小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第三十話


 そして三日後

 子供の葵は約束の場所に来ると一台のバスが来た。そしてそこから降りてきたのは三日前の役人だった。

役人1「吉田葵君だね?」

葵「はい!」

役人1「元気がいいな。ではこれに乗ってくれ」

 そう言って荷物を渡し、バスに乗る。

 そしてその後6〜9人子供を乗せバスは山の中に入っていく。そして、その先にあったのは、白いドーム型の建物と学校のような建物が隣接して建てられた施設だった。




アリ「おっきぃ!」

葵「・・・・・」

は「あ、葵君?」

 そこにはもう何もしゃべらなくなった葵がいた。だが、その目は明らかに何かを睨みつけていた。

道「第0研究所。零始が当時研究し、葵をここまで追いやった場所さね」

 道実がそう言い放つ。そして葵の目線の先には道実と、黒い髪にメガネをかけ、あやしく赤く光る眼を持つ男性がいた。




 そして、バスは駐車場に入り、大きな部屋に子供たちが案内された。

零「やぁやぁ、未来ある少年少女達! 私がこの研究サイド・ルピア・プロジェクトの最高責任者零始だ! といってもわかるモノは少ないだろう。簡単に言えばここの一番偉い人だ!」

 その男性はスーツに白衣を着ている。いまジェイルがきているような服装だ。

 その部屋にいた子供はざっと見ただけでも三十はいた。

道「・・・そして副責任者の道真さね」

 道実はどこかやる気がないみたいな感じだった。

零「君たちには最高の作品になってもらう! そして未来のために活躍してもらうために勉強、魔法使用などいろいろなことに頑張ってもらう。いいかな」

 すると子供たち全員が元気よく答えた。それは葵も例外ではなった。中には零始の言葉を疑問視する者もいたが、所詮は子供。この先どんな危険なことがあるなんて考えなかっただろう。


 それから一週間。




葵「・・・ここで気付くべきだったか。まぁ、今さら言っても仕方がないか」

は「でも見る限り普通じゃないの?」

アイン「あぁ。別に変った所など無いが?」

キャ「ただやっている内容はさっぱりです」

エリ「るーとの計算ってなんですか?」

ルー「???」

 まぁやっている内容は高校生レベルだからな。

ジェ「・・・・なるほど。確かにこれは・・」

レジ「何か気付いたのか?」

 ジェイルの反応に皆の新線が集まった。

ジェ「子供が二人いなくなっている」

全員「!?」

竜「鋭いな。そう、すでにこの研究所に入ったその時から子供たちはモルモットなんだ」

フェ「こ、子供は!?」

朱「勉強の難しさに嫌気がさし脱走しようとして、捕まって実験に――てところかな」

ウル「ここに入ったら自由なんてない。全て拘束される」

 その光景に再び目を移す。確かにやっている内容はこの年齢の子供たちが受ける授業レベルじゃない。




研究員「また君か!? 同じところを間違えすぎだ!!」

 そういって頬をひっぱ叩く研究員。




な「対応もだんだんひどくなってる・・・」

は「こんなん、人のすることじゃない!」

フェ「無理だよ・・・こんな小さい子にこんな過酷な授業対応なんて・・・」

 そう。朝は6時からずっとぶっ通しで授業。現在は時計で8を指している。当然午前ではない。午後である。休みと言えばトイレ休憩に2分。昼食に10分。どちらもあり得ない対応だ。

