小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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最終話


SIDEフェイト

「久しぶりのこれはつかれる」

 あの後、【不の者】を倒し無事に葵がアースラに戻る。

「さて、早速で悪いがアリシアの場所に「その前に一つ聞かせてほしいの」なんでしょう?」

 皆を代表してリンディさんが質問してきた。

「あなたの名前は?」

「神無月葵ですが」

「次に、あなたが神無月君だとして、なぜ、その、大人なんですか?」

「こちらが元の姿です。年齢は二〇歳」

 え!? そうなの!?

「でも確証が・・・・」

 そうだよね。葵のお兄さんかもしれないし、あ!

「〈ねぇ、アルフ〉」

「〈なんだい、フェイト?〉」

「〈こういうのって出来る?〉」

「〈ん? 可能だけどどうしてだい?〉」

「〈みんなに葵だってわからせるため。少なくてもなのはは分かると思う〉」

「〈あぁ、そっか〉」

 アルフに頼んで、アルフを仔犬バージョンにした。

「!!!!」

 すると、葵は眼の色を変えたかのようにアルフを凝視した。目の輝きが違う。

「えっと、葵?」

 アルフがあまりの葵の今まで見たこと無い目の輝きにたじろいでいた。

「フェイト! こ、この子犬を抱いてもいいですか!?」

「う、うん!」

「では早速!」

 気付いた時にはアルフは葵の腕の中にいた。

「ん〜〜〜。仔犬はやっぱりいいですね。特に戦いの後のこの愛くるしさ。はぁ〜。癒されます♪」

 葵のあの顔に私もなんか嬉しいけど、

(うらやましいな)

