第一五話
数日後なのはの訓練と私の訓練を同時並行をし、今日模擬戦を行うことになった。
フェ「あ。もう模擬戦始まっちゃってる?」
アリ「ごめんね。ちょっとバルディッシュ見てたら遅れちゃった」
エリ「フェイトさん、アリシアさん」
フェイトが遅れてきた。アリシアに頼んでバルディッシュの調整を行っていたらしい。
フェ「本当はスターズの模擬戦も私がやろうと思ってたんだけどね」
ヴィ「あぁ、ここのとこ訓練メニューが濃いからな」
アイン「まぁ葵のメニューとなのはのメニューがあるからな。まぁそれにつて来ているお前らはすごいがな」
ヴィ「でもなのはは無茶しすぎだ。休ませねぇと」
葵「私から言わせれば全員に休暇を取らせたいがな」
そして模擬戦を見ると、
葵「・・・フェイト、ヴィータ。ティアナをどう見る」
フェ「え? ティアナ? そうだね」
ヴィ「なんかキレがねぇな。どうしたんだ?」
先ほどからスバルが突っ込む。それもフェイクではなく本物だ。それに誘導するようにティアナが攻撃をする。
作戦は悪くない。でも、確実に自分との力に見合った作戦ではない。そしてスバルを犠牲に向かわせている。
葵「あのバカは何を学んだんだ・・・」
な「こらスバル! ダメだよ! そんな危ない軌道!」
ス「すみません! でもちゃんと避けますから!」
すると、スバルはなのはから距離を取る。なのはティアナがいないことに気付き探すと、ビルの屋上に砲撃のスタンバイに入っているティアナを見つけた。
フェ「ティアナが砲撃!?」
葵(あれは幻影か。ということは・・・やはりな。エクス白騎士を)
エ
葵「すぐにわかる」
先頭に目を戻すと、スバルがなのはのアクセルシューターをよけながら徐々に近づき、
ス「でりゃぁあああああ!」
なのはも防御魔法を展開させスバルの攻撃を防ぐ。それとほぼ同時に幻影が消える。
キャ「あっちのティアさんは幻影!?」
エリ「じゃあ本物は!?」
葵「そこだ」
そういって顎でティアナの場所を指すと、ウィングロードを走りながら魔力刃を形成させていた。
ティア「一撃必殺」
そして、なのはに突っ込む。
ティア「でぇえええい!」
な「レイジングハート・・・モード・・・リリース」
レイ
なのはがレイジングハートをしまい、次の瞬間爆発が起こる。
フェ「なのは!」
葵「はぁ、教導官がキレてどうする・・・」
溜息しか出てこない。あそこにいる連中はバカか?!
な「おかしいな・・・二人とも・・・どうしちゃったのかな?」
爆煙がだんだん晴れると、そこにはティアナとスバルの攻撃を素手で止めているなのはの姿があった
な「がんばっているのはわかるけど・・・模擬戦は・・・喧嘩じゃないんだよ」
ス「あ・・あぁ・・」
ティア「え・・・」
な「練習の時だけ言うこと聞いている振りで・・・本番でこんな危険で無茶するのなら・・・練習の意味・・・ないじゃない」
俯いたままなのはは言葉を続け、ティアは動揺を隠せないみたいだ。
な「ちゃんとさ、練習通りやろうよ」
なのはは俯いた顔を上げ、ティアナを見て、
な「私の言っていること、私の訓練・・・間違ってる?」
なのは言い終わると、ティアナはなのはから離れ、カードリッジをロードする。
ティア「私は! 私はもう誰も傷つけたくないから! なくしたくないから!」
ス「・・・ティア・・・」
ティアナは泣きながら自分自身の言葉を紡いだ。
葵(・・・それがお前が力を求める理由か。昔・・いたなそんなやつ・・・)
ティア「だから! 強くなりたいんです!」
な「少し、頭冷やそうか・・・」
すると、なのはの足元に魔法陣が浮かび、
な「クロス・・ファイアー」
葵「(頭を冷やすのはお前もだろ)〈エクス、準備は?〉」
エ
