小説『夜天と勇気と決闘者』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 Side:裕奈


 「「「アカデミアが買収される!?」」」


 いや、何でそうなんのよ?
 しかも買収狙ってのが『万丈目グループ』って…なんで!?


 「…どうやら兄さん達は1年近く経っても俺が『アカデミアで1番』になって居ないことが不服らしい。
  それで、アカデミアを買収して『金の力』で俺を上に押し上げる心算なんだろう…良い迷惑だ。」

 「…言っちゃ悪いけど準のお兄さんはアホなん?」

 「確認不要でしょ?デュエル界で一番になる事を望んでおきながらデュエリストの魂を理解してねーんだから。」

 大体、アカデミアの一番なんて簡単になれるかっての。
 十代とかカイザーとか……まぁ私やはやても居るし、三沢に雪乃んに委員長――強いのがゴロゴロ居るんだぜ〜?
 その中で揉まれて強くなるんだってのに…

 それに一番なんて所詮称号でしょ?一番は入れ替わるもんだしね〜。

 「けどさ、買収つってもアカデミアの経営者ってKCだよね?社長が簡単に買収なんてさせないと思うけど?」

 「其れは勿論だ。海馬社長は、デュエルでの決着を持ちかけたらしんだが…」


 何か問題があんの?


 「兄さん達は自分達がデュエルの素人である事を理由に相手のデッキに『攻撃力500以下』の制限を持ち出した。
  身内の不始末故に、俺が相手をするが……攻撃力500以下だと如何デッキを組んだものかと思ってな…」


 うわ〜…なんだ其れ。
 デュエルが素人なら出す条件も素人だねこりゃ。

 ま、デッキ構築で悩んでなら毎度お馴染み店長のところに行ってみようか♪











  遊戯王×リリカルなのは×ネギま  夜天と勇気と決闘者 GX42
 『攻撃力だけではない!』










 つー事で困った時の『札屋・吉良』!
 店長、攻撃力500以下のデッキってなんか参考になるもの無い?


 「攻撃力500以下のデッキ?色々有るぞ?」

 「どんなものが有るのか参考までに教えて欲しいんだが…」


 店長の趣味はデッキ構築だから、攻撃力500以下のデッキも有るかなーと思ったけどこりゃ当たりだね。
 低攻撃力だとどんなのがあんだろ?
 私のシンクロン軸のローレベとは違うだろうからね〜。

 「ま、見てのお楽しみやろ。」


 だね。


 「モンスターの攻撃力が制限されるとなると、先ずは直焼きメインの『バーンデッキ』だな。
  シモッチ軸なら最悪モンスター0でも瞬殺するデッキが構築できるぞ?
  攻撃力『?』が使えるなら、高レベル攻撃力500以下を利用しての『モンタージュ・ドラゴン』もありだな。
  他には『ウィジャ盤』や『終焉のカウントダウン』をつかった特殊条件勝利を狙うデッキ。
  攻撃力500以下で守備力が高いモンスターの攻守を逆転するデッキとかがメインになるだろうな。
  攻撃力1000以下だったらデッキ破壊やエクゾディアも押せるんだが、今回はまぁ仕方ないな。」


 へ〜…思ったよりも有るね?
 他にも攻撃力不明の『グリード・クェーサー』とかも使えそうだね?


 「攻撃力500以下なら俺の『ユベル』も使えるな。」

 『まぁ、確かにそうだね。十代の頼みなら、彼に一時力を貸しても構わないよ?』


 いや、アンタは効果が極悪だから…
 で、何か参考になった準は?


 「思った以上にな。
  成程、矢張りデュエルは奥が深い……マダマダ無限の戦術があるんだろうが…思いついた。」

 「ドナイなデッキにするかか?…何か手伝える事有ったら遠慮せずに言うてや?」

 「あぁ、そうさせて貰う。
  俺1人で組んだデッキよりも、お前達と組んだデッキで勝つ事の方が意味があるしな。」


 なる〜。
 だったら協力は惜しまないぜ!

 「皆で『世界最強の攻撃力500以下のデッキ』を作ってみようか!」

 「おぉ!なんかワクワクしてきたぜ!!」

 『頑張ってみよう〜〜♪』


 エフェ…そういやアンタも攻撃力0だったね。

 さて、気合入れますかね!!








 ――――――








 Side:はやて


 で、あっという間にデュエル当日。
 準は既にスタンバイOKやね。

 準のお兄さん達はマダ来てないみたいやな。
 まぁ、マダ開始まで時間はあるんやけど…

 「一応は立場的に『挑戦者』なんやから、先にリングインしとるのが礼儀と違うかな?」

 「普通はね〜。けどさ、準のお兄さん達って一応大企業の社長さんだからその辺の感覚はおかしいのかもよ?」


 いつ何時でも『社長出勤』てか?
 そらアカンやろ――まぁ、相手が弟って事で慢心もあるやろうけどな。
 せやけどそれじゃあ準には勝てへんな、絶対に。


 「万丈目は負けないぜ!あいつはマジで強いからなぁ!」

 「アニキの言う通りっス!万丈目君は負けないっすよ!」


 十代と翔君もそう思うか?
 ま、当然やな。


 「と、来たみたいだよ――準のお兄さん達。」

 「やっとお出ましか?…う〜〜ん、負ける筈が無いって顔やな。」

 攻撃力500以下が相手なら勝てる思てるんやろうけど…デュエルはそないに甘いもんやない。
 ホンマモンのデュエリストに牙剥いた事を後悔するとええわ!