「うん。葵君だね」

 なのはが確証を持ったように言った。

「どういう意味? なのはさん」

「葵君ってかわいいモノ好きなんです。犬より仔犬。猫より子猫みたいな」

「で、それを見たらああなると?」

「はい」

 だってそこだけ場違いな幸せ空間を出してる。

「あ、あの神無月君」

「はい、なんでしょう?」

「聞きたいことがいくつかあるんですが」

「その前にアリシアを起こしましょうか」

「え!?」

「案内してもらえますか?」

 アリシアを起こす? でも、確か、

「大丈夫ですよフェイト」

 そういって葵は腰をおろし、視線を合わせてくれた。そしてそっと抱き包んだ。あったかい。心が落ち着く。

「言ったでしょ? あなた達にもう一度幸せにすると。それに、今まで頑張ったんだ。それでご褒美なしというのはいけないだろ?」

 そういって優しく頭も撫でてくれた。これでも十分の御褒美だよ。

「ぶ〜〜〜〜〜〜」

 隣ではなのはのほほが膨れていた。

「なのはもよく頑張ったな」

 そういってなのはも抱き包んだ。

「ふにゃ〜〜〜〜///」

 数分後、なのはと私を放して、アリシアのいる部屋に入った。


SIDE Out

SIDEクロノ


「さて、始めますか・・・と言えると思ったんだが」

 彼は医務室に入ると、何やらあきれていた。

「さすがに、ポットから出すように言っておくべきだったな」

 そう、アリシアは救出してすぐにここに運んだためポットから出していたない。

「どうすればいいんだ?」

「そうだな。プレシアを除いた女性陣は彼女をポットから出して、体を拭いて服を着させてあげてくれ」

「は〜い」

「分かった」

 そういってフェイトとなのは。そして母さんがその準備に取り掛かった。

「ほら、お前らは外だ。後プレシア」

「なにかしら?」

「あなたも治療するからこっちに」

 そういって向かいの空き部屋に入った。

「プレシア。一つだけ約束してくれ」

「何かしら」

「例えアリシアが蘇ってもフェイトをないがしろにしないことを」

 そんなことはない。だが、確証がほしかった。

「変なことを聞かないで。フェイトがどんな姿であってもあの子はわたしの自慢の娘よ」

「それを聞いて安心した」

「でも、わたしの病は不治の病なのよ?」

「関係無い。それに、最初にあったときに言っただろ。フェイトもアリシアも、あなたも助けて見せるとね」

 そういって彼はプレシア女史に背中を向けるように指示を出し手に緑色の魔力を集め出した。

「癒しの風よ。汝の力を持ってこの者の病を癒したまえ。ヒーリーングフール」

 すると、その魔力は彼女を包み、そしt「あっ、制御ミスった」て、

「なにぃいいいいいいいいい!?」

「安心しろ。病が悪化したわけじゃない。まぁ光が晴れたらわかる」

 そういって光りが晴れると、そこには確かにプレシア女史がいた。ただ、

「「・・・・若返ってる!?」」

 ユーノと僕の声が重なった。見た目確実に一〇歳は若返っている!

