小説『思考するメタモン』
作者:盾雪()

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第六話


んー…何だか拍子抜けしてしまった。

「スミマセンがこの星型の実は良く分からないので無理ですが…
ヒメリの実は一個で120円。ナゾの実は一個200円になります。
…如何致しましょうか?」

木の実一個の値段、ゲームの時より遥かに高いんですけど…。
…あれか。
ゲームじゃなくて現実だから手間の掛かる分だけ値段が上がるのか。
スターの実が買い取ってもらえないのは予想外だった。

「えっと…ナゾの実を10個お願いします。」
とりあえず二千円あればいけると思う。

「はい、畏まりました。買い取り価格計二千円です。…有難う御座いました。」

「いえこちらこそ。」
俺は店員さんにニコリと微笑みながらお礼を言う。

「っ…い、いえとんでもないです…。」
若い女の店員さんで、アルバイトなのか顔が若干赤い。

『ねぇねぇ、コースケ。』
ミュウが念話で話してくる。

『ん?なんだミュウ。』
俺も脳の造りをちょっといじって念話が使えるようにし、ミュウに答える。

『あの店員さん、コースケに笑顔向けられて照れてる。』
俺のせいなのか…!

『…それで顔が赤いのか。』
なんか悪い事した気分だ。
というかギル様スゲー…。

俺とミュウはポケセン内部の、未だに顔を赤くしている店員さんのいるフレンドショップのカウンターから離れ、ジョーイさんのいる回復カウンターへと行く。
回復カウンターにはカウンターの後ろの方でごそごそと何かやっているジョーイさん。
その後ろではモンスターボールに入っているポケモンの様子を見ているタブンネがいた。

「えっとすみません。ちょっといいですか?」
俺はごそごそとしているジョーイさんに話しかける。
「あ、はいはいーちょっと待ってくださ…い、ね…。」
するとジョーイさんは俺の顔を見て固まった。

「あのー…俺の顔になんかついてますか…?」
なんかついてるのだろうか…?

「はっ…いえっ!そんなことはないでしゅっ………!」
ジョーイさん…舌噛んだ。

「………」

「………」

『この人もコースケの顔にボーっとしてるよ』
ミュウが沈黙の中、またしても念話で話してくる。

『うっ…マジか…』
やばいぞ。
俺悪いことして無いのに罪悪感に押し潰されそう…。

「そ、それで何のご用件ですか?」
ジョーイさんは何事も無かったかのように話を続ける。

「いや、宿泊施設とかどうなってるのかなぁ…と思いまして。」
俺も何も無かったかのように振舞う。

「あ、そ、そうですか。此方でご宿泊いただけます。
食事についてですが…基本各自でとってもらうことになります。

ですが、その…よろしければ私どものほうでお作り致しましょうか?」

なんか最後の方本来無いサービスだと思うんですが…。

「いや、いいです。お金掛かるんでしょうから。
…それに今ちょっと節約したいんで。」
俺はありそうな理由をつけて断る。

「そ、そうですか…では此方の開いてる所に名前をお書きください。」
ジョーイさんはちょっと、ショボンとなりながら、名簿のようなものをだしてくる。

「えっと、ポケモンってどうすれば良いんですか?」
俺はそれに"桐ヶ谷浩輔"と書き、ジョーイさんに返しながら聞く。
するとミュウがもぞもぞと動き、今来ている服の襟から、コラッタのひげをヒクヒクとさせながら顔をのぞかせる。

「そのまま連れられていても大丈夫ですよ。」

「そうですか、有難う御座います。」
と俺はニコリとしながら礼を言う。

「……はい、では此方が鍵になります。
それでは横のエレベーターから上にあがってくださいませ。」
俺は小さく礼をするジョーイさんから鍵を受け取り、エレベータへと向う。

……ただ、カウンターから離れる時、タブンネがこちらをずっと見ていた気がした。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ヒウンシティ、ポケモンセンターの301号室。

『おー…ここが今日泊まるお部屋かー♪』

ミュウは部屋に入ると同時に服の中から出てきた。
部屋の中はベッドが二つ。
簡易な机が一つ。
クローゼットが一つ。
とかなり簡素なものだった。
ミュウはそんなものでも、初めて見るもので珍しいのか、変身を解除してぺたぺたと本来の手で触っている。

