小説『主人公総受け物語〜アニポケ編〜』
作者:天の河()

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第41話『天性のナルシスト!?』

前書き


ポケヴェール編後半部分に入りますが、ギャグ成分多めで進行していきます。


途中、アイリスがイタリア語の単語を使うといった、新鮮味ある場面があります。出来の方は保障できませんが…




 突如サトシ達の前に猛スピードで舞い降りた謎の物体。その正体は…


アイリス「これ、手紙?」


デント「そうみたいだね」


 縁が青・赤・白の三色に色付けされた封筒、一般的に国際郵便で見かける代物だった。誰の許可もなく開封するのはあまりにも不躾なので開封はしていないが、見ただけで中に手紙が入っていることは容易に推測できる。


ウォーグル「ウワァァァァァゴォ!」


サトシ「あれは、ウォーグル」


 さらに上空を見上げると、一体のウォーグルが姿を現している。サトシ達を一瞬睨み付けた後すぐに、どこか遠くへと飛び去っていった。


カトリーナ「あわわわわ、あ、あれほど、お、お、お断りしたのに(汗)」


ハンナ「カトリーナ、落ち着いて!」


エリーサ「それに奴は、かなり執念深いのは知っているでしょ? 今までだってこういうことがあったじゃない」


 先程まで落ち着いた口調だったカトリーナが、また元の慌てた感じに逆戻りする。心なしか、顔も少し青ざめている。ハンナとエリーサは何とか彼女を必死で宥めようとするが、難航している。


サトシ「皆さん、あの手紙に何かあるんですか?」


アイリス「それに今までって、こういうことが何度もあったんですか?」


 この状況にサトシ達は黙ってはいられなかった。突如届けられた謎の手紙、そして急に表情を変えたカトリーナに疑問を抱かないという方がおかしな話である。


アリア「とりあえず、その手紙を開けて見てください」


 アリアに手紙を開けるよう言われ、封筒を持っていたアイリスは封を解いて中の手紙を取り出す。アイリスはその手紙に書かれていた内容を音読してみる。


アイリス「『ヴォンジョールノ! 僕の親愛なるアンジェロ、そしてポケヴェールの美しいシニョリーナ達よ。この手紙が届いている頃には、君たちは僕の手の届く場所さ。明日、ポケヴェールに出向くからその美貌に現れた心に期待を弾ませながら待っていてくれたまえ。ハハハ、また以前みたいに恥ずかしがって会うのを躊躇わないように頼むよ、我がフィザンダータ達よ』。…何なのこの上から目線の手紙は」


デント「内容からして、実にピッチフルな手紙だね」


 アイリスの読んだ手紙は書いた本人が自惚れしているような内容で、読むに堪えない代物だった。読んだアイリスは当然のことながら、デントもその内容に気味悪さを覚える。


アリア「その手紙の差出人は、以前より我が学院の学生達にしつこく付き纏う人物からなのです」


アイリス「しつこく付き纏うって、それってストーカーじゃない!」


アリア「しかもその人物は異常なまでのナルシストで、我がポケヴェールの学生全員が自分に夢中だと思い込んでいる節があるのです。もちろん、私達はそのような思いは全くありません。度々この学院に来ては学生に執拗なアプローチを仕掛けるので、学院関係者一同大変迷惑しておりますのです」


アイリス「うわぁ、ますます痛々しいわね。アタシも同じようなことされたら嫌だわ…」


 アリアから手紙の差出人についての簡単な人物像の説明を聞いて、アイリスはさらに嫌悪感を抱き、同性としてポケヴェールの学生達に同情する。


デント「ん? 手紙には‘親愛なるアンジェロ’と書かれていましたが、確か‘アンジェロ’はイタリア語で‘天使’という意味。どうも特定の人物を指しているように思えるのですが…」


 デントは手紙の内容で特に気になった箇所があることを口に出す。


アリア「実はその‘スペランツァ’はカトリーナのことなのです。どうもカトリーナが長期留学中にお会いしたようなのです。初めの頃はポケモンバトルで済んだのですが、会う回数を重ねるうちにアプローチがエスカレートしていったのです」


カトリーナ「しょ、正直迷惑でしたので、お、お、お断りしたのですが、そ、その後も執拗にお誘い等を受けまして…」


エルヴィーラ「…どうもカトリーナに一目惚れしたみたい。ことあるごとにデートに誘ったり、プレゼントを贈ったりしているから」


ハンナ「カトリーナの行動は向こうには何故か筒抜けなのよ。あまりにも出会い方が不自然だったし」


アイリス「うわぁ、何それ!? 気持ち悪!?」


サトシ「俺も嫌がっているのに、しつこく迫られるのは嫌だぜ。ポケモンバトルなら別だけど」


 手紙の‘スペランツァ’はカトリーナを指すという事実が判明。さらに、手紙の差出人はカトリーナに執拗にアプローチを重ね、彼女が拒絶しても懲りずに続けているとのこと。そのことを聞き、アイリスとデントはさらに嫌悪感を抱く。普段悪人以外は好意的に接するサトシでさえも、このように嫌悪感を抱くほどである。余程の嫌われ者のようだ。