「あ〜。とりあえず体の調子はどうだ?」

「え、えぇ。今までの身体の重さや、気だるさなんかもないわ。それに昔のように体が軽いわ」

「それは良かった。とりあえず医者に診てもらっておいてくれ。さて、次は」

 彼は失敗(?)したことを秘密にして、向かいの医療室の前に来て、

「準備はいいか?」

「OKだよ」

 なのはの声が聞こえたのでは言った。

「か、母さん!?」

「あ、あら・・・・」

「え? プレシアさん?」

「あ、あんた、本当にプレシアかい!?」

「・・・・彼女は確かにプレシアです。ですが、その・・・・」

「みんなどうしたの?」

 プレシアが、みんなの反応に戸惑っている。そりゃそうだ。若返っているんだ。

 そこで僕は、

「プレシアさん。鏡で自分の姿を核にしてみてください」

 そういって、鏡をプレシア女史に渡すと、

「・・・・あら」

 プレシア女史は驚きよりもうれしさの方が大きいようだ。

「あ〜。すまん。勢い余って体内機関をはじめそう言ったものまで若返ってしまったようだ」

「あらいいわよ別に? それよりもアリシアを」

「あぁそうだな」

 だが、彼女はそれを気にしない様子だ。葵は葵で何かあたりを見渡し、そして、

「もういいぞ。お前の身体に戻って」

 誰もいない入り口近くに向かって話した。

「え? 葵君。誰もいないよ?」

「ん? そうかお前らは見えないんだったな。まぁ気にするな」

「え!? そ、それってもしかして・・」

「幽霊!?」

「まぁ、あたりでもあり外れかな。よし、もどったな」

 何がどこに戻ったかはわからないが、多分知らない方がいいような気がする。

「どうやってよみがえらせるの? あの、金色の光を?」

「エクスルミオンはあくまでも浄化の光、今からやるのは蘇生術です」

 そういって彼は権を鞘に刺したままアリシアの体の上にのせた。

「彼魂をもう一度器に戻りて汝蘇らん。黄泉路を歩むには若くまだ遠い。再び命に息吹を吹き込みもう一度目を覚まさん」

 すると、アリシアの身体がプレシアのとき同様輝き始め、そして、

「んっ、ん〜〜〜〜」

「アリシア!」

「ふぇ? お母さま?」

「あぁっ! 良かった! 本当に良かった!」

 目の前のことが信じられない。本当に蘇った・・・

「不幸中の幸いだな。完全なる死だったら不可能だったからな」

「? どういう意味だ?」

「それは後で話すよ。フェイト」

 そう言うと彼はフェイトの背中をポンと押す。

「ん? あなたがフェイト?」

「うん」

「そっか。ついに私にも妹ができたんだね!」

「え?」

「私のことはお姉ちゃんでも姉さんもお姉さまでも何でもいいよ♪」

「あ、お、お姉ちゃん!」

 すると、フェイトもアリシアの下へ行き、泣き始めた。

「さて、ちょっと私たちは席をはずすとしよう」

 そういって葵は医療室を出る。


SIDE Out


 その後、フェイト、プレシア、アリシアを除く人たちは言ったん食堂に来て、その数分後遅れて三人も来た。

「さて、聞きたいことが山のようにあると思うがなにから答えようか?」

「まず、先ほどの【不の者】から。なぜ二段階に?」

「それは最後に戦ったものが本体。つまり人の魂とでもいうべきものを喰いすぎ、逆に乗っ取られたと言うところか。だがあのケースは稀だ。私も初めてみた」

「だから、成仏させた後、本体を叩いた」

「では次に、アリシアさんをどうやってよみがえらせたんですか?」

 すると、わたしは少し考えて、

「ふむ。質問を質問で返して悪いが、君達はいくつ人間には死の種類があると思う?」

「え?」

「なのは。たとえば私がここで君の首をちょんぱ(切る)したら当然君は?」

「死ぬ。というか危ないよ!?」

「たとえ話だ。そう、これが実質の死。つまり蘇らせることができない死だ。二つ目は脳死。いわゆる植物状態のことだ」

「では、アリシアさんは植物状態だったと?」

「それはあり得ないわ。アリシアはあの後脳も、心臓も動いていなかった。どちらかと言えば前者よ」

「そう。これ意外に死の定義を言えるものはいるか?」

 私はそう言って周りを見渡す。誰もいないようなので知らないということだな。

「私の元いた世界ではもう一つ幽体剥離死というモノがある」

「? どういうことだ」

「簡単に言うと魂が体という器から何らかの外的なショックによって剥離された。という意味だ。この状態が長く続くと、実質死に直結するんだが、アリシアの場合そのすぐ後にプレシアがポッドに入れた影響で魂と体をつなぐ線が切れずに長く魂と体がつながれた状態になっていたんだ」

「つまり、あなたはそのアリシアさんの魂を身体に戻した。ということ!?」「

「まぁ、簡単に言うとね。あと固定化もしたためもう大丈夫だと思うぞ」

「はぁ、君は本当に何でもありなんだな」

 クロノが溜息を吐くが、私だって死人を蘇らせることはできない。

「では最後に。【不の者】が言っていた大英雄とはどういう意味ですか、あと殺人鬼という意味も」
 まぁ、当然その質問が来ますよね。

「はぁ。話したくはないんですが、まあいいでしょう」

 そういって以前に私がリンディい提督とアルフ、クロノに話した説明をもう一度した。

 すると、やはり皆憤りを感じていた。

「まぁ、その後ゆっくり暮らせればよかったんだが、零始があるプロジェクトを開始した」

「プロジェクト?」

「世界ゼロ計画」

「なにそれ?」

「世界を一変全てにおいてリセットを行い新たに世界を開始することだ」

「どういう意味?」

「簡単に言えば世界にある国家全てに宣戦布告し、世界を破壊しつくしたのちに、もう一度世界を創りなおすという計画だ」

「なんだその計画は!?」

「で、その情報を聞いた私は友人や、零始に恨みを持つ者、同じ志を持つ者を集め騎士団を創設した」

「騎士団?」

「簡単に言えばウィザードの集まったギルドだと思えばいい。ただ、当時は国家権力がガタ落ちしていたから国家よりも騎士団の方が権力は強かった。その影響でユーラシア騎士連合、アフリカ共同騎士隊、オーストラリア連邦騎士政府、北アメリカ騎士団、南アメリカ騎士連盟などという騎士団による国連みたいなものなんかができるほどだ」

