面白い形の五つの丸い影。そして

ぎらぎらと冷たいプールに対抗するよう鋭く突き刺さるように眩しい日ざし。俺はそれを感じて改めてプール

に入れる喜びを感じた。


そして俺は「プールだあああ!」とつい喜びをおさえきれず声に出して叫びながら、真四角のびっしりと敷き

詰められたつるつると滑りやすいタイルの上を、プールに入りたいという欲望に駆られ、俺は先生に「プール

では絶対に走らないように」と二度繰り返し言われたのを忘れ、(二度繰り返したということは、かなり俺ら

に注意してほしいことだったのだろう)プール目掛けてさっきを上回るスピードでプールサイドを駆け抜けた。


そして滑った。
そしてプールサイドに頭を強打。
そして頭を触ってみると手に赤いべたべたするものがつく。
そして血が頭の上からどくどく流れてきて、なめてみると鉄をなめたような味がしてっペッと吐き出す。
そして目の前がどんどん白くなって周りのものが見えなくなってくる。
そしてバランスが取れなくなりその場に手もつかず倒れる。
そしてプールサイドのタイルが冷たくてひんやりして気持ちよくて眠くなってその場で寝てしまう。

さらにさっき追い越したアニメ大好き人間な奴が頭から血を流した俺を見て、「楓が死んでる!?」という驚

きの声を上げていた。もしかしたらそいつは俺の頭から血が出ているから、俺の頭に銃弾がぶっ放されたとか

いうサスペンスでファンタジーなことを想像したりするのだろうか。だとしたらまったくもってアニメの見す

ぎである。

そのあとで別の奴が「先生〜」と大きな声で叫び、先生へとSOSに向かっていく音が聞こえた。さらにその後に

声が聞こえてきた気がしたが、まったく聞き取れずさらに意識は遠のいていき、いつのまにか俺は意識を完全

に失った。



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