「ミュウーお前暴れるなよー……なんか壊したら弁償らしいから。」

『うん、わかったー』

分かってんのかなー…
…いや、分かってないな。

俺は少し頭を押さえながら備え付けの机へと近づく。
ふむふむ…浴場は二階か…。
お、ポケモンも一緒には入れるのか。

「おーいミュウ。風呂行くぞー」

『へ?お風呂?もっと遅い時間じゃないの…?』

「いや、なんか疲れたからもう眠いんだわ…」
そう、俺はもう眠い。
ベッドにダイブしたいです!

『…そういえばコースケ、ずっと泳いでたもんね。』
あーそういえばそうだったか。

「ま、そういうこと…まぁ、ほかにも色々あったけども……」
ホント、ミュウが色々やらかしてくれたからねー…

『あーごめん…。』
と謝るミュウ。

「いやまぁ、いいよ。なんだかんだ言っても楽しかったし。」

『……そう?』

「うん、ほんとほんと。」
大変だったけど…まぁ、楽しかったことに変わりは無い。

『そっか……じゃ、お風呂場にレッツゴー♪』
と、元の姿のまま出て行こうとするミュウ。

「こら、勝手に行くな……変身しとけ、バカ!」
俺は変身せず風呂場へと行こうとするミュウに慌てつつ、
その後コラッタに変身し直したミュウと共に、一緒に風呂に向かった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ふー…良い湯だった。
俺は部屋のベッドに座ってくつろぐ。

『お風呂気持ちよかった〜…
初めて入ったけどあんなに気持ち良いだなんて…いままで僕は何をしてたんだろ…』

「いや、島で木の実食ってたんだろ?」

『まーそうだけどさー…』

コラッタの状態で、ミュウも、ぐでーと床に寝そべりながらくつろぐ。

ミュウは初めてだっただろうけど…俺は三日ぶり(?)の風呂になるのか?

…そういえばなんでポケモンの世界にいるんだろ…。
気がついたときには…って感じだったしなー…。
テンプレな神様転生な感じじゃ無いと思う。
ましてやトリップなんかじゃ絶対無いし……謎だ。

『…どうしたのコースケ?』

ミュウが念話をしてきたので思考を一端止める。

「ん?いや、なんでもないよ。」

『変な顔してたから、お風呂良くなかったのかと思った。』

「いや、そんな事は無かったぞ?」

まぁ良い湯だった。
…なんだけども、塩のにおいが体にこびり付いてて落とすのが大変だった…。
というか良くあんな状態で街歩いてたなぁ、俺…。

『ふーん…ま、いいや。
そういや、コースケってさメタモン?…だったよね?』

「??そうなんじゃないか?」

『でも僕みたいに考え事とか喋ったり出来てるから、
僕と同じポケモンの種類なんじゃないかなーって思って。』
ミュウはそう話しかけてきながら、ベッドに上がり俺の横へと来る。

「え?」

『ほら、あの島にいたメタモンとコースケってどっちかって言うとコースケは僕に近い感じがするし。
…それに僕、元々メタモンだったし。』

「え?ちょ、ちょっとまて…つまりお前元々メタモンだったの!?」

『んー…そう…だったと思う。
気がついたらー…なんて感じだったから、記憶が曖昧なんだ。』

…え、ちょっと思考が追いつかない。
…つまりはミュウは元々メタモンで…、

「メタモンは全部ミュウになる可能性がある…?」

『流石に全部じゃないと思うけど…というか"ミュウ"は僕だけだよ!!」』

おいおい…それ新事実どころの話じゃないぞ…。

「そ、そうだよな。
全部ミュウになるなんてこと無いよな…。
ごめん、俺もう寝る…。」

『え、ちょっとコースケ?!"ミュウ"って僕だけじゃないの!?…ねぇってば!』

俺はベッドに横になり、毛布をかぶる。
そしてミュウがベッド揺さぶっている事にも気づかないまま、俺は眠りについた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


……誤字脱字等ありましたらお知らせくださいませ。

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