小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

デート編 アイン・ヴェル


SIDEアイン・ヴェル


アイン「・・・どこに連れて行けばいいのだ?」

ヴェ「私に聞くな。そもそも、リンディもリンディだ。なぜ同じ番号をクジに入れる!?」

 まぁ、見てくれた方なら分かるがクジにはデートの順番を示す数字が書かれた紙が人数分入っていた。だが、同じ番号が二組あった。一つはフェイトとアリシア。そしてアインとヴェルがそれを引いた。

ヴェ「それに私だってその・・・こういったことは・・・初めてなんだ・・」

アイン「・・・まさか人を好きになるなんて思ってもみなかったからな」

ヴェ「あぁ。それを言うなら私は助からずに消えていたかもしれないんだぞ?」

アイン「それらすべて含めて葵がいたからか・・・本当に彼には驚くばかりだな」

ヴェ「だが、そのおかげで私たちはこうやって幸せをかみしめることができている。彼がいなかったら私とアイン、共に消えていたかもな」

アイン「そうだな。ん? ヴェル、これならどうだ!?」

ヴェ「・・・そうだな。これなら!」


SIDE Out


葵「今日は・・・・二人か?」

 そう。シャマルを起こしリビングに行くとニコニコ笑っているヴェルとアインがいた。

アイン・ヴェ「「はい!」」

 そして、今まで通り腕を組み目的地に向かう。

 その目的地とは・・・

葵「遊園地か・・・・何時以来だろう」

ヴェ「私たちは初めてですね」

アイン「でも、色々な物があるな・・・」

 さて、はじめは何に乗ろうか。

 すると、アインが、

アイン「あれなんてどうだ?」

 そう言って指差す方向にあるのは・・・

葵「ジェットコースター? 結構きついぞ?」

アイン・ヴェ「「え?」」

葵「まぁ、見てればわかるか」

 すると、頂上まで行った乗り物が急降下、そして、

「キャァアアアアアアアアアア――――・・・・」

葵「あぁなる。ま空飛んでんだから大丈夫か」

 ヴェルとアインの方を見ると、少し顔が青いぞ? え? 大丈夫だよな? あんなに空を高速で移動してるんだから!?

ヴェ「い、行きましょう! あ、葵様!!」

アイン「そ、そうだな! い、行こうか!!」

葵「・・・・同じ足と手が出てるぞ?」

ヴェ・アイン「「!?」」

葵「・・・・怖いなら「「恐くない(ありません)!!」」そ、そうか?」

 その後、ジェットコースターに乗った二人はあまりの緊張感からか、恐怖感からか一言も言葉を発していない。両隣を見ると、

ヴェ「あ・・・あわ・・・わ・わわ・・・」

アイン「あ・・・は・・は・わわあ・・・」

葵「お前ら、普通に空飛んでいるのに何で恐がるんだ?」

―ガゴンッ

ヴェ「ふぇ?」

アイン「なぜここで・・・・」

葵「いや、なぜって・・・」

 そして、時は来た・・・

 ジェットコースターは急降下する。

ヴェ「イヤァアアアアアアア!!!!」

アイン「キャァアアアアアア!!!!」

葵「おぉ〜〜!!!」

 ジェットコースターから降りると、二人を近くのベンチに座らせた。

葵「だ、大丈夫か?」

 明らかに来る前と顔色が違う。何と言うか病人顔負けなほど真っ青だ。

ヴェ「そ、空を飛ぶのと全然違う・・・」

アイン「あ、当たり前だろ・・・あれは私たちで調整できるのだから・・・・」

 あぁ〜。言われてみれば確かに。

葵「少しここで休んでろ。飲み物を買ってきてやるから」

 そういって近くの売店に飲み物を買いに行った。


SIDEアイン・ヴェル


アイン「ふがいないな・・・」

ヴェ「どうかしたのか?」

 ヴェルがアインのつぶやきに少し気になって、聞いてみた。

アイン「いや。その、あんなものにあんな悲鳴を上げたり、葵に心配させたり・・・」

ヴェ「そんなことか」

アイン「そ、そんなことって!?」

ヴェ「落ちつけ。いいかアイン。以前葵様が言ってただろ。甘えるときはしっかり甘えろと。感情を抑えたり、無理に抑制するな、と」

アイン「あ、あぁ」

ヴェ「解放しすぎるのもなんだが、アインのああいう表情も葵様から見れば新鮮なんだろ。葵様はよく私たちを見てくれている」

アイン「・・・・確かにな。葵はよく見てくれているな。体調管理や栄養など・・・その母親的というか、なんというか///」

ヴェ「母親か・・・私たちには縁遠かったものだったな」

 すると、葵が飲み物を買って帰ってきたようだ。

葵「ほら。これでいいか?」

ヴェ・アイン「「ありがとう。お母さん」」

葵「・・・・はぁ?」


SIDE Out


 飲み物を買って帰ってきたら母さんと呼ばれた・・・なぜ?

