小説『主人公総受け物語〜アニポケ編〜』
作者:天の河()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第36.5話『調べ物はここタマムシ図書館にて』

前書き

サトシ達がポケヴェール女学院で各々の時間を過ごしていた頃、ベルがどうしていたかの話です。あと、ポケモンとは別の生物についての扱いですが、この作品ではオリジナルの名称に変えて存在するものとします。そうしないと、他の作品とコラボしたときに整合性がとれなくなる可能性が発生したためです。尚、コラボの候補としては同時進行中の時オカ編です。


ついでにですが、今回の話にちょっとしたイタズラもあります(笑)





 サトシ達と一旦別れたベルはリュウカとともに、タマムシ図書館に来ていた。タマムシ図書館はあらゆる分野の学術的な書籍や文献が数多く納められており、日本有数の巨大書庫として知られている。国内外から学者はもちろん、一般市民も気軽に利用することが出来る。


ベル「ふぅ〜。ごめんね、リュウカちゃん。沢山の本や資料を運ぶの手伝わせちゃって。重たかったでしょ」


リュウカ「えぇ。こういった分厚い本を持ち運ぶことなんてあまりないので結構キツいですが、たくさんの本が読めることを考えれば楽になります」


ベル「もしかして、リュウカちゃんは本を読むのが好き?」


リュウカ「はい。小さい頃から、外で遊べない時は必ずと言っていいほど本を読み漁っていましたね。それに本を読むといろんなことが知ることが出来て、心も満たされた気分になるんですよ。実は今回、ベルさんについていったのもこのタマムシ図書館に来てみたかったというのもあるんです」


ベル「なるほどね。あたしはリュウカちゃんほど好きってわけじゃないけれど、本を読めば知らなかったことも知ることが出来るというのは分かるわ」


 リュウカはかなりの読書家で、日ごろからいろんな書籍を熟読しているとのこと。この国内有数の書庫であるタマムシ図書館には、かねてから行ってみたかったようである。ベルとリュウカはある程度の書籍および資料を運び終えると、さっそくそれらに目を通す。


リュウカ「ポケモンとは別の生物。これもポケモンとは違った奥深さがありますね」


ベル「最近では、ポケモンの技の一部を使用する生物も数多く報告されているわ。自らの身を守るために、覚えているみたい。ポケモンとポケモンとは別の生物の食物連鎖についてはまだ研究段階なのだけれど、自然の摂理を考えればあって不思議ではないわ。さらに言えば、一部はあたし達人間の食物としても利用されている。」


リュウカ「わたし達は、普段の食事にしても自然の恵みを受けているんですよね。なんだか奥が深いです」


 リュウカとベルが今読んでいるのは、生物学についての書籍。2人でこの世界に存在するポケモンとは別の生物について語っている。語っているうちに、ベルとリュウカは生物学の奥深さについて改めて考えさせられたようだ。


ベル「さてと、生物学についてはこの辺にしましょう」


リュウカ「確か、ベルさんがサトシさん達との旅に同行する目的って、この先のふたご島に行くためですよね?」


ベル「えぇ。そもそもカントーに来たのも、アララギ博士からふたご島について調べてほしいとの命を受けてのことだもの」


リュウカ「出来る限りのことは、お手伝いしますよ」


ベル「ホント、ごめんね。リュウカちゃん」


 生物学の文献調査を切り上げて、次はベル本来の目的であるふたご島についての文献調査である。


ベル(さすがは全国有数の書庫ね。書籍類の他に資料も充実しているわ)


 タマムシ図書館に来て改めて、書籍の多さにあっと驚かされるベル。眼鏡をかけて集中して書籍及び資料に目を通す姿は、正しく研究者そのものである。


ベル(最近報告されている、ふたご島にてイーブイがグレイシアに進化する現象。周辺地域の環境はシンオウのテンガン山、イッシュのネジ山とは全く違うのにどうして起きるのかしら? 共通点としてはこおりポケモンの住処くらいにしか見当たらないけれど…)


 実はここ最近、ふたご島に連れていったイーブイがいつの間にかグレイシアに進化するという現象が多数報告されていた。今までこのような現象はシンオウのテンガン山、イッシュのネジ山以外での報告はなく、ふたご島もこの二地点との関連性が指摘された。ところが、数多くの学者が現地に赴いたにもかかわらず、これといった共通点がまだ見つかっていない。


ベル(もし、この案件が解明されるようなことになったら世紀の大発見かもね。ん?)


