第47話『砂の中の隠れ蓑』
前書き
エルレイドにまともに攻撃が出来ずいきなり不利な戦況に立たされたサトシ。
だが、ここから前回のタッグバトルでの教訓がその窮地を救う!?
サトシ「ガントル! 君に決めた!」
シュッ! ポォォォォォン!
ガントル「ガントゥル!」
サトシの2体目はガントル。イッシュ地方でゲットしたポケモンである。どうやら、昨日のタッグバトルのメンバーとは違う面子でこのバトルに挑んでいるようだ。
バシーリオ(比較的防御力の高いポケモンで来たか。さっきインファイトを使ったから、もう一度攻撃力を上げなくちゃね)
バシーリオはこのままエルレイドを続投させ、エルレイドに次の指示を与える。
バシーリオ「エルレイド、ビルドアップ!」
エルレイド「エルルゥ…」
エルレイドは先程使った‘インファイト’での攻撃力低下を補うため、‘ビルドアップ’で気を高めて攻撃力を向上させる。
サトシ「(よし! 今だ!)ガントル、すなあらし!」
ガントル「ガァントゥゥゥル!」
エルレイドが気を高めている隙を見計らって、ガントルは‘すなあらし’を発生させる。フィールド一帯は吹き荒れる砂埃に包まれる。
バシーリオ(ウァオ! ここですなあらしを使ってくるとは思わなかったよ。目の前がこう見えづらくては、せっかく攻撃力をあげても攻撃そのものを当てるのは容易ではなさそうだね…)
ガントルの‘すなあらし’に度肝を抜かれたバシーリオ。これを裏付けるかのように、サトシのガントルは見事エルレイドの視界から姿を消して、‘すなあらし’を自らの隠れ蓑にしたのだ。
サトシ(昨日のハンナさんとカトリーナさんのあられを使ったバトルスタイルを見てもしかしたらと思ったんだけど、上手くいったみたいだな)
どうやら、サトシは昨日の対戦相手のハンナとカトリーナが使った‘あられ’戦術を、‘すなあらし’に応用したようだ。‘すなあらし’によって威力が上がったり必中になるような攻撃技はないものの、相手のポケモンが岩、地面、鋼タイプのいずれかでない限り、‘あられ’同様に一定の追加ダメージを与えることが出来る。さらにこれを使いこなせば、今のガントルのように相手ポケモンの視界から姿を消して、相手を撹乱させることも可能である。
ドリス「サトシ君、もう早速我が学院のお家芸を活用しているようね」
アイリス「お家芸…というと?」
ドリス「ウチの学院に属するトレーナーは、天候を変化させて活用するタクティクスを支流とするのがほとんどなの。ハンナ様とカトリーナの‘あられ’がその代表例ね。あと、アリアもドーブル達に天候変化の技を覚えさせて、それを上手く活用しているわ。そのせいか、この天候変化のタクティクスが我が学院のお家芸となっているの」
デント「天候を変化させれば、技の威力が上がったり、技が必ず当たるようになることがありますからね。天候と上手くマリアージュさせれば、状況によってバトル巧者になることだって出来ますよ」
デントの言うとおり、天候を変化させることでタイプによって威力が上がったり、必中になる攻撃技はあり、さらには特性によって様々なメリットの恩恵を受けることが出来る。ただ、その反面、デメリットも少なからず存在するので、その点を留意しながら活用していくのがこの戦術である。
エルレイド「エルゥ…」
視界を遮られた格好のエルレイド。さらに、周囲に舞い散る土埃が目に入ってきて思うように目を見開くこともできず、ただ構えのポーズのまま立往生するだけである。
サトシ「ガントル、ロックブラスト!」
ガントル「ガンッ! ガントォォォォォル!」
ガントルの周囲から、無数の岩石群が浮き上がる。浮き上がったそれらは次々とエルレイドに向けて飛んでいく。
エルレイド「…エルゥ!? エルレェイド!」
エスパータイプさながらの感覚でこれを察知したエルレイド。辛うじてこれらをかわしていき上空へと退避する。ただ、一向にロックブラストの岩石群はエルレイドに襲い掛かる。
サトシ「それなら、こうだ! ガントル、エルレイドを打ち落とせ!」
ガントル「ガンッ! ガァントゥゥゥル!」
今度は今度は一つの巨大な岩を浮き上がらせて、それを上空のエルレイド目がけて飛ばす。そう、ガントルが使った技は、空の上にいる相手を地上へと落下させる‘うちおとす’である。
エルレイド「エルゥ!? レェェェェェイ!」
ロックブラストの岩石群をかわしている最中だったエルレイドは、これはかわしきれなかった。巨大な岩はエルレイドを直撃。そのまま、エルレイドは地上へと落下していく。
サトシ「今だ! ガントル、ラスターカノン!」
ガントル「ガン! ガァァァァァントォォォォォ!」
エルレイドが体勢を立て直す前に、ガントルは‘ラスターカノン’を発射。眩い光線が、エルレイドに向かっていく。
エルレイド「エルゥ!」
そのまま、‘ラスターカノン’の直撃を受けるエルレイド。さらに、‘すなあらし’による追加ダメージが加わる。
ガシャアアアアアン!
