小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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―事件現場 花茂芽―
会見会場は水を打ったように静まり返っていた。その静寂を最初に打ち破ったのは下を向いたままの須照美だった。
「…私もわかってたわ…この恋が決して許されるものではないって…でも無理だったの…あの人を諦めるのは。何回もあの人に言ったわ。あなたのことが好きだって…それも尊敬とか友情とかそんなのじゃなくてもっと熱いものだって…でも分かってくれなかった…だから…」
その須照美をなだめるように私は彼女の右肩に手を当てて話をした。
「いいえ、天木さん。あの人もあなたが大嫌いだった訳じゃないんですよ。ねぇ、春さん?」
私はそっと春さんの方を見た。それと同時に須照美も顔を上げた。
「…別に…嫌いなんて…今までに言ったことないでしょ?」
少し照れているのが顔の色と声色でよくわかる。このままでは話が終わるのに時間が掛かりそうだから私が説明することにした。
「…あの人はキーホルダーを付けてました。あのキーホルダー、裏にはクローバーが貼り付けてあったんです。クローバー。意味わかりますか?」
須照美は必死で考えていた。春は以前顔を赤らめてよそをむいている。
「CLOVER…C-LOVER…She Lover…彼女は、恋人。つまり、相思相愛だったわけです。春さんが本当に愛していたのは架令ではなく、あなただったんです。それを忘れるために架令と付き合った…しかし、それも裏切られて無残に終わったようですがね。」
それを告げると須照美は声をあげて泣き、春に抱きついた。それに応えるように、春も須照美を抱きしめた。その声は止むことなく、数十分は続いていた…

そして1時間後、須照美は警察に連行され事件は幕を閉じた。

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