小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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「…大丈夫ですか?キツいようなら自白されたほうが…」
「うるさい!さぁ聞かせてよ…あんたの妄想の続きを!」
「…致し方ありませんね。続けましょう。血を拭ったあとあなたはハンカチをカバンにしまった。この行動は後の行動に活かされることになった。そう、あなたは春さんを匿うフリをして容疑者から外れようとしたんだ!」

…しばらくの沈黙の後、顔を変えずに須照美は尋ねた。
「…まぁいいわ。そこまで合ってたとして、動機はなんなの?私はシェフ、あの人は出版社の人間。何の接点もないじゃない?」
「あなたの言うことも最もです。ですが、本当に繋がりはなかったのですか?」
「…どういう…ことよ?」
彼女の声には少し動揺が見られた。ここから一気に畳み掛けるんだ!
「確かにあなたと架令、直接的な関係は見られません。ですが間接的な関係はどうでしょう?」
須照美は黙ったまま汗を流している。
「あなたと架令を繋ぐもの…もうお分かりですね?そう、春さんです。」
「…ッ!!!」
どうやら図星だったようだ。仮面は欠け、とうとう五分の一ほどになってしなった。
「…じゃあ、最後に聞かせてよ。私と春さんは確かに仲は良かったわ…それが、なんだというの?その繋がりは今回の事件に何のつながりがあるのよ?」
「…天木さん…あくまで白を切る気ですね…もう終わりにしませんか?」
「うるさい!だからなんだっていうの!?」
「…あなた、恋をしてらっしゃいますね?」
「…ッ!!」
「…それも、言いにくいですが普通ではない。あなたが恋焦がれた相手、それは…春さんですね?」
もう降参したのか、黙ったまま下を向いて涙を流している。
「あなたは春さんに恋焦がれた。しかしその恋は誰にも受け入れられず、ただ一人あの人に想いを寄せた。そこにあなたは衝撃的な事実を知った。架令の不倫です。それがあなたの心に怒りの火をともした。そこであなたはこう考えた。架令を殺してしまおう、どうせ手に入らないなら春さんを犯人にしてしまおう…しかしその考えは浅かった。あなたは事件後、その行動を悔やんだ。いくら手に入らないからといって、自分から離れるのは嫌だと。それが後の行動によく見られました。春さんをかばうような言動、いっぱいありましたよね?それはあなたが事件を後悔した証拠です。もうやめましょう。これ以上嘘をついても誰も救われない。天木さん…あなたの負けです。」
最後の仮面の破片は欠け、空間は割れた。目の前には膝をつき、下をむいたまま、ただ声も出さず泣いている須照美の姿があった…

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