だろうな。あれは教導の域を出ている。最初は・・・見逃すか。ティアナにもお灸をすえねばならんだろうし。
ティア「うわぁああああ! ファントムブレイ・・・」
な「シュート」
なのはの攻撃がやはり早く、そのままティアナに直撃。
ス「ティア! !? バインド?!」
な「じっとして・・・よく見てなさい」
そういってなのはは第2射の態勢に入った。そしてそれを放った。
葵「・・・無に帰する刃(ルーンヴォルヴァ)」
急いで射出し、ティアナの前で、シールドを展開させた。
エ
葵「〈全くだ。あれだと無に帰する刃(ルーンヴォルヴァ)では耐えられんからな〉」
シールドは余分だったみたいだが、まぁ防いだからよしとしよう。すると、ティアナはいとが切れた人形みたいに倒れた。
ス「葵さん!」
な「・・・なんで、邪魔するの」
葵「やりすぎだバカ。オーバーキルだろ」
スバルの下に転移魔法を展開させ、こちらに移動さえた。その後、ティアナとスバルを抱えフェイト達の場所に戻り、
葵「すまん。フェイト、ヴィータ、アリシア、あいつと少し話をする。訓練は悪いが中止だ」
そう言った後すぐになのはの元へ戻った。
SIDEなのは
な「何で邪魔するの、葵君・・・」
葵「邪魔? なら聞くぞ、高町一等空尉。貴様は何をした。教導官がすべき行動ではないはずだが」
な「二人にお説教しただけだよ。二人とも無茶をしたから」
葵「・・・・お前は本気で言っているのか? 教導官は教え導く者のことだ。だがお前がしたことがそれを指すというなら教導官失格だな」
な「!?」
葵「私自ら叩き直す。幸い私も教導官の資格は持っているんでな」
そういって戦闘態勢に入る。
な「・・・邪魔した償いはしてもらうの!(わたしは、もう二度とわたしみたいな子達を出したくない! それを教えてることが悪いの!? それに教導官失格ってわたしは間違ってるの!?)」
葵「邪魔だと? 仲間を助けて何が悪い。お前がティアナとスバルに振るった力は何だ!? ただの暴力だろ!」
な「!?」
葵「やる気はあるみたいだな。だがお前も分かっているだろ」
葵君の眼は酷く冷たい。今まで見たどの眼よりも。いや、今ままで見たことないぐらいに。
SIDE out
SIDE戦闘外メンバー
フェ「あ、葵の眼って・・・・」
エリ「・・・・こ、恐い」
キャ「お、お父さんってあんな目もするんだ・・・」
アリ「・・・・あれって、本気で怒ってる?」
ただ、アインとヴィータだけは、
アイン「あれは間違いなく兵士の眼だ」
フェ「え?」
ヴィ「言ったろ。あいつはかつて戦争で多くの人間の命を奪った。あの目はその目だ。下手をすれば殺される。いや、殺すつもりで行っている」
アイン(葵、お前は一体どれだけのモノを背負ったんだ・・・)
ヴィ(あんな目、あたしらでもできない。多くの者を奪い多くの者を失わなきゃ)
SIDE out
SIDEなのは
そこからはもう無言だ。
葵「・・・・・」
普通は相手の表情を見て、感じて、相手の攻撃を分析し、パターンを読む。
葵「アルヴォ。ファイア」
―ダンッダンッダンッ
でも、今の葵君にそれは通用しない。無言であるからこそ読みにくい。表情がないからこそ判断ができない。それに恐怖を感じる。戦闘になれば何らかの表情の変化が訪れる。だが、葵にそれは無い。ただ仮面のように一つの表情、いや無表情だ。
な「! そこ、アクセルシューター!」
一五発のアクセルシューターを撃つ。そして、
―ズガァアアアン
直撃。でも、
葵「ホーリーアロー」
な「え!?」
同じ数だけをこちらに向けてはなった。
な「くっ」
それを避け切り、葵君の方を見ると、損傷がない。
葵「言ったはずだ。お前と私で全てが違いすぎる。経験、実績、覚悟も」