エリーサ「ひとまず校舎に戻りましょう。こういう立ち話で話すよりも座って話した方が分かると思うから」


アリア「サトシ様、アイリス様、デント様、大変申し訳ございません。こちらからお誘いしておいて、こんな面倒事に巻き込んでしまいまして」


デント「いえいえ」


サトシ「俺達、いろんなところを回ってこういうことに慣れてますから」


アイリス「だから、気にしないでください」


アリア「皆さん、お気遣いありがとうございます。その一言一言が励みになります」


 ひとまず、サトシ達は校舎へ戻ることなり、校舎内に入った後は生徒会室へと向かう。そして生徒会室に入ると、既に特別講義を終えて休息のひと時をとっていたカスミ、ハルカ、ヒカリ、ドリスがいた。ヒカリの母・アヤコは特別講義終了後、しばらく雑談をしてフタバタウンへと帰ったとのことである。


ドリス「あら、皆様随分と遅かったじゃないですか」


エリーサ「えぇ。ドリス、また例の手紙が届いたのよ…」


ドリス「例の手紙って…。じゃあ、アイツのポケモンのウォーグルも」


エリーサ「ご丁寧に出向いてくれたわよ」


ドリス「はぁ…。本当にしつこいんだからアイツは」


 ドリスもエリーサの一言で何が起きたのか、ため息を吐きながら理解したようだ。それ程、手紙の差出人のことは学院内では有名(もちろん悪い意味で)になっている。


ハルカ「ドリスさん、例の手紙ってなんですか?」


ヒカリ「それに、アイツって?」


 何も事情を知らないカスミ、ハルカ、ヒカリは、当然のことながら頭にクエスチョンマークを浮かべている。ドリスは3人に先程アリアがサトシ達に話したのとほぼ同じ内容の話をする。


カスミ「うわぁ、何ソイツ…」


ハルカ「何度もって、しつこいわね」


ヒカリ「それにカトリーナさんが嫌がっているのに何度もアプローチするなんて、女の敵だわ」


ドリス「全くだわ! しかもカトリーナに飽き足らず、他の学生にもナンパを仕掛けるときたものだから、とんだ下衆野郎よ!


 当然のことながら、手紙の差出人であるナルシスト男に先程の面々と同じように嫌悪感を抱くカスミ、ハルカ、ヒカリ。ドリスに至っては、声を荒らげて『下衆野郎』と称するほど、男をかなり毛嫌いしているようだ。


デント「それでどうするんですか? 明日にはその男が来るのですよね?」


アリア「そのことに関しては、大丈夫です。彼の居場所はたかが知れていますし」


アイリス「えっ、居場所は分かっているんですか!?」


アリア「だって彼は今海外遠征で来日しているイタリアバトル部門代表のメンバーですもの」


サトシ「嘘だろ!?」


ヒカリ「そんな凄腕のトレーナーなのに、ナルシストだなんてもったいないわ」


 アリアから衝撃の事実を知らされて驚きを見せるサトシ達。手紙の差出人はなんと、只今日本で遠征キャンプを張っているイタリアバトル部門代表の一人であるとのことである。ちなみに、近々ジョウトのシロガネタウンにて同時開催される2つの世界大会に向けて、各国のトレーナーが国単位の集団で来日してはトレーニングを行っているという裏事実がある。


アリア「まぁ、断ってもくるような人ですから、来られた暁には返り討ちにしてやりますわ。それに何度言っても聞きませんから、口で伝えるより身体で覚えさせるほうがよさそうですしね。フフフ…」


アイリス「あぁ、そうですか(アリアさん、何か怖い…)」


 アリアが何かを企むような目で不敵な笑みを浮かべるものだから、生徒会室の雰囲気は一瞬で凍りついた。この後の展開がほとんど見えない学院から場所を移して、ここはイタリアバトル部門代表合宿地。


???「ウォーグル、僕の美しいシニョリーナ達はどうだったかい?」


ウォーグル「ウォォォォォグゥ!」


???「そうかい、相変わらずおませで恥ずかしがり屋なシニョリーナ達だ。まぁ、僕のこの類稀な美貌に見とれるのは仕方ないけどね」


 そこにある合宿所のある一室では、ある男と先程までサトシ達に姿を見せていたウォーグルが会話をしていた。どうやら、ウォーグルはこの男のポケモンのようだ。


???「まぁ、いいさ。明日僕が直接出向いて以前のように、シニョリーナ達を僕の美貌の虜にしてあげればいいのだから」


 男は痛々しい会話をウォーグルとした後、今いる部屋を後にした。この男の出現により、サトシ達の命運はどうなるのか…


続く





後書き

イタリア人男性は、ナンパと積極的なアプローチのイメージがありますが、イタリア人男性全員がそうではないのであしからず…

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