小説『老人ホーム復讐劇』
作者:arinko()

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亜美はその日、元恋人のお仏壇に向かって手を合わせていた。

お仏壇の写真に写っている恋人の男性は、誰かに「嫉妬」のために殺されたなんて嘘のように、朗らかに幸せに笑っている。


新鮮な花を飾り、お線香をあげたばかりである。




「やっと、あいつが死んだのよ。あの死に方があいつの結末なの。天国で見ていてくれたよね?

 あなたは命を落としてしまったけど、なぜかいつもあなたがそばにいてくれてるって思うの。

 本当は同じ場所で同じ風景を見ていられたらもっとよかったんだけど、だから私は幸せ。

 みんな自分の行いで幸せになったり不幸になったりするのよ。幸せかどうかなんて自分の心の中の問題でしょ?

 本当の幸せは、私たちの心の中といつもの行動を観ていてくれる神様しか与えてくれないもの」



亜美はそういって立ち上がり、冷蔵庫に保存してあったお皿に載せた大福をお仏壇に供えた。


「誕生日、おめでとう」


窓の外はすっかり暗闇に包まれ、粉雪がしんしんと降っていた。

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