な「覚悟なら負けない! 何でも勝ったもりにならないで!」
葵「なら聞くがお前は力を持つ覚悟を持っているのか!? それで誰かを傷つけるかもしれない恐怖を知っているのか!?」
な「え・・・・」
葵「教導官はそれすらも教えなければならない! だが、お前はどうだ!? ティアナと言葉を交えたか!?」
な「そ、それは・・・」
葵「チェーンデストクレッシェンド!」
すると足元から鎖が出てきて、わたしをしばり上げる。それに耐えきれなくなったわたしは膝をつくように崩れ落ちる。
な「しまった!? あ・・・」
すると、わたしのこめかみに葵君の銃をつけつけられる。
レイ
葵「レイジングハート、貴様は黙ってろ。分かるかこの恐怖を。ティアナ気持ちがわかったか?」
葵君の眼は冷たく、感情を読み取れない。でも、次の瞬間それは砕け、いつもの葵君に戻り、銃をこめかみから離しわたしと同じ視線まで腰を下ろした。
葵「私はお前と初めて出会った時言ったはずだ。言葉にしないとわからないこともある。伝わらないこともあると。お前はどうだったんだ? お前が一人で悩んで桃子さん達に伝わったのか?」
まるで、子供がおこした間違いを正すように優しく言葉をつなぐ。
な「あ・・・・あぁ・・」
その時初めて過去を振り返った。わたしはティアナと話しただろうか。ティアナの何に気付いたのかと。それはお父さんが倒れた時のわたしとよく似ていた
葵「違うだろ。言葉にしてようやく伝わったのだろう? それにお前は教導官なんだ。お前から近づかないでどうする」
な「・・・ごめんな・・・さい」
葵「私はいい。目が覚めたらティアナに伝えてやれ。そしてちゃんと話してやれよ」
SIDE out
私は鎖を解き武装も解除すると、なのはが急に私の胸に顔をうずめて、泣き始めた。
な「ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい!」
葵「あぁ、もういいって。大丈夫だ。お前ならできる。芯が強いんだお前は」
な「わたし・・・ただ・・葵君に、護れられてるばかりが嫌で・・・葵君に支えられているばかりが嫌で・・・強くなったら・・少しでも近づけると思って」
そんなことを・・・あぁ、なんというか。
な「でも・・・優しさに甘えて、隣いたいのに・・どんどん先に行っちゃって・・・人を導びいたら、強くなれると思って」
葵「よしよし。お前もちゃんと見つけられてるじゃないか。お前自身の力の意味を」
な「・・・え・・」
葵「それでいいんだよ。お前はお前で。ちゃんと待ってやる。お前を。それにどうやらなのはを焦らせていたのは私のようだ。すまない」
な「ううん、葵君は悪くないよ。わたしの勝手が招いちゃったんだから」
模擬戦はその後中止された。ティアナとスバル、なのはを医務室に連れて行った。まぁその後はやて、フェイト、アリシア、ヴィータ、アイン、シグナムにこってりと正座でしかられた。
孤狐とヴェル、コロナとリオ、エリオとキャロもめったにない光景で少し笑っていた。
こっちはきついんだが。
夜になると、ガジェットが出現したとのこと。だが、六課の戦力をばらすわけにもいかないので、ガーディアンで対応することが決まった。
葵「なのは。ティアナとしっかり話しろよ」
な「うん。ごめんね・・・色々迷惑かけちゃって」
葵「構わんよ。大切なものなんだ。迷惑なんて思うな。むしろこっちから見れば頼られて少し幸せなんだから」
な「はぅ///」
フェ「な!? 私もいいよね葵!」
葵「あぁ、別にいいが?」
シ「な、なら私も!」
ヴィ「なのはばっかりずリィぞ! あたしもだ!」
ス「ならあたしも!」
ティア「わ、私も///」
葵「あ、あぁ・・・」
何このカオス。
