第18話『サトシVSジロウ、念願のバトル! 〜後編〜』
前書き
前回、能力を上げて攻撃を仕掛けるのがジロウの戦術としましたが、戦闘に出すポケモンに応じて戦術を変えていくスタイルで行きます。
ツタージャとカブトプス、両者一歩も譲らぬ攻防が続く。2体の顔には、徐々に疲労の色が見え隠れする。
ツタージャ「タジャ、タジャア…。」
カブトプス「プ、プシャア…。」
形勢がどちらに傾くにせよ、次の攻防が勝負を決することになるであろう。
ジロウ「カブトプス、げんしのちから!」
カブトプス「プ、プシャシャアアアアア!」
カブトプスの周りから、無数の岩が浮き出てきた。その岩は、真っ直ぐにツタージャの方へと向かっていく。
ツタージャ「タジャア!」
疲労困憊の中、ツタージャは思うように動けずにそのまま攻撃を喰らってしまう。さらに、げんしのちからの追加効果で全体的にカブトプスの能力が上がったことにより、さらにダメージが上乗せされているようだ。
サトシ「負けるな、ツタージャ! つるのムチ!」
ツタージャ「タジャタジャ! タジャアアアアア!」
だが、ツタージャも負けてはいなかった。カブトプスに反撃のつるのムチを一発お見舞いし、さらに乱れ撃ちを浴びせる。ツタージャのみならずカブトプスも疲労困憊なのは同じなので、思うように動けない。
カブトプス「!?」
ジロウ「ど、どこだ!? ツタージャは!?」
いつの間にかツタージャの姿が、カブトプスの目の前から消えていた。
ツタージャ「タジャアアア!」
ツタージャは渾身の力を振り絞り、カブトプスのほぼ真上に移動。そして、
サトシ「このまま一気に決めるぞ! ツタージャ、リーフブレード!」
ツタージャ「タジャ! タァァァァァジャアアアアア!」
ツタージャ、当たれば会心の一撃ともいえるリーフブレードでカブトプスにトドメを差しにかかる。
カブトプス「プ、プシャア…。」
ツタージャのリーフブレードは、見事カブトプスにクリーンヒット。カブトプスはすさまじい威力と疲労で身体を支えきれず、地面に叩きつけられた。
カブトプス「…プシャア。」
デント「カブトプス、戦闘不能! ツタージャの勝ち!」
この白熱した攻防は、辛うじてツタージャが勝利をもぎ取った。
ジロウ「よくやった、カブトプス。」
ジロウは惜しくも敗れたものの、ツタージャとの死闘を繰り広げたカブトプスを労い、モンスターボールの中へと戻す。
ジロウ(さすがはサトシ兄ちゃん。各地のポケモンリーグを渡り歩いて好成績を残しただけのことはあるよ。)
ジロウは改めて、サトシが今までに培ってきたトレーナーとしての実力を認識する。
ジロウ「(だけど俺だって負けちゃいられない!)ダイノーズ、次はお前だ!」
ダイノーズ「ノォズ!」
ジロウが次に出したポケモンは、ダイノーズだ。俊敏な動きのカブトプスとは打って変わって、今度は重量級のお出ましである。
サトシ「(このまま、ツタージャにバトルさせるのはマズい…。)戻れ、ツタージャ!」
サトシはカブトプス戦で蓄積されたダメージと疲労を考慮して、ツタージャをボールに戻そうとする。だが、
ジロウ「そうはさせないよ! ダイノーズ、とおせんぼう!」
ダイノーズ「ノォズノォォォォォズ!」
ツタージャ「タジャ!?」
サトシ「な、何!?」
ダイノーズがとおせんぼうを使いこれを阻止した。とおせんぼうは相手のポケモンを逃げられなくする(トレーナー戦の場合は、交代させなくする)技で、使い方と技の組み合わせによってはかなり厄介な技である。同じ効果を持つ技の代表例としては、くろいまなざし、クモの巣が挙げられる。
ジロウ「ダイノーズ、そのままストーンエッジ!」
ダイノーズ「ダダダ! ノォォォズ!」
ダイノーズのストーンエッジ。
ツタージャ「タジャアァァァァァ!」
サトシ「ツタージャ!」
先ほどカブトプスにトドメを差した反動と今まで蓄積された疲労もあって、ツタージャは避けきれずに攻撃を喰らう。
ツタージャ「タァ〜ジャ…。」
デント「ツタージャ、戦闘不能!」
ツタージャは、体格で自分より勝るダイノーズを前に成す術がなく、敗れた。これで、1対1。このバトルはますます混戦模様となった。
サトシ「ご苦労さん、ツタージャ。」
サトシはツタージャを労い、モンスターボールの中へと戻す。そして、次に出すポケモンが入ったモンスターボールに手をかける。
サトシ「ズルッグ、君に決めた!」
ズルッグ「ルゥゥゥゥゥッグ!」
サトシが投げたモンスターボールからは、ズルッグが元気よく出てきた。
サトシ「ズルッグ、とびひざげりだ!」
ズルッグ「ルゥッグ! ルル、ルゥゥゥゥゥッグ!」
ズルッグの助走をつけながらのとびひざげり。
ダイノーズ「ノォオ!?」
大きな体格のせいか、ズルッグの攻撃をかわしきれずに効果抜群のダメージを喰らう。
ジロウ(いくら防御が高いとはいえ、ああやって弱点を突かれ続けるのはさすがにマズイな…。よし!)