 ――――――








 Side:万丈目


 「「デュエル!!」」


 万丈目:LP4000
 万丈目兄:LP4000



 このデュエルは何としても負けられない。
 友と構築したこのデッキで兄さん達を倒してみせる!!

 「先攻は俺から!俺のターン!魔法カード『手札抹殺』を発動。
  互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数と同じ枚数をデッキからドローする。」

 「1ターン目からの手札入れ替え?余程手札が悪いようだな準よ。」


 如何だろうな?
 更に魔法カード『おろかな埋葬』。
 この効果でデッキから『次元龍 ヘルメビウス』を墓地に送る。

 モンスターを裏守備で出し、カードを1枚伏せてターンエンドだ。


 「攻撃力500以下では碌なモンスターも居ないだろう!このデュエルは私が勝つ!
  私のターン!手札から『融合』を発動!手札の『ロード・オブ・ドラゴン』と『神竜 ラグナロク』を融合!
  現れろ!『竜魔人 キングドラグーン』!」
 竜魔人 キング・ドラグーン:ATK2400


 キング・ドラグーン…ドラゴンを展開する効果を持った上級融合モンスター…
 矢張り此方の攻撃力を制限した上で、超攻撃力のモンスターで圧倒するデッキか。

 確かに強力だろうが、それだけでは俺は倒せないぞ!


 「吠えるな準!攻撃力500以下の制限を受けたお前など牙を持たぬライオンと同じ!
  私はキングドラグーンの効果で、手札の『ダイヤモンド・ドラゴン』を特殊召喚する!」
 ダイヤモンド・ドラゴン:ATK2200


 来たか上級モンスター!
 だが、これ以上モンスターを出せるのか?
 キングドラグーンの効果をアテにしたデッキなら、上級モンスターが多すぎて通常召喚するのが難しいんじゃないか?


 「ぐ…確かに…。だが、圧倒的攻撃力のモンスターを毎ターン展開すれば勝利はおのずと転がり込む!
  バトル!ダイヤモンド・ドラゴンで伏せモンスターを攻撃!!」


 来たか…!
 攻撃対象になったモンスターは『墓場への先導者』!
 このカードがリバースした場合、互いのプレイヤーは手札のモンスターを全て墓地に捨てる!
 俺の手札のモンスターは2枚だ!


 「私の手札のモンスターも2枚…!ぐぬ手札が0に…だがまだキングドラグーンの攻撃が残っている!
  キングドラグーンで準にダイレクトアタック!!」

 「ぐ…」
 万丈目:LP4000→1600


 まぁ、このダメージは想定内だ。
 寧ろ此処からが俺の本命だ!
 リバースカードオープン、速攻魔法『終焉の焔』!
 俺のフィールド上に『黒焔トークン』を2体特殊召喚する!


 黒焔トークン:DEF0(×2)


 「なに!?何故そのカードを発動しなかった準!発動すればこの攻撃でのダメージは0に出来たはず!」

 「兄さん、デュエルは時には敢えてダメージを受けることも必要だ。
  俺はダメージを受けようとも2体のモンスターを揃える必要があったんだ。」

 「!!成程…上級モンスターか。だが、攻撃力500以下ならば上級モンスターとておそるるに足らん!ターンエンド。」


 確かに攻撃力500以下では大した事はないだろうな。
 だが、例え攻撃力500以下だろうとも勝つ事は出来る!
 俺の手札には既に勝利へのキーカードが揃っている!

 「俺のターン!魔法カード『死者転生』!手札を1枚捨て、墓地のモンスター1体を手札に加える。
  俺は手札の『ビッグシールド・ガードナー』を捨て、墓地の『次元龍 ヘルメビウス』を手札に加える。
  そして、黒焔トークン2体をリリースし……現れろ『次元龍 ヘルメビウス』!!」
 『グガァァァァァァァァ…!!!』
 次元龍 ヘルメビウス:ATK0


 これが俺の切り札!
 十代、裕奈、はやて……最高の好敵手と共に組んだデッキの最強モンスターだ!


