小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第三七話


SIDE角・顎


角「我々は前面で敵を引き付ける。そのすきに顎、聖王の力を頼む」

 そう言って角は下に見える六課隊舎を見下げる。

顎「・・・・分かった」

角「行くぞ。全ては親父殿の悲願のため」

 角はそう言うと六課の隊舎を包囲するように【不の者】を展開させる。


SIDE out


葵「・・・・・来たか」

 一般局員に化けた私がそう言う。

ゼ「葵!? お前は本部に行ったのでは!?」

葵「やつらの目的がヴィヴィオと分かっていたからな。正面玄関は私が抑える。グリフィス、あいつらに絶対ヴィヴィオを渡すな」

グリ『了解!』

葵「ゼスト隊とティーダ、ナンバーズはここを死守してくれ」

ティ「分かった」

クイ「任せなさい!」

メ「娘が頑張ってるんだもの、負けられないわ」

 そして二つのモニターを出した。そこにはシャマルとザフィーラがいた。

葵「シャマルとザフィーラはヴィヴィオ達を頼む」

ザ・シャ『『分かったわ(承知)』』

 私は玄関に向かうと、いるわいるわ【不の者】の群れ。

角「これは・・・予想外です。ナンバー?。あなたがいるというのは。我が名は角。以後お見知りおきを」

葵「・・・・レベル5。とでも言うべきか?」

 レベル4との違いはというと肌の色だ。死人のような白ではなく肌は褐色。明らかにもう人ですと言われても納得できてしまう。ただ、その入れ墨がなければ。

葵「(ただの入れ墨か・・・いや、何かあるはずだ)最初から全力で参る!!」

 私は蒼騎士に身を纏い角に向かい斬撃を放つ。だが、その斬撃は角には届かず途中で霧散した。

葵「・・・なるほど。魔力を無効化するというわけか」

角「あの一撃で・・・さすがというべきでしょうか」

 この世界の唯一の武器は魔法。なら、それを無効化すれば管理局に撃てる手はない。

葵「なら、剣で!」


SIDE六課内部


 現在ゼスト達は隊舎に入った【不の者】をアギトとユニゾンして対応していた。

ゼ「くっ・・・数が無駄に多い!」

アギト(また来たぞ! 旦那!!)

ティ「くっ、どこからこんなに!?」

クイ「葵のあの地獄の特訓がなかったと考えると、ハァ!」

メ「恐いわね・・・」

ルー「がんばる! ガリュー」

 そう言っゼスト達はそれぞれのデバイスで、ルーテシアは召喚獣を召喚し対応していた。

トーレ「行くぞ、ディード」

ディード「了解です!」

 トーレとディードはゼスト達と共に前線で【不の者】を倒し、

ドゥーエ「私は戦闘向きじゃ・・・ハァ! 無いんだけどね!?」

セイン「それを言ったらあたしだって!「ズガァン」おっ! 援護ありがとう! ディエチ!」

ディエチ「・・・大丈夫・・・」

 そう言って親指を立てた。

ジェ「地上本部も襲撃を受けている。これでは、増援は見込めないか・・・」

ウーノ「今こちらにライトニングが向かっています」

竜「クソ!? 回せる戦力は無いのか?!」

クァ「最前線では葵様が・・!?」

グリ「クァットロさん? 何かありましたか!?」

クァ「施設内に侵入者・・・これは・・・陛下の元!?」

ジェ「なっ!?」


SIDE out


葵「なに!? くっ」

―ガキィン

角「戦闘中によそ見とは余裕ですね?」

葵「くっ、だが・・・ハァアアアア!!」

角「うっ!?」

 葵の放った一撃は、相手の腹部に直撃。その一瞬のすきをついて、分身を五対作り本体は施設内に戻る。

角(分身・・・舐められたものだな)