ジロウは何か、弱点面で不利な状況を打開するのを閃いたようだ。ジロウはそれをさっそく実行に移し、ダイノーズに指示を出す。
ジロウ「ダイノーズ、ストーンエッジ!」
ダイノーズ「ダイノォォォォォズ!」
ダイノーズはストーンエッジで反撃にかかる。
サトシ「かわせ!」
ズルッグ「ルゥッグ! ルゥ! ルゥ! ズルゥゥゥッグ!」
ズルッグは浮き上がった岩石群を意図も容易くかわしていく。
ダイノーズ「……。」
だが、ダイノーズは冷静を保っているのか、見失わぬようズルッグ一点に集中して凝視する。
ズルッグ「ズルッ! ズルゥゥゥゥゥ!」
全ての岩をかわしきったズルッグは、さらなる攻撃を仕掛けにかかる。
ジロウ「よし、今だ! ダイノーズ、でんじほう!」
ダイノーズ「ノォズ! ノォォォオォォォォォ!」
すると、ジロウはダイノーズにでんじほうを指示。当たれば確実に相手をまひ状態にさせるでんじほうが放たれ、真っ直ぐにズルッグに向かっていく。
ズルッグ「ルゥゥゥゥゥッグゥ!」
サトシ「ず、ズルッグ!?」
でんじほうは一筋のブレもなく、ズルッグに命中。これにより、ズルッグはまひ状態になって思うように攻撃が出来なくなってしまった。
タケシ「ジロウの奴、あらかじめダイノーズにロックオンを使わせておいたな。」
カスミ「でんじほうは当たれば確実に相手をまひ状態にできるけど、本来の命中率が低い特殊攻撃技。」
アイリス「ズルッグがストーンエッジをかわしている最中にロックオンして、でんじほうを確実に当てるようにしたのね。」
先程、ダイノーズがズルッグを一瞬たりとも見失うことなく凝視していたのは、ロックオンで狙いを定めていたからである。これによってダイノーズは狙いを外すことなく、ズルッグにでんじほうを命中させることが出来たのである。
ズルッグ「ズ、ズルゥ!?」
ズルッグはまだ戦える状態ではあるが、身体が痺れて思うように行動できない。
ジロウ「ダイノーズ、ストーンエッジ!」
ダイノーズ「ノォォォォォズ!」
一気にたたみかけるかのごとく、ダイノーズがストーンエッジでさらなる攻撃。
ズルッグ「ズゥゥゥ! ズルゥ!」
思うように動けずにいるズルッグは、浮き上がる岩の餌食となる。
ズルッグ「ズ、ズルゥ…。」
成す術なく攻撃を受け続けるものの、辛うじてこれを切り抜けた。ズルッグの持つ元々の能力に加えてかなりの根性の持ち主と言えよう。
サトシ(ズルッグはまひ状態で思うようにダイノーズに攻撃を仕掛けられない。一体、どうすれば…。)
だが、ズルッグ不利の状況は未だ変わらない。サトシは、なんとかこの窮地打開の策を模索していた。
ズルッグ「ズ、ズルゥ!」
ズルッグはそんなサトシの思惑とは裏腹に、痺れる身体に鞭打ちながらも立ち上がる。
サトシ(ズルッグ…。分かった、お前のその根性に賭けてみるぜ!)
ズルッグの気迫を感じ取ったサトシは、次の攻撃で勝負に出ることを決める。
ジロウ「ダイノーズ、ロックオン!」
ダイノーズ「ノォズ!」
だが、最初に動いたのはダイノーズ。ロックオンでズルッグに照準を合わせる。
ジロウ「行け! でんじほう!」
ダイノーズ「ダァァァイノォォォォォズ!」
でんじほうは、真っ直ぐズルッグの方へ向かっていく。ロックオン状態のため、回避は不可能である。
ズルッグ「ズゥゥゥルゥ…。」
ただ、ズルッグは自らに向かってくるでんじほうに臆することなく、両手で光り輝く球体を作っていた。時間の経過とともに、その球体は徐々に膨張していく。
サトシ「! 今だ! ズルッグ、きあいだま!」
程良い大きさになったところで、サトシはズルッグにきあいだまを指示。ズルッグの作っていた球体はきあいだまだったのだ。
ズルッグ「ズゥゥゥルゥゥゥゥゥ!」
ズルッグはきあいだまをでんじほうに向けて思いっきり投げ飛ばした。きあいだまは、真っ直ぐでんじほうに向かっていく。そしてその2つはフィールド中央でぶつかり合い、爆発した。
ズルッグ「ルゥゥゥゥゥッグ!」
ダイノーズ「ノォォォオ!?」
爆発の煙を切り裂くかのごとく、ズルッグがすばやくダイノーズに接近。そして、渾身のとびひざげりを喰らわせる。
サトシ「ズルッグ、もう一度きあいだまでトドメだ!」
ズルッグ「ルゥ! ズゥゥゥゥゥルゥゥゥゥゥ!」
至近距離に位置するダイノーズをきあいだまで攻撃。
ダイノーズ「ノオォォォォォズ!」
ダイノーズはきあいだまの勢いに押され、そのまま地面へと叩きつけられた。
ダイノーズ「ノォズ…。」
デント「ダイノーズ、戦闘不能! ズルッグの勝ち! よって勝者、マサラタウンのサトシ!」
念願ともいえるこの接戦は、経験で勝るサトシが勝利を納めた。サトシとジロウ、双方にとってこのバトルは得たものが大きいものとなった。
後書き
サトシ、ジロウ、このバトルを通じてこれからの成長に期待!