小説『いじめ』
作者:小紗(小紗の小説部屋)

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「イチゴ!イチゴ!」
吏子は懸命に呼び掛けた。
美久は冷たい目で吏子を見る。
「イチゴ‥‥どうして?手紙に書いて伝え…」
「しょうがないでしょ!」
美久は声を張り上げた。
「あたしはあんたと同じことをしてるだけ。
かつての友達を裏切る行為をね。あたしがいじめから逃れるにはこうするしかないのよ。能野さん。
あんたがいくら同情しようと、結局いじめられるのはあたし。良くても二人でいじめられるだけ。
あんたは自分が助かるためにあたしをいじめてた。
たとえ命令でも、少し加減をしていてもいじめられていることには変わりはない。
所詮あんたの行為なんて偽善じゃない!あたしはずっと待ってた。あんたが助けてくれるのを!
もういやなの。いじめられるの。同じことなんだからお相子でしょ。
自分の身を守るにはこれしかないんだから」
悪く思わないでね。能野さん。と美久はつけたし去って行った。
吏子は絶望した。
美久が裏切ったことじゃない。
自分か美久のことを考えていなかったことに絶望したのだ。
結局、吏子は自分の満足する偽のかばいだてをしていたのだ。
吏子は自分自身が嫌になった。
(こんな私なんていじめられたって……仕方ない)
吏子は校舎の外に出て、泣き始めた。
空は吏子の運命を示すように曇り始め、大粒の雨を降らせ始めた。

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