 ベルは、書籍に記されていたふたご島にまつわるある記述に注目する。ふたご島、伝説、氷ポケモンこの二つに共通するものといえば…。もう、読者の方々もお分かりであろう。


ベル「フリーザー伝説…」


 ベルが注目したのは、ふたご島やその周辺地域で言い伝えられている伝説のポケモン・フリーザーについての記述だった。


リュウカ「フリーザーって確か、伝説の鳥ポケモンのうちの一体でしたよね?」


ベル「えぇ、ここにはこう記されているわ。『かつて、ふたご島周辺では凍てつく氷を纏いし鳥ポケモンを神々しい存在として崇めていた。ひとたび現れると、周りにいた者は皆、直立していられないほど寒さで震え上がる。』。この凍てつく氷を纏いし鳥ポケモンがフリーザーね。ふたご島周辺では、神様として崇めていたようね」


リュウカ「特にふたご島の近くにあるグレン島とはかなり深いかかわりがあるような記述がされていますね」


ベル「ふたご島を調べるにあたって、フリーザー、グレン島のことは切っても切り離せないようね。3つを関連付けて、ふたご島へ踏み込む必要があるわ」


 ベルは書籍および資料に目を通して、ふたご島、フリーザー、そしてふたご島からは目と鼻の先のグレン島が何等かの関係があると考える。ふたご島にはかねてから、『元々は一つの島であって、グレン島が噴火した際に地形変動で二つに分かれた』、『ふたご島はグレン島の噴火により、地面が隆起したことで誕生した』などと地質学者の間で数多くの仮説が立てられており、実際に島の土の成分の大部分は、グレン島の火山灰、溶岩であることが解明されている。実はこのベルの考えは、かなり筋の通ったものである。


リュウカ「ベルさん、ふたご島についてはかなり事前に調べているようですね。凄いです」


ベル「いやぁ、ほとんどはアララギ博士から提供された資料を活用しているだけなんだけどね」


リュウカ「それでも凄いです。あたしも見習わなくては…」


 ベルとリュウカがふたご島について調べつつ、他愛もない会話を繰り広げていた(もちろん、図書館ということで声のボリュームは下げているのだが…)その時だった。ある人物が2人に声を掛けてきたのだ。


???「随分とふたご島について調べているんだね」


ベル「? あなたは?」


???「あっ、いきなりごめんね。僕はハルヤ。このタマムシ図書館の主任理事として働いているんだ。」


ベル「そうでしたか。あっ、あたしはベルといいます。それでこっちは今日一緒についてきてもらっているリュウカちゃんです」


リュウカ「はじめまして。あたし、リュウカといいます」


ハルヤ「はじめまして、ベルさんにリュウカさん」


 ベルとリュウカに声を掛けてきたのは、このタマムシ図書館の主任理事で運営に携わっているハルヤという男だった。


リュウカ「ところで、さっきあたし達に声を掛けて来た時、ふたご島について気になっていたようですが…」


ハルヤ「あぁ、実は僕の実家がふたご島からそう遠くないセキチクシティにあるんだ。ついでに言えば、僕の祖父はグレン島の出身なんだ。だからふたご島の話題が出てくると、首を突っ込まずにはいられなくてね」


ベル「そうだったのですか。それならお聞きしたいのですが、ふたご島について何か知っていますか?」


ハルヤ「うーん、恐らく君達が調べていること以上のことは知らないなぁ。強いて言うならば、ふたご島には長い歴史を持つ伝統の儀式があるということだね。その儀式は無病息災、子孫繁栄を願って行われるんだ。でもその儀式で祀られているのは、フリーザーではなく、大昔周辺の海域をおさめていた神様なんだ」


 淡々とふたご島で行われている伝統の儀式について語るハルヤ。それを真剣な表情で耳を傾けるベルとリュウカ。


リュウカ「確か、この儀式についての記述もありましたけど、あまり詳しくは触れていませんでした」


ベル「この伝統の儀式についても併せて調べてみる必要がありそうね。ハルヤさん、貴重な情報ありがとうございました」


ハルヤ「こんな情報でもお役にたてたら光栄だよ。それじゃあ、僕はそろそろ別の場所を回るけれどまたこの近くに来るから、何か聞きたいことがあったら気軽に声を掛けてみてね」


ベル・リュウカ「「はい」」


 ハルヤがベルとリュウカから離れた後、2人はその後もふたご島に関する文献調査を進めていく。この文献調査のうちに、ベルのみならずリュウカにも研究員の風貌が次第に見えてきたようである。しばらくこの作業を続けて、ベルとリュウカはそろそろサトシ達と合流することにした。


