小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第51話

side  平沢 唯

北野天満宮を見た後、ホテルへ直行しバイキング形式の夕飯を食べ、大浴場の風呂に入るのだ。
クラス全員の生まれたての姿に何も感じず、浴槽に入り紬と澪の髪の毛が長いなー、なんてのほほんと考えていると・・・

「なぁ、澪とムギの髪って長くて綺麗だなー・・・私も少し伸ばそうかな?唯はどうするよ?」

律は自分の髪をいじって少し残念そうな顔をしている。ま、女の子は髪が命!なんて言うけど、俺は別に気にしないって感じなんだもんなー・・・

「んー・・・長くなったらさ、手入れするのめんどくさそうだから」

そんな他愛の無い話を終えてその後、俺達は自分の部屋に着いた。

紬が人生ゲームを持ってきたので、はしゃいで楽しんだ。
そろそろ消灯時間なので寝ようと促したが・・・


ぼふっ 
枕が俺の顔面にヒットした。飛んできた方向を見てみると・・・


「うふふ♪♪」


眩しいくらい目が輝いている。何故飛ばしたのかと聞いてみると・・・


「私ね、枕投げするのが夢だったの〜♪」


弾ける笑顔で両手を頬に当てくねくねとする。なんとも小さい夢だな。夢が叶えられてからか、とても嬉しそうだ。紬はさらに枕を取り、澪に投げた。


「え?ちょ、ムギ?」
ぼふっ
今度は澪の顔面にヒットした。澪は状況が分からずに当たったんだろう。


「ムギちゃん。枕投げをしたいんだね?」


「今更遅いぞ唯!ここは既に戦場なのだよ!」


律は枕を取り、紬に投げる。紬も負けずとして俺に投げ、顔面にヒット。なんかムカついたぞ。


「・・・よくもやったな・・・コノヤロー・・・」

「「唯!?」」「唯ちゃん♪」


俺も参戦し、枕投げをぎゃーぎゃー喚きながら遊んでいたら、山中先生が見回りに来て一喝し、渋々寝ることに。だが、こういうときこそテンションが上がる人物がいる事を俺は忘れていた・・・


「・・・しゃれこうべ・・・」

律が呟き、澪、紬はクスクスと笑っている。どこが面白いのだろうか。


「・・・しゃれこう・・・ぶふっ・・・」


律は喋る途中で笑った為か、澪、紬は笑っている。もう寝させろ。

ーーーーーー


翌日。修学旅行二日目に突入。この日にやる事は・・・


「この日は自由行動になります。班ごとに予定したコースをちゃんと回るように」


教師の『お前達は勝手に遊んでいろ』みたいな、やる気の無い事で俺達はフラフラとどこかに行くという行事だ。

俺達は観光名所の嵐山に行くのだが・・・


「おー澪、ムギ、唯!見ろよ猿だぜ!」


モンキーパークを指差し、はしゃいでいた。律は走ってモンキーハークへと入った。




「ちょ、律!京都に来てお猿は無いだろー!」


澪も走って律の後を追う。俺、紬はぽつんと残されていた。


「うふふ。私達も行きましょうか唯ちゃん♪」


「ぁ、うん。そうだね・・・」


仕方なくモンキーパークへと入る。そういえば、憂は今どうしているのだろうか。気になりメールをする。憂のことだから寂しがっているだろうな・・・


ーーーーーーーー


猿に餌をやり楽しんでいる律、澪。澪は少々恐がっているが。
携帯が震え、憂からメールが来たようだから確認する。
どうやら、梓と純とで我が家にお泊まりをしているようだ。良かった、憂が寂しい思いをしなくて、ほっとした。