 そして問題には違えれば体罰。それもゲンコツなんて優しいモノじゃない。歯が折れるほどぶん殴る。

 泣くことも怒ることも許されない。ただの機械の用になれといっているようなモノだ。





 勉強面が一区切りしたのか零始が、

零「諸君! よく頑張ったね。では次に魔法の方に移ろう!!」

そして、地獄の日々の幕開けの合図がその日告げられた。

 一行が移動したのは、どこかの訓練ルームみたいな所だ。こちら側からの入り口と、向かいに三つ。

 そして、観客席みたいにルームを一望できる防弾ガラスしよう部屋。

クア「広いですね〜」

トーレ「今から何がされるんだ?」

葵「・・・・地獄だよ。人の所業とは思えないな」

 すると葵が画面をいったん停止さえた。

葵「・・・もう一度確認する。本当にいいんだな」

 すると、全員は無言で首を縦に振った。

ドゥーエ「それほどまでにひどいんですか?」

ウーノ「まぁ、勉強の方でも勉学と呼べませんでしたが、それ以上・・・なのですか?」

葵「いったろ、地獄だと」

 葵は隣でていしている零始を睨みつける。そのさっきは子供たちが悲鳴を上げるほどだ。

 そして再生する。




零「さぁ、まずは君から行ってみようか」

 そういって指名した男の子を訓練場に入れる。すると、向かいの三つの出入り口からいかにも悪そうな男性が三人出てきた。

 だが、問題はそこじゃない。持っているモノだ。




ノーヴェ「まて、あれって質量兵器じゃ!?」

 そう。一般的なマシンガン。当然装填されているのは実弾だ。

 他の二人も、

ヴィ「な、なんでチェーンソーなんか持ってんだ・・・・」

シャ「あれ、刃物ですよ・・・・」

ヴェ「なぜそのようなモノを・・・・」

アイン「・・・・まさか?!」




零「さぁ、少年。あの三人を殺したまえ。じゃないと君が殺されるよ?」

少年「!?」

―ビーッ

 そうブザー音が鳴る。だが、少年はこっちに向かって何か言っているようだが、何も聞こえない。

 一方、訓練施設内では、

男1「ホントにあの餓鬼殺せばオレたち解放されんのか?」

男2「いいじゃねぇか、殺して殺しまくれるんだ!」

男3「ごもっとも、久々にガキの悲鳴が聞こえるんだぜ? ヒヒヒヒッ」

 そして、そこからはあまりにも残虐だった。男が銃で少年の足を撃つと、男が少年の頭を殴る、そしてチェーンソーで抵抗できないよう腕を切る。





ティア「・・・・オェエエエ!」

ス「・・・ひどい・・・」

ギ「な、なんでこんなことを・・・」

葵「死刑囚だよあいつらは」

ク「なっ?! 何で死刑囚がここに!?」

葵「見てればわかるよ。それに言ったろあいつが、殺さないと殺されるって」




 訓練施設に残ったのは少年だったモノ(・・・・・・・)。ただいまあるのは肉片のみだ。

 男達は愉快そうに笑っている。

零「チッ、失敗か。次は君だ」

 そう言って次は少女を指差す。だが、

少女「お、おかしいよ! こんなの!!」

零「・・・・」

少女「ひ、人殺しですこんなの! わ、私たちをいえn―――」


―パァンッ


 その場に乾いた音が響いた。何が起こったのかその場にいる子供たちも理解できない。だが、すぐに現実を受け入れざる得なくなった。

零「あぁ、うざいなぁ。大人しく私の言うことを聞いていればいいんだ! 君たちは私にとってみればモルモット、実験用ネズミでしかないのだからね!! ハハハハハッ!!」

 目の前の子どもは頭をぶち抜かれ、見るも無残な状態になっていた。




エリ「・・・な、なんで・・・・」

キャ「ひどい・・・・」

ルー「・・・・」

リイン「なにもしてないのに! 何でですか?!」

アギト「こんなの・・・あたしが受けた実験よりひどい・・・」

葵「言ったろ、所詮ここにいた私も含めモルモットでしかないと」

