小説『青春の別れ』
作者:ミカエル()

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最終章ー別れは新たな道ー


今日はなんだか風が異様に冷たすぎる

寒いのは確か
でも心はもっと寒いのかもしれない

イヤな日が来てしまったものだ

俺たちは今日、最後の学校にそろって登校していた


皆無言のまま
いつもうるさいカイトやショウでさえも口を開かなかった

卒業式で歌う歌も
口を開いてしまえば今にも涙があふれ出しそうで

最後の最後まで
言葉をだすことはなかった

皆で写真を撮ることも

最後の制服姿を撮ることも

俺たちにはできなかった

周りの奴らは泣いて、笑って
別れを惜しむものや、最後の記念撮影に必死な奴

そんな状況の中、まるで場違いのような俺たちは
颯爽に校門から抜け出していた

特別、何をしゃべるでもなく・・・

「お前らさ、最後なのに何も喋ることねぇのかよ」

卒業証書を片手に
最初に口を開いたのはタケだった


「ばーか。最後なんて思ってねぇからしゃべらねぇんだよ」

カイトがエミの肩を抱きながら言う

それを見たショウは少しムッとしながらも
「そうそう。だって何年も一緒だったんだろ?絶対また皆一緒になる日が来るって♪」

気楽にそう答えるショウをよそに

ユウだけは物凄く泣きっ面に変化している

「おいおい。泣くのだけは面倒だぞ」

嫌々ながらにケイがユウを見て言う

ひどい男だ。

「だって、めちゃくちゃ寂しいじゃん!!」

堪えきれなかった涙が頬を伝って流れた

「皆、明日からは違う人生歩いていくじゃん!皆、明日からもう一緒じゃなくなるんでしょ?」

そう泣き叫ぶユウをエミが優しく抱き寄せる

「ちがうでしょユウ。皆、また一緒になるために、違う道を歩いていくんだよ」

「さっすがエミりん♪俺の勘では、何年後かには皆一緒な気がするな」

「カイトだけはエミと別れて悲しみに暮れている人生送ってると予想」

意地悪そうにショウが縁起でもないことを言いのける

「てめぇ、いっそ海に沈めたろか」

不気味な笑みを浮かべながらショウに言う

普段通りに戻った雰囲気に思わず皆笑い出した

これが俺たちだ

これが

俺たちの青春でもあり

そして最後の青春

青春は消えることはなく
俺たちの心のアルバムに永遠と残るであろう

「記念撮影しよーーよ」

コロッと笑顔が戻ったユウがカメラを取りだし、大きく手を挙げた

「皆入ってるかな」

そう不安をこぼしながらも
シャッターを切ると、フラッシュが眩しくて思わず皆が目を瞑ってしまった

俺たちの最後の青春写真はとてもきれいな写りとは思わない
けれどこれだけは言える

みなと過ごした時間が

人生の中で一番、最高の思い出だったと


俺たちは今

別の道を見つめている

けれど

心だけは一本の赤い糸、友情の赤い糸が固く結ばれているに違いない





                     ーEND−

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