「ぁ、梓ちゃんが『こっちは雨が振ってます』だってー」

「へぇー・・・京都はこんなに晴れているのにな」


そう快晴なのだ。なんだか不思議に思うよな。
そろそろ自由行動の時間が終わりそうなので昼食を適当な場所で済ませ、律は


「よーし。駅はこっちだな!」


適当に場所を指差しずんずんと歩く。途中で銀閣寺を見たが、『へぇ、これが銀閣寺か』と薄いリアクションを律はとる。興味無さそうだな。そろそろ自由時間が終わりそうなので帰る事にして、歩くこと数分後ハプニングが起きた。


律は先頭で俺達を導いていたが・・・
律の足取りがピタッ、と止まった。ものすごく嫌な予感がするのだが。


「ど、どうしたの?りっちゃん」

「ま、まさか迷った、とか言わないよな?律」


首をギギギと俺達の方を向ける。ロボかお前は。


「ぃ、いや迷ってないよ?」


「じゃ、ここどこ?律ちゃん」


「・・・住宅地・・・」


住宅地に着いた俺達。俺達の目的地は駅の筈だが。見事に周り一面家、家、家である。律は、近くにいた人に道を聞くが・・・


「ぁあ、すんまへん。駅の行き方は・・・どうどすか?」


「へぇ?」


なんだか関西弁と京都弁がごっちゃになっている。普通に話せよ。

「律なりに必死なんだろうなー・・・」


澪はポツリと呟いた。澪は律の事を心の底から分かっているらしい。律は、駅への道のりを聞き終わり、律の先導により俺達は、ついていく。


ーーーーーーーーーー


「・・・また迷った・・・」


律の自信ありげな行動を信じたのに迷子になってしまった。そこは住宅地だった。紬は地図を見てから『うーん』と唸りながら首を傾げる。澪は、だれかGPS機能の携帯を持っていないか、と聞くがそんなものは無い。


しばらくすると、和率いる秀才グループが見えてきた。助かったやっと駅に行ける、と思ったのだが

「ねぇ、駅はどこにあるのかしら?」


和グループも絶賛迷い中であった。


「それは私達が聞きたいよ・・・和ちゃん・・・」


「え?どういうこと?唯」


和はこてん、と首を傾げる。貴重なシーンだな。そんなことよりもだ。俺達も迷子になっている、と和に説明。和は今どの辺にいるのか地図で指差し、方向を確認。


「んじゃ、ここをーーーーって行けば駅に着けるね、和ちゃん」


「ええ。そのようね」


「和がいて助かったなー・・・」

「まったくだな」


ーーーーーーーー


悪戦苦闘しながらも駅に着き、ホテルへ直行。迷子になるとは思いもしなかったな。

夕飯の時間になり、ホテルが用意した定食を食べるのだが、律は澪の耳元で何かを囁(ささや)いて
澪は・・・


「・・・!あはは!やめろ律!あははは!笑いが止まらない!」


大爆笑だ。他の女子は何事かとこちらを見ている。目立っているのを知らないのか、まだ笑っている。あんなに恥ずかしがり屋だったのに、成長したな澪。


ーーーーーー


夕飯を済ませ、律、澪、紬とで土産屋で買い物をする。俺は憂、梓、おばあちゃんの分の土産を買うことにする。


「うーん何がいいかな。京都らしい物がいいんだけど・・・」


「これなんてどうかな?澪ちゃん♪」


紬は、新撰組の法被と模造刀をびしっと見せる。


「危ないから、刀は買わないよ。ムギ」


「しょぼーん・・・」


渋々と紬は法被と刀を元の場所に置く。紬は何かを考えたのか、笑顔で


「じゃ、軽音部に関するお揃いの物を買いましょう♪」


と提案。俺達は『いいね』と承諾した。ウロウロと商品を見て周り、紬が


「ぁ、コレいいんじゃない?私達が軽音部だって事が分かるもの♪」


ある『モノ』を指を差し、律、澪は『なるほど、いいな』と納得。まぁ、俺もいいと思うけどな。


「うん。いいね♪」


みんなの分のある『モノ』を購入し、修学旅行二日目は、こうして幕を閉じたーーーーーー。

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