第53話
六月になり本格的な梅雨の時期になった。外はザーザーと降っている。そんな様子を我が家で見ていて、かなり濡れそうだなと思いジャージをカバンに入れる。
ギターケースにビニールをかけることを忘れずに学校へと向かう。
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豪雨だった。傘なんて役にも立たないくらいだ。これならレインコートを着るんだったと後悔しても遅い。横殴りの強風によりさらに濡れた。
風邪を引かないようにジャージを穿く。先生にも事実を話したので了承を得た。
しばらくすると制服は乾き、ジャージはこのままでいいや、と思った矢先、山中先生に出会い一喝された。
「こらっ。制服乾いたからジャージを脱ぎなさい!」
「ぇ、でも風邪引きそうだし、このままでも・・・」
「ダメよ!ほらっ脱ぎなさい!」
職権濫用を使い無理矢理脱がす。律、澪、紬がやって来てこちらの様子が気になり俺の近くに集まる。
「ゃ、山中先生がセクハラする〜」
『ええ!?』
「ち、ちょ。違うわよ。濡れていた制服が乾いたからジャージを脱いで、て言っただけよ!」
律、澪は『なんだ・・・』と呟いて納得したのだが、紬は『ぽ〜・・・』と自分の世界にトリップした。はてさて、何を考えているのかね紬は。
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時は流れ放課後。
「へぇ、朝そんな事があったんですか・・・」
朝の出来事を梓、憂に話す。梓はジト目で見てくる。なんなんだよ。紬はいつものように給仕の仕事をし、みんなに茶を渡しふ、と梓のギターケースに目をやり
「ねぇ梓ちゃん。ギターケースに何か被せているね。」
「ああアレですか。ギターケース専用のレインコートですよ」
「え!?そんなのあるんだ!」
俺は驚きだ。初めて見るぞ。それにしてもギターケースにレインコートとはな。
「ええまぁ、あまり店では見ないかもしれませんが」
「え?じゃ、どこにあるの?梓ちゃん」
憂はこてん、と首を傾げ梓に説明を欲していた。
「ネット通販だよ。他にもいろいろと便利な物があったよ。例えば・・・」
梓は傍らに置いた自分のカバンを漁る。
「ぇー・・・あった。あのレインコートを買ったときに付いたギター用の乾燥剤でしょ?これでイチキュッパなんだよ」
「へぇー・・・」
憂は苦笑いしているが、梓はさらにカバンを漁り次々に物を出す。某青い猫型ロボットに負けずとしているのだろうか。
「ぁ、あと壁にくっつくギターハンガー。吸盤が肉球の形して可愛いんだー」
『・・・』
みんな絶句である。こいつは・・・もうダメだ・・・
「あと指が大きく開く強化グッズで」
「あ!あと寝ている間にリズム感を養えるCDもあって」
梓はまだ紹介したいものがあるのかバックを漁る。四次元バックか。そんな梓を澪は見兼ねて
「・・・梓。それみんな役に立ったか?」
「へ?」
梓はそれを聞き、かあぁと頬に朱を浮かばせる。どうやら図星だな
「そっ、それより練習しましょうよ!」
「あ、逃げたな」
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『ぴゅあぴゅあはーと』と
澪と紬によって作られた新曲『Honey Swwet Tea Time』、『五月雨20ラブ』の練習をする事になった。いつの間にそんなものをやったのか聞いたが、どうやら修学旅行が終わった後考えついたようだ。努力家だな、としみじみに思う。
「よーし。いくぞー。ワン・ツー!」
〜〜〜♪♪♪♪♪
律の力強いドラム
紬の滑らかなキーボード
澪のベース
俺、憂、梓のギターが音楽室に響き渡る。
〜〜〜♪♪♪♪♪
ーーーーああ
〜〜〜♪♪♪♪♪
ーーーーやっぱ音楽はいいな。
〜〜〜♪♪♪♪♪
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練習は終わり外を見てみると豪雨だ。強風も吹いていて窓がガタガタと震えるほどだ。
「あー・・・雨止みそうに無いなー・・・」
すると、俺にとって忌々しい事さえも起こったのだ・・・それは・・・
ゴロゴロっ!!
「ひいっ!」
「ど、どうした!?唯!」
全員、俺の異変に察知する。俺は、恐怖のあまりに涙ぐんでいた。畜生・・・
「唯ちゃん!?どこか痛いの!?」
「唯先輩っ!」
「唯っ!」
俺はみんなに心配させたくなかったので、笑いかけたのだが・・・
ピカッ! ゴロゴロっ! ズドーンっ!
「きゃあああっ!」
あまりの恐ろしさに悲鳴を上げてしまった・・・きゃあって・・・畜生・・・
「だ、大丈夫だからっ!お姉ちゃん心配しないでっ!」
「唯は雷が嫌いなのか・・・?それにしても怖がり過ぎじゃないのか?なぁ、憂ちゃん。なんで唯は雷が嫌いなんだ?」
律は憂に弱々しく聞き、憂は分からない、小さい時から嫌いだと伝え、澪や紬は俺をあやすように背中をさすってくれていた・・・。
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威力は増すばかりで全然止みそうに無い。俺、憂、澪は楽器を音楽室に置くことにした。ビニールだけじゃ頼りが無いほどの大雨だしな。
学校を出てみんなと共に帰路へと向かう。
なのだが・・・
「だ、大丈夫だよ・・・憂」
「ううんっ。また雷がきたら怖いでしょ?だから・・・」
俺と憂は仲良く手をつなぎ、我が家の方向へと向かうのだが・・・律や澪達が見てるぞ・・・ちょいと恥ずかしいのだがな。
「うーん・・・」
「どうしたの?お姉ちゃん」
手元にギターが無いからか何故かそわそわする。そんな事を憂に伝え
「私もだよ〜。なんだか落ち着かないよ〜」
憂はギターを愛する者だからか共感を得たようだ。
「憂はアコギが好きなんだね」
「うん!ギターがあるからみんなと演奏が出来て嬉しいんだよ!梓ちゃん」
律、澪は『やれやれ』といった目で見る。紬はというと・・・
「私もキーボードでみんなと演奏が出来て嬉しいわ〜♪」
幸せ絶頂の紬は頬に朱を染め興奮していた。
ザー・・・ザー・・・
どんな大雨が降っても、俺達なら突き進めるさーーーー己の信じる『道』をただひたすらに、な。