第三二話
だが、エクスとルミルに出会ったからといって研究所から逃げれるわけでも解放されるわけでもない。
零「さて、今日はこれで最後だ」
そういって出されたのはコンクリート壁。おそらく零始の娘を殺したとき同様一般市民を巻き込んだのだろう。
だが、もう迷いも何も無くなっている。容赦なくアルヴォで壁を撃ち抜く。だんだん増えていき、死を感じ取った瞬間引き金を引くのをやめた。
零「素晴らしい。やはりいつみても素晴らしいよ君の力は!!」
そして零始にとっての歓喜の時。そして、葵にとって絶望の時。
零「そうそう。今日は君に合わせたい人物がいるんだよ」
葵「・・・・なに?」
ふと思った。葵に合う人間なんていない。ましてや家族はこのことを知らない。家族が知らないことを親戚が知る由もない。ましてや学校にも連絡は言っていない。なら誰が?
零「久々の御対面の時間だ!!」
な「え・・・あれって・・・」
フェ「う・・・・そ・・・」
は「な、なんで・・・・」
アリ「・・・・あの人たちがここに・・・・」
葵「言ったろ。久々の御対面。そして本当の地獄の始まりだ」
先ほど撃った一般市民とはつまり・・・・
葵「お、お父・・・さ・・ん? お母さ・・・ん・・・舞・・・・?」
そう。葵にとっての家族だ。そしてそれは自ら手放し自ら殺した。
零「どうだい? 久しぶりの御対面は?」
だが、その言葉は葵に届いていない。ただ葵は今まで行ったことを振り返っていた。
殺すことに慣れ、殺すことに違和感を感じなくなった。それはなぜか。簡単だ。この場にいた子供達は全て赤の他人。他人を殺しても痛くも痒くもない。そしてここに連れられて来た死刑囚や一般市民もだ。
だが、今殺した三人はどうだろう。赤の他人じゃない。自分にとってなくてはならない存在【家族】だ。血縁者だ。それを自らの手で殺したのだ。それも自分にっとって産みの親を。唯一の妹を。
葵「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
零「あまりに嬉しさに感動したのか? それとも「主任!! 大変です!! か、神無月が!!」何事だ?」
零始はすぐに毛吸引のいる測定ルームに向かい、モニターを見ると、
研究員「魔力値が増加!」
研究員2「X・・・、XX・・・・、XXXをオーバー!?」
研究員3「このままだと・・・・特殊Gランクに突入・・・・神聖領域に入りました!!」
その場にいた全員が葵の方を見る。すると、赤黒い魔力を出し、姿もだんだん変っていった。
零「あれが・・・サイド・ルピアが提唱した魔法のもう一つの確立。【虚無】・・・」
虚無の魔法・・・つまり何も無くむなしいこと。その名の通り全てを無にする魔法だ。魔法という存在、生物という存在すらをも。
葵「AAAAAaaaaaaaaAaaaaaaaaaAAAAAAAAAAAAaaaaaaa」
葵の姿は白一色だった鎧がだんだん変化していき、赤黒い鎧(MH2Gレウス装備を赤黒くした感じ)を身に纏っていた。
兜の隙間から見せる赤い瞳があまりにも不気味すぎる。そして、
葵「g-huabkmelsd-^UGJn」
言葉なのかすらわからない言葉を吐きながら殺戮を開始した。
本当の地獄。容赦なく生きるもの全てを殺す。この世の絶望。
研究員「主任! ここから逃げましょう!! じゃないと殺される!?」
零「惜しい、実に惜しい・・・ようやく手に入れたのだよ。虚無の魔法使いを!!」
研究員「ですがここで殺されれば終わりです!! お願いです!!」
すると、行き成り葵が魔法の呪文を唱え始めた。その上空には黒い球体状の塊ができ始めた。
その塊は触れるモノ全てを飲み込んでいった。それはほんとうにすべてを【無かった】ことにするかのように。
零「絶望の騎士・・・いや、鬼神といった方が妥当かな・・・」
だが、終始零始の見せる顔は喜び、快感といった表情だ。