「国家権力が落ち、かわりに騎士団が勢力を伸ばした。つまり治安維持や政府機関なども・・・」

「あぁ、騎士団が担うようになった。まぁ、その中でも例外はやはりあるがな。で、私も零始と決するために騎士団を創り、いつの間にやら大層な肩書きも貰ったというわけ」

「どんなものなの!」

 なにやら子ども組が目を輝かせているな。

「私の作った騎士団の名前は蒼穹の騎士団。青空という意味だ。で、肩書がユーラシア騎士連合盟主蒼穹の騎士団騎士団長ってね」

「じゃ、じゃあ、あ、あなたはユーラシア大陸の支配を許された。ということと等しい物を持っていたの!?」

 リンディ提督がかなり驚いていた。

「あぁ、というか実質支配してたしね」

 これには全員が驚いていた。

「で、最初に戻すが、零始の計画に私たちの実験体や【不の者】が作られたというわけ。当然世界も黙っていないが、たった4日で北米大陸全土が零始の支配下に収まった」

「4日で!?」

 なのはも驚いている。大陸一つを4日で落とす。どれほどの国家であってもまず無理だ。

「その後、世界は動かなかったんだ。まぁ北米大陸が四日で落とされるなんて思ってなかったんだろ。だから国家どもは服従か抵抗かという道を選択していた」

「バカか! そんなことをしても結果は変わらない! なら抵抗すべきだろう!」

 クロノが机を叩いて叫んだ。

「そう。だから私はあてにならない国家よりも、蒼穹の騎士団を中心に騎士連合軍を創設し零始に宣戦布告をし戦争が始まった。第一次ウィザード大戦が始まった」

 そういってあくまでも資料映像だが、エクスを起動さえ見せた。

 その映像はすさまじい者だ。腕を斬る者、銃弾で頭をぶちぬかれた物、【不の者】に体を喰われる者、それを殺す者。当然殺す者の中には私もいる。砲撃を撃ち人を殺す姿、両翼刀で四肢を斬り、首を刎ねる姿など様々だ。

 その光景に皆が皆顔を青ざめていた。

「結果は騎士連合の勝利で終え、後は残党狩りとなった」

「そ、そうなんだ・・・あれ? じゃあなんで葵がここに?」

「・・・・世界が裏切ったんだよ」

「え・・・・」

 その意味がわからずみんなが唖然としていた。

「零始の作った兵器は世界を壊すほどだ。それを倒した私は世界から危険と判断され、世界から追われる羽目になった」

「まって、葵君は世界を助けた大英雄なんだよね? なのになんで世界に追われなくちゃいけないの!?」

「そうだよ!? そんなのおかしいよ!!」

「なのは、フェイト。大英雄とは殺人鬼をほめたたえるためにある言葉だ。たとえ世界を救ったものと言え、私も人を殺した殺人鬼だ。その力に対し世界が恐怖し、始末すべきと判断したんだろう」

「それで、君は殺されたということか?」

 ユーノの言葉にうなずいた。

「・・・最低ね」

 リンディ提督が初めて感情を表した。

「まぁ、仕方がない。その時に追ってくる者を殺し、兵士を殺し、時には巻き添えで関係ない民も殺した。その時のことと、先の大戦の時の殺戮からあの世への道への案内人。つまり【黄泉路への案内人】と呼ばれるようになったというわけだ。
で、あの思念体は、大戦時かその時に殺したのがあいつらだろう。だがある意味では感謝せねばな」

「どうして、どうして君はそんなのんきなことが言えるんだ!」

「もし、あそこで死ななければ私は君達と出会おうことはなかっただろう。だから感謝しているんだ。それにこことあそこは違う。なら、私も最初っから始めようと思うしな」

 そういって私は微笑んだ。本当に君達には感謝している。君たちに出会えて本当に良かった。

 そして、この事件の名前を操っていた【不の者】をそのまま利用して不の者事件と総称し、終了をリンディ提督が宣言した。

 その後、【不の者】がプレシアにとりつき操っていたということを管理局上層部に戦闘している姿(最後のはリンディ提督のはからいで編集しカットした)ものを送り、プレシアの罪は無罪となった。リニスに関してはもともとの主であるプレシアに返した。
フェイトやアルフも内容が内容なだけに行った行為は無罪となるらしい。だが、一応事情聴取という形で三人はミッドチルダに一回向かうことになった。その後は、フェイトがいたマンションで家族と一緒に暮らすらしい。アリシアにおいてもリンディ提督がうまくごまかしてくれた。

「「「あ、葵(君)!」」」

「遅くなった」

 あの後、魔力消耗が激しかったのかしんだように私は寝て、目が覚めると、数日たっていた。姿も子供に戻っていた。で、起きたちょうどその時間に電話が鳴り、フェイト達が今日ミッドチルダに向かうとのことで急いでその場所まで来た。