 その言葉は比喩でも何でもない。現実だ。事実目の前に映るのが証拠だろ。役に立たないモルモットは殺される。必要とされるモルモットは役に立つモノだ。





零「次は・・・そう君だ。吉田葵君」

葵子供「・・・え・・・」

 すると、零始は彼のそばに行き、

零「彼らは死刑囚だ。悪いことしたばかりなんだ」

葵子供「で、でもあなたも!?」

零「君もあぁはなりたくないだろ? 私の言うとおりにするんだ」

 脳の処理など追いつくわけがない。どっち道殺される。なら殺して次に進んだ方がいい。そう考えるだろ。殺すか殺されるか。なら殺すしかない。

 そして、その時は来た。

男「おい、まだやるのかよ?」

男2「まぁ良いけどよ」

男3「どうせ役立たずだろ?」


―ビーッ


 そして葵の人生初めての殺しが始まった。

葵子供「アァァァァアアアアアアアアアアァアアアアアアアァアアアアアアア!!!」




セッテ「あれは・・・一体・・・」

チンク「どういうことだ!?」

葵「ウォータカッターってわかるか?」

ディード「確か水を加圧し小さい穴を通し、ものすごい勢いで水を噴出し者を切断するというあれですか?」

葵「そう。それを魔法で実演した。そして結果があれだ」

 葵がその先に見るのはハチの巣にされた三人だ。頭、上下半身関係なく穴だらけ。貫通しているものもある。

 三人の身体はぐらりと揺れ、二度と立ち上がることはなかった。つまり【殺した】のだ。




葵「あ、あぁあ・・・・あぁ・・・・・あ・・」

零『よくやったよ葵君! 君は素晴らしい成果を残した!!』

 零始のその言葉で人生初の殺しは終わった。そして、その結果は三十人近くいた子供はその実験後半分にまで減っていた。

 そして、入れられた部屋も監獄、牢屋そう言った言葉が似合う場所だ。あるのはトイレに布団、それだけ。後はコンクリートと鉄柵だ。

葵「・・・・・あ・・あぁ・・・・あ・あああ・・・・・」

 子供の葵は自分が行った行為に対し震え、生き残った子供たちも震えていた。自分たちが取った行動に。




オットー「子供の数が・・・・」

ディエチ「酷い・・・・」

ウェンディ「な、なんでこんなことするっすか!?」

葵「どこまで人間における負の感情が魔法に影響するか、そしてそれがどのような形を孕むかという実験だ。まだこの程度は序の口だ」

セイン「これで・・・序の口!?」

 さて、本当の地獄を見よう。ここから・・・・




 その後も死刑囚の処刑の執行人として生き残った子供たちは殺しをさせられていた。

 だが、それから数日後何か雰囲気が違う。何が違うと聞かれると、いつもなら入口から死刑囚を呼びだし殺させる。そのため零始は安全な場所から見ているだけだ。だが今日は、

零「さぁ、今日はあの壁の向こうにいる者を殺すんだ」

 そう。子供の葵の隣にいる。そしてその指差した場所には一枚の大きなコンクリートの壁があった。

葵「・・・・・(こく)」

 もうその子供の眼には光も無く、ただ言うがままに動く人形のようだった。

 そして、もう戸惑うことなく、ウォーターカッターでいつも通り殺す。そう、いつも通り。だが、

???「ギャァアアアアア!!!」

葵「!?」

 いつもと違いそこから上げられた悲鳴は男性や女性の声ではない。自分と同じ子供の声だ。

―ゴロンッ

 壁の向こうから姿を現したのは女の子の生首・・・

葵子供「・・・お、んな・・・・・のこ・・」

零「そうさ。君が殺したのはどこにでもいる子供。君たちと同じね」

葵「あ・あ・あああ・・・」

零「それも私の娘だよ。まぁ、実験のために犠牲となってもらったがね。ハハッハッハ」

葵「・・・・あぁああああああああああ!!!」

 男はどこまでも愉快そうに笑った。これはあくまでも前準備。もっとこれからも過酷になるよと言い加え零始は去った。