 だが、分身の実力は・・・

角「!? 互角!? まさか感情を省いた?!」


SIDE顎


 顎は施設内に入り、ヴィヴィオの魔力を辿りその場所に着々と向かっていた。

ヴァ「とまれ!」

 そういってヴァイスはストームレイダーで顎を撃つ。

顎「・・・良い腕だ。だが、所詮そこまで。死にたくなければどけ」

ヴァ「あいにくそうはいかないのでね。旦那との約束でね!」

 ヴァイスが再びストームレイダーで、顎に狙いを合わせようとしたとき、

顎「ならば、押して通るまで!!」

 顎は一気にヴァイスとの間合いを詰めその手に持っていた錫杖から魔法を放つ。

ヴァ「グァッ!?」

 その魔力弾はゼロ距離からヴァイスの腹に当てられた。ヴァイスはそのまま意識を手放すことになった。

 顎がヴィヴィオ達がいる部屋にたどり着くと、

ザ「ハァアアア!!」

顎「守護獣か、だが!」

 人型に戻ったザフィーラが放った一撃は無情にも顎の幻影だった。そして、

顎「ハァアアアア!」

ザ「なに!? グワァ!」

 ザフィーラは部屋の壁に激突、

シャ「ザフィーラ?!」

顎「お前も眠れ!」

 顎はヴァイスに放った同様の魔法をシャマルにも放った。

シャ「キャァアアア!!」

 そして目の前の子どもたちを守る者はいなくなり、いるのはただ守るすべを知らない子供だった。

ヴィヴィオ「・・・パパ・・・ママ・・」

コ「こ、こないで!!」

リオ「だ、誰か・・・」

顎「(こんな子供から魔力を・・・父よ・・我々の悲願のためとはいえ・・・)くっ。我らが悲願の成就のため!!」

 顎はヴィヴィオの頭を鷲掴みにすると、

コ・リ「「ヴィヴィオ!!」」

顎「聖王の魔力! もらい受ける!!!」

 すると、顎のもう片方の腕に虹色に輝く魔力球がだんだんでき上がり形も大きくなっていく。

ヴィヴィオ「ア・・アァア・・・アァアアアアアアアア!!!」

 抵抗していたヴィヴィオの腕がだらんと垂れさがるのを合図に顎はヴィヴィオの頭から手を離す。

葵「ヴィヴィオ!!」

顎「!? ?。なぜここに!?」

 葵の視線はヴィヴィオに向け、そして、

葵「貴様が・・・貴様が私の娘をぉォォオオオオオオオオ!!!!」

 葵の表情は怒り、憎しみ、憎悪に満ち、あふれる魔力も白や水色ではなく、どす黒い色に満ちていた。

葵「産まれてきたことを後悔させてやる!!!」


SIDE out


(マスター、それはダメだ!?)

(マスターの命が!?)

葵「〈構わん! あいつを、私の娘を奪ったやつを殺せるなら!!!〉オォォオオオオオオオオオオ!!!」

 どす黒い光が収まるとそこには赤黒い甲冑を纏ったモノが一人いた。

顎「まさか・・・赤騎士!?」

葵「GYAaaaaaAAAAAAAA」

 葵が放った一撃は、顎の幻影を捕えたが、本体は、

顎「あれが・・・絶望の――!?」

 顎が言い終わる前に葵は顎の眼の前に魔がおり、顎の顔面をぶん殴る。顎は数メートル飛ばされ、部屋を遮る壁すらをも破壊する。

顎(まずい!? あれはまずい!! すぐに角と合流せねば!!!)


SIDE角


角「これでラストですか・・・」

 角は最後の葵の分身を倒し終え、周りを見る。

角(そろそろ顎が来るはず・・・!?)

 角は自分の目を疑った。顎がボロボロの状態で帰って来たのだ。

角「どうしたのだ!? その傷は!?」

顎「まずい。?が赤騎士になった!」

角「・・・冗談だろ!?」

―ズガァアアアアアン

角・顎「「!?」」

 そこにいたのはまさに鬼、いや【鬼神】と呼ぶにふさわしいものだった。

角「あれが・・・・クソ! 行け【不の者】!!」

 軽く百以上はいた【不の者】。だが、所詮今の葵の前では、

葵「AAAaaaAAAアアアアアア!!!」 

 口元から放たれた魔法によって一瞬にして蒸発。その余波はこちらにも来て、後ろで待機していたガジェットまでをも撃破された。

顎「・・・・魔力はもらったのだ。ここは撤退すべきだろ。ここで死すわけにはいかん」

角「仕方あるまい」

 角と顎はその地獄のような光景を見て、去っていった。


SIDEout


 角と顎が去り、葵はそのまま暴走体となった。ただ、六課の者に手を出さなかったのが不幸中の幸いだろ。ただ敵である【不の者】とガジェットのみを破壊し尽くした。そして、それを終えると。

コ「・・・・お、父さん・・・」

リオ「・・・お父さんなの・・・」

 葵は、その鎧のまま、ヴィヴィオが倒れている場所にひざまずいた。

 そして、





―アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア





 鬼が・・・




 泣き始めた・・・




 愛する我が子を奪われ・・・




 天に向かって吠えた・・・




 ただ神を、この世のすべてに・・・・




 ただ、その鳴き声は天に届くことはなった・・・・




 その声はむなしくその場に響いた・・・・




 誰に聞かれることも無く・・・・




 ただ虚しく鬼の嘆きはその場に響いた・・・




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