 フェイトやなのはを始め、アルフ、アリシア、プレシア、リニス、ユーノ、クロノがそこにいた。

「葵君。もう少しフェイトちゃんとお話してもいい?」

「その後に私から話があるの。聞いて」

「あぁ、分かった」

 そういって私は近くのベンチに座ると、プレシアが近づいてきて、

「あなたには本当に何から何まで。何と言ったらいいのかしら」

 そういってプレシアが、頭を下げてきた。

「なにも言わなくていい。私は当然のことをした。助けを求めていたら勝てを差し伸べた。それだけだ」

 そう言ってほほ笑んだ。

「プレシア。あなたももう一度幸せをつかんだんだ。二度と手放すなよ」

「えぇ。もちろんよ。それとこの子からも話があるみたいよ?」

「ん?」

 そういってプレシアの視線の先を見ると、アリシアが、

「あ、あのね、お母様とフェイトとアルフとリニス。みんなを助けてくれてありがとう!」

 その笑顔はまぶしかった。もう見ることはなく、自分に与えられるものでもないと思っていたからな。

「あぁ。どういたしまして。君も幸せになってくれよ」

 そういって微笑み返す。

「う、うん///!!」

 ん? アリシアの顔が赤いような?

 すると、フェイトが私を呼んでいたので、そちらに向かう。

「もういいのか?」

「うん。フェイトちゃんとお友達になろうっていったの」

「今さら感があるんだが?」

「ううん。そんなことない。気持では友達だったけど。声にしてちゃんと言ったから。これで、ちゃんとした友達」

 なのはもフェイトも満足そうだ。これはこれでいいんだろう。

「葵君も友達だよね」

「いい、かな?」

「私はフェイトもなのはも大切なものといったはずだ。無論。友達でもある」

 そうだな、なら。

「なのは、フェイト。ならこれをやろう」

 そういって飛翔で翼を展開し、黒と白の羽を一枚ずつ取り、ネックレスにした。

 なのはには白、フェイトには黒を。

「これは?」

「簡単なもので割るが友の証だ。私の翼は特殊でね。精霊の翼なんだ。守護力というモノがあってね障壁が間に合わなくてもそれが君たちを護る。あと、それがある限り、どんなところでも君達を護ろう。」

「ありがとう///!!」

「大切にするね///!」

「それでフェイト。話って?」

 そういうと、なのはは気を利かせたのかその場から少し離れた場所に行った。

「えっとね。母さんを、お姉ちゃんを、リニスを助けてくれてありがとう!」

「フェイト。私はただ私ができることをしたまでだ。私の方こそ、君に感謝しなければならない」

「え?」

「生きる目標を、目的をくれてありがとう。もし、君に、なのはに出会わなかったら私はまた以前のように生きていたかもしれない。でも、君達を護りたいと思ったからそうならなくて済んだ。だから私の方こそありがとう」

「ううん。私もね。葵がいたからあきらめずにいれたんだと思う。ううん。そうなんだよ。【不の者】に乗っ取られた母さんにひどい子とされても、言われてもあなたが心の支えになって私を支えてくれた。嬉しかったんだ。ありがとう」

 そういって互いに互いが感謝しあう変な場になった。だが、おのずと笑みが出て、笑いあって、とても心が温かかった。

 その後、時間が来て、彼女たちとの別れが来た。

「さよならは言わない。また会えるんだからな」

「うん! フェイトちゃん! またね!」

「うん。ありがとう。それからまたね! 葵、なのは!」

 泣いているが笑顔で手を振るフェイト。

「ありがとね。葵、なのは!」

 そう泣いているアルフ。

「あなた達には心から感謝しているわ」

 微笑みながらこちらに手を振るプレシア。

「またね! またね!」

 元気に手を振っているアリシア。

「本当にありがとうございます!」

 律義に礼をするリニス。









 今回黄泉路への案内人は人を殺すのではなく人と心を救った。

 彼女たちを救い、彼もまた生きる新たな目標ができた。

 小さいが大きい幸せ、彼もまたつかんだ幸せ。

 彼は心に決めた。いつまでもこの幸せを護りぬいて見せようと。



魔法少女リリカルなのは〜黄泉路への案内人〜無印 終

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