 その後理由を聞くと、何かと気が利きまるでお母さんみたいだからと言われた。

葵「ははははっ!」

 それを聞いて私は久しぶりに大爆笑だ。

ヴェ「な、何かおかしかったでしょうか?」

アイン「い、いや別に何も無いと思うが」

葵「い、いや、くくくくっ、そうか、私が母親か」

 そうだったな。昔も、今もそう言う点では変わらないか。

葵「まぁ、家族なんだ。そう思われてもいいか」

ヴェ・アイン「「?」」

葵「気にするな」

 その後は色々と回った。ただ、選ぶものが、メリーゴーランドとか、コーヒーカップとかかなり恥ずかしいものだった。

 そして最後は観覧車と定番中の定番・・・なのか?

ヴェ「おぉ〜。かなり高いところまで来た」

アイン「はい・・・。主の家もかなり小さいですが大体あそこらへんでしょうか」

 まるで子供みたいだな。あながち二人が行った母というのも間違いじゃないのかも。

葵「・・・・ふふっ」

ヴェ「どうかしましたか、葵様?」


SIDEアイン・ヴェル


アイン「? どうかしたか」

 急に葵が笑いだしたのでそちらに振り替えると、

葵「いや、こうやって見ると本当に子供だなと思ってな」

 すると、二人が黙って、

ヴェ「葵様。私たち二人は本来あの戦いの後消えるはずだった。防衛プログラムである私は暴走体と共に」

アイン「私はその後、主に被害を出さないために。だからこういう経験がないに等しい」

葵「なら、今から積み重ねていけばいい」

 葵の言葉に顔をあげる。

葵「時間ならまだある。今からゆっくりでもいいから積み重ねて行くといい。幸せを、幸福を」

アイン「いいのでしょうか・・・私たちがそれをつかんで」

葵「いいに決まっている。今までお前らは重荷を背負いすぎるほど背負って来たんだ。その分幸せになってもいい」

ヴェ「ですが、世界が私たちを赦さないかもしれない」

葵「たとえ世界が否定しても私が認めよう。たとえ世界が、お前らに牙をむくと言うのであれば私が体を盾にしてでも護ろう」

 その言葉に二人は黙り、そして・・・

アイン・ヴェ「「あ・・あぁあああああああああ」」

 葵に抱きつき子供のように泣き始めた。

葵「よしよし。もう大丈夫だ」

 葵は息が詰まらないように優しく二人の背中をなでた。二人が泣きやむまで。


SIDE Out


 あの後、係員に頼んでもう一周頼んだ。その時、後ろの人から生温かい視線が何ともまぁ・・・

アイン「す、すまない。その///」

ヴェ「申し訳ありませんでした///!!」

 顔を赤くしながらも、謝ってくる二人。

葵「いや、別にいいって。それに二人の心の声がちゃんと聞けたんだ。あまりため込むなよ」

 そういって二人の頭をなでた。

 すると、二人が顔を上げ、

アイン「・・・そうでしたね。葵が甘えてもいいといったんでしたね」

ヴェ「そうだった。葵様が甘えろといったんだ」

葵「・・・そうだが、なんだ?」

 すると、二人の顔が迫ってきて、

―ンチュ

―チュッ

 入れ違いに唇が奪われた。

アイン「葵。私はあなたのことが大好きです。ですからこの気持ちを伝えておきます」

ヴェ「主従など関係なく、葵様が好きです。この世で一番」

 その後は腕を組み帰路についた。

 そして、当然一緒に寝ることになった。

ヴェ「ん〜///葵様♪」

アイン「葵///」

 そう言って彼女達は自分の頭を私の胸にこすりつけて、幸せそうにして眠った。

 これを聞いたら他の人たちが何が起こるだろう・・・。止めよ肉片しか残っていない自分が想像できた・・・

(さて、残すは・・・・)

(孤狐様ですね・・・行く場所は大体予想できますが)

-96-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える