 「レベル8…!だが、攻守共に0では私のモンスターには勝てぬ!」

 「其れはどうかな?ヘルメビウスの効果発動!
  このカードのアドバンス召喚に成功したとき、互いの墓地のモンスターを全て除外する!
  そしてヘルメビウスの攻撃力はこの効果で除外したモンスターの数×700ポイントアップする!」

 「なにぃ!?」

 「俺の墓地のモンスターは9体、兄さんの墓地のモンスターは7枚…合計16枚のモンスターを除外!
  此れによりヘルメビウスの攻撃力は16の700倍――11200ポイントアップする!」
 『ガァァァァァァ!!!』
 次元龍 ヘルメビウス:ATK0→11200


 「な、なにぃ!?」
 「攻撃力0のモンスターが、一気に攻撃力1万オーバーの超強力モンスターになっただとぉ!?」


 例え攻撃力が0でも効果を駆使すれば高攻撃力モンスターを倒すことは出来る!
 デュエルには無限の可能性がある。
 そして最高の好敵手と其れを研磨し合う事で限りない高みへと登る事が出来るんだ。

 アカデミアの一番などは真のデュエリストの通過点にもならない。
 俺が…俺達が目指すのは更にその先だ!

 此れで終わりだ!
 次元龍 ヘルメビウスで、ダイヤモンド・ドラゴンに攻撃!
 次元の彼方へ消え去れ、『イレイズ・オブ・ディメンジョン』!!



 ――ギュガァァァン!!



 「ぐおわあぁぁ!!!ば、馬鹿な…!私のレアカードが…!」
 万丈目兄:LP4000→0


 会社経営者としては成功したかもしれないが、矢張りデュエルは素人だな兄さん。
 攻撃力の制限など俺には何の枷にもならない。

 ましてや友との絆が詰まったこのデッキでの敗北などありえないんだ。


 「く…準よ…!」

 「お前は万丈目一族としてのプライドはないのか!」

 「…悪いが俺は万丈目のプライドよりも、デュエリストの誇りを取る!
  このアカデミアの好敵手たちと共に高めあい、限りないデュエルの道を突き進む!
  デュエリストの道にゴールなどは無いんだ!」

 「準…!!」


 余計な真似はしないでくれ。
 俺は俺のやり方で最強のデュエリストへの道を進む!

 もしも其れが不服だというなら――俺を万丈目の家から追放してくれても構わない!!


 「準!!……分った。お前は私達が思っていたよりも成長してたようだな…」

 「兄者!?」

 「…よく見てみろ、準のあの顔を……アカデミアに入学した頃のひよっこではない…アレは一人前の男の顔だ…
  どうやら、私達は会社経営にかまけて、何時の間にか金儲けしか考えられなくなっていたらしい。
  良いだろう、お前のやりたいようにやってみろ準――もし良ければ今度の長期休みに一度帰ってこい。
  お前の言う最高の好敵手とやらを私に紹介してくれ。」


 兄さん…いや、その必要は無さそうだぞ?


 「いよっしゃ〜〜!!やったぜ、流石は万丈目だ!!」

 「皆で組んだデッキの切り札がバッチリ決まったぜ!」

 「見事なデュエル…此れで満足や!!」


 十代、裕奈、はやて…あの3人が目下俺の最大の好敵手だ。


 「あの子達が…ふふ、完敗だ準。もう何も言うまい、お前はお前の道を確りと踏みしめて行くが良い。」

 「あぁ、勿論だ!」

 俺は俺の道を進む。
 果てないデュエリストの道をな!









 ――――――








 ――KC本社・社長室


 Side:海馬


 「アカデミア買収の件は、アカデミア生徒の勝利により白紙撤回されました。」

 「フン…当然だ。未来を担うデュエリストが素人に負けるなど断じて許さん!」

 攻撃力500以下という縛り程度で素人に負けていては話にならん。
 其れくらいのハンデを跳ね返せねば、俺や遊戯はおろかあの凡骨にすら及ばぬわ!

 で、その生徒は誰だ鮫島?


 「はい、万丈目準…買収を仕掛けてきた万丈目グループの末っ子です。」

 「ほう?」

 愚兄の行いを正したか?…面白い。
 しかも万丈目は今年の1年の有望デュエリストの1人だったはずだ。

 くくく…良いぞ。
 遊城十代、万丈目準、明石裕奈、八神はやて……この4人は特に有望株だ。


 幾多のデュエルを経験し己が力を研磨するが良い。

 そして上って来い、この俺や遊戯の高みにまでな!!


 貴様等の成長を楽しみにしているぞ!
 フハハハハ…あ〜〜っハッハッハッハッハ!!!!















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 次元龍 ヘルメビウス
 レベル8   闇属性
 ドラゴン族・効果
 このカードは特殊召喚出来ない。召喚、リバースしたターンのエンドフェイズ時にゲームから除外される。
 このカードのアドバンス召喚に成功したとき、互いの墓地のモンスターを全てゲームから除外する。
 このカードの攻撃力はこの効果で除外したモンスターの数×700ポイントアップする。
 ATK0    DEF0



 墓場への先導者
 レベル3    闇属性
 アンデッド族・効果
 リバース:互いのプレイヤーは手札のモンスターカードを全て捨てる。
 ATK400    DEF400



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遊戯王デュアルモンスターズGX Spirit Summoner コナミ・ザ・ベスト
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