エルレイド「…エルゥ」
アリア「エルレイド、戦闘不能! ガントルの勝ち!」
地上に叩きつけられるように落下したエルレイド。着地した時は既に目を回して倒れていた。ハンナとカトリーナのキネヅカ(?)とも言える天候変化を利用して、まず一体目を倒したサトシ。ここからバトルはさらに拮抗した展開を迎える。
カトリーナ「えっ、サトシ様が!?」
ハンナ「えぇ。例のごとくやって来たバシーリオと3対3のシングルバトルをしているとのことよ」
サトシとバシーリオの激闘が繰り広げられていたその頃、校舎内ではカトリーナがエリーサとハンナより、その事実を知らされたところであった。
カトリーナ「…私、行って参ります!」
エリーサ「ちょっと、待ちなさい! カトリーナ!」
カトリーナ「止めないでください! 私のせいでサトシ様はバシーリオ様とポケモンバトルをする羽目に遭われたのですから!」
エリーサ「カトリーナ…」
エリーサ、ハンナの制止を振り切り、急ぎ足でカトリーナは校舎の外へと出て行った。
エリーサ「このこと、カトリーナに言って正解だったかしら…」
ハンナ「ま、まぁ、こんな学生たちがざわつき始めている状況で隠し通すこと自体が無理だもの…」
エリーサ「…始末書の準備、しておかなくちゃね」
野外のバトルフィールドに向かうカトリーナの背中を眺めながら、エリーサとハンナは呟くのだった。一方、バトルフィールドでは、バシーリオが次のポケモンを出すところである。
バシーリオ「それじゃあ僕の次のカヴァリエ―レは、コイツだ! アンダーレ、ウルガモス!」
シュッ! ポォォォォォン!
ウルガモス「ブヒィィィィィィィップ!」
バシーリオが戦闘に出した次のポケモンは、ウルガモス。ボールから出てきたウルガモスは、自らの羽根をばたつかせながら上空に浮かんでいる。
ヒカリ「ウルガモス? いわタイプのガントルとは相性が悪いのに?」
ドリス「一見バシーリオがヘマしたと思うでしょ? あのウルガモス、相性の悪さを跳ね除けるほど厄介な相手だわ」
ヒカリ「?」
ウルガモスは虫・炎タイプ。岩タイプのガントルとは、圧倒的に相性が悪い。だが、ドリス曰く、バシーリオのウルガモスは相性の良し悪しをも跳ね除ける、クセのあるポケモンだとか。さて、戦闘に出たこのウルガモスはどんな戦いぶりを見せるというのだろうか…
バシーリオ「ウルガモス! まずはにほんばれで、すなあらしを晴らすんだ!」
ウルガモス「ブシャア」
まずは、‘すなあらし’で砂にまみれた視界を晴らすため、‘にほんばれ’を使用。あたり一面には、日差しが強く差し込んでいく。その為、観戦している面々は日除けを行う。
サトシ「ガントル、うちおとす!」
ガントル「ガントゥゥゥル!」
ウルガモスが‘にほんばれ’を使っている隙に、ガントルは巨大な岩をウルガモス目がけて放って、ウルガモスを地上へ打ち落としにかかる。
バシーリオ「すなあらしが晴れた今、そんな攻撃は僕のカヴァリエ―レ達には通用しないよ! ウルガモス、アクロバット!」
ウルガモス「ブヒュウ!」
ウルガモスは‘アクロバット’を使って、ガントルが投げ飛ばした巨大岩石をあっさりとかわす。さらに、
ガントル「ガァン!?」
ウルガモス「ブシャア!」
ガントル「ガァントォ!」
サトシ「ガントル!」
ウルガモスは瞬時にガントルに急接近、そのままガントルを持ち上げて空高く上昇。一定の高さまで上昇したところで、ガントルを地上へと落下させた。ガントルはそのまま地面に叩きつけられ、ダメージを負う。
バシーリオ「ウルガモス! ちょうのまいから、ガントルにソーラービーム!」
ウルガモス「ブヒャ! ウヒャア! ヒヤァァァァァ!」
華麗に‘ちょうのまい’を魅せた後、すぐさまガントル目がけて‘ソーラービーム’を発射。通常、‘ソーラービーム’は日光からのエネルギーを溜めてから発射されるが、‘にほんばれ’などで日差しが強い状態にした場合は、溜めの動作なしで即時発射が可能である。
ガントル「ガァン!? ガァァァァァ!」
サトシ「ガントル!」
ウルガモスが放った‘ソーラービーム’は、そのまま地面に蹲っているガントルに直撃。草タイプでトップクラスの威力を誇る‘ソーラービーム’。さらに、先程の‘ちょうのまい’で上乗せされた特殊攻撃力が、相手に与えるダメージをより一層高めさせる。
ガントル「…ガァントゥ」
アリア「ガントル、戦闘不能! ウルガモスの勝ち!」
ガントルがウルガモスに僅かのダメージも与えることが出来ず、倒されてしまった。これにより、サトシのポケモンは残り1体。後がなくなってしまった。
ハルカ「ま、まずいわ! このままじゃ、サトシが負けちゃう!」
カスミ「相手のポケモン一体は倒したけれど、相手のペースに乗せられているわ…」
アイリス「もしサトシが負けたら、アタシ達があの男と今晩ずっと過ごさなくちゃいけなくなるじゃない!」
ヒカリ「それは何としても阻止しなくちゃ! サトシ、ファイト!」
サトシのポケモンが残り一体となったところで、さすがに焦りを見せ始めたヒロインズ。先程よりも必死にサトシを応援する。ヒカリに至っては、いつの間にかチア・リーディングの衣装に着替えている。そんな彼女たちに触発されたのか、一緒に観戦していた学生達も混ざって、全力でサトシに声援を送り始める。
ドリス「(ヒカリさん、いつの間にチア・リーディングの格好に!? とはいえこのバトル、あの下衆野郎に勝たせたらポケヴェール史上始まって以来の一大事だわ!)サトシ君、頑張って!」
当然の反応ではあるが、観戦側の面々は全員、サトシの勝利を心から願っている。バシーリオ、完全アウェーである。
サトシ「どうしてみんながあそこまで俺の事応援してくれるのかは分からないけれど、なんだか燃えて来たぜ!」
人は通常、こういった過剰な声援は、かえって緊張を生んで本来の実力を引き出せなくなることがあるが、サトシにはそういった心配はなさそうだ。
サトシ「よし、俺はこのバトルをコイツに賭ける!」
サトシは次のポケモンに全てを賭けて、そのポケモンが入ったモンスターボールを取り出す。サトシが3体目のポケモンを出そうとしたその時だった。
ヒュウウウウウン! ドドドドドォォォォォン!
突如、上空から光り輝く物体が次々と野外バトルフィールドに落下。それはバトルを思わず中断させるほど凄まじいものであった。
バシーリオ「!?」
サトシ「うぅ、一体何が起こったんだ!?」
バシーリオ、サトシともに突然のことに驚きを隠せずにいた。バトルフィールドに突如舞い降りた謎の物体の正体は。そして、この後どんな展開が待ち受けているのだろうか…
続く
後書きと言う名のネタバレw
バシーリオのそのふざけた幻想は俺がぶち壊す!←上○○麻風にw