ベル「さて、この本はここにっと…。リュウカちゃん、ホントに今日はありがとうね」


リュウカ「いえいえ、今日兼ねてから行きたかったタマムシ図書館に来れたのですし、それにこういった作業も割と好きですよ」


ベル「もしかしたらリュウカちゃんは研究員に向いているのかも」


リュウカ「ふふふ、そうかもしれませんね」


 読み終わった書籍や資料を片付けながら、お互いに顔を合わせて笑いあうベルとリュウカ。


ベル「? 何かしら?」


 片付けの最中、ベルはある一冊の“薄い本”に目が止まる。


ベル「何かの雑誌のようね。確か図書館の雑誌コーナーは別の場所にあったから、誰かが間違えて入れたのね」


 ベルは後で所定の位置に戻そうと、その雑誌のような本を本棚から取り出す。ベルはこの直後、本の表紙を見て驚愕することになる。


ベル「!? な、なにこれ!?」


 ベルが取り出した本は、『必見! トレーナー・セ○○○・ライフ!』というタイトルで目隠し加工された女性トレーナーの露わな姿が掲載されていた。ベルは思わず、その本を床に放り投げてしまう。床に落ちた衝動で本のページが開き、開かれたページにも青少年の健全育成上不適切な表現物が掲載されていた。文字通り、“薄い本”であった…


ベル(な、なんで、図書館にこんなものがあるのよ//////)


 ベルは突然の驚きと恥ずかしさのあまり、赤面して顔を覆ってしまった。するとそこへ、


リュウカ「あれ? ベルさん、一体何が…!?」


 別の場所で片付けをしていたリュウカがやって来て、床に座り込んでいるベルに何があったのか聞いてみる。その時、リュウカも床に落ちている例の物に気が付き、一瞬思考が停止する。そして内容に目が入り、恥ずかしさのあまり顔を赤くさせる。


ベル「り、リュウカちゃん、こ、こ、こ、これどうしよう…」


リュウカ「ど、どうしようって言われましても///」


 ベルからどうしたものかと聞かれ、困惑するリュウカ。2人ともこういった状況には遭遇したことがない(まず遭遇することは全くと言っていいほどないのだが…)ため、どう対処していいのか分からなかった。


ハルヤ「2人とも、床に座り込んで一体どうしたn…」


 そこへハルヤが来て、彼もまたベルとリュウカが床に座り込んでいる原因となっている物に気がつく。そして、何も言わずにそれを手に取り、2人に「ごめんね。」と一言言いながら、例の物を処分しにいった。そしてすぐに、ベルとリュウカのもとへと戻ってきた。


ハルヤ「最近、こういうイタズラが増えているんだ。防犯カメラを設置すれば早い話なんだけど、なるべく利用者には気持ちよく本を読んでほしいからね。下手に設置できないんだよ…。でも誤解しないでね、間違ってもあんなものは図書館にはおかないから」


ベル「え、えぇ。はぁ、それにしてもびっくりしたぁ…」


リュウカ「こういうイタズラはやめて欲しいものですね…」


 ベルとリュウカはこの一件で一気に疲労感が増したようである。しばらく休憩して心を落ち着かせた後、2人はハルヤと別れてサトシ達がいるであろうポケヴェール女学院へ向かうことにした。


ベル「さぁて! 変なことはあったけど調べ物は済んだことだし、ポケヴェール女学院へ行きましょう」


リュウカ「はい! サトシさん達を待たせるわけにもいきませんしね」


 図書館を出る前にハルヤからポケヴェール女学院への道を聞き、ベルとリュウカは早速そこへ向かうのだった。



続いて後書きショー





リュウカ「作者さん、終盤になんであんな物を出したんですか!?」


天の河「まぁ、この作品は一応ジャンルとしてギャグ路線だから、こういうのもアリかなと思って」


ベル「ホントにびっくりしたわ。急に出すものだから…」


天の河「その件に関してはすまなかった。ただ、さっきも言った通り、ギャグ路線だから今後もこういったのは出てくると覚悟しておいた方がいいぞ」


リュウカ「今後も…ですか(汗)」


ベル「またあの恥ずかしい思いをしなければいけないのね…」


天の河「まぁ、そういうなって。それでは最後にあたりまして、今回もここまでお読みいただきありがとうございます。次回以降も是非ご愛読いただけたらと思います」

-41-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ポケットモンスター ブラック
新品 \3160
中古 \767
(参考価格:\4800)