 つまりこういうことだ。

零「君も立派な殺人者だ! 君が今まで殺して来た死刑囚のような!!」




カ「自分の子供を殺され・・・笑うなんて・・・・」

シャッハ「狂ってる・・・あれを狂ってるって言わずにして何というんですか!?」

 周りを見ても怒りや悲しみの表情しかなかった。他にも吐く者もいた。

竜「お、お前こんなことされたのか・・・」

な「え・・・竜也君達は違うの?」

朱「死刑囚を殺すという意味では同じ。でも、これほど酷くはなかった」

ウル「まだ、実験とかのほうが多かった。殺しなんてほとんどなかったし、あったとしても死刑囚だけだった」

葵「いずれわかる。ここがなぜ零始が直接指揮していたのかね」

道「あの時は・・・・まさかああなるとは思わなかったさね」




 その後、葵達と子供は死刑囚はむろん老若男女問わず殺すよう指示された。もう何人殺した分からなくなったとき、次の指示が出された。それは、

零「さぁ、次の訓練だ! 自らの命をかけたトーナメント式バトルロワイヤル!!」

 その説明は簡単だ。今生き残っている子供は現在8人。さらに人数を減らした。

 そのため子供たちをトーナメント式で殺し合わせ、勝者は生きる権利を敗者には死の権利を与えられる。否応なしに。

 そして、明るい音楽と同時にトーナメント表が開示される。子供達にはもう殺しの恐怖は無い。そのためか、まるで作業をこなすようにやすやすと子供を殺し、殺し、殺し尽くす。悲鳴、嘆き、罵詈雑言、雄たけび、もう何語なのかわらない言葉まで上げる者もいる。

零「素晴らしい・・・素晴らしいぞ!! これこそ人が追い求め、何もかもを捨てて殺し合う惨劇の場!! 生き残るためにたとえ子供と言えど子供を殺す!! 素晴らしいとしか言いようがない!!」

 そして、生き残ったのは・・・・

零「君か・・・素晴らしい戦いだったよ! 容赦なく殺すさまなんて特にね!!!」




 もう誰も言葉を発する者はいない。この地獄、いやもう地獄よりひどい様を見せられ言葉で表すことなどできない。

 しかし映像はまだ終わらない。

リイン「・・・ま、まだ続くんですか!?」

アギト「もう、もういいじゃねぇか!?」

葵「まだなんだよ。まぁ、これから殺しは少なくなるがな」

は「少なくなるってことはまだ殺しを続けるんか!?」

葵「破壊力を試すため、貫通力を試すため。理由などいくらでもある。そのたびに人を実験材料に使う」





 そこから葵の眼にはある意志の目が宿った。


―生き抜いてやる・・・


―絶対に生きてここを出てやる


―そしてあいつを殺してやる



 その目は子供の眼とはかけ離れていた。無垢、綺麗、そう言った言葉と逆。濁り、殺意にわき、憎しみに汚れ、憎悪に満ちていた。

零「さぁ。今日は肉体強化の投薬実験だ。生き残ってくれよ?」

 そういって何種類の注射を打たれただろう。そのたびに吐き気や頭痛が襲う。

 そして今になって思う。一般市民を殺したり、子供を殺し合わせたのはこの生き残るという感情を増幅させるため、いかなる実験においても強いその感情でどんな状況におかれても生き残るという感情を強化することによって精神面を強化するためだと。

 その後、葵はもとの牢屋に入れられる。その直後、

葵子供「ガハッ・・・・ゴホッ・・・」

 薬の影響で吐血。

 その後も容赦なく投薬が続く。それだけではなく魔力強化のために葵達の世界で言うリンカーコアに当たる魔力回路の強化と想像を絶する痛みと苦痛を永遠のサイクルで繰り返す。

葵子供「がっ・・・・あぁ・・ぐぅっ・(絶対に生き残る・・・そのためなら!!!)」


―だが、誰も知らない。この後真の恐怖と畏怖があることを

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