そして、あたり一帯がその暗闇に包まれた。
シ「あ、あれはいったい・・・」
葵「青騎士の反対だ」
ヴィ「反対?」
葵「白騎士の反対が黒騎士。また逆もしかりだ。光と闇という意味らしい」
シャ「なら青と赤は?」
アイン「確か零始は絶望とか言っていたな」
葵「青が希望の騎士。赤は、絶望の騎士」
ヴェ「絶望・・・」
葵「全てをどん底に落とす。未来も、夢も何も無い。全てが無」
孤「そんなモノが神姫に?」
葵「違う。これは私の潜在魔法らしい」
シ「潜在魔法?」
竜「聞いたことある。人間でいう潜在能力と似ていると。人間に内在しているとされる、従来よりも質的や量的に高い能力のことだったか? それの魔法版」
葵「そう。だがそのためにはきっかけ。通称発動キーを必要とするとされている」
ウーノ「? されている。葵さんはすでに知っているのではないのですか?」
葵「・・・・記憶がないんだ。この時の」
ウル「記憶の書っていうのは本人が目で見たことをそのまま文字化しただけ。記憶がなくても見たことには変わりはないから詳細が描かれる」
葵「そして、この時だけじゃない。これを入れ後一回。亮が死んだ時の記憶もないといった。原因はこれなんだ」
全員「!?」
その言葉に全員が驚いた。だが納得も言った。亮が死んだ後に赤騎士を使用したとすると全てのつじつまが合う。
葵「私自身書を見て初めて知った。この赤騎士の最大の欠点は使用中の記憶が無くなること。そして感情のありのままに動くこと」
ジェ「感情を消す?」
葵「そのまんまの意味だ。感情の赴くままに怒りを、憎しみを、憎悪を与えた人間を消すまで殺す。たとえ周りに無関係な人間がいようといまいと関係はない」
暗闇が晴れるとそこには何も無かった。もう一度言う。何も無いのだ。機械や、部屋、死体も。そればかりか研究施設そのものもない。あるのは広い空と地面だけ。それも葵を中心に半径三?、深さはどれぐらいだろう。ビル三階分相当は入るだろう深さが空いていた。
その後別件で魔法省に出向いていた道実によって葵は保護された。そして孤児院に入れられる。
な「こ、これで終わり?」
葵「あぁ。どうだ? これが私の過去だ。お前達に口で語った者は明らかに弱めて言っている。それは多分・・・恐かったからだろうな」
その言葉に全員が納得した。多分自分が人を殺した。といっても冗談、または聞いた本人達もどこか忘れるようにしていた。インパクトがないと人はそう言うモノだ。
だが、今回は違う。あまりにもインパクトが強すぎた。
な「・・・・何で、葵君がなんでこんな目に合わなきゃいけないの!?」
葵「運が悪いとしか言いようがないだろうな」
フェ「運とかじゃないよ・・・・こんなことしていいわけない!!」
アリ「葵君も言ってるじゃない! 幸せになる権利も未来をつかむ権利もあるって!」
葵「そうだな。だが、私を待っていた未来はこの時はこれだったんだ」
は「こんなんは未来とはいわん。ただの絶望や!! 葵君はもっと幸せになってもいい!! 未来を明るい未来をつかんでええ!!」
葵「私はこの手で多くの血を吸いすぎた。この時も、その後も。だから怖いんだろうな。未来をつかむことも、ましてや幸せをつかむことも」
すると、シグナムがその手を握り締めた。
シ「なっていいんだ。お前は」
すると、ヴィータやシャマル、アイン、ヴェルもその上から手をのせ、
シャ「葵君は私たちに言ってくれたじゃないですか」
ヴィ「ハッピーエンドしか迎える気はないって!」
アイン「私はあなたに助けてもらいました」
ヴェ「なら、今度は私たちがその恩を返す番です」
ス「あたしはお母さんのこともあるし!」
ギ「スバルの言うとおりです!」
ティア「兄さんを助けてもらいました」
エリ・キャ「「お父さんになってくれました!」」
ルー「・・・・お母さん助けてくれた」
アギト「あたしはあたしを助けてくれた!」
ジェ「私は、自身と娘達を・・・・」