ヴァ「ハーレム形成してますね。旦那!」
葵「///!? ヴァ、ヴァイス!? くっ、いいから出せ!」
ヴァ「了解! それにしても旦那は苦労人ですね」
葵「お前も人のこといえるのか?」
ヴァ「!? まさか、俺の過去も」
葵「さぁな。まぁ悩んでんなら大いに悩め。ただ、後悔のないようにな」
ガジェットの対応には力を見るということでチンク達を呼び、私は後方支援に回った。
ウェ「よっし! 葵兄にいいところ見せるっすよ!」
ノーヴェ「あ、あたしは・・・がんばる!」
セッテ「葵様にいいところをお見せします」
チ「まじめにやらんか!」
チンクがセッテ達にを然り統制を取り直し、迎撃の用意などをする。
チンク、お前だけが心のよりどころだ。
葵「・・・とりあえず迎撃用意。まぁ、すぐ終わると思うがな」
予想通りものの数分で終わった。その後はもう少しで六課に合流できるといわれた。
予定よりも早く終わったため六課にすぐに戻り夜風に当たっていると、
葵「ティアナか?」
ティア「はい。あの、あ、ありがとうございました。助けてくれたって聞きました」
葵「そうか。出来ればあんな無茶はしないでくれると助かるんだがな」
ティア「はい。葵さんの言う通りもうしません。今まで心配してくれたり、助言ありがとうございました」
葵「そうか。で、見つけたか? お前の力の意味」
ティア「・・・まだです。でも、無茶をせずゆっくり見つけて行こうと思います」
葵「そうか。それでいいと思うぞ。お前はまだ伸びる。なにせ本来なら白にほしかったぐらいだしな」
ティア「そ、そうなんですか!?」
葵「一回な。お前らが言っていた訓練校を見に行ったことがあるんだ。その時にお前とスバルを見たときベストパートナのお手本だとおもった。それに才能云々お前は言っていたが、私はさすがティーダの妹と思った。いや、それ以上だとな」
ティア「私に才能何って・・・」
葵「才能ならあるだろ。ここが」
そう言って頭を指差した。
葵「お前の場合、魔法は鍛えればどうにかなる。だがお前の頭脳は目を見張るものがある」
ティア「でも、なんで」
葵「ティーダが言ったんだよ。一回別の部隊、荒波にもまれた方がいいって。ティーダのそばにいると兄を頼って自立できないかもしれないからってな」
ティア「お兄ちゃん・・・」
葵「それにお前はまだ伸びる。絶対にな」
そういってティアナの頭をなでる。
ティア「はい///!」
ティアナは笑顔だが、迷いない返事をした。
SIDEティアナ
ティア「あの、葵さん」
葵「なんだ?」
ティア「葵さんはどうしてそんなに強いんですか?」
葵「またか?・・・まぁお前の過去を詮索したから私も話すか」
葵さんは結界を張り、
葵「戦争のことを話したな」
ティア「はい」
その後話した内容は地獄だった、子供のころから人殺しを強要された。そしてそれを持って力を手に入れた。ただ、欲しくて手に入れた知らかじゃなかった。最終的に自分の家族すらをも自身の手で殺させたのだから。
ティア「・・・す、すいません」
葵「気にするな。というのは無理か。まぁ所詮は過去だ。過去は過去、今は今。割り切っているよ。ある意味この力には感謝もしているしな」
ティア「どうしてですか?」
葵「この力がなければ守りたい者も護れなかったかもしれないからだ」
そういって葵さんは笑顔でそう言った。迷いも何もない。ただまっすぐ。
―ドキッ
え?
葵「どうしたティア? 顔が赤いぞ?」
ティ「いいいいいえ! な、なんでもありません///!」
葵「そ、そうか? とりあえずもどるか。冷えてきたしな」
葵さんが、隊舎に戻っていく。その背中を追うように私は後を追った。
いつか、この人の隣に立てるかな・・・
SIDEout