小説『とある孤独な吸血鬼』
作者:不知魚()

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何がいけないんだろう。
バケモノってなに?
自分がそう呼ばれる理由が理解できない。
確かにあたしは他者の血液を取らないといけない特殊な体質だ。
だからって何で弾圧するんだろう。何で糾弾するんだろう。
謂れのないことまで言われたって、こっちは困る。何もしていないんだから。
たった一人で日本中を走り回って逃げていた一人の怪物は今も思う。
ただ、人に愛されたかっただけ。愛したかっただけ。
なのに皆彼女を見ると怪物と罵り、銃や刃を向けて殺そうとする。
彼女はそんなことはしない。大切な人の血なんて奪わない。
否定したって信じてくれない。
人間はいつもそうだった。
逃げるように居場所を変えて何年も生きてきた。
そうして気づく自分という生命体。
どうやら自分はケガや病気をせず、年も取らないらしい。
怪物と言われた理由が理解できた。
体が成長しないのだ。それは不気味だろう。
傷だってすぐ治る。
「……」
いつしか彼女は一人で行動するようになった。
基本、生命体の生き血を摂取すれば飢えることはない。
飢えたら暴走することくらいは理解できる。
一人、日本を転々としていた。居場所なんてないから。
いつしか、学園都市なる場所に迷い込んだ。
邪魔されそうになったから、何人か血を吸った。
妙な人が多い。
血の味が違うのだ。混ざりものをしてあるかのような、とても不快な味がする。
生臭い水道水のような味だった。血液は普通(と彼女が思っている)甘いものなのだが。
「……」
今はこの広い都市の、郊外の廃ビルを根城にしている。
科学が発達しているような街であることはここ数日でわかった。
外見はまだ8歳程度の子供だ。
彼女は自分の意思で外見を変えることを可能としていた。
要は成長も退化もないこの体、それなりのメカニズムというものはあるらしい。
8歳、12歳、16歳程度には自在にコントロールできるようになった。
ここにきてから初めて。今まではずっと子供のままだった。
それに、変なこともできるようになった。色々不思議な現象を起こせるようになったのだ。
「……おつきさま、きれー」
廃ビルの屋上で月を眺めていた。丸いお月様が優しい月光を浴びせてくれる。
幼女は一人、ぷらぷらと素足を晒して寒空の下でつまらなそうに下界を見下ろす。
「……おなかへったぁ」
そして不意に空腹を覚える。
血の餓えが襲ってきた。
幼い彼女はお腹が減ったと思った。
立ち上がると、とてとてと歩き出す。
近くのコンビニにお弁当を買いに行くような感じで、彼女は腹を満たす血を求めて、廃ビルを後にする。
今宵も一人ぼっちだと思ってた。
思って、いた。

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