な「だから今度は」
フェ「葵君が」
アリ「未来をつかむ番だよ」
は「幸せになる番や」
暖かいなここは。本当に私にはもったいなぐらいだ・・・・こんなにも暖かい場所があるなんて誰が思っただろう。
葵「あぁ・・・ありがと、皆」
自然と涙があふれる。だが、嫌な感じはしない。むしろ嬉しい。
その後、なのは達に感謝をすると、はやてが、
は「う〜ん。でも葵君。この後はほとんどが平凡って言ってたよな」
葵「一旦はな」
アリ「一旦?」
葵「この本はこれまでのことを書いている。その次の本ではその後の事を書いている。まぁ楽な人生ではなかったがな」
思い返してみるが。あぁ、楽じゃないな・・・
は「聞くのもなんやけどどうなったん?」
葵「孤児院でもこの癖、つまり殺さないと生き残れないということで他の子供たちを傷つけていた。いじめるんじゃない。カッターで傷つけることもある。まぁ、その後は厄介者扱いで孤児院をたらいまわしだわな」
孤「壮絶な人生だったんだよね」
葵「まぁな。その後桂木(かつらぎ)雷(らい)導(どう)が引き取った」
朱「雷導が!?」
フェ「その人って誰?」
竜「桂木雷導。当時の日本国国会議員。女性でありながら支持力はよかった。政権交代後魔法大臣に就任。S.L.P.について知り即時中断するよう指示。で、聞かなかった場所には軍を投入し鎮圧。子供たちを保護した」
な「軍? 自衛隊じゃなくて?」
朱「日本は魔法保有国の中では五本の指に入るほどの大国なの。それで、それを国防力に活かし成功。安保条約を破棄。その後憲法九条を改正して日本軍、正式名は日本国国防軍にしたってわけ」
ウル「現在は女性初の日本国内閣総理大臣だよ」
葵「出世したもんだな。で、雷導が御三家に頼み訓練してなんとか制御できるようになったってわけ」
まぁ、その時のやつは・・・あぁ、地獄だったな・・・・
葵「それ見る? 特に・・・・訓練という名の地獄」
全員(ウル・竜・朱除く)「・・・・見たいような見たくないような・・・」
ウル「・・・・怖いもの見たさでは・・・いや、見せた方がいいかも」
竜「・・・あぁ、そうだな」
朱「・・・・下手すれば死んでたんじゃない?」
葵「・・・・言うな」
その後、訓練を見せると・・・・
な「え? 今滝から落とされたよね!?」
フェ「ちょ・・・あれ溶岩の上あるかされるの!? て言うか燃えてるよ!?」
は「ちょい待ち!? 魔法封じられてさらにパラシュートなしのスカイダイビングって!?」
アリ「・・・・・氷漬け・・・え? 南極にほったらかし!? あ、よかった移動・・・って次は北極!?」
シ「待て待て!? 今明らかに下手をすれば首から上無かったぞ!? といかあれギロチンという処刑器具だろ!?」
ヴィ「い、今象の群れに踏まれていったよな明らかに・・・・」
シャ「東京湾にコンクリート詰め・・・え? マリアナ海溝に移動された・・・」
アイン「待て!? 競泳とういうスポーツはサメとの鬼ごっこではないだろ!?」
ヴェ「しかもサメ一匹じゃなくて群れで・・・・」
ス「その状態を見て笑ってる三人って・・・・」
ギ「しかも全部魔力封じられてるし・・・」
ティア「ある意味怖いわ・・・・」
エリ「お、お父さん泣いてるし・・・・」
キャ「・・・・怖い・・・・怖いよ・・・」
ルー「・・・・・(ガクガクブルブル)」
ジェ「・・・・・さっきよりひどいのでは・・・」
その訓練と言えるのか・・・いえないな。そのある意味地獄の訓練を見て全員が震えていた。
葵「・・・これだけすれば強くもなるよ。精神も肉体も・・・・」
ウル「・・・・うん。何回両親が見えたか・・・」
竜「戦闘じゃないが演算処理で本気で頭から煙が上がったぞ・・・・」
朱「・・・・三途の川も顔パスになるほどの常連だったし」
その後四人はしばらくorzの格好のまま動かなかった。ぶつぶつといいながら何かを言っていたのは
聞こえてた。