小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第十話

――アラル港湾埠頭 廃棄倉庫区画


SIDEヴィヴィオ


 試合の十分前。そこには以前区民センターにいた皆がいた。そして、待っていた人物もそこに来た。

アインハルト「お待たせしました。アインハルト・ストラトス。参りました」

 そう。今回一番わたしの思いを伝えたい相手。

ヴィヴィオ「来ていただいてありがとうございます。アインハルトさん」

 そういってクリスと一緒に頭を下げる。

ノーヴェ「ここは救助隊でも使わせてもらってる廃倉庫なんだ。許可もとってあるから全力を出してもらっても大丈夫だ」

 全力出してもOKなんだね。なら―――

ヴィヴィオ「最初から全力で行きます!」

 クリスを手に取り、

ヴィヴィオ「セイクリッド・ハート。セットアップ!!」

 光と共にわたしは大人モードになる。その光景を見ていたアインハルトさんは、

アインハルト「・・・・武装形態」

 光が晴れそこからはわたし同様大人になったアインハルトさんがそこにいた。

リオ「アインハルトさんも大人モード!?」

星「最初の時も思いましたがあの気配は・・・・」

イクス「星那。あなたも感じました?」

夜「つくづく父上はベルカの王族に縁があるな」

ノーヴェ「今回も魔法なしの格闘オンリー。試合時間は五分で一本勝負。それじゃあ試合開始!」

アインハルト(綺麗な構え・・・油断も甘えも無い。きっと良い師匠に、良い姉妹に、良い家族に恵まれたんだ)

ヴィヴィオ(すごい威圧感。いったいどれ位、どんなふうに鍛えたんだろ)

アインハルト(この子はきっと格闘技を楽しんでる)

ヴィヴィオ(勝てるなんて思わない)

アインハルト(私とはきっと何もかもが違うんだろう)

ヴィヴィオ(だけど、だからこそ一撃づつでも当てて伝えよう)

アインハルト(だから、覇王(私)の拳(痛み)を向けてはいけない・・・)

ヴィヴィオ(「こないだはごめんなさい」って!)

 そして互いに動き出した。

 拳をぶつけ、それを避け、再びぶつけ、防がれ、ぶつけ。永遠のサイクル化のように繰り返す。

ヴィヴィオ(伝えるんだ! わたしの全力を! わたしの・・・格闘技(ストライクアーツ)を!!)

 わたしの拳はアインハルトさんを捕えた。

 そして吸い込まれるかのように拳はアインハルトさんの腹部に当たった。


SIDEout


葵「ほぉ。あてたか」

 多少遠い場所から、少し眺めるようにその光景を眺めていた。

葵「アインハルトとヴィヴィオ。必要な互いな存在なんだろうな」

 姉妹、親友。おそらく両方になれる存在だろう。

葵「だが、片方は受け入れても片方はどうなんだろうな」

 私は鞄から一枚の書類を取り出す。それはアインハルトの両親の情報があった。

 その情報には彼女がどういう立場かが書かれていた。その情報を見た時私は驚きを隠せなかった。

葵「道を用意するのは大人。その道を歩むかどうかを決断するのは子供。でも、今この一時だけは楽しんでください。そして感じてあげてください。ヴィヴィオの想いを」


SIDEアインハルト


アインハルト「!?」

 先ほどの一撃は先週とは明らかに違った。あの後特訓をしたから? 違う。何かが違う。

 その後も手を休めることなく拳をぶつけてくる。

アインハルト(―――この子は・・・)

 私も反撃に打って出るが、それでも彼女は以前とは比べ物にならないぐらい粘ってきた。

 そして、互いの拳が互いのほほにぶつかる。

全員「やった?!」

 そして再びぶつかる。

アインハルト(この子は、どうしてこんなに一生懸命に? 師匠が組んだ試合だから? 姉妹が見てるから? あの人のためだから?)

ヴィヴィオ(大好き、大切で、護りたい人がいる! 小さいわたしに生きることと、強さと、勇気、力の意味を教えてくれた! 世界中のだれよりも大切にしてくれて、心を温かくしてくれた! だから、強くなるって決めたんだ! 強くなるんだ! パパに追い付いて、隣に立てるぐらい!)

 再び彼女が一撃を放つ。その一撃は今日一番の重さがあった。でも、

アインハルト(私にだって悲願はある!)

 そして、

アインハルト「覇王断空拳!」

ヴィヴィオ「っ!? がはっ!?」

 彼女は勢いそのまま後ろに合った倉庫に衝突した。

ノーヴェ「一本! それまで」

全員「ヴィヴィオ(陛下)!?」

 その後、ヴィヴィオさんはお付き(?)の人の介護によって怪我を治療した。でも、最後の一撃のせいで、気絶していた。

ディード「多少の怪我はありますがそれほど気にするモノでもありません」

夕「おそらくアインハルトさんのおかげですね」

リオ「え?」

ディア「防護を抜かないよう気をつけてくれてたんだよ」

ウェ「そっか。アインハルト! ありがとうっす!」

コ「ありがとうございます」

 そういって彼女たちがお礼を言うけど、それほど・・・あれ?

――クラっ・・・

???「おっと。大丈夫か?」

――ぽふっ

 私は知らない人の声と共に、多分その人の胸に落ちついたんだと思う。

ス「あ、葵さん!?」

葵「よっ」

 え? じゃ、じゃあ私はもしかして!?

アインハルト「す、すみま・・・あれ?」

その場から離れようにもうまく体のバランスが取れない。

葵「多分ヴィヴィオのカウンターが効いてきたんだろ。落ちつくまでこのままでいいからじっとしてろ」

アインハルト「は、はい・・・///」

 今の私の顔は多分真っ赤だと思います。自分でも顔が熱いことがよくわかりますから。

ティア「葵さんいつからここに!?」

葵「試合開始すぐぐらいかな。いやぁ〜ヴィヴィオも成長しているし、アインハルトも強いし。最近の子供はすごいな」

ノーヴェ「それより最後のあれは『断空』か?」

アインハルト「は、はい。私はまだ直打と打ちおろししかできませんけど」

 それを聞いたノーヴェさんが、

ノーヴェ「そっか。―――それで、どうだ? ヴィヴィオは?」

 私はヴィヴィオさんを見ながら、

アインハルト「彼女には謝らなければなりません。先週は失礼しました―――と訂正します」

ノーヴェ「そっか。なら葵兄」

葵「なるほど。分かった」

 葵さんはそのままヴィヴィオさんの前まで行き、

葵「癒しの風よ。汝の力を持ってこの者の怪我を癒したまえ。ヒーリーングフール」

 すると、ヴィヴィオさんの周りを暖かい光が包みこみました。そして、それからしばらく経つと、

ヴィヴィオ「ん、んぅ〜〜〜。あれぇ? パパぁ?」

葵「そうだ。おはようヴィヴィオ」

ヴィヴィオ「ふにゅ〜」

 そういってヴィヴィオさんは葵さんの首に腕をまわして抱きつく体制を作った。

ヴィヴィオ「パパぁ〜〜〜」

 ・・・・なんでしょう。この心の底からふつふつと何かが「ガシッ」「ガチャ」今何か変な音がしませんでした?

星「ヴィヴィオ? お父様は私たち娘同盟の共有財産ですよ」

夕「そうだよ。一人占めはメッだよ?」

 夕璃さんの背中の赤い靄から腕が出ていて、それがヴィヴィオさんの頭を押さえ、その後頭部に星那さんのデバイスが見事に当たっていました。

ヴィヴィオ「ご、ごめんなさい・・・・」

 でも、葵さんから離れる気はないようで、

葵「まぁ落ちつけ。アインハルト。何か言うつもりがあるんじゃないのか?」

 あ。そうでした。

アインハルト「ヴィヴィオさん。こないだはすみませんでした」

 彼女は葵さんから離れてこちらに向かって来た。

ヴィヴィオ「ううん。わたしもまだまだだなって分かったの。だから・・・ね?」

 そういってヴィヴィオさんは私に向けて手を差し伸べてきた。

ヴィヴィオ「神無月ヴィヴィオです。よろしくお願いします!」

 彼女は私が会いたかった聖王じゃない。でも、私はこの子とまた戦えると思ったら・・・

アインハルト「はじめまして。アインハルト・ストラトスです」

 そして握手を交わした。


SIDEout

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