小説『山吹さん家のご兄弟』
作者:百瀬コーキ()

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 前回までのあらすじ
 朝起きると家に不審者がたくさんいました☆
 しかも、その不審者は俺の兄弟らしいです。
「って信じられるか!!」
 いきなり朝起きて家の中に見慣れない連中がいて、挙句の果てに俺の兄弟 
 そんな訳ねぇだろうが、生まれてこの方、俺の十七年間の人生の間ずっと一人っ子だったんだぞ!!
 朝目が覚めたらあなたは五人兄弟の三男坊でした?ありえるか!!
 とか考えていたら、爽やかな金髪に「とりあえず遅刻するから行け」と爽やかスマイルを浮かべられ家から他の不審者ともども叩き出された。
 理不尽!
「あぁ、朝飯…」
 喰っとけばよかったとがっくり肩を落とす俺の横で、俺と同じく家から叩き出された。不審者その2(誠二)とその3(誠士郎)が「まぁ、兄貴だったら放り出すわなぁ」「仕方ねぇよな」と呑気に突っ立っていた。
「じゃあ、とりあえず俺は仕事行くからな」
 その2はいつのまにかスーツに着替え、車に乗って出て行ってしまった。
 その3は「やっべ! 朝練」の声とともに自転車に乗り恐ろしいスピードで走り去った。
 マッハ3ぐらい出てるんじゃね?
「俺も学校いくか、…はぁ」
 うだうだしても仕方がないので、学校に向かうことにした。



学校
「おはよー!! 山吹! 今日も元気か!!」
「笹田か、これが元気に見えたらお前の目は節穴だな」
「あいかわらず辛辣だな!!」
 教室に入った途端にクラスメートの笹田に、馬鹿でかい声で話しかけられた。
 いいやつなんだが、ともかく声がでかい。
「褒めてくれてありがとうよ」
「別に褒めたつもりは無かったのだがな!!」
 俺の皮肉にもでかい声で返す馬鹿もとい笹田。
 俺が自分の席に座り隣の席に笹田が座る。

 そこへ
「おはよー、山吹に笹田」
 俺よりも後に入ってきたメガネ男子もといクラスメートの水城が声をかけてきた。
「オッス」
「おはよー!! 水城は今日もメガネメガネだな!!」
 片手を軽く上げてあいさつをする俺と元気よく挨拶をする笹田。
「メガネメガネってどういうことだよ、ところで山吹」
 笹田の意味がわからん言葉にもきっちり突っ込みを入れる。
 笹田の気持ちもわからんでもないよ。だって水城ほどメガネが似合うやつオレ会ったことないよ。
「なんだ?」
「今日お前の弟見たぜ」
「はっ?」
「いやー、びっくりしたわ、俺の家の前をチャリで爆走してったからさ」
「いやいやいや!! 弟ってなんだよ!! 俺兄弟いないぜ!」
 なにいっとるんだこのメガネ! まさかコイツらまで俺に兄弟がいるとかアホなこと言い出すんじゃ…
「なにいってんだお前?」
 このメガネめ人のこと信じられないって目で見やがった。隣の席の笹田もおんなじような目で見てきやがる。
 うちの母親と同じ反応しやがって。
 テメーらグルか、うちのババアと結託してやがんのか。
「山吹! ボケたか!! ボケには大豆だ!! 豆を食え!!」
「笹田、シバくぞ」
「いや、お前マジで大丈夫かよ?」
 水城メガネボーイが心配そうな顔で見てくる。
 メガネボーイの演技力はすごいな、俺の中でアカデミー賞受賞しちゃいそう。
 因みに、そこの能天気馬鹿は俺ランキングでかならずシバくやつランキング上位保持者だ。 そのうち殿堂入りの予定。
 ていうか、今シバく。俺は馬鹿の脳天に一撃を与えてメガネボーイに向き直る。
「なにか、お前らグルなのか? うちのババアといつ手を組みやがった?コノヤロー」
「手ぇ組むって何の話だよ」
「だから、俺に実は兄弟がいたんだよーってドッキリを仕掛ける気なんだろう。あいにくお前たちの思っているほど俺はマヌケじゃないぜ!!」
「ドッキリって…、これは重症だな」

 もう何と言われようが騙されん!
 椅子の上に立ち上がり声高々と宣言してみせる!そう!
「おう! 重症上等だ!! だれが何と言おうが俺に兄弟は!」
「山吹ー、お前んちの兄ちゃんから弁当が届いたぞー」
 はい!担任ことナナちゃん先生!出鼻からくじかないでくれないかな!!
 気だるげな様子で俺に近づいてくる、ネクタイゆるゆる教師こと我らが担任ナナちゃん先生!(本名:松之木 七海) 
 職員室でよくタバコすぱすぱしてたりする名物英語教師、ここまで名前と顔と職業が似合わない教師もいないだろう。
「ほーら、山吹ー、お前の兄貴からの弁当だぞー、渡して欲しければ金を払え」
「なんつー教師だ!!」
 うりうりとか言いながら俺に届かないところで弁当をちらつかせるナナちゃん先生、だれか頼むからコイツ教育委員会に訴えてくれ!! あっ、クラスメート全員が目を逸らしやがる!! そうだよな!みんな猛獣には関わりたくないよな!! 俺もだよ!!
「あーん? お前この弁当はだなぁ、俺がお前の兄貴から受け取った弁当だ、つまり現在の所有権は俺にある、さぁそういうことで金を払え」
「いつか絶対訴えてやる!!」
「先生ぇ、山吹が可哀想なんでやめてください」
 おぉ、マイフレンドメガネボーイ!
「水城ぃ、お前いい奴だなぁ。俺アカデミー賞あげちゃう」
「よくわからんが貰えるもんは貰っとくわ」
 うん、特に意味もないけどあげちゃう好きなだけあげちゃう。
「チッ、冗談だよ」
 冗談だっていう人はね、舌打ちなんてしないんだよ。
 水城も「本気だったな、この人とか思ってるんだろうなぁ」
「ナハハハ!! ナナちゃん本気だったよな!!」
 やめろ馬鹿!!叫ぶな!
「…お前ら三人、今日俺の授業で当てっからな」
 この教師!俺たちが英語苦手だって知ってるくせに!!
「どうしてくれんだ馬鹿!」
「俺はあんまり関係ないのに!!」